「再婚したら養育費はどうなるの?」
養育費の支払い義務が生じる期間中に再婚した場合、養育費に影響が生じるのか気になりますよね。
結論から申し上げると、養育費を受け取る側の再婚の場合でも、支払う側の再婚の場合でも養育費に影響を及ぼすことはありません。
再婚しても子どもの親であることは変わらないため、扶養義務は継続するからです。
ただし、状況によっては養育費の免除や打ち切りが認められるケースがあります。
すると、「どのような状況で打ち切りになるのか?」「減額になるとどれくらいの金額なのか?」という疑問も出てきますよね。
そこで今回は、再婚に関する養育費について分かるようにまとめました。
この記事を読むことで再婚が養育費にどのような影響を及ぼすのかが分かると共に、するべき対処ができるようになるはずです。
本記事を読んで分かること |
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再婚で生じる養育費の内容に懸念がある方、不安を感じている方は、ぜひ最後まで読み進めて参考にしてください。
1. 基本的に再婚だけでは養育費に影響しない
再婚という変化があったとしても、養育費の支払い義務には影響を及ぼしません。
以下のようなあらゆる再婚の場合でも支払い義務は継続します。
- 養育費を受け取る側の再婚の場合
- 支払う側の再婚の場合
- 双方が再婚した場合
なぜなら、再婚は親子の関係や縁を切ることではないため、養育費を放棄することは認められることではないからです。
そもそも養育費とは、子どもを監護・教育するために必要なお金であり、子どもが社会的・経済的に自立するためのお金です。
経済的に自立していない子どもは自らお金を稼ぎ、生活を成り立たせていくことができません。
よって、養育費が払われないと、子どもが健全に生きていくために必要な食事ができなかったり、教育を受けられなかったりすることにつながります。
子どもが不自由ない生活と教育を受けるために必要な養育費は、法律上でも『生活保持義務』という強い義務に該当し、支払い義務者は自身と同じ生活水準の生活と同等レベルの生活を子どもに保障するという義務があります。
たとえ、自己破綻した場合でも、この負担義務はなくならないほど強い義務であり、親子という関係がある限り負う義務があるのです。
再婚をしても親子関係であることは変わらず、扶養義務は継続するため再婚は養育費に影響を及ぼしません。
ただし、再婚した状況によっては支払い免除や減額が認められるケースもあります。詳しくは次の章で解説いたします。
2. 再婚して養育費の支払い免除・減額が認められる2つのケース
子どもの親である以上、養育費の支払い義務は継続しますが、養育費に影響を及ぼす再婚のケースもあります。例えば、以下のようなケースです。
養育費に影響を及ぼす再婚の例 |
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再婚の有無に関わらず子どもの扶養義務は継続しますが、再婚によって扶養義務の優先順位や必要な生活費に変化が生じると、当初の養育費の取り決め内容では妥当性に差異が生じることもあり、養育費の減額請求が認められるのです。
それぞれのケースについて紹介します。
2-1. 養子縁組をして再婚相手にも扶養義務が生じた場合
子どもの親権を持つ“養育費を受け取る側”が再婚し、再婚相手と子どもの養子縁組をした場合には、養育費の減額請求が認められることもあります。
養子縁組をすると法律上でも親子関係と認められ、再婚相手にも第一次的な扶養義務が生じるからです。
ただし、再婚相手がやむを得ない事情で収入がなく、資産も持ち合わせていない場合は、養育費の打ち切りや減額は認められません。
養育費の打ち切りや減額が認められるのは、再婚相手に扶養できる収入や資産がある場合です。
このように養子縁組が必ずしも打ち切りや減額の判断につながるわけではなく、子どもに監護・教育ができる環境が継続できるかという観点で考えられます。
再婚し、さらに養子縁組をした場合には、養育費の変更が生じる可能性があるということをおさえておきましょう。
2-2. 支払い義務者が再婚して扶養家族が増えた場合
養育費を支払う側が再婚し、扶養家族が増えた場合も養育費の減額が認められる1つのケースです。
扶養家族が増える場合とは以下のようなケースが考えられます。
- 再婚相手が扶養に入った場合
- 再婚相手の子どもと養子縁組した場合
- 再婚相手との間に子どもができた場合
扶養義務を負う対象が増えると扶養に必要な金額も伴って増えるため、減額が認められる可能性があります。
ただし、それぞれの扶養対象の現状や環境が加味されるため、減額の大きさは人それぞれです。
Tips! 他にもある養育費の打ち切り・減額されるケース 養育費の打ち切りや減額が認められるケースは再婚に伴うものだけではありません。以下の場合も打ち切りや減額が認められます。 支払い義務者の経済状況が悪化した場合支払い義務者が病気や怪我、リストラ等によって著しく経済状況が悪化した場合、養育費の減額が認められることもあります。 ただし、経済状況の悪化の原因が故意によるものや、自己都合だと判断される場合は養育費の減額は認められません。 支払い義務が打ち切りになることもないため、著しい経済状況の悪化でも支払い義務は負い続けることになります。 受取側の経済状況が大きく改善した場合養育費を受け取る側が「パートだったが子どもの成長に伴って就職した」「立ち上げた事業で大きな収入を得られるようになった」など、経済状況が大きく改善した場合、養育費の減額が認められる可能性があります。 ただし、養育費を取り決める時点で将来の収入を予想し、その収入を見込んで養育費を取り決めた場合は減額が認められないでしょう。 子どもが社会的・経済的に自立した場合養育費は子どもが社会的・経済的に自立するまで扶養するための費用なので、子どもが「就職した」「結婚した」などで社会的・経済的に自立したと認められる場合は、取り決めた養育費の支払い期間であっても打ち切りにすることが認められます。 |
3. 養育費が減額される場合の金額目安
養育費の減額請求が認められる場合、どれくらいの減額が認められるのか具体的な金額が気になりますよね。
減額が認められる状況でも、すでに養育費を受け取っている金額は個々で違うので、はっきりと提示できる費用額はないですが、算出できる標準的算定式が参考になるはずです。
ここでは、養育費が減額される場合の目安として参考になる情報をご紹介します。
3-1. 標準的算定式を使った養育費の算出方法
標準算定式とは、『扶養義務者である親と同等レベルの生活を保持する』という生活保持義務に則って養育費を算出する方法です。
以下のような算定式を用いて算出します。
標準的算定式(年額) |
子どもの生活費 × (義務者の基礎収入 ÷ (受取側の基礎収入 + 義務者の基礎収入)) |
※月額で割り出す際は、上記の計算で出た数字を12で割って算出する。
算定式を見て分かるとおり、算出するときには3つの情報が必要になります。
標準算定式に必要な情報 |
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標準算定式に必要な情報の算出方法を養育費の計算手順に沿って説明します。
3-1-1. 手順1.基礎収入を算出する
まずは『支払い義務者の基礎収入』と『受取側の基礎収入』を算出します。
基礎収入は年間の総収入に以下の割合をかけて算出します。会社員と自営業によって基礎収入の割り出し方は異なるため、それぞれ当てはめて算出してください。
▼【会社員】基礎収入の金額の出し方
年間の総支給額 | 基礎収入 |
0~100万円 | 42%の金額 |
100~125万円 | 41%の金額 |
125~150万円 | 40%の金額 |
150~250万円 | 39%の金額 |
250~500万円 | 38%の金額 |
500~700万円 | 37%の金額 |
700~850万円 | 36%の金額 |
850~1,350万円 | 35%の金額 |
1,350~2,000万円 | 34%の金額 |
▼【事業所得者】基礎収入の金額の出し方
年間の事業収入 | 基礎収入 |
0~421万円 | 52% |
421~526万円 | 51% |
526~870万円 | 50% |
870~975万円 | 49% |
975~1,144万円 | 48% |
1,144~1,409万円 | 47% |
3-1-2. 手順2.子どもの生活費を算出する
基礎収入を割り出したら、次に子どもの生活費を導き出します。
子どもの生活費は以下の算出方法を使ってください。
子どもの生活費の算出式 |
支払い義務者の基礎収入 × (子どもの生活指数 ÷ (義務者の生活指数 + 子どもの生活費指数)) |
生活費指数には以下の数字を用います。
▼子どもの生活費指数
0歳~14歳:55 15歳~19歳:90 成人:100 |
例1 子どもが5歳、支払い義務者の基礎収入が185万円とした場合
185万円 × (55 ÷ (100 + 55)) |
例2 8歳と17歳の2人の子ども、支払い義務者の基礎収入が185万円とした場合
185万円 × ((55 + 90) ÷ (100 + 55 +90)) |
3-1-3. 手順3.標準的算定式に当てはめて算出する
必要な情報を割り出したら、それらの数字を算定式に当てはめていきます。
標準的算定式(年額) |
子どもの生活費 × (義務者の基礎収入 ÷ (受取側の基礎収入 + 義務者の基礎収入)) |
標準的算定では年額の数字が出るため、月額の養育費を割り出す際は、上記の計算で出た数字を12で割って算出してください。
3-2. 標準的算定式を使ったシミュレーション
では実際に標準的算定式を使って、再婚した場合の減額についてシミュレーションをしていきましょう。
再婚の状況は様々ですが、以下のような状況であると仮定して算出してみます。
▼シミュレーションの内容
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①基礎年収
支払い義務者:500万円 × 38% = 190万円
親権者:300万円 × 52% = 156万円
②子どもの生活費
支払い義務者:100
5歳の子ども:55
再婚相手との間に生まれた子ども:55
190万円 × ((55+55)÷(100 + 55 + 55)= 99万5,238円
③1か月あたりの養育費
99万5,238円 × (190万円 ÷ (156万円 + 190万円))= 54万6,517円
月額:4万5,543円
このように養育費の算出ができます。再婚し、扶養家族が増えた場合には活用して減額された場合の金額を算出してみてください。
3-3. 養育費算定表
養育費算定表とは裁判官による研究によって養育費の金額を算定したものです。
この養育費算定表は夫婦の年収、子どもの数、年齢などに応じて標準的な金額が算出され、地方裁判所で行われる審判で実際に使われています。
▼養育費算定表の一部▼
参考)裁判所『養育費算定表』
養育費の減額をする場合、当事者間で自由に金額の設定ができますが、話し合いで折り合いが付かない場合は、算定表も参考にするといいでしょう。
▼養育費算定表はこちらから閲覧できます▼
養育費算定表 インターネット上で公開され、いつでも閲覧することが可能です。 |
Tips!
参考)裁判所『平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について』 |
4. 養育費の内容を変更する2つの方法
養育費の変更が認められるような状況になったとしても、自分1人の判断で打ち切ったり、減額したりすることは認められていません。
双方の合意があって初めて認められるものだからです。
この章では養育費の減額請求を行う場合の手続き方法について解説します。
4-1. 交渉を行う
養育費の内容に変更が必要になった場合、相手に交渉し、合意を得ましょう。
合意を得るには相手を納得させることが必要です。
口だけの説明では説得感に欠けることもあるため、変更が必要なことを証明する書面を準備して話し合いを進めることがポイントです。
以下を参考にしてご自身の状況にあった書面を準備してください。
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交渉では養育費を払えない状況について納得させることが必要です。
また、受け取る側においても、相手が本当に支払いができない状況なのかを見極めることが大切です。
双方で話し合いを持ち、お互いに合意を得られたら『公正証書』にして書面化して、後々のトラブルを防ぐ工夫を取り入れましょう。
Tips! 養育費の取り決めに有効な『公正証書』とは 公正証書とは証拠価値が高い文書です。公正証書にして養育費の内容を書面化した場合、不払いが生じたときに裁判などの手続きを経ずに強制執行(支払い義務者の給与や資産の差し押さえ)ができるようになります。 さらに、後になって「変更した内容を元に戻してほしい」「不当な条件だった」などの言い分も認められない文書になるため、後々のトラブルも防ぐことができるようになります。 このような効力を持つ公正証書は、公証役場に出向いて公証人に作成してもらう必要があります。 作成費用も時間もかかりますが、養育費は長年にかけて支払いが継続するお金なので作成をおすすめします。 |
4-2. 養育費減額調停を行う
双方の話し合いで折り合いがつかなかったり、相手が話に応じないなどの状況になったりした場合は、家庭裁判所に『養育費減額請求調停』を申立てます。
調停に進んだ場合も双方の話し合いが行われますが、調停委員が間に入り、それぞれの意見を聞いて調整を行いながら取り決め内容を決めていきます。
双方それぞれが調停委員と話をするため、夫婦が顔を合わさずに話し合いを進めることができます。
ただし、この調停で決着がつかない場合は『審判』へ移行し、裁判官によって養育費の内容が判断されます。
裁判官が養育費を決める判断材料は以下のポイントです。
- 当事者の年収
- それぞれの環境(家族の人数や年齢、状況)
- 養育費算定表
- 調停での話し合いの内容
調停や審判によって決められた内容は『審判書』という公的書面で確認を取ることになります。
この審判書は法的効力があるため、不払いがあった場合は給与や預貯金などの財産をおさえる強制執行が可能です。
- 養育費の悩みは迷わず弁護士に頼るべき5つの理由
養育費に関する不明点や悩みなどは弁護士に相談して味方につけることがおすすめです。
それは5つのメリットが生じるからです。
弁護士を味方につけるメリット |
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弁護士を頼るべきメリットについて解説します。
5-1. 養育費算定表ではない適正な養育費を導き出せる
弁護士を味方につけると、より適切な金額の養育費を導き出すことが可能になります。
調停や審判へと進む場合でも、養育費算定表等を用いて妥当な養育費を算出しますが、養育費算定表の内容は最低限の費用として算出した内容です。
そのため、たとえ、子どもを私立へ通わせたい教育方針を持っていても公立へ進むことを見越した養育費になってしまいやすい傾向にあるのです。
子どもの教育方針や育てたい環境は人それぞれで異なるため、養育費算定表が適正な養育費であるとは断言できません。
弁護士に頼れば、その子どもに適した養育費を導き出せるうえ、認めさせることができるようになります。
法律に精通している知識と交渉力を持ち合わせている弁護士を頼るからこそ得られるメリットと言えるでしょう。
5-2. 相手と直接やり取りを行う必要がない
相手とやり取りを行う必要がないことも弁護士を頼るメリットと言えます。
というのも、すでに離婚している場合、養育費の変更をしたくても「連絡を取りたくない」「連絡が取れない」「話が進まない」など、交渉に難航して失敗に終わるケースも少なくありません。
養育費の取り決めは双方の合意がなければならないものなので、相手の合意と協力がなければ取り決めることができないのです。
法的に代理人として認められた存在である弁護士を味方につければ、相手とのやり取りはすべて任せることができます。
精神的にも時間的にもゆとりを持ちながら有利に進めることができるのです。
5-3. 調停や審判など面倒な手続きを一任できる
調停や審判などの面倒な手続きも、弁護士に依頼することで省くことができます。
調停や審判は、まとまらない養育費の取り決めを進めてくれる場所でもありますが、手続きは複雑で専門的な法律知識が必要な場面もあります。
難しく複雑な手続きも弁護士が代行して行うことができるため、依頼主はわずらわしい書類や手続きに時間を取られることなく、養育費の取り決めを進めることができます。
5-4. 未払いを防止する対策が取れる
養育費を受け取る側であれば、養育費の未払いを防止する対策ができます。
弁護士に依頼すると『公正証書』という書面で養育費の支払い効力を強くすることが可能になるからです。
というのも、養育費の需給状況は低く、未払いトラブルは珍しくないことが分かっています。
参考)厚生労働省『母子世帯及び父子世帯に置ける養育費の需給状況(平成28年)』
このような低い需給状況には「そもそも取り決めをしていない」ことが原因として挙げられます。
参考)厚生労働省『平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告』
弁護士に依頼すると取り決めた内容に法的効力を持たせることができるため、もし未払いがあった場合もお金を受け取れる可能性が高まります。
5-5. 有利な条件についてアドバイスをもらえる
弁護士に相談すると有利な条件についてアドバイスをもらえます。
弁護士は法律の専門家であり、知識や経験、事例も持ち合わせているからです。
知識や経験、事例を持っていることで、知らなかった情報を聞くことができたり、有利に進められるアドバイスをもらえたりします。
養育費は長年にわたって支払い義務が生じるものなので、有利な条件は大きなメリットになるでしょう。
6. 再婚にまつわる養育費の問題は難波みなみ法律事務所に相談を!
養育費で困っていることがあれば難波みなみ法律事務所へご相談ください。
当事務所は経験豊富な弁護士が在籍し、離婚や養育費に関する案件を数多く手がけ、解決しています。
町のお医者さんにかかるような身近な弁護士であることを心がけていますので、まずはお気軽にご相談ください。
7. まとめ
再婚をすると養育費がどうなるのか不安になることですが、養育費は子どもへ贈るお金なので基本的に打ち切りや減額にはなりません。
ただし、打ち切りや減額が認められる再婚のケースもあります。
「再婚したから減額請求したい」「再婚したからと養育費が振り込まれなくなった」などのトラブルがあれば、まずは弁護士へ相談してください。

弁護士・中小企業診断士。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。町のお医者さんに相談するような気持ちで、いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。趣味はゴルフと釣り、たまにゲームです。