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【弁護士解説】養育費を支払わない場合の差押え手続を解説します!

ライフプランを考える女性

未成年の子供がいる夫婦が離婚をする場合、離婚時に子供の親権者を決めなければ離婚することはできません。

離婚時に親権者となった親(監護親)は親権者とならなかった親(非監護親)に対して、子供の養育費を支払うよう求めることができます。

しかし、非監護親が養育費を支払ってくれないケースもあります。

このような場合に、子供を養育監護する親は養育費を支払う義務を負う相手方に対して、どのような方法で養育費を回収できるのでしょうか?

①既に調停、審判、公正証書により合意している場合には、強制執行により回収することが考えられます。

②合意はあるが、①の方法で合意していない場合やそもそも合意がなければ、いきなり強制執行することはできません。

以下では、①と②のパターンに分けて解説をしていきます。

①について(調停・審判・公正証書)

調停の場合

調停が成立している場合とは?

離婚後、非監護親が子供の養育費を支払わない場合、監護親は非監護親に対して養育費の支払いを求める調停を申し立てます。

あるいは、離婚する前の離婚調停において、離婚の申立てに付随する事項として、離婚後の養育費の支払いを求める申立てが離婚の申立てとセットでなされることも多くあります。

調停手続において、裁判所の調停委員を通じて両親の間で、子供の養育費の内容が合意に至れば、調停が成立します。

調停は確定判決と同じ効力

調停が成立すれば、その調停は確定した判決と同様の効力を持ちます。

つまり、調停の成立後に相手方が調停の内容を守らない場合、成立した調停を理由に強制執行することで、相手方の意思に関係なく調停の内容を実現させることができます。

審判の場合

調停による話し合いができなければ審判に

先程解説しました調停は、家庭裁判所の調停委員を通じて、監護親と非監護親との間で話し合いをする裁判手続です。

調停は、監護親と非監護親との間の話し合いをベースとします。

しかし、双方の言い分が激しく、合意のための調整ができないことも多々あります。

この場合には、いくら話し合いをしても平行線のままです。

そのため、話し合いによる合意の余地が乏しい場合には、調停手続を不成立とし、審判手続に移行します。

審判は裁判官によって判断される

話し合いを基調とする調停とは異なり、審判は裁判官によって当事者の主張とこれを裏付ける証拠に基づいて判断します。

審判手続においても、全く話し合いの要素がないわけではありません。

ただ、調停が不成立となれば、話し合いの機会を持つことなく、当事者双方から主張書面等の提出を受けて裁判官が審判をすることが多いでしょう。

審判に対して即時抗告できる

裁判所から審判が出された後、審判書という書類を受領した日の翌日から2週間以内であれば、高等裁判所に対して即時抗告することができます。

即時抗告においても、裁判所の指定する日までに書面や証拠を提出した上で、高等裁判所の裁判官が即時抗告に理由があるのかを判断し、決定を出します。

審判や決定が確定すれば差押えできる

即時抗告等の不服申立てがなされずに審判や決定が確定すれば、これらは確定判決と同じ効力を持ちます。

そのため、この審判等に基づいて差押えをすることができます。

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公正証書の場合

公正証書とは何か?

公正証書とは、公証人が、私人からの依頼を受けて、お金の支払いなどの権利義務に関する事項について作成される公文書です。

養育費に関する合意も公正証書とすることができます。

公正証書は、全国にある公証役場にて作成することができます。

公正証書により差押えができる

公正証書を作成することで、相手方の預貯金などを差押えることが可能となります。

ただ、単に公正証書を作成すれば確定判決と同じように差押えることができるわけではありません。

まず、対象となっている権利関係が、養育費のような金銭の支払いを求める権利であることが必要となります。

また、養育費の支払義務を負う相手方が「養育費の支払義務を履行しない場合には直ちに強制執行に服する」といった記載がなされていることが必要です。

これを強制執行認諾文言といいます。

これらの要件を満たすのであれば、公正証書に基づき、差押えを進めることが可能となります。

差押手続について

履行勧告をすることも

相手方が、調停等で定められた養育費を支払わない場合、権利者である監護親は、裁判所に対して履行勧告の申し出をすることができます。

履行勧告を受けた裁判所は、養育費が正しく支払われているかを調査し、正当な理由なく履行されていない場合には、相手方に対して養育費を支払うように勧告します。

ただ、裁判所による履行勧告には法的な拘束力はありません。

差押えのための手続

養育費の義務者である非監護親が、養育費を払わない場合、義務者の財産を差押えることで養育費の回収を図ります。

養育費を回収するための差押手続をするためには、以下の書類を裁判所に提出しなければなりません。

なお、差押える対象物によっては、必要となる書類に変動があります。

・当事者目緑 

・請求債権目録

・差押債権目録

・判決・調停調書・審判書・公正証書(執行文の付与されたもの※調停調書と審判書は執行文不要)

・送達証明書

・申立手数料

・郵券切手代

差押えの対象となる財産は?

差押えの対象となる財産は、差押えの手続を開始する時に、義務者である非監護親の財産全てです。

預貯金、不動産、保険契約の解約返戻金、退職金、その他金融資産、現金といった、非監護親が有している財産を差押えして、未払いとなっている養育費を回収できます。

預貯金

差押えをする時の非監護親の預金残高を差押えることができます。

ただ、預金を差押えるにあたっては、債務者の預金に関する、金融機関名とその支店名を特定する必要があります。

口座番号の情報までは必要とされていません。

ゆうちょ銀行の貯金については、口座番号だけでなく支店名の特定も不要となります。

給与と賞与について

勤務先の特定が必要

給与や賞与も差押えをすることができます。

給与や賞与を差押えるためには、養育費を負担する非監護親の勤務先の名称と住所を特定する必要があります。

勤務先の情報が分からない場合には、後述する第三者から情報開示の手続を通じて勤務先の情報を得ることができる可能性があります。

義務者の将来の給与も差押え

差押えることができる給与や賞与は、差押えをするときに支払期限が到来していない将来の給与や賞与も含まれます。

つまり、来月や再来月以降の給与や賞与も差押えることができ、給料日が過ぎるのを待ってその都度差押えをする必要はないということです。

差押えができない範囲もある

給与、賞与は、債務者の生活を支える基盤となります。

そのため、給与等の収入のうち、手取額の4分の3は差押えが禁止となります。

ただ、毎月払われる給与や賞与については、その手取額が44万円を超える場合には、33万円のみが差押禁止となります。

養育費の場合は2分の1が差押禁止

養育費については、子供の福祉の観点から、給与等の差押禁止の範囲が手取額の4分の3に相当する部分から2分の1に相当する部分に縮小されています。

つまり、養育費の差押えの場合には、毎月支払われる給与から回収できる額が一般の債権の差押えよりも多くなっています。

退職金について

相手方の退職金も差押えの対象となります。

相手方が勤務先を退職していないとしても、将来支払われる退職金が差押えの対象となります。

ただ、相手方が差押時点で退職をしていないのであれば、退職金による養育費の回収は、相手方が退職するまで待たなければなりません。

また、給与と同じく退職金の手取額のうち4分の3は差押えができません。

さらに、以下の退職金についても差押えが制限されますので注意が必要です。

・確定拠出年金

・中小企業退職金共済法に基づく退職金

・確定給付企業年金

・社会福祉施設職員等退職手当共済法に基づく退職金

将来の養育費のための差押え

一般の債権について

借金や売買代金の支払いを求めるような一般的な債権については、その支払期限が到来していなければ、その支払いを受けるために差押えをすることはできません。

つまり、支払期限を待ってから差押えをすることになります。

養育費の場合は期限前でもOK

養育費のように、一回きりではなく定期的に継続して生活費等の支払を求めることのできる定期金債権については、特例が設けられています。

つまり、養育費のような定期金債権であれば、まだ養育費等の支払期限が到来していなかったとしても、差押えることができます。

そのため、養育費の支払期限が到来するたびに差押えの申立てをする必要がなくなります。

継続的な収入+不払いがあること

ただ、常に将来の養育費のために差押えをすることができるわけではありません。

相手方の財産が継続的に支払われる財産(給与や家賃収入)であることが必要です。

また、当然ですが、相手方が養育費を支払っていないことが必要です。

以上のような条件を満たせば、一度強制執行の申立てをするだけで、相手方の給料や家賃収入を毎月差押えすることができるようになります。

財産開示手続

養育費を負担する相手方が養育費を払ってくれないため、差押えをしようと思うが、差押えできる銀行の支店名が分からない、勤務先が分からないということはよくあります。

このような状況でも、養育費を払ってもらえずに泣き寝入りしてなくても済むようにするため、財産開示手続という制度があります。

財産開示手続を利用するためには

従前は、確定判決等を持っている権利者のみが対象となっていました。

しかし、法改正に伴い、財産開示手続を利用できる範囲が広がりました。

強制執行認諾文言付き公正証書を持っている権利者も利用できるようになりました。

そのため、養育費について、強制執行を受け入れる旨の公正証書を作成している場合、訴訟や調停手続を行うことなく、養育費を支払わない義務者を相手方とする財産開示の申立てができるようになりました。

財産開示では何ができるの?

裁判所から呼び出しがされる

養育費の債権者である監護親は、申立ての理由等を記載した申立書とその証拠を提出することで財産開示の申立てをします。

裁判所が財産開示を行う実施決定をすると、裁判所は、養育費を負担する非監護親に対して、財産開示を行う日程を通知します。

財産目録を提出しなければならない

通知を受けた非監護親は、財産開示期日の10日程前までに、自身の財産全てを記載した財産目録を提出しなければなりません。

財産目録には、義務者である非監護親の全ての財産を記載しなければなりません。

外国にある財産も開示対象になります。

他方で、義務者の借金等のマイナス財産は開示対象から外れます。

差押えできる程度に書く必要

財産開示は差押手続を行えるようにするための手続です。

そのため、財産目録には差押えができる程度に財産の情報を特定して記載することを要します。

給与、役員報酬、退職金については、勤務先名、本店所在地、収入額等を具体的に記載する必要があります。

預貯金については、金融機関名と支店名を、売掛金・貸付金等については、第三債務者の名称・所在地・金額・支払方法を明記する必要があります。

財産開示期日

養育費の義務者は、財産開示期日において出頭しなければなりません。

その上で、義務者は、虚偽の陳述をしないとの宣誓をした上で、自分自身の財産に関する情報を話さなければなりません。

虚偽の陳述等をするペナルティ

義務者が出頭しなかったら、宣誓しなかったり、虚偽の陳述をした場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることになりました。

従前は、これよりも軽微なペナルティでしたので、法改正に伴う厳罰化により財産開示手続の実効性が増すことが期待されます。

第三者からの情報取得手続き

法改正により、第三者からの情報取得手続が設けられました。

確定判決や調停、審判といった債務名義を持っている権利者が、義務者である債務者の持っている不動産、給与、預貯金等に関する情報を保有する関係先から、これらの情報の提供を受ける手続です。

取得できる情報

預貯金等の情報

預貯金等に関する情報については、銀行等の金融機関から、預貯金の存否、 存在するときは取 扱店舗、預貯金の種別、 口座番号および額に関する情報の提供を受けます。

申立ての際、 銀行だけ特定すればよく、支店名まで特定する必要はありません。

また、預貯金等に関する情報取得の場合、財産開示手続を先に行う必要はなく、いきなり第三者による情報取得手続を進めることができます。

勤務先に関する情報の取得

市町村は、住民税の源泉徴収をしている会社の名称を把握し、日本年金機構等は、厚生年金を納付している会社の名称を知っています。

そこで、養育費の権利者は、市町村と日本年金機構等に対して、義務者の勤務先に関する情報を開示するよう求めることができます。

ただ、勤務先の情報取得をするにあたっては、財産開示手続を先に行っておくことが必要となります。

②について(公正証書等の合意書がない・合意がない場合)

監護親と非監護親との間で、❶養育費の合意があるものの、合意書はあるものの公正証書ではない場合、❷合意書がない場合、❸そもそも合意すらない場合には、裁判手続や公正証書の作成手続をすることなく、いきなり強制執行をすることはできません。

❶合意書がある場合

合意書がある場合には、その支払を求める訴訟提起をすることが考えられます。

判決や裁判上の和解を得た上で、それでもなお、相手方が養育費を払わないのであれば、上述しました差押えの手続を進めて行くことになります。

❷と❸の合意書がない場合

合意はあるが合意書がない場合や合意すらない場合には、養育費の支払を求める調停の申立てを行います。

調停や審判を得たにも関わらず、相手方が養育費を払わないのであれば、上述しました差押えの手続を進めて行くことになります。

なお、合意があるため、これに基づいてその支払を求める給付訴訟を提起することも考えられます。

しかし、合意を裏付ける客観的な証拠が乏しいのであれば、調停手続から進めることが多いでしょう。

義務者が破産する場合

養育費は免責されない

養育費の義務者が自己破産した場合でも、破産するまでに既に発生している養育費等支払義務や婚姻費用分担義務は免責されません。

つまり、義務者は破産したとしても、引き続き破産前の未払分の養育費を支払う義務を負います。

また、破産開始決定が出た後の養育費については、破産債権とはならないため、免責の対象となりません。

養育費であると分かるように

ただ、調停調書や和解調書等の文面において、解決金や和解金といった名目を用い、養育費であることを明記しない場合、一般の破産債権として免責されてしまうおそれもあります。

そのため、調停調書等の文面には養育費であることが分かるように明確にしておきましょう。

弁護士に相談しよう

養育費の支払いを受けるための差押手続には、相手方の財産調査を確実に行うなど専門的な知識を要します。

タイミングを逃してしまうと、養育費の回収を困難するかも知れません。

当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。

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