コラム
最終更新日:2023.05.28

兄弟が相続人である場合の相続手続きや遺留分の問題を弁護士が解説

相続問題 兄弟姉妹の相続手続 兄弟姉妹の遺留分

亡くなった人が独身であったり、配偶者がいても子供がいない場合、その兄弟や姉妹が相続人となります。本記事では、相続人が兄弟や姉妹となる場合の相続手続きを、相続問題を専門とする弁護士が解説します。

兄弟が相続人となる場合とは

亡くなった人(被相続人)に子供がおらず、両親も先に他界している場合には、兄弟や姉妹が法定相続人となります。

法定相続人とは

人が亡くなり相続が発生する場合、亡くなった人を被相続人と呼び、相続する権利を持っている人を相続人といいます。

民法によって相続人となる人として定められた人を法定相続人といいます。

相続人の順番

兄弟や姉妹は常に相続人となるわけではありません。

まず、被相続人に配偶者がいれば、その配偶者は常に法定相続人となります。

子供がいれば、子供が第1順位の相続人となります。

子供がいない場合で、相続開始時点で被相続人の親が存命であれば、被相続人の親(直系尊属)が相続人となります。

最後に、子供もおらず、親も先に他界している場合であれば、兄弟や姉妹が第3順位の法定相続人として相続人となります。

子供が相続放棄した場合

被相続人に子供がいても、その子供が相続放棄をすれば、きょうだいが相続人となる場合があります。

子供がいる場合、その子供が第1順位の相続人となりますから、きょうだいは相続人にはなりません。

しかし、子供が相続放棄をすることで、子供ははじめから相続人ではないことになります。

既に被相続人の親も他界しているのであれば、たとえ子供がいたとしても、相続放棄によりきょうだいが相続人となります。

子供が相続放棄をする事案であれば、被相続人が債務超過となっている可能性が高いです。

そうであれば、債権者等からの通知を受けてから3か月以内に相続放棄をするか否かを積極的に検討していくべきでしょう。

TIPS!相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が、相続人として立場から離脱して、被相続人の遺産一切を承継しないことをいいます。
相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。
ここでいう家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所となります。

兄弟の法定相続分とは

家系図

兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分は、配偶者がいれば、4分の1となります。

法定相続分とは、民法によって定められている相続人が取得することのできる、相続財産の総額に対する割合をいいます。

法定相続分は固定されており、同順位の相続人が複数いる場合には、法定相続分を頭割りすることになります。

例えば、配偶者がおらず法定相続人が兄弟となる場合、被相続人の兄弟が3人いれば、相続人の相続分は3分の1となります。

次に、配偶者がいて、法定相続人が配偶者と兄弟となる場合、被相続人の兄弟が3人いれば、配偶者の相続分は4分の3、兄弟1人あたりの相続分は12分の1となります。

異母兄弟・異父兄弟の相続分

きょうだいが異母きょうだい・異父兄弟であっても、法定相続分は同じ割合です。そのため、異母兄弟や異父兄弟との間で相続問題の話し合いをしなければなりません。

婚外子の相続分

婚外子である兄弟姉妹も、法定相続分は同じ割合です。

婚外子とは、結婚をせずに生まれた子供です。非嫡出子とも呼ばれます。

かつては、婚外子の法定相続分は、嫡出子(結婚している母親から生まれた子)の半分とされていました(改正前民900条4号ただし書前段)。しかし、嫡出子と非嫡出子の間に差を設けることは法の下の平等に反するとして、憲法違反の判断がなされています(最高裁判所決定平成25年9月4日)。そのため、現在では民法の改正がなされ、婚外子も同じ割合の法定相続分となっています。

親が養子縁組している場合

きょうだいの中に養子がいる場合、その養子もその他のきょうだいと同じように相続人となります。

養子のきょうだいが先に亡くなっている場合、養子縁組をした後に産まれた養子の子供は代襲相続により相続人となります。

他方で、養子縁組前から養子に子供がいる場合には、その養子の子供は代襲相続しません。

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甥・姪(きょうだいの子)が相続人となる場合(代襲相続)

相続人の兄弟や姉妹が被相続人よりも死亡している場合、その兄弟や姉妹の子供が相続人となります。

このように、相続人が先に死亡している場合で、その相続人の子供が死亡した相続人に代わって相続することを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。

ただ、兄弟姉妹だけでなく、甥や姪も先に死亡している場合には、甥や姪の子供に再代襲はしません。

代襲相続の相続分

甥や姪が代襲相続する場合、相続人となる兄弟姉妹の相続分を代襲相続する甥・姪の頭割りした割合となります。

例えば、被相続人のきょうだいの人数が3人で、先に亡くなった兄弟の子供が3人である場合、代襲相続相続人一人当たりの相続分は9分の1となります。

相続人を確認する方法

相続手続を進めるためには、被相続人の相続人を確定させる必要があります。

相続人が、被相続人の配偶者や子供だけであれば、相続人の確定はさほど難しくはありません。

しかし、被相続人に子供がおらず、きょうだいが相続人となる場合、相続人の確定が煩雑となりがちです。特に、きょうだいのうち亡くなっている人がいる場合には、さらに相続関係は複雑となります。

収集する戸籍謄本

相続人を特定するために必要となる戸籍謄本は以下のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  • 被相続人の両親と祖父母の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 被相続人の親を筆頭者とする改製原戸籍
  • きょうだいの現在戸籍
  • きょうだいが死亡している場合には、きょうだいの出生から死亡までの戸籍謄本
  • 代襲相続人となるきょうだいの子供の現在戸籍

兄弟が相続人となる場合の相続手続

相続の開始があった場合、被相続人の遺産を取得するためには遺産分割協議が必要です。

しかし、きょうだいやその子供らとの間での話し合いが奏功しない場合には、調停や審判手続が必要です。

遺産分割協議を行う

被相続人の遺産分けをするためには、すべての相続人との間で、だれが、どの遺産を、どの程度取得するのかを協議しなければなりません。

これを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。1人でも参加していなければ、その遺産分割協議は無効です。

さらに、遺産分割協議は多数決ではなく、全員の合意が必要です。

ただ、相続人全員が同じ場所に集まる必要まではありません。

その場合には、電話、メール、個別の面談により、各相続人の意見をまとめて、相続人全員が遺産分割協議書に署名捺印すれば足ります。

遺産分割協議書の作成

相続人全員の意見がまとまれば、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

預金の解約、金融資産の名義変更、不動産の名義変更といった各種相続手続を行うためには、遺産分割協議書が必要となります。

そのため、相続人間の協議の後、そのまま放置するのではなく必ず遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割調停

相続人間で遺産分割ができない場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割調停の申立てをすることになります。

遺産分割調停は、家庭裁判所の裁判官と調停委員2名で構成される調停委員会が当事者双方を仲裁し、話し合いによる解決を図ります。

遺産分割調停の手続を経て、相続人間で合意できる場合には、調停が成立します。

成立した調停に基づき、相続手続を行うことができます。

調停手続を経ても、合意に至らない場合には、 調停は不成立となり、審判手続に移行します。

遺産分割審判

遺産分割審判では、話し合いの要素は薄く、裁判官がどのように遺産分割をするべきかの判断を下します。

調停が不成立となり、審判に移行した場合には、通常の訴訟手続のように、当事者双方がその主張を書面化した上で、それを裏付ける証拠を提出します。

当事者双方が主張立証を尽くした段階で、裁判官によって、審判が出されます。

ただ、いきなり審判を出すことは通常なく、主張立証がで尽くした段階で、裁判官から和解の提案(勧告)がなされます。

和解による解決ができれば、その和解に基づいた遺産分割ができます。

和解による解決ができず、裁判所の審判が出された場合には、その審判が確定しなければ、遺産分割を実現させることはできません。

審判書が送達された日の翌日から2週間以内に、審判をした家庭裁判所に対して不服申立て(即時抗告)をしなければ、審判は確定します。

審判が確定すれば、その審判の内容に基づく遺産分割を実現することができます。

兄弟姉妹の遺産相続で揉めるケース

兄弟姉妹の間で揉めるケースには、以下のようなパターンがあります。

きょうだい仲が悪い

兄弟姉妹の仲が悪い場合には、当然ですが遺産相続で揉める可能性が高いです。

遺言がない場合には、遺産の取得には兄弟姉妹間での遺産分割協議が必要です。

しかし、関係性が悪い兄弟姉妹であれば、自身の権利を守るために一歩も譲歩しないことは多々あります。

知らない兄弟姉妹やその子供がいる

交流の全くない兄弟姉妹や甥姪がいる場合にも、相続手続きの対立を招く可能性があります。

親族としての関係性が薄いと、親族間の関係性よりも自身の権利を守ることを優先しがちです。

異母・異父兄弟がいる場合

兄弟姉妹の中に異母・異父兄弟がいる場合にも、揉めるケースがあります。

一概にはいえませんが、交流のない異母・異父きょうだいがいる場合、相続手続きについて対立が生じる可能性があります。

一部の兄弟姉妹のみが介護している場合

一部のきょうだいのみが被相続人の介護をしている場合にも、対立が生じがちです。

介護を担ってきた兄弟姉妹は、他の兄弟姉妹よりも多くの遺産の取得をできるよう主張することが多いでしょう。これに対して、介護をしていない兄弟姉妹の中には、法定相続分に沿った相続手続きを主張するなど、機械的な処理を求めることがあります。このようにして、介護をした兄弟姉妹と介護をしていない兄弟姉妹の間で、対立構造が生まれることで相続問題を招いてしまいます。

遺産が不動産(土地建物)のみ

被相続人の遺産が不動産のみである場合です。

預貯金があっても、不動産と比べてごくわずかの場合も含みます。

相続人の一部が不動産の取得を希望し、その他の相続人が不動産の取得を希望しない場合、遺産の中に十分な預金がないため、不動産を取得する相続人は、その他の相続人に対して、不動産を取得する代償金を支払う必要があります。

しかし、不動産を取得する相続人は、自身の資産から代償金を支払う必要があるため、不動産の評価額や生前贈与等を巡って激しい対立が生じることがあります。

兄弟に相続させないための対処法

きょうだいに相続させないためには、遺言書を作成するべきです。

配偶者がおらず、特定のきょうだいに相続させたい場合にも、遺言書は有用です。

遺言書を作成する

遺言書を作成することで、特定の相続人や相続人ではない人に対して、相続分に縛られずに、遺産を承継させることができます。

遺言書がなければ、原則とおり相続人全員の遺産分割協議が必要となります。

しかし、遺言書を作ることで、配偶者に対して全ての遺産を相続させることができます。

また、遺言がなければ、配偶者は、被相続人のきょうだいやその子供との間で遺産分けの協議をしなければなりません。しかし、遺言書があれば、きょうだいを含めた相続人全員で話し合いをする必要が無くなり、負担の軽減を図れます。

公正証書遺言を作る

遺言を作成するのであれば、公正証書遺言を作成しましょう。

遺言書には、公正証書遺言のほか、自筆証書遺言があります。

しかし、自筆証書遺言にはデメリットがあり、公正証書遺言は、自筆証書遺言のデメリットをカバーできる利点があります。

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言とは、遺言者本人が自筆で作成する遺言書です。

しかし、自筆証書遺言は、要式違反や内容が不明瞭であることを理由に無効となるリスクがあります。また、自筆証書遺言を作成しても、相続開始後に発見されないおそれもあります。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は、自筆証書遺言のデメリットをカバーすることができます。

公正証書遺言とは、遺言者の意思に基づき、公証人が作成する遺言書です。

無効のリスクを排除

公正証書遺言は、元裁判官や元検察官等の公証人によって作成されますから、方式違反等を理由に無効となることはありません。

公証人が遺言者に対して、証人2名の面前で遺言者の意思確認を行いますから、意思能力の問題を予防できます。

紛失や未発見のリスクを排除

公正証書遺言の原本は公証役場にて保管され、正本と副本が交付されますから、遺言書の紛失や未発見を予防することもできます。

デメリットもある

他方で、公正証書遺言の作成には、財産額に応じた費用が発生します。

また、遺言の作成にあたっては、戸籍謄本や登記簿謄本、固定資産税の評価証明書等の資料を用意する必要があります。

ただ、このような負担を踏まえても、公正証書遺言によって遺言を遺しておくことが重要です。

遺留分の問題は生じない

きょうだいが相続人となる場合、遺留分の問題が生じません。

代襲相続の場合も同様に、遺留分の問題は生じません。

遺留分とは、絶対奪うことのできない相続人の権利です。遺留分は、法定相続分の2分の1となります。相続人が親である場合には、遺留分割合は3分の1となります。この遺留分は、配偶者、子供、親には認められています。

そのため、遺言書の内容が特定の相続人の遺留分を侵害する内容の場合、相続開始後に遺留分侵害請求の問題が生じる可能性があります。

しかし、きょうだいやその子供には遺留分は認められていません。

そのため、きょうだいに遺産を一切相続させない内容の遺言書を書いたとしても、相続開始後に遺留分侵害請求の問題は生じないことになります。

兄弟の相続問題は弁護士に

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きょうだいが相続人となる場合、相続人が多数になることも多いです。その分、相続人の特定作業は通常よりも困難となります。

さらに、相続人との協議も非常に困難な作業です。

当事務所では、信託会社に勤務経験のある弁護士が在籍しており、相続問題に関する数多くの経験を持っています。

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弁護士・中小企業診断士。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。町のお医者さんに相談するような気持ちで、いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。趣味はゴルフと釣り、たまにゲームです。

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