遺言書の作成方法や注意事項について、民法の改正を踏まえながら、ご紹介していきます。 (*預金債権と遺産分割についてこちらをご参照ください。) ある人が亡くなった場合、相続が開始します。
相続に関しては、民法は、誰が相続人になるのか、どの財産が相続財産になるのか、それぞれの相続人が相続する割合(相続分)や、それぞれの相続人がどの財産を承継するのかを決める遺産分割の手続等について定めています。このような民法の規定に基づく相続を法定相続といいます。
これに対し、民法は、生前に死後における財産の処分方法等について定めておく遺言(「ゆいごん」。「いごん」ともいいます。)の制度も定めています。人は、生前に自分の財産を自由に処分することができるのと同じように、死後における財産の処分についても原則として自由に(遺留分という例外がありますが。)決めておくことができるという制度です。遺言書が作成されている場合には、遺言書によって相続が行われ、遺言書が作成されていない場合には、法定相続によって相続が行われることになります。
遺言は、遺言をした人が亡くなった時から効力が生じますが、遺言の効力が生じた時には既に遺言者は亡くなっていますから、遺言者の真意を確認することはできません。そこで、遺言者が亡くなった後にできるだけ争いが生じないように、民法は遺言の方式について厳格な要件を定めています。
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、危急時遺言及び隔絶地遺言という種類がありますが、ここでは良く使われている自筆証書遺言及び公正証書遺言の方式について説明します。
自筆証書遺言とは、遺言者自身が、その全文、日付、氏名を自書し、押印するというものです。自書ですから、ワープロを使ったり、誰かに代筆を頼んだりすることはできず、たとえそれが遺言書の一部分であったとしても、その遺言書は無効になってしまいます。
したがって、遺言者が多くの財産を有している場合にも、どのような財産があるかの目録(財産目録あるいは遺産目録といいます。)も自書する必要がありましたが、平成30年の民法の改正により、財産目録については、自書でなくても良いということになりました。ですから、ワープロで作成したり、誰かに作成してもらうことができるようになり、自筆証書遺言が少し使いやすいものになりました。ただし、自書によらずに財産目録を作成する場合には、財産目録の頁ごとに署名押印し、裏面にも記載されている場合には裏面にも署名押印する必要があります。
このように、自筆証書遺言は誰でも比較的簡単に作成することができるようにも思われますが、紛失したり、隠匿されたり、偽造されたりするおそれがありますし、日付が記載されていなかったなどの方式の不備があるために無効になるということもあります。また、記載されている内容が読めなかったり、意味が不明であったりすることもあります。さらに、遺言が作成された際に、遺言者が判断能力を有していたかが後に争いになることもあります。
そこで、このような事態を避けるためには、公正証書遺言を作成しておくことが考えられます。公正証書遺言とは、公証人という法律の専門家に作成してもらう遺言です。公証人が遺言者の意思を確認し、遺言の内容を整理して作成しますので、遺言者が詳しい法律の知識を有していなくても作成することができますし、後に内容や効力についての争いが生じることが少なくなると思われます。
遺言書を作成したいとお考えの方は、自筆証書遺言を作成したい場合だけでなく、公正証書遺言を作成したい場合であっても、あらかじめ遺言の内容を検討しておく必要がありますので、弁護士にご相談いただければと思います。

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