事案
婚姻期間13年
子供は3人
夫(依頼者)は個人事業主で、妻はパートタイマーです。
夫が自宅を出て、別居後も妻と子供が自宅で住み続けています。
妻が、依頼者である夫に対して婚姻費用の調停申立てをしました。
妻は、個人事業主である夫の申告内容が不正であるとして、申告書記載の所得額よりも高額な所得額をベースとした婚姻費用を求めました。
調停では合意に至らなかったため、審判に移行しました。
結論
妻側の主張の大部分が排斥され、申告書の内容をベースに婚姻費用額が計算されました。
夫側が、妻側の指摘に応えるため、計上している事業経費に関する領収書を可能な限り提出しました。
売上に関する資料(請求書、領収書、その他明細書)も同様に可能な限り提出することで、申告内容に誤りがないことを客観的な証拠により裏付けることに努めました。
また、課税庁から課税処分を一切受けていないこと、その他に不自然な点がないことを主張したことで、裁判所において、夫側の主張が認められました。
解説
配偶者が会社員ではなく個人事業主である場合、確定申告書の金額を基に配偶者の基礎収入を算出します。
申告書の所得額(収入金額から必要経費を控除した後の残額)に、社会保険料を加算し、青色申告特別控除額を控除した金額が、個人事業主の収入となります。
さらに、実際に現金支出をしていない減価償却費、繰延資産などを加算することも多いです。
それ以上に、接待交際費などの経費に家事費も含んでいると主張することも多くあります。
しかし、過去の申告内容と比較して極めて不自然な経費計上ではない限り、税務署から課税処分を受けていないことも踏まえ、裁判所では、申告内容に従って婚姻費用の金額を算出することが多いでしょう。