「夫(妻)がプラトニック不倫をしている。慰謝料請求や離婚はできるのだろうか」
このような悩みを抱えている方もいらっしゃることでしょう。
プラトニック不倫とは、肉体関係がなく、精神的につながっているだけの不倫関係のことをいいます。
肉体関係がない以上は、法律上の離婚原因である不貞行為には当たりません。そのため、パートナーがプラトニック不倫をしていても、基本的には慰謝料請求も離婚請求もできないということになります。
しかし、パートナーが他の異性と恋愛感情を持って親しく交際していたのでは、婚姻関係を続けるのは難しいこともあるでしょう。そのような場合には、慰謝料請求や離婚が認められる可能性があります。
この記事では、プラトニック不倫と慰謝料請求や離婚の問題について、分かりやすく解説します。
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プラトニック不倫とは
プラトニック不倫とは、肉体関係を伴わない不倫のことです。
一般的に不倫というと、既婚者が配偶者以外の異性(場合によっては同性)と肉体関係を伴う交際をすることを意味します。このような配偶者以外の異性との性行為を法律上不貞行為と定義しており、法律上の離婚原因になります。
それに対して、プラトニック不倫では性的関係を持たずに恋愛関係が続けられます。交際中の当事者は、肉体関係という一線を越えていない以上、慰謝料問題や離婚問題に発展する心配はないと考えているのでしょう。
プラトニック不倫は「不貞行為」ではない
夫婦間で許せない「一線」を超えたかどうかは、それぞれの夫婦の関係性によって異なります。しかし、法律上許されない「一線」として、不貞行為があったかどうかという問題があります。
結論として、プラトニック不倫は不貞行為には当たりません。
不貞行為とは
不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の異性(場合によっては同性)と性的関係を結ぶことをいいます。
ここでいう性的関係には、性交渉そのものだけでなく、性交類似行為も含まれるという考えもあります。性交類似行為とは、口淫や手淫、肛門性交、裸で抱き合うことなど、性交渉と密接に関連した性的行為のことです。
ただ、キスやハグ、腕を組む、手をつなぐなどの行為は、性交渉と密接に関連するとまでは考えられていないため、不貞行為には含まれません。
プラトニックラブは不貞行為ではない
不貞行為の定義は上記のとおりなので、プラトニック不倫は不貞行為ではありません。たとえ親密に交際していても、性交渉がなければ、不貞行為には当たらないのです。
したがって、パートナーがプラトニック不倫をしていても、法律上の一線を越えたことにはなりません。
プラトニック不倫では慰謝料責任は発生しない
プラトニック不倫が法律上の一線を越える行為ではない以上、基本的に慰謝料責任は発生しません。
そもそも不倫で慰謝料請求が認められるのは、不貞行為があるからです。民法上、夫婦にはお互いに貞操を守る義務が課せられているため、他の異性と性的関係を結ぶことは不法行為となります。
そのため、不倫された側は、配偶者の貞操権を侵害されたことによる精神的苦痛を理由として、配偶者や不倫相手に対して不法行為に基づく慰謝料請求ができるのです。
それに対して、不貞行為のないプラトニック不倫では、配偶者の貞操権が侵害されていないため不法行為がなく、慰謝料請求は基本的に認められません。
プラトニック不倫でも慰謝料請求できる場合もある
プラトニック不倫でも、不貞行為とは別の理由で慰謝料請求できる可能性はあります。
以下で、詳しくみていきましょう。
婚姻関係を継続できない場合には請求できる
不貞行為がないとしても、パートナーが他の異性と恋愛感情を持って交際していたのでは、穏やかな心で夫婦生活を送れないのも当然のことです。
結婚した夫婦には、平和な夫婦生活を送る権利がお互いに認められます。プラトニック不倫でも、当事者の関係性によっては、平和な夫婦生活を脅かすおそれがあるものです。
客観的に見て婚姻関係を継続できないほどに夫婦関係を破綻させた場合は、平和な夫婦生活を送る権利を侵害したことにより不法行為が成立します。この場合、プラトニック不倫をされた側は慰謝料請求が可能です。
実際、裁判でもプラトニック不倫で慰謝料請求が認められた事例があります。いくつかの裁判例をご紹介します。
高額なプレゼントや旅行を繰り返していた
夫が浮気相手との交際で、数万円ものプレゼントを繰り返したり、2人で数日間の旅行に出かけたりしていたケースで、慰謝料として10万円の支払いを認めた裁判例があります(東京地裁平成15年3月25日判決)。
この事例で裁判所は、肉体関係があったことは認めなかったものの、社会的妥当性の範囲を明らかに逸脱した男女交際に当たると判断して、慰謝料10万円の支払いを認めました。
頻繁に密会していた
夫が浮気相手と何度も密会していたケースで、慰謝料請求を認めた裁判例があります(東京地裁平成25年4月19日判決)。
この事例では、夫と浮気相手が、かつて不貞行為を伴う不倫関係にあったという事情がありました。一度は妻が不倫を許して夫婦生活を続けていたものの、夫と浮気相手が密会を繰り返したことから、不貞関係の再燃を疑った妻が慰謝料請求に及んだものです。
裁判所は、不貞行為そのものを認定しなかったものの、夫婦の婚姻関係を破綻させる可能性が高い行為であることを理由に、妻からの慰謝料請求を認めたのです。
密会の時間や場所によっては慰謝料請求は認められる
単に密会しただけでは、慰謝料請求が認められる可能性は低いです。しかし、密会する時間や場所、頻度、その他にも様々な事情から、不貞行為があったと推測できるような場合は、この裁判例のように慰謝料請求が認められる可能性があります。
特に、深夜の密会を頻繁にしていたとなると、慰謝料請求が認められる可能性は十分にあるといえます。
メールで親密なやりとりをしていた
夫が他の女性と、メールで「愛してる」などと親密なやりとりをしていたケースで、妻からの慰謝料請求のうち30万円の支払いを認めた裁判例があります(東京地裁平成24年11月28日判決)。
この事例では、メールの内容から不貞関係を推認することはできず、他の証拠からも不貞関係は認められませんでした。
しかし、裁判所は、メールの内容を妻が読んだ場合には婚姻生活の平穏を害するものであったと判断しました。そのようなメールを妻に読まれる可能性がある状況で送信したことは社会的相当性を欠いた違法な行為だと判断しています。
ただし、親密なメールのやりとりでは慰謝料請求を認めなかった裁判例もあります(東京地裁平成25年3月15日判決)。
親密なやりとりだけでは慰謝料は認められない
不貞関係があったことが明らかな内容のメールであればともかく、単に親密な内容のメールを送りあっているだけの関係では、慰謝料請求が認められる可能性は高いとはいえません。
メール以外にも、2人がたびたび食事やデートをしているなど、親密な交際を伺わせる事情があれば、慰謝料請求が認められる可能性が高まるといえます。
真剣な交際をしていた
少し変わった事例ですが、妻と不倫相手が真剣な交際をしていたケースで、不倫相手に対して慰謝料250万円の支払いが命じられた裁判例があります(東京地裁平成20年12月5日判決)。
この事例では、妻と不倫相手は再婚することを約束していて、不倫相手が妻に対して、夫との別居・離婚を要求していました。もっとも、裁判に提出された証拠からは、キスをしたことは認められたものの、それ以上の肉体関係は認められませんでした。
裁判所は、不倫相手の行為は「婚姻を継続し難い重大な事由」の発生に加担したといえ、夫に対する不法行為が成立するとして、夫からの慰謝料請求を認めたのです。
プラトニックラブでも破綻させれば高額となる
プラトニック不倫で250万円もの高額の慰謝料が認められたケースは異例です。プラトニック不倫の慰謝料は、認められたとしても数十万円程度が相場です。
この裁判例は、肉体関係の証拠はなかったものの、実質的には不貞行為を伴う不倫関係に匹敵するものとして、夫婦の婚姻生活を破綻させた点を重視したものと考えられます。
プラトニック不倫の証明方法
慰謝料を請求するためには、証拠が必要です。しかし、プラトニック不倫では肉体関係がないため、決定的な証拠をつかむことは難しいのが実情です。
そのため、婚姻関係の破綻を招くほどの親密な交際が行われていたことの証拠を、できる限り数多く集めていくことが重要となります。有力な証拠としては、次のようなものが挙げられます。
メールやLINEのやりとり
配偶者と不倫相手とのメールやLINEのやりとりで、恋愛関係にあることが分かるようなものがあれば、有力の証拠とのひとつとなります。
ただ、1度や2度のやりとりでは決定打にはなりにくいので、継続的なやりとりを証拠化する必要があるでしょう。
クレジットカードの明細・領収書・レシート
配偶者のクレジットカードの利用明細や領収書、レシートもチェックしてみましょう。配偶者が不倫相手へのプレゼントを購入したり、不倫相手と行った食事やデート、旅行などで配偶者が支払いをした事実が記録されていることがあります。
このような証拠も、積み重ねていけば2人が親密な関係にあったことを裏付けることに役立ちます。
探偵社による調査報告書
費用はかかりますが、探偵社に浮気調査を依頼するのも有効な方法です。
2人がラブホテルに出入りしている状況が調査報告書にまとめられていれば、不倫関係の決定的な証拠となります。
そこまでいかなくても、2人がたびたび密会している様子が調査報告書にまとめられていれば、プラトニック不倫の証拠としては強力です。
携帯電話に保存された写真や動画
配偶者の携帯電話には、プラトニック不倫の証拠となる写真や動画が保存されている可能性があります。
例えば、食事やデート、旅行などの際に撮られた写真や動画が残っていれば、有力な証拠となります。キスやハグなどの肉体的接触をしていることが分かる写真や動画があれば、さらに強力です。
証拠がなくても慰謝料請求はできますか?
裁判では証拠の裏付けがない主張は認められないため、証拠がなければ残念ながら慰謝料請求はできません。
しかし、話し合いで相手と合意すれば、慰謝料を支払ってもらうことが可能です。相手のプラトニック不倫によって自分がどれだけ傷ついたかを伝えて、じっくりと話し合うのもひとつの方法です。
ただ、相手が言い逃れをする場合には、証拠がなければそれ以上の追及ができず、慰謝料を支払わせることは難しいです。
そのため、証拠がない場合には、これから証拠を集めた方がよいでしょう。自分で証拠を集めるのが難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。状況に応じて、証拠の集め方を具体的にアドバイスしてもらえます。
プラトニック不倫をされた際の対処法
配偶者にプラトニック不倫をされて辛い思いをしている場合は、次のように対処していきましょう。
自分の気持ちを正直に伝えてやめさせる
離婚したくない場合は、配偶者に自分の辛い気持ちを正直に伝えて、プラトニック不倫をやめるように求めてみましょう。
プラトニック不倫をしている人のほとんどは、「肉体関係を持っていない以上、不倫ではない」と考えているものです。配偶者を傷つけていることには、そもそも気づいていない人が多いものです。
そこで、プラトニック不倫でも深く傷ついていることを伝えて話し合えば、配偶者も態度を改め、交際を控えてくれる可能性があります。
プラトニック・ラブの証拠集めをする
配偶者がプラトニック不倫をやめてくれない場合は、離婚する・しないは別として、慰謝料請求を検討してみるとよいでしょう。
「やめてくれなければ、慰謝料○○万円を請求する」と迫れば、配偶者に本気が伝わり、プラトニック不倫をやめてくれる可能性が高まります。
そのためにも、証拠を集めることが大切です。相手の言い逃れを封じるためには、焦らず着実に、婚姻関係の破綻を招くような行為の証拠をできる限り数多く集めていきましょう。
別居や離婚も視野に入れる
どうしても配偶者がプラトニック不倫をやめてくれず、辛い思いが続いているなら、離婚も視野に入れることになるでしょう。
離婚するかどうかで迷う場合は、まず別居してみるのがおすすめです。あなたが家を出ていけば、配偶者もようやく事の重大さに気づき、プラトニック不倫をやめるかもしれません。
離婚するとしても、先に別居していれば婚姻関係が破綻していることの証拠のひとつとなるので、スムーズに離婚しやすくなります。
プラトニック不倫と離婚問題
それでは、プラトニック不倫で離婚するためには、どうすればよいのでしょうか。そもそも、離婚はできるのでしょうか。
以下で、分かりやすく解説します。
プラトニック不倫は離婚原因となるのか?
プラトニック不倫でも、配偶者が同意すれば協議離婚ができます。しかし、配偶者が同意しない場合に離婚するのは簡単ではありません。
なぜなら、強制的に離婚するためには法定離婚事由が必要だからです。法定離婚事由とは、裁判で離婚が認められるケースのことです。
法定離婚事由のひとつとして、「不貞行為」があります(民法第770条1項1号)。しかし、プラトニック不倫では不貞行為がないため、基本的には法定離婚事由に該当しません。
しかし、プラトニック不倫が原因で夫婦関係が修復不能なほどに破綻している場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」という法定離婚事由(同項5号)に該当する可能性があります。この場合には、プラトニック不倫が法律上の離婚原因となります。
まずは離婚協議を進める
実際の離婚手続きとしては、まず離婚協議を進めましょう。離婚協議とは、夫婦が離婚について話し合うことです。
プラトニック不倫が法律上の離婚原因に当たらない場合でも、話し合いがまとまれば協議離婚ができます。
自分の辛い気持ちを正直に伝えるとともに、もうやり直すことはできないほどに傷ついていることを説明し、じっくり時間をかけて話し合う方が、協議離婚が成立しやすくなります。
離婚調停を行う
夫婦だけの話し合いで離婚できない場合には、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てます。
離婚調停は、家庭裁判所で公平・中立な調停委員を通じて、夫婦が話し合いによる解決を目指す手続きです。
調停委員の理解を得ることができれば、相手に離婚を勧め、説得してくれることもあるので、離婚できる可能性が高まります。
そのため、調停では調停委員に対して、プラトニック不倫の実情や、自分が傷ついた度合い、夫婦生活を続けられないことなどを説得的に説明することが大切です。
婚姻費用の請求をしておく
離婚調停をする段階では、夫婦は別居していることが多いものです。別居したら、婚姻費用の請求をしておきましょう。
婚姻費用とは、夫婦生活を維持するために必要な費用のことであり、要するに生活費のことです。別居していても離婚するまでは夫婦なので、収入が低い側から高い側に対して生活費の請求ができます。
婚姻費用の請求方法は、夫婦の話し合いで金額や支払い方法を取り決めるのが基本です。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所で別途、「婚姻費用請求調停」を申し立てます。
婚姻費用請求調停は離婚調停よりも短期間で終了するので、早期に生活費をもらえるようになります。
離婚裁判を進める
離婚調停でも話し合いがまとまらない場合には、離婚裁判を起こす必要があります。
配偶者のプラトニック不倫によって婚姻関係が破綻したことを証明できる証拠が十分にあれば、基本的には勝訴できます。
ただ、相手の反論によっては再反論や、追加の証拠を収集しなければならないこともあります。証人尋問や原告・被告の本人尋問も重要なポイントです。
離婚裁判を的確に進めるためには、専門的な知識や経験が要求されますので、弁護士に依頼するのが一般的です。
なお、証拠が十分にない場合は、離婚協議や離婚調停でじっくりと話し合い、決着を付ける方が得策です。
どうしても話し合いがまとまらない場合は、別居を継続するとよいです。別居期間が概ね3~5年になると、それ自体で夫婦関係が破綻していると認められ、離婚できる可能性が出てくるからです。
プラトニック不倫の離婚トラブルは弁護士に相談
プラトニック不倫で離婚や慰謝料を請求するのは基本的に難しいですが、婚姻関係が破綻した場合には、泣き寝入りする必要はありません。納得のいく結果を得るためには、弁護士による専門的なサポートを受けることをおすすめします。
配偶者のプラトニック不倫でお悩み中の方は、一度、弁護士に相談してみましょう。