コラム
最終更新日:2023.06.12

債務超過している場合の預金の財産分与は?離婚問題に詳しい弁護士が解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

債務超過している場合の預貯金の財産分与とは

離婚時に大きな争点となる問題が財産分与です。

財産分与は、その対象財産が多くなり、時に大きな経済的な負担を伴います。

そして、財産分与の問題は高度に専門的な知識・経験を必要とします。

そのため、弁護士に依頼せずにプロセスを進めることは、必要のない負担が生じ、あるいは、本来得られる財産分与を失うリスクがあります。

本記事を読んで分かること

  • 財産分与の対象は?
  • 財産分与の対象となる預貯金とは?
  • オーバーローンしている場合の財産分与の内容
  • 子供名義の預貯金は対象となるのか
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1.財産分与の対象財産とは

親子とお金

財産分与とは、離婚時に、夫婦が経済的に協力して得た財産を清算するものです。

通常、離婚時に財産分与の協議等が行われますが、離婚時に必ず協議して合意しなければならないものではありません。 

財産分与は、夫婦が協力して獲得した財産を離婚時に清算するものです。

そのため、財産分与の対象となる財産は、経済的協力により得られた共有財産となります。

婚姻前から持っている預貯金、贈与や相続によって得た預貯金は、夫婦の経済的な協力関係なしに取得している財産とは言えません。

このような共有財産とはならない財産を特有財産といいます。

離婚調停や離婚訴訟では、特有財産なのか共有財産なのかが大きな争点となることが多いです。

2.債務超過の場合の財産分与

お金と家

2-1.債務自体は分与されない!

借金等の債務の半分を相手方に負担させることはできません。

夫婦の一方に住宅ローン等の借入がある場合、財産分与において、これをどのように処理するべきかが問題となります。

住宅ローンや借金といった債務それ自体は財産分与の対象とはなりません。

借入の半分を相手に負担させたいと考えている人がいますが、これは間違いです。

つまり、住宅ローンが1000万円残っていたとしても、その半分の500万円を相手方に対して支払ってもらうことはできません。

財産分与はあくまでも婚姻期間中に協力して得た財産を清算するものですから、借金等の債務を清算することは予定していないからです。

2-2. プラスの財産とは相殺できる

住宅ローンが住宅の評価額よりも上回る場合(いわゆるオーバーローンの状況です。)、オーバーローン部分を相手方に負担させることはできませんが、オーバーローン額とその他のプラスの共有財産と相殺(そうさい)することはできます。

具体的には、以下のとおりです。

①自宅不動産
評価額 2000万円
住宅ローン 3500万円
差額 マイナス1500万円
② その他財産
預貯金 1000万円
投資信託 500万円 
合計 1500万円
③ ①-②
0円

このように、オーバーローン額とその他財産とを相殺することで、財産分与の対象額はゼロ円となります。

つまり、ゼロ円となる以上、相手方に対して財産分与として金銭を支払う必要がありません。

逆に、相手方に対して財産分与を請求して共有財産の分与を求めることができます。

2-3.相殺してもマイナスの場合

住宅ローンのオーバーローン部分とその他の財産とを相殺しても、未だマイナス部分が残る場合はどうなるのでしょうか。

①自宅不動産
評価額 2000万円
住宅ローン 3500万円
差額 マイナス1500万円
② その他財産
預貯金 500万円
投資信託 500万円 
合計 1500万円
③ ①-②
−500万円

この場合でも、財産分与の対象額はゼロとなります。

-500万円の半分を相手方に負担させることは出来ません。

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3.預貯金が特有財産である場合

財産分与は別居日の共有財産を対象とします。

なぜなら、別居をすることによって、夫婦の経済的な協力関係が無くなるからです。

しかし、別居日時点の預金の中に、結婚前の預貯金や相続した預貯金が含まれていることがあります。

これら預貯金は、特有財産として財産分与の対象から除外されます。

具体的には、以下のとおりです。

①自宅不動産
評価額 3200万円
住宅ローン 3500万円
差額 −300万円
② その他財産
預貯金 500万円
投資信託 100万円 
合計 600万円
③ ①-②
300万円

預貯金500万円のうち400万円が特有財産の場合、②その他財産の合計は200万円となります。 

❷その他の財産
預貯金 100万円(500万円−400万円)
投資信託 100万円 
合計 200万円

そのため、③の合計は、−100万円となり、財産分与の対象額はゼロとなります。

3-1.預貯金の特有財産の主張

結婚前に預貯金を有していたことの証明はそれ程難しくありません。 

婚姻日の預金残高が記載された通帳を証拠として提出することで、結婚直前の預貯金額は説明できます。

しかし、特有財産の証明はそう簡単ではありません。

婚姻前の預貯金が、結婚後もほとんど入出金がなく管理されていれば特有財産と認定される可能性はあるでしょう。

しかし、多くの場合、その預金口座内に給与等の入金が多くあり、また、ライフラインの支払い、子供の学費や習い事の月謝の支払いといった諸々の支払いが継続的になされています。

また、婚姻後の入出金によって、結婚時の残高を下回る時期があった場合には、特有財産であった預貯金は夫婦の生活費に充てられたと評価できます。

このように、婚姻時の預金残高を証明できたとしても、結婚後の入出金によって、別居日時点の預金残高のうち、どれが婚姻前から持っていた預金であるかを特定できなっています。

このように結婚後の預金と混在してしまっている場合には、その別居時点の預金全てあるいは大部分が共有財産として財産分与の対象となることがあります。

▼財産分与の調停申立てに必要な書類は裁判所のこちらのサイトをご参照▼

4.子供名義の預貯金

高齢夫婦と子供とお金

子供名義の預貯金でも、その預金の原資が夫婦の財産であれば、共有財産となります。

例えば、子供の将来の教育資金に充てるために、子供名義の口座に積み立てをしている場合には、その原資は夫婦の共有財産ですから、その預金も共有財産となります。

また、児童手当や育児に関する補助金については、たとえ子供名義の預金口座に入金されていても、夫婦の共有財産として扱われることになります。

他方で、預金の原資がお年玉や入学祝いであって、これらの目的が子供に対する贈与である場合には、財産分与の対象から除外されます。

しかし、この場合でも、夫婦の経済事情、贈与の額、贈与の時期、子の年齢などの諸般の事情から、預金の原資が共有財産ではなく、贈与されたお金であることを証明しなければなりません。

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5.もっと預金があるはずとの主張

財産分与の対象財産は、別居日時点で残っている共有財産です。

別居日の時点で預金額がほとんど残っていない状況を受けて、相手方からは、『収入額からすると、もっと貯蓄があるはずだ。』『毎月〇〇万円を渡していたから、現金として貯蓄がある。』という主張がよくなされます。

しかし、別居時点で預金残高が残っていない以上、このような主張をしたところで認められません。

このような主張が認められるためには、別居日時点で残高があることを裏付ける客観的な証拠を提出する必要があります。

単なる憶測だけでは不十分です。

6.預金の調査方法

相手方が預貯金の資料を提示しない場合には、こちらから預貯金の客観的資料を提示しなければなりません。

別居日時点の相手方の預金残高が少ない場合には、その他の預金口座で管理されている可能性があります。

相手方が別の預金口座を任意に提出しない場合、他の預金口座の存在を主張する当事者において、口座と預金残高の存在を証明しなければなりません。

しかし、その証明方法はそう簡単ではありません。

6-1.調査嘱託による収集

調査嘱託という特殊な方法により調査することが考えられます。

調査嘱託とは、裁判所が、当事者の申立てにより、金融機関等に対して、必要な調査を依頼する証拠調べの方法です。

要は、金融機関等に対して、裁判所を通じて、相手方の財産に関する情報を開示してもらう手続です。

ただ、探索的な調査嘱託は認められません。

調査嘱託が裁判所に採用されるためには、申立ての具体的な理由が必要です。

さらに、預貯金の調査嘱託であれば、金融機関名だけでなく、支店名まで特定しなければなりません。

ただし、ゆうちょ銀行に関しては、支店名の特定は求められません。

7.弁護士に相談しよう 

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預金が特有財産であることの証明は簡単なようで、実はかなり技術的で、難しいことが多いです。

そのほか、財産分与には多くの法律上の論点が複雑に絡み合います。

1人で財産分与の問題に立ち向かうと、精神的な負担を受けるだけでなく、本来得られる利益を失うリスクもあります。

弁護士に依頼するメリット

特有財産の証明を可能にする

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