コラム
最終更新日:2023.06.13

残業45時間を超えたら会社は罰則を受けるのか?残業の上限規制を解説

頭を抱える男性

残業時間の一つの目安として、よく耳にする1か月「45時間」という数字。

会社が従業員に対して、この45時間を超えて残業させた場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金を受けるおそれがあります。

今回は、残業時間の上限とこれに違反した場合の会社のペナルティについて解説します。

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45時間の上限規制

45時間の残業とはどのくらい?

一ヶ月45時間の残業時間とは、週5勤務で、1日の所定労働時間が8時間であれば、1日あたり2時間から2.5時間程の残業を毎日行うイメージです。

9時から6時までの勤務(休憩1時間)であれば、8時から8時半まで仕事をしていれば、40時間から45時間の残業時間となります。

36協定が必要

労働基準法には、1日8時間・1週間40時間を超えて仕事をさせてはならないと規定されています。

例外的に1日8時間あるいは週40時間を超えて仕事をさせる場合には、労使間で書面による残業に関する協定(いわゆる36協定)を締結し、これを労働基準監督署長に届け出ることが必要となります。

かつては罰則がなかった

これまでも、厚生労働省の「限度基準告示」により、残業時間の上限時間が定められていました。

しかし、この限度基準告示を超える36協定を定めても、会社側には罰則がなく、上限なく残業を行わせることが事実上できていました。

これにより、長時間労働を強いられた労働者はその健康を害し、過労死や過労自殺という悲惨な結果を招くことになりました。

そこで、横行していた長時間労働を抑制させるため、罰則付きの時間外労働の上限規制が設けられました。

罰則付きの上限規制

法令の改正によって、残業時間の上限は「1ヶ月45時間、年間360時間」とされました。

なお、限度時間に休日労働は含みません。

会社がこの上限規制に違反した場合には、会社には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

上限規制を超えた残業

この上限規制にも例外があります。

業務量が通常予想できない程に大幅な増加する場合にも、「月45時間」の上限規制に縛られてしまうと業務上の不都合が生じます。

そこで、緊急事態に際して、臨時的に上限を超えて残業できる場合を定めた特別条項を36協定に設けることで、上限規制を超えた残業ができるようになりました。

特別条項の上限

ただ、この特別条項もかつてのように無制限ではありません。

臨時的な業務量の増加であっても、いつまでも続くわけではありません。

もし、いつまでも続くようであれば、それは残業ではなく人員の増加や業務の効率化によって対応するべきでしょう。

そこで、特別条項には以下のような上限が設けられています。

①1ヶ月の時間外労働と休日労働の合計が100時間未満であること

②時間外労働が年間で720時間以内

③時間外労働が月45時間を超えることができるのは一年のうち6か月まで

④時間外労働と休日労働の合計の、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内であること

運送業等の自動車運転の業務は対象外

働き方改革によって残業の上限規制が設けられましたが、運送業等の自動車運転を業務とする業種に関しては、上限規制に関する適用が2024年まで猶予されています。

その上、適用後の規制内容も特殊なものとなっています。

たとえば、年間の残業時間の上限は、720時間ではなく「960時間」となっています。

先程の①1か月の残業と休日労働の合計100時間と④平均80時間以内とする規制は適用されません。

さらに、残業1か月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制も不適用となっています。

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違反するとどうなるのか?

36協定の内容が違反している場合

労使間で作成した36協定の内容が上限規制に反する内容である場合、その36協定は無効になります。

この場合、会社は36協定がない状態で残業等をさせたことになります。

そのため、労働基準法32条違反により6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金を受けるおそれがあります。

第32条(労働時間)

1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

36協定に反して労働させた場合

36協定それ自体は、上限規制に反していないとしても、実際には36協定で定めた時間以上に労働をさせれば、労働基準法違反となります。

この場合も同様に6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金を受けるおそれがあります。

上限を超えた内容の特別条項

臨時的に月45時間を超えて残業できる場合があるとしても、それにも限度があります。

その限度を超過した内容の36協定を締結すれば、労働基準法36条5項に違反しますので、その36協定は無効となります。

この場合も同様に36協定がない状態で残業をさせたことになりますから6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金を受けるリスクがあります。

▶上限規制に関する厚生労働省の解説はこちら

副業・兼業の場合

本業と副業

副業兼業の労働時間は通算される

従業員が、本業とは別に副業や兼業をしている場合、使用者には、その労働者の副業兼業先の労働時間も適正に把握する責務があります。

その上で、先程解説した時間外労働と休日労働の合計で1ヶ月100 時間未満・複数月平均 80 時間以内の要件については、自社の労働時間だけでなく、従業員が申告する兼業・副業先の労働時間と通算して判断されます。

たとえ自社の労働時間だけであれば、1ヶ月100時間を超えなくても、副業等の労働時間を合算することでこれを超えてしまうと、上限規制に違反することになってしまいます。

副業等の労働時間も管理する

このように副業等の労働時間も合算されて判断されるため、企業には、自社の労働時間だけでなく副業等の労働時間も管理する必要に迫られます。

しかし、副業や兼業の労働時間を管理することは容易いことではありません。

そこで、副業や兼業を無制限に許容するのではなく、事前の許可制を採用するようにしましょう。

企業名の公表

企業名の公表とは?

労働基準法に違反する企業の名前が公表されることがあります。

全ての労基法違反に対して企業名が公表されるわけではありませんが、企業名が一度公表されると、その企業の社会的評価は著しく低下します。

これにより、人材の確保や新たな取引先の開拓が難しくなり、事業の運営に大きなダメージを与えます。

企業名が公表されるケース

送検事案

まずは、検察庁に送検されるケースです。

労働基準法違反に対して、労働基準監督官によって是正勧告がなされたのに、何ら是正しない場合や被害者による告発があった重大な事案の場合、検察庁へ送検されることがあります。

送検を受けた事案の全てが企業の名の公表を受ける訳ではありません。

送検事案の中でも、悪質性の高い重大な事案に限って企業名の公表がなされています。

局長指導事案

かつては検察庁に送検される司法処分の場合にのみ企業名の公表がなされていました。

平成27年5月18日付け通達により、労働局長の指導段階で企業名公表を行うことにされました。

ただ、全ての事案で公表されるわけではありません。

複数の事業場を有する法人で、重大な労働基準法違反がある場合に限られています。

具体的には以下のとおりです。

①違法な長時間労働〔10人または1/4以上の労働者について、時間外・休日労働80時間超、労基法32条、35条、37条違反〕あるいは過労死・過労自殺等で労災支給決定等が1年間に2事業場で発生し、労働基準監督署長の指導・立入調査をしてもなお、改善されていない場合

②-1 10人または1/4以上の労働者について月100時間を超える違法な⻑時間労働が認められる事業場と、過労死・過労自殺で、かつ、 労基法32,35,37条違 反が発生している事業場が1年間にそれぞれ認められる場合

②-2 過労死・過労自殺で、かつ、 労基法32,35,37条違反が2事業場にて発生している場合

明示的な命令をしていない場合

黙示的な指示があったとされる

上司が労働者に対して、残業を命じていないのに、労働者の判断で残業している場合、この残業時間は労働時間といえるのでしょうか。

上司が指示していないから労働時間ではない、就業規則で残業を禁止しているから労働時間ではないといった主張をするケースはよくあります。

しかし、従業員が残業をしているにもかかわらず、会社が何も指導することなく漫然と放置している場合には、黙示的な指示があったといえます。

また、残業しなければ終わらない量の仕事を指示し、上司がこれを引き継ぐ対応もしない場合にも、黙示的に残業を指示したといえるでしょう。

残業を禁止するには

従業員な残業を禁止するためには、従業員に対して残業が禁止であることを周知し、残業できないような体制を築くことが必要です。

つまり、周知するだけでは不十分ということです。

就業規則で明記する

例えば、就業規則において、残業の禁止を定めた上で、これに違反する場合には懲戒の対象とすることを明示します。

当然この就業規則は、従業員に配布したり、いつでも閲覧できる状況にしておくことが必要です。

残業申請のルール作り

また、万が一、残業を行わざるを得ない場合には、残業申請をした上で管理者からの許諾を得るルールを作ります。

このルールを有名無実化させないためにも、常日頃から従業員の労働時間の管理を徹底し、残業をしている従業員には就業規則の内容や残業申請のルールを遵守するよう、明示的に指導するようにします。

管理職の引き継ぎ体制

さらに、残業しないと仕事が終わらない場合には速やかに管理職にその業務を引き継ぐ体制を構築するようにします。

ただ、この引き継ぐ管理職が名ばかりな管理職で、いわゆる管理監督者の実態が備わっていない場合には、この管理職に対しても残業代が生じますので、注意が必要です。

健康・福祉確保措置

長時間労働による健康障害を防止するため、36協定の特別条項には「健康福祉確保措置」を記入することを要します。

具体的には、36協定の裏面にある『限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置』の欄に選択する措置の各番号を記入した上で、その具体的内容を記入することを要します。

①医師による面接指導
②深夜業の回数制限
③終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
④代償休日・特別な休暇の付与
⑤健康診断
⑥連続休暇の取得
⑦心とからだの相談窓口の設置
⑧配置転換
⑨産業医等による助言・指導や保健指導

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残業時間の上限規制について、罰則が強化され、場合によっては企業名の公表というペナルティも想定されます。

このようなペナルティを回避するためにも適切な労働時間の管理が必要となります。

当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。

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難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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