コラム
最終更新日:2023.06.13

敷金は返ってくる?返ってこない?敷金の問題を弁護士が解説します|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

お金と不動産

マンションや一軒家を借りる際に、借主が貸主に支払う敷金。

敷金は、賃貸借契約が終わった際に貸主から返還されるものです。

しかし、敷金とは何かを十分に理解することなく、敷金を支払っていることは多いのではないでしょうか?

今回のコラムでは、この敷金について解説していきます。

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敷金とは何か?

敷金の意味

敷金とは、賃貸借契約において、滞納賃料や原状回復の費用の支払いに充てるために、借主が貸主に預けておくお金のことです。

民法でも以下のように定められています。

民法622条の2第1項

いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう

そのため、貸主は、借主が滞納している賃料や明渡時の原状回復費用と預かっている敷金を相殺して、その支払いを回収させることができます。

敷金の機能

もし仮に、貸主が借主から敷金の預託を受けていないと、滞納賃料や原状回復の費用を借主本人から回収しなければなりません。

しかし、借主が任意に払わない場合や借主が所在不明になってしまう場合、借主からこれらの費用を回収することは難しくなります。 

そこで、借主が賃料等を払おうとしない場合に備えて、貸主は借主から、あらかじめ一定額の敷金を預かります。

このように、敷金は、借主の不払いの担保するための役割を果たしているといえます。

礼金との違い?

よく混同されがちの礼金。

礼金も敷金と同じように、賃貸借契約を締結する時に、借主が貸主に対して支払うお金です。

しかし、退去時に返還される敷金とは異なり、礼金は退去時に返還されません。

礼金は、その名称のとおり、賃貸してもらったことのお礼として、借主が貸主に支払うものとされているからです。

権利金も礼金とほぼ同じ意味で使われています。

保証金との違い?

契約締結時等に借主から貸主に払われるお金として保証金というものもあります。

保証金は敷金と同じような意味合いで使われることもあります。

ただ、敷金とは異なる使われ方をされることもあります。

貸主に対する建築協力金として保証金を提供する場合がありますが、この場合の保証金は、借主の貸主に対する貸付けという性質となります。

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いつ・いくら返ってくるのか?

いつ返ってくる?

敷金の返還時期は、契約が終了し、かつ、物件を明け渡し時です。

契約終了時ではありませんので注意が必要です。 

その他、借主が貸主の承諾を得て、賃借権を第三者に譲渡した場合も敷金は返還されます。

なぜ明渡時なのか?

契約が終わってから、鍵の返還が何らかの理由で遅れてしまった場合には、契約の終了時点と物件の明渡時点がズレてしまいます。

例えば、契約3月30日に終了したが、借主が鍵を返還した日が4月10日であれば、契約は終了しているものの、借主は3月31日から4月10日まで建物を占有していたことになります。

この場合借主は貸主に対して、物件の明け渡しを完了させるまでの期間に対応する賃料に相当するお金を支払う義務を負います。

仮に貸主が契約終了時に借主に対して敷金を返還してしまうと、物件の明渡までの賃料相当の損害金の回収が難しくなってしまいます。

そこで、敷金の返還は物件の明渡時と考えられています。

いくら返ってくるのか?

貸主は、賃貸借契約に基づき借主が負担するべき費用等を支払わないときは、敷金をその弁済に充てることができます。

そのため、貸主は、明渡の時に、敷金から借主の支払うべき費用を差し引いた上で、敷金に残額があれば、借主に対して、その残額を返還することになります。

では、借主が負うべき費用等(賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務)とは何を指すのか?

未払賃料

毎月の賃料が未払いとなっている場合、この未払賃料が敷金によって充当できる借主の費用(債務)であることは明らかです。

貸主は、契約期間中や明渡時に未払賃料を敷金と相殺することで回収することができます。

しかし、敷金は、貸主のための担保として機能するものです。

そのため、借主は貸主に対して、未払賃料と敷金を相殺するように求めることはできません(622条の2第2項)。

原状回復費用

明渡時によく問題となるのが原状回復費用です。

原状回復と聞くと、契約締結時の状態に戻す必要があるかのように思ってしまうかもしれません。

しかし、これは異なります。

経年変化(通常損耗)は含まない

建物の壁紙、フローリング、その他の設備は時間の経過によって劣化していきます。

ごく普通の使用方法によっても生じる故障や汚損(通常損耗)については、賃貸借契約では、当然に予定されたものといえます。

そのため、借主が支払う賃料の中には、通常損耗の修繕費も含まれていると考えられています。

よって、借主は、この通常損耗に関する費用、例えば、壁紙等の貼り替えやクリーニングの費用を負担する必要はありません。

つまり、敷金から、この通常損耗の費用を差し引くことはできません。

特約があれば通常損耗も負担する?

契約書にクリーニング費用や壁紙の張替費用を借主が負担する特約が規定されていることがあります。

ただ、このような特約があれば、常に借主が通常損耗を負担しなければならないわけではありません。

居宅用の賃貸借契約の場合、通常損耗の修繕費用を借主が負担することを明確に規定することに加えて、対象となる通常損耗の範囲を具体的に明示した上で、具体的な金額を認識できるようにしておくことが必要です。

このような定めがなければ、いくら特約があったとしても、その特約は有効とはなりません。

他方で、事業者間で締結された事業用の賃貸借の場合、通常損耗の費用を借主に負担させる特約は有効となりやすい傾向です。

特別損耗(とくべつそんもう)

通常の使用方法を超える使用方法により生じた汚損や損傷を特別損耗といいます。

例えば、タバコのヤニによる壁紙の汚れ、タバコの火の焦げ跡、物を落下させたことによるフローリングの凹み等です。

借主の故意・過失によって生じる特別損耗は、賃貸借契約において当然に予定されるものではありません。

そのため、特別損耗に係る費用は借主によって負担されることになります。

よって、敷金から特別損耗に関する費用を差し引くことは認められます。

残存価値を考慮する

特別損耗があったとしても、壁紙やフローリングの新品同様の金額を負担することまでは必要ありません。

壁紙やフローリング等の設備には、耐用年数があり、時間の経過とともに価値が下がっていきます。

そのため、現時点で残っている価値の限度で負担すれば足りることになります。

ただ、耐用年数を過ぎていても、再利用が可能であったが、借主によって使用不能となったのであれば、破損した設備の新品の費用は負担しなかったとしても、必要となる工事費や人件費を負担することはあり得ます。

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敷引特約

契約書において、預託された敷金から一定額を差引いた残額を明渡時に返還するという約定がなされることがあります。

例えば、賃貸借契約終了後、明渡時には敷金50万円から30万円を差し引いた20万円を返還する、といった具体です。

関西地区では、多く見られます。

敷引きの意味合い

敷引きの意味は様々なものがあり、これら①から⑤の性質が組み合わさったものとして、敷引きが採用されていることが多いです。

敷引きの役割

①賃貸借契約成立の謝礼

②通常損耗の修繕費用

③更新時の更新料の免除の対価

④契約終了後の空室賃料

⑤賃料を低額にすることの代償

敷引特約の有効性

賃貸借契約が居住用の契約であり、借主が一般消費者である場合、消費者契約法という消費者を保護するための特別な法律が適用されます。

この場合、敷引特約が定められていても、無条件で有効とされるわけではありません。

敷引特約を契約書に明確に定めた上で、その敷引額が高くなり過ぎない場合に有効とされます。

敷引額が月額賃料の2倍弱から3.5倍程度であれば、高額過ぎるとまでは言えないと判断され易いでしょう。

貸主が変更した場合

貸主が第三者に対して、賃貸物件の所有権を移転させた場合、貸主としての地位もこと第三者に移ります。

この場合、新しい貸主に敷金に関する権利関係も移ります。

そのため、新しい貸主が借主に対して、敷金を返す義務を負うことになります。

▶原状回復のガイドラインに関する国土交通省の解説はこちら

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敷金の返還にはさまざまな法律問題が関連します。

特に原状回復費用については、その金額が大きくなることが多いため、その金額や範囲について対立が生じやすいです。

また、敷引特約が定められている場合には、その有効性も問題となります。

敷金に関する問題やこれに関連する法律問題でお悩みの場合には、弁護士に相談してみましょう。

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