コラム
最終更新日:2024.01.29

管財事件とは?管財事件の流れや管財事件になるケースを解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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破産手続には同時廃止というものと管財事件というものが存在します。

管財事件は、債権者に配当することのできる財産を持っていたり、調査が要する重大な免責不許可事由がある場合に振り分けられます。他方で、財産をほとんど有していなかったり、浪費等の免責不許可事由があっても、その程度が軽微である場合には同時廃止事件に振り分けられます。

同時廃止事件では、管財人は選任されず、破産開始決定と同時に破産手続きが終了します。これとは異なり、管財事件では、管財人が選任される上、費用や時間を要する破産手続きです。

今回は、管財事件とは何か、同時廃止と管財事件の振り分けについて解説します。なお、本記事は、大阪地方裁判所の基準に関する解説です。破産手続きの基準は、管轄する裁判所によっては異なりますのでご注意ください。

管財事件とは何か?
管財事件に振り分けられるケース
管財事件の流れ
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管財事件とは?

管財事件とは、裁判所が選任する破産管財人が、免責するべきかの調査、債権者への配当手続きなどを行う破産手続を管財事件といいます。

管財事件は、一定程度の財産を持っている場合や免責不許可となるような事情が多数ある場合に振り分けられます。

後述する同時廃止事件とは異なり、破産申立てをしてから、免責決定が出るまでに半年前後の時間を要することが多いでしょう。

破産者の資産状況や債権者の数によっては、半年以上の時間を要することはありますので、ケースバイケースといえます。

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同時廃止事件とは?

同時廃止事件とは、申立人にほとんど財産がなく、債権者に配当する資産もないような場合に、破産申立てをした上で、破産開始決定と同時に破産手続を終了させる手続を言います。

同時廃止の場合、破産開始決定から2か月前後で裁判所から免責決定が出されます。

管財事件の予納金や費用

破産手続きが管財事件に振り分けられた場合、20万5000円前後の予納金が最低額として必要となります。ただし、債権者の数が100人を超える場合には、法人であれば51万円、個人であれば31万円の予納金が必要となります。

予納金とは別に官報広告費も納付する必要があります。法人であれば13,197円、個人であれば13,834円となります。

予納金の支払方法

予納金は、破産者が管財人の専用口座に振り込む方法で支払います。

支払方法は、基本的には一括で支払います。

一括の準備ができない場合には分割による支払いも可能となります。分割納付の場合、最大で6か月の積み立てまで認められています。指定された予納金の積み立てが完了でき次第、管財手続きが進行します。6か月で予納金の積み立てができない場合には、破産申し立てが棄却される場合もあります。

管財事件の期間・流れ

自己破産の申立てをしてから、免責許可決定がなされるまでの流れを説明します。以下では、大阪地裁における小規模の管財事件を想定した流れを紹介しています。

自己破産の申立て
必要書類を準備して、地方裁判所に対して破産の申立てをします。
破産手続きが同時廃止ではなく管財事件に振り分けられる場合、裁判所から管財事件とする旨の連絡が入ります。
破産手続開始決定:申立から1週間前後
破産手続きを開始させる原因があると認められれば、費用の予納をなされてから、破産開始決定が出されます。
破産開始決定と同時に管財人が選任されます。また、債権者集会が行われる日時も指定されます。
管財人と面談:申立から1週間から10日
破産開始決定の前後で、管財人(または管財人候補者)と面談を行います。
面談には、管財人・破産者本人・申立代理人が出席します。
面談時には、管財人から破産に至る経緯、免責不許可事由の有無や内容、財産状況等の聞き取りを受けます。
事案によっては、管財人から、毎月の家計収支の報告や毎月数万円の積み立てを要請されることがあります。
預金等のを自由財産として拡張する場合には、通帳や保険証券の原本も忘れないように持参します。
債権調査と財産調査 :破産開始決定から3か月まで
管財人において、破産債権や破産者の財産状況の調査が行われます。
預貯金や保険の解約返戻金の財産が99万円を超える場合や不動産・有価証券・売掛金などの財産を有する場合には、これら財産は現金化され、管財人の追加報酬等に充てられます。
また、管財人から免責不許可事由に関連する事項について照会を受けることも多く、破産者には虚偽の報告を決してせず誠実な対応が強く求められます。
債権者集会:破産開始決定から3か月
破産開始決定時に指定された日に債権者集会(財産状況報告集会)が開催されます。ほとんどの債権者集会では、債権者が一人も出席しません。出席者は、裁判官・管財人・破産者と申立代理人です。通常は、管財人から事務的な報告がなされるだけですので、10分前後で終了することが多いです。
なお、債権者への配当が予定されず、免責に関する調査も短期間で行える事案であれば、債権者集会を行わない場合もあります(非招集型)。
債権者の配当
破産者の財産を換価し、これを管財人の報酬に充ててもなお、余剰がある場合には、債権者に配当されます。ただ、個人の破産手続きであれば、債権者に配当をするケースは多くありません。
免責決定・廃止決定:破産開始決定から4~5か月
債権者集会において、管財人から免責に関する調査結果の報告がなされれば、集会終了後に免責決定が行われるのが通常です。非招集型の場合には、財産状況の報告から8週間ほどで免責決定がなされます。
たとえ免責不許可事由があったとしても、財産を隠蔽したり、虚偽の報告をするなどの事情がなければ、裁量免責の決定がなされることがほとんどです。

管財事件の注意点

管財事件において、いくつかの注意点があります。

郵便物は転送扱いとなります

まず一点目として、破産者宛の郵送物はすべて管財人事務所に転送されます。そのため、管財人に届いた郵送物は基本的に開封された上で、申立代理人か破産者宛に返送されることになります。支払期限のある資料については、管財人事務所に直接取りに行くなどの対応が必要となります。

転居や旅行が制限されます

次に、転居や旅行が制限されます。破産手続きが終了するまでの間、転居や旅行などにより居住地を離れる場合には、管財人の同意を得た上で、裁判所の許可を得なければなりません。

また、業務上の必要であっても、海外への出張についても裁判所の許可を必要とします。事前に裁判所の許可をもらっておきましょう。

財産の隠蔽や虚偽の報告をしない

また、財産を隠蔽したり虚偽の報告をしないことです。多くの事案では、ギャンブルや一部の債権者への返済といった免責不許可事由が存在します。ただ、免責不許可事由があっても、管財人からの要請に誠実に対応をすれば、ほとんどの事案は免責決定が出ます。しかし、管財人の質問に対して、虚偽の回答をしたり、財産を意図的に隠すなどの不誠実な行為に及ぶと免責不許可となります。

管財事件と同時廃止事件との違い

管財事件では、管財人が債権の調査・財産の調査・免責に関する調査を行います。他方で、同時廃止事件では、管財人の選任はされませんので、破産手続において、これら調査を行うことはありません。

このような違いから、管財事件と同時廃止事件には以下のような違いがあります。

管財事件と同時廃止事件との違い

免責決定までの時間の長短

管財人等の費用の要否

免責までの時間の違い

同時廃止であれば、申立てをしてから免責決定が出るまで2ヶ月です。

他方で、管財事件であれば、短くても4か月、平均的には半年の時間を要します。事案によっては、一年以上の期間を必要とすることもあります。

このように、同時廃止事件は、管財事件よりも早期に終結できるといえます。

必要となる費用が異なる

同時廃止の場合、通常弁護士費用は、20万円から30万円ほどです。また、申立時に裁判所に支払う費用は2万円程です。

他方で、管財事件の場合、弁護士費用は40万円から50万円以上となることが多いでしょう。

また、申立時に裁判所に支払う費用は、管財人の予納金として20万5千円(大阪地裁)と官報広告費を支払う必要があります。

このように、同時廃止事件であれば、弁護士費用や裁判所に支払う費用は低く抑えられます。

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同時廃止と管財事件の振り分け基準

管財事件は、破産者に資産がある場合や重大な免責不許可事由がある場合に振り分けられます。

以下では、その振り分けに関する具体的な基準(大阪地裁)を解説します。

資産による振り分け

破産する人の所有する資産の種類や金額に応じて、管財事件に振り分けるかが決定されます。

現金と普通預貯金(現金等)

まず、破産申立ての時点で、破産者が持っている現金や預貯金の金額の合計が50万円を超えている場合には、同時廃止ではなく管財事件となります。

現金等以外の財産

現金や預貯金以外の財産については、現金等とは異なる扱いがなされています。

現金等以外の財産としては、以下の財産があります。

保険の解約返戻金
②積立金等
③賃貸の敷金の返戻金
④貸付金・求償金等
⑤退職金
⑥不動産
⑦自動車
⑧これら以外の貴金属や着物等の動産類等

これらの各個別財産の項目ごとの合計額が20万円を超えない場合には、同時廃止として処理されます。逆に、20万円を超えれば管財事件に振り分けられます。

例えば、3件の生命保険がある場合、これら生命保険の解約返戻金の合計額が20万円を超えない場合には、同時廃止となります。

ただ、各個別財産の金額が20万円を超えなくても、多少下回る個別財産が複数存在している場合には、管財事件に移行される可能性はあります。

財産の種類によって、金額の計算方法が異なるため、以下では財産ごとの計算方法を紹介します。

解約返戻金・積立金

これら財産は、その額面がそのまま評価されます。

敷金

敷金の実質的価値の計算方法は、額面通りではありません。

敷金は、賃貸借契約をする際に借主が貸主に支払う保証金の一種で、契約終了時に返還されます。

戻ってくる敷金の金額から原状回復費用及び明渡費用として60万円を差し引いた上で、更に未払賃料がある場合には、その金額を控除した金額を計上します。

貸付金・求償金等

破産者が第三者に対してお金を貸しているような場合、この貸付金も財産になります。

この貸付金や求償金は、原則として額面で評価します。

ただ、その貸付金等を相手方から回収することが困難である場合には、回収が難しいことを十分に説明してすることを要します。

退職金

実際に破産時に退職する必要はありません。

破産開始決定時に退職したと仮定し、会社から支払われる退職金の金額の8分の1で計上します。

例えば、破産開始決定時に退職したと仮定した場合の退職金が120万円である場合、120万円そのもので評価せずに、その8分の1である15万円を実質的価値として評価します。

ただし、退職時期が接近している場合や退職済みであるが退職金の支払いが未了である場合には、8分の1ではなく4分の1の金額で評価されます。

不動産 

不動産の評価額については、固定資産税の評価額をベースに評価していきます。

ただ、不動産に住宅ローン等の借入がある場合には異なる評価が必要となります。

不動産の評価額よりも現在のローン残高の方が高い場合(オーバーローンと言います。)でも、無価値となるわけではありません。

①住宅ローン等の借入の残額が不動産の固定資産税評価額よりも2倍を超えていれば、この不動産は無価値と判断されます。

この場合には、不動産の評価額が20万円を超えていたとしても、同時廃止として処理されます。

例えば、住宅ローンの残額2500万円、不動産の固定資産税評価額が1000万円の場合、住宅ローンの残額は固定資産税評価額の2倍以上ですから、無価値となります。

②住宅ローン等のローン残額が固定資産税評価額の1.5倍以上ではあるが2倍に達しない場合、不動産の査定書で示された評価額をベースに、ローン残高が査定者の評価額の1.5倍を超えていれば、無価値として扱われます。

この査定書については、不動産業者一社ではなく、複数の業者の査定書の提出が通常求められます。

③ローン残高が査定書の評価額の1.5倍を超えない場合には、無価値とは評価されません。

この場合には、管財事件として処理されます。

自動車

自動車については、レッドブックという自動車の時価額が種類や型式に対応して列記されている本あるいは査定書により評価額を判断します。

ただ、日本車の場合、初年度登録から7年が経過し、新車価格が300万円未満であれば無価値と判断されます。また、軽自動車であれば、初年度登録から5年経過していれば無価値と判断されます。

過払い金

過払い金について、既に回収が済んでいる場合には、現金等として取り扱います。

破産申立時において、回収が未了である場合でも、過払い金の額面が30万円未満であれば20万円未満として扱われます。他方で、額面が30万円以上の場合には、管財事件となります。

直前に現金化した場合

借入の支払いを停止させた時から、破産申立てまでの間に個別財産を現金化した場合、大阪地裁では原則として、現金等として扱います。

つまり、現金化される前の個別財産として評価はしないということです。

例えば、破産申立前に、生命保険を解約し、その解約返戻金として40万円を受け取った場合でも、この解約返戻金は申立時には現金等になっているため、そのほかの現金等と合算して50万円を超えない限り、同時廃止となります。

資産以外の理由による振り分け

破産者が債権者への配当をするだけの資産を有していないとしても、その他の理由により破産管財事件に振り分けられることがあります。

個人事業者型

破産者が個人事業主の場合です。

個人事業主の場合、プライベートの資産と事業の資産が混在していることもあれば、分離されていることもあります。そのため、プライベートの資産以外の事業用の資産の有無や内容が判然としないことがあります。

そこで、個人事業主の場合、原則として破産管財事件として扱われます。この場合には、運営している個人事業は、一旦停止する必要があるため、注意が必要です。

ただし、個人事業主といっても、一人親方のような場合や実質的には雇用といえるような場合には、整理する資産や取引先もほとんどないため、同時廃止として振り分けられることはあります。

否認行為調査型

破産法では、免責を許可しない事由(免責不許可事由)が定められています。

例えば、一部の債権者にだけ返済をする偏ぱ弁済、財産を隠匿する行為、ギャンブルや浪費行為は、免責不許可事由の典型例です。

これら免責不許可事由のうち偏頗弁済や財産を減少させる行為がある場合には、管財人が、弁済金や減少した財産を回収する必要があります。このような場合には、破産管財事件として振り分けられます。

法人代表者型・法人併存型

法人の代表者についても、個人の財産と法人の財産が混在しやすく、これら財産を調査する必要から、破産管財事件に振り分けられます。

また、大阪地裁では、法人代表者と法人の破産を別々で処理せずに、同時に破産手続を進めていくことが通常です。つまり、法人代表者のみが破産するのではなく、法人自体も破産申立てをしていくことになります。

免責観察型

浪費やギャンブルなどの免責不許可事由が存在し、その程度が深刻な場合、管財人によって、免責不許可事由の内容や程度の調査、家計収支の作成や節減策の検討をするなどして、生活状況の指導監督を行う必要があります。

そのため、このような場合には、管財事件に移行することがあります。

大阪地裁破産部の破産手続きに関する解説はこちら

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同時廃止か管財事件かの判断は非常に難しいです。

担当する書記官や裁判官によって判断が分かれることもあります。

管財事件となれば、時間や費用も異なるため、事前の準備が必要となります。

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