コラム
最終更新日:2023.10.15

債務整理の種類とメリット・デメリット|破産・個人再生・任意整理・特定調停の違いを弁護士が解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

借金問題 債務整理の種類と選択方法 メリットとデメリット

債務整理にはいくつか種類がありますが、よく利用されるのは「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」の4種類です。

借金問題を解決するには、状況に応じたベストな手続きを選択しなければなりません。そのためには、種類ごとの債務整理方法の特徴を知っておくべきです。

それぞれの手続きについて、概要とメリット・デメリットをご紹介します。

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任意整理・破産・個人再生の選択方法

債務整理には、破産に加えて、任意整理、個人再生、特定調停の4つがあります。これらのうちどの種類の債務整理を選択するべきか説明します。

住宅ローン付自宅を残したい

住宅ローン付自宅を残したい場合には、個人再生を選択することが多いです。破産を選択すると、自宅不動産は任意売却することになり、自宅からの退去を求められます。

住宅資金特別条項付個人再生を利用することで、住宅ローンを支払いながら、その他の債務を圧縮させることができます。

事業を継続させたい

事業を運営されており、その事業を今後も継続させたい場合には、破産は選択しにくいでしょう。破産を選択する場合、運営する事業を廃止することを求められるからです。

事業を継続する場合には、任意整理か個人再生を選択することになります。

借入額が少額の場合

借入額が100万円を下回る場合には、破産や個人再生ではなく、任意整理を選択することが多いでしょう。生活保護を受給している場合には、借入額が小さくても破産申立てをすることはあります。しかし、収入を得ている場合、借入額が小さいと支払不能とはいえず、破産できない可能性もあります。

また、個人再生においては、100万円を下回ると債務の圧縮がされませんので、個人再生をするメリットがありません。

免責不許可事由がある場合

浪費やギャンブルなどが借入の原因であっても、多くの事案では裁量免責が認められます。そのため、免責不許可事由があっても、破産申立てを選択することは多いでしょう。

ただ、裁量免責すら難しい程に深刻な場合には、破産は回避し、個人再生や任意整理を選択することになります。

資格制限がある場合

後述するように破産には、さまざまな資格制限があります。職業柄、破産を選択しにくい場合には、資格制限のない個人再生や任意整理を選択することになります。

任意整理のメリット・デメリット

任意整理とは、債務者が借入先の業者と直接交渉をして借金の返済額や返済方法を決め直す債務整理の手続きです。

任意整理をすると、多くのケースで「合意後の将来利息」を全額カットしてもらえるので、普段払っている利息の分、支払額を減額できます。任意整理後の支払額と利息込の支払額と比べると、確実に支払総額は減額させることはできますので、経済的な負担は軽減され、生活の再建につながるでしょう。

合意後の支払期間は通常、3~5年に設定します。最も長期の場合ですと、10年というケースもあったりします。利息カットと支払期間の調整により、月々の返済額も減らせるケースが多数です。

任意整理のメリット

弁護士に依頼すると督促が止まる

借金を滞納すると、借入先から電話やはがき、封書などによる督促が来てしまいます。

弁護士に任意整理を依頼するとすぐに債権者による取り立てが止まるので、精神的にも落ち着いて生活できるようになるメリットがあります。金融機関によっては、自宅だけでなく借入時に登録した勤務先にもしつこく連絡をしてくるケースもありますから、これら連絡が止まる点でもメリットはあります。

支払いも一時的にストップするので、これまで借金返済にあてていたお金を生活費にあてられるようになります。

必要書類が少ない

個人再生や自己破産では、多数の書類が必要です。これら多くの書類を準備するために数か月の時間を要してしまいがちです。任意整理ではほとんど資料や書類が不要なので、債務者にかかる負担は小さくなります。

支払いが楽になる

任意整理に成功すると、支払総額や月々の返済額が大きく減るので、返済を楽に続けていきやすくなります。

例えば、借入金200万円、利息が15%、毎月返済額3万円の場合、返済額のうち2万5千円程が利息に充当され、残りの僅か5千円だけが元本に充てられることになります。そのため、借入の元本はなかなか減っていきませんが、任意整理をすると返済額の全て元本に充てられます。

財産がなくならない

自己破産をすると一定以上の財産が失われますし、個人再生でもローンつきの車が失われる可能性があります。

任意整理であれば家や車、預貯金をはじめとする財産が一切なくなりません。

保証人に迷惑をかけずに済む

任意整理の場合、対象とする債権者を選べるので保証人や連帯保証人のついている借金を外して手続きを進められます。

保証人らに迷惑をかける心配は要りません。

任意整理のデメリット

ブラックリスト状態になる

任意整理をすると、信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリストの状態になってしまいます。

一定期間、ローンやクレジットを利用できなくなるデメリットがあります。そのため、信用情報の事故情報が更新されるまでの一定期間、現金による支払いやデビットカードの利用をせざるを得なくなります。

TIPS!信用情報機関とは
信用情報とは、クレジットカードや割賦販売、各種ローン等の取引内容に関する支払い状況等の取引情報を登録した個人の情報です。
信用情報機関は、以下の3つがあり、各機関によって取り扱っている取引の種類が異なります。
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
株式会社日本信用情報機構(JICC)
全国銀行個人信用情報センター(KSC)

減額率が低い

一般的な任意整理では、借金元本の減額は困難です。

過払い金などがあれば、元本それ自体を減額させることは可能ですが、過払い金がないような場合には、借入元本それ自体を減額できたことはほぼありません。

最低限、元本については3~5年の間に完済しなければなりません。

借入額が大きいと、任意整理では解決できない可能性があります。

家計収支における可処分額(収入から支出を差し引いた後の金額)をもって、借入元本を3年以内に返済できない場合には、任意整理は諦め、個人再生か破産を選択することが多いです。例えば、可処分額が10万円、借入元本が400万円の場合、可処分額の3年分は360万円ですから、借入元本よりも下回るため、返済計画に従った返済は困難と判断し、任意整理以外の方法で債務整理をすることが多いです。

借入先が納得しないと解決できない

任意整理は、あくまで借入先の業者と話し合いで和解する手段です。

相手業者が強硬で協議に応じない場合、任意整理では解決できません。

また、借入先が、債務整理の対応に不慣れな一般の事業者や知人などの場合、任意整理の話し合いが円滑に進まず断念することもあります。

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個人再生のメリット・デメリット

個人再生とは、裁判所へ申立をして「再生計画」を認可してもらうことにより、借金を大幅に減額してもらう(ゼロにはなりません。)債務整理の手続きです。任意整理と異なり、元本も含めて大きく減額してもらえます。

「住宅ローン特則」というものを利用すると、住宅ローンの支払いを継続して自宅不動産を残しながら、借金のみ減額してもらうことも可能です。

個人再生のメリット

弁護士に依頼すると督促が止まる

個人再生を弁護士に依頼すると、貸金業者からの督促が止まります。

支払いを一時的にストップできる点も任意整理と同じです。

借金を大幅に減額できる

個人再生の場合、任意整理よりも大幅に借金を減額できます。減額した借金を3年から5年で返済していきます。

個人再生の最低弁済額は以下の通りです。

債務総額減額幅
借金額が100万円以下そのまま残る(減額されない)
借金額が100~500万円100万円まで減額
借金額が500~1500万円5分の1に減額
借金額が1500~3000万円300万円まで減額
借金額が3000~5000万円10分の1に減額

任意整理で解決できなくても、個人再生を利用すると借金を整理できる方が少なくありません。

なお手持ちの財産が多いと、上記より返済額が高額になる可能性はあります。

財産がなくならない

個人再生をしても、基本的に財産はなくなりません。

預貯金や保険、車などの財産を維持できます。

ただし所有権留保のついた車のローンを利用している状態で個人再生を申し立てると車を引き揚げられます。

住宅ローン特則で家を守りやすい

個人再生ならではの大きなメリットとして「住宅ローン特則」(住宅資金特別条項)があります。住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンの支払いをしながら他の借金だけを大幅に減額できるので、家を維持できる可能性が大きく高まります。保証会社が代位弁済していても、代位弁済前の状態に戻して分割払いできるのもメリットとなるでしょう。

競売がはじまっていても、競売を中止してもらって個人再生手続きを進めることができます。

関連記事|自宅不動産を残しながら債務整理をする方法について弁護士が解説します

個人事業主でも個人事業の継続ができる

個人事業主が自己破産をすると、一旦、個人事業を停止しなければなりません。その上で、原則として管財事件(裁判所が選任した管財人によって資産の現金化や債権者への分配をする手続です。)に振り分けられますので時間と費用を要します。例外的に一人親方のようなケースの場合には、個人事業主であっても、同時廃止事件として簡易的な手続となることがあります。

これに対して、個人再生の場合、個人事業主であったとしても個人事業を継続させながら手続を進めることが可能となります。ただし、手続期間中の買掛金や原材料費などの支払いには注意が必要です。

個人再生のデメリット

ブラックリスト状態になる

個人再生をした場合でもブラックリスト状態になります。そのため、一定期間、クレジットカードやその他ローンを組むことが困難となります。

収入要件が厳しい

個人再生後は、再生計画に基づき、3年間は確実に返済を継続しなければなりません(例外的に4年または5年に伸長することができます。)。

裁判所が関与する分、任意整理以上に厳しく収入要件を検討されます。

低所得の方、不安定な方などは個人再生できない可能性があります。

具体的には、世帯収入から支出を差し引いた後の残額が、減額後の借金の1か月分以上であれば、計画に従った返済ができると判断されます。

3万5千円(収入-支出)>3万3333円(減額後100万円÷36月(3年))

必要書類がたくさんある

個人再生では非常に多くの書類が必要です。

申し立て前に債務者が集めなければならないので、負担がかかるのはデメリットとなります。

債権者が反対すると失敗するリスクがある

小規模個人再生の場合、多数の債権者や高額な債権者が反対すると、再生計画が認可されず失敗するリスクがあります。

ほとんどの債権者は反対しませんが、楽天カードや楽天銀行が債権者一覧に含まれており、かつ、楽天カードあるいは楽天銀行の借入額が借入総額の半分を超える場合には反対してくる傾向があるため注意が必要です。

官報公告される

政府の機関誌である官報に個人再生の情報が掲載されるので、他の人にみられる可能性があります。

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自己破産のメリット・デメリット

自己破産は、裁判所へ申立をして負債の支払い義務をなくしてもらう手続きです。

一般の借入金、滞納家賃、滞納しているスマホ代、買掛金、リース料、住宅ローンなど、ほんどすべての負債の支払い義務がなくなります。

ただし生活に必要な最低限を超える資産は失われます。

自己破産のメリット

弁護士に依頼すると督促が止まる

自己破産を弁護士に依頼した場合にも、債権者からの督促は止まり、支払いもストップします。自己破産の場合、そのまま無事に免責を受けられれば、支払いは再開しません。

ほとんどすべての支払い義務がなくなる

自己破産すると、借金はもちろん未払い家賃や通信料金、買掛金、リース料などのほとんどの負債の支払い義務がなくなります。

下水道以外の水道光熱費の滞納分も免責対象です。ただ、住民税、固定資産税、国民年金保険料などの公租公課は免責対象外となります。

限度額がない

自己破産には限度額がありません。1億円や10億円の負債があっても、免責不許可とならない限り、全額免除してもらえます。

収入が不要

自己破産すると、後に返済義務が残らないため収入要件は不要です。

無職無収入や生活保護の受給者の方でも自己破産できます。

自己破産のデメリット

ブラックリスト状態になる

自己破産した場合にもいわゆるブラックリスト状態となり、ローンやクレジットを利用できなくなります。

最低限を超える資産が失われる

自己破産すると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。家はもちろん預貯金や保険、車などの資産がなくなる可能性があります。

ただし、99万円程度の資産(自由財産)は残せるので、すべての資産が失われるわけではありません。

破産手続開始決定後に得た給料などのお金も受け取れるので、生活できなくなる心配は不要です。

資格制限がある

自己破産の手続き中は、弁護士や司法書士、宅建士や警備員などの一定の職業・資格が制限されて、一時的に仕事ができなくなる可能性があります。

特に、ご相談として多い職業が、生命保険募集人、損害保険募集人、旅行業取扱管理者です。

ただ、生命保険・損害保険募集人については、破産開始決定(裁判所において破産手続がスタートする時点)から免責許可決定が確定するまでの期間において、募集人の登録が取り消される「可能性」がありますが、あくまでも「可能性」があるというだけで必ず取り消されるというわけではありません。さらに、免責許可決定が確定するまで募集人の登録が拒否されますが、免責許可決定が確定した後、募集人としての登録が可能となります。

また、旅行業取扱管理者についても、破産開始決定から免責許可決定が確定するまで(復権するまで)、旅行業をすることが制限されますが、免責許可決定の確定後については制限なく旅行業取扱管理者として旅行業に従事することができます。

予納金が発生する

破産手続には、破産手続が簡易な手続である「同時廃止事件」と、裁判所が選任する管財人が破産手続を担う「管財事件」があります。破産手続が「管財事件」に割り振られる場合、管財人の費用を予納しなければなりません。大阪地方裁判所では、管財人の費用として20万5千円が最低でも必要となります。

官報公告される

自己破産した場合にも官報に情報が掲載される官報公告が行われます。ただ、官報を事細かに閲覧している方は極めて少数ですので、官報経由で破産の事実を知られる可能性はそれほど高くないでしょう。

住所制限される可能性がある

自己破産で手続きが管財事件になると住所制限が課されるので、手続き中の引っ越しや長期旅行が制限されます。ただし裁判所の許可を取れば引っ越しや海外出張もできます。

債務整理をするときには、それぞれの手続きの特徴、メリット・デメリットを押さえて適切な方法を選択すべきです。迷ったときには弁護士までご相談ください。

▶裁判所における倒産手続の解説はこちら

特定調停のメリット・デメリット

特定調停とは、簡易裁判所の調停委員を通じて、債権者と債務者が話合いを行い、返済条件や方法を合意する制度で、債務整理のための民事調停手続です。

特定調停のメリット

特定調停のメリットは次のとおりです。

  • 調停の対象とする債権者を任意で選ぶことができる
  • 調停手続に要するコストがかなり安い
  • 債権者による強制執行の手続きを停止させることができる

特定調停のデメリット

特定調停のデメリットには次のようなものが挙げられます。

  • 信用情報機関に事故歴が登録される
  • 裁判所に出頭する必要がある
  • 債権者の同意が必要
  • 調停による強制執行が可能となる

債務整理を行う時の注意点

いずれの債務整理を行うにしても、共通の注意点があります。

銀行口座が凍結される可能性

債権者の中に銀行や信用金庫が含まれている場合、銀行等の金融機関に対して債務整理の通知をすると、その銀行等の預金口座が凍結されてしまい、口座内の預金の引き出しが制限されます。場合によっては、口座内の預金残高と銀行等の借入と相殺(そうさい)処理されることもあります。

銀行等の借入を債務整理する場合には、あらかじめ残高を引き上げた上で、給与等の入金がされないように振込口座の変更手続きもしておきましょう。

時効の援用をする

借金にも時効があります。長期間にわたり返済が滞っている場合には、消滅時効が完成している可能性があります。金融機関の借金の時効期間は5年です。最後の取引日から5年が経過している場合には、消滅時効の援用を確実に行います。時効に気付かずに返済の協議をしてしまうと、時効が更新(中断)され、時効期間がリセットされてしまいます。

なお、債権者が、既に確定判決等の債務名義を得ている場合には、時効期間はリセットされ、10年の時効期間となります。

過払い金の有無を確認する

平成18年以前の借入金であれば、過払い金を請求できる場合があります。かつては、消費者金融等が、いわゆる「グレーゾーン金利(出資法で定める上限金利(年率29.2%)は超えない金利)」で貸付をしていましたが、平成18年の最高裁判決によりグレーゾーン金利は無効とされました。この判決により消費者金融に対して、過払い金の返還をも求めることができるようになりました。

過払い金があるのに、これを放置していると、消滅時効等で過払い金の請求ができなくなります。また、過払い金の存在を知らずに債権者と協議をして合意してしまうと、過払い金の請求が制限される場合もあります。

債務整理にあたっては、過払い金の有無を十分に確認する必要があります。

自動車を引き揚げられる

自動車ローンを組んで自動車を購入している場合、自動車ローンを債務整理すると、自動車の返還請求を受けることになります。自動車ローンを組んでいる場合、自動車ローンが完済するまでは、ローン会社が自動車の所有者となっているからです。これを所有権留保といいます。そのため、債務整理をする場合には、自動車の引き揚げ後の移動手段を確保するなど、あらかじめの対応が必要となります。

債務整理の問題は弁護士に相談を

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債務整理のうち、どの方法を選択するかは個々人の債務状況や生活状況によって異なります。

各債務整理によってメリットやデメリットがあり、これらも踏まえながら債務成立を選択しなければなりません。

間違った選択をすると、本来必要のない負担を強いられることもあります。

まずは、気軽に弁護士に相談をしてみてください。

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