コラム
更新日: 2026.06.26

【弁護士監修】休職中に外出・旅行・SNSは大丈夫?注意点と確認事項を解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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「休職中に外出したら懲戒になるのでは」と不安を感じる方は多いですが、原則として休職中の外出・旅行は禁止されていません。

理由は明確です。休職とは「労務提供義務を免除する制度」であり、会社が休職者の私生活を管理・制限できる根拠はありません。特にメンタルヘルスを理由とした休職では、外出や気分転換が回復に必要なケースも多く、「外出=懲戒」という判断は慎重に行う必要があります。

ただし、以下の点には注意が必要です。

  • 就業規則で行動制限が定められている場合は確認が必要
  • SNSへの投稿は会社・同僚への影響から慎重に
  • 療養に反するような過度な行動は問題になる場合がある

本記事では、休職中の外出・旅行・SNSについて、裁判例も交えて弁護士が詳しく解説します。

今回は、休職制度や休職中の外出等が認められるのか、休業、休暇などの休職に似た制度も含めて解説します。

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休職制度とは

休職とは、従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた際に、雇用契約そのものは維持しながら、労務への従事を免除・禁止することをいいます。

本来、労働者は雇用契約に基づき使用者に労務を提供する義務を負っています。私傷病によってこの義務を果たせなくなると、債務不履行として解雇の対象になり得ます。しかし、解雇は労働者の生活基盤を奪う重大な行為であるため、解雇の猶予措置として休職制度が設けられています。

重要なのは、休職制度は法律で義務付けられた制度ではない点です。そのため、就業規則・雇用契約書に規定がない会社では、使用者が任意に認めない限り休職できません

休職の種類

傷病休職
勤務以外の事故により休職する場合
従業員が刑事事件において起訴されたことで休職する場合
他の会社に出向することで出向元を休職扱いにする場合
事故休職
起訴休職
出向休職
業務外の怪我・病気により休職する場合

休職にも休職する理由に応じて様々な種類があります。

傷病休職

休職の一つに傷病休職があります。

業務外の疾病により休職する場合が傷病休職です。他方で、業務上の疾病による場合には、労災による休業となります。

身体的な傷病だけでなく、適応障害やうつ病といったメンタルヘルスの疾病も傷病に含まれます。

休職期間中に治癒すれば復職し、治癒せず労務の提供ができない場合には自然退職あるいは解雇となります。

事故欠勤休職

交通事故などの私傷病以外の原因により一定期間欠勤した場合に行われる休職です。傷病手当と同様に、治癒すれば復職、治癒しなければ自然退職あるいは解雇となります。

起訴休職

刑事事件で起訴された労働者を、判決の確定又は一定期間休職させるものです。

出向休職

会社の指示により別会社へ出向するにあたって、出向元を休職とすることを出向休職といいます。

出向期間中は、出向元の休職することになります。

他の制度との違い

 休業

休職と似て非なる制度として、休業があります。休業には、使用者側の都合による休業と労働者側の都合による休業があります。

詳細はこちらのコラムで解説しています。

①使用者側の都合による休業

使用者側の都合による休業には、資材不足による休業、機械の検査による操業停止、監督官庁の勧告による操業停止、新型コロナウィルスの感染が「疑われる」従業員を自主的な判断で休業させる場合の休業です。

この場合には使用者は基礎賃金の60%の休業手当を支給しなければなりません(労基法26条)。

②労働者側の都合による休業

他方で、労働者側の都合による休業とは、産前産後の休業(労基法65条、66条)、育児休業介護休業(育児・介護休業法)、労働災害による休業(労基法75条)があります。

産休・育休中は社会保険の支払いが免除されますが、基本的に賃金の支払いは行いません。それをカバーするため、加入している健康保険から出産手当金として賃金の3分の2相当額が支給されます。出産に要した費用についても出産育児一時金が支給されます。

また、雇用保険に加入している場合、育児休業給付金が【休業開始時賃金日額×支給日数 の67%】の割合で支給されます。ただ、育児休業開始から6ヶ月経過したあとは50%相当額に減額されます。

介護休業についても、同様に雇用保険に加入している場合、介護休業給付金が【休業開始時賃金日額×支給日数 の67%】の割合で支給されます。

労働災害の場合、労災保険から平均賃金の80%の休業補償が支払われます。

 休業手当休業補償
要件会社都合業務上の事故や病気による休業
負担する者会社労災保険
金額平均賃金の60%平均賃金の80%

欠勤

欠勤は、従業員に労働義務があるにもかかわらず、仕事を休む場合をいいます。休職や休業は、労働者の労働義務が免除される点で、欠勤とは異なります。

休暇

休職と同様に、休暇も労働義務があった日について、それを免除します。ただ、休職は、就業規則や労働協約等に基づき、労働者が労務に従事させることができない場合に労務の従事を免除するものですが、休暇は法令上の要件を満たせば、当然に労働者に認められた権利です。

年次有給休暇(労基法39条)、生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(同法68条)、子の看護休暇(育児・介護休業法16条の2以下)、介護休暇(同法16条の5以下)があたります。

年次有給休暇は、その名の通り有給ですが、その他の休暇については、有給か無給かは契約書や就業規則の定めによります。

休日

休日とは、労働者に労働義務がもともとない日を言います。他方で、上述しました休職、休暇、休業はいずれも労働義務があるものの、これが免除されるものです。

休日には、法定休日と法定外休日(所定休日)があります。

法定休日とは、労働基準法35条1項で規定された休日で、1週間に1日、あるいは4週間に4日の休日を従業員に対して付与しなければなりません。

法定外休日は、就業規則や雇用契約等で定められた休日をいいます。

法定休日に就労した場合、賃金が35%割増されます。法定外休日に就労した場合、深夜労働や保定労働時間を超えた労働ではない限り、賃金の割増はありません。

休職中の外出・旅行・SNSはどこまで許されるか

早見表

行動原則注意が必要な場合
近所への外出・散歩✅ 問題なし特になし
国内旅行(短期)✅ 基本的に問題なし就業規則で報告義務がある場合は要報告
海外旅行⚠️ 慎重に就業規則で禁止・報告義務がある場合は注意
スポーツ観戦・趣味✅ 基本的に問題なし病状との整合性が問われることがある
SNS投稿⚠️ 慎重に旅行を満喫している様子の投稿は職場への悪影響リスクあり
アルバイト・副業❌ 原則不可就労可能なら復職が先。会社への背信行為とみなされる場合あり

外出・旅行について

休職者は使用者の指揮命令下にあるわけではないため、居場所や過ごし方を会社が細かく指示することはできません。近所への外出はもちろん、国内の短期旅行であれば基本的に問題になりません。

気分転換・転地療養は、特にメンタルヘルスを理由とした休職では回復に有効な場合があります。主治医から「外出を勧める」と言われているケースでは積極的に外出することが適切です。

海外旅行は、国内旅行と異なる扱いになる場合があります。長時間のフライト・食事・言語など生活環境の大きな変化は、特にメンタルヘルス疾患に影響を及ぼしかねないとして、懲戒処分の対象となり得ると指摘する専門書(「労務専門弁護士が教えるSNS・ITをめぐる雇用管理」新日本法規出版)もあります。就業規則で禁止または事前報告義務が定められている場合は必ず確認してください。

参考判例:マガジンハウス事件(東京地判 平成20年3月10日)

うつ病・不安障害で私傷病休職中の従業員が、以下の行動をとっていたことが問題となった事案です。

  • オートバイで頻繁に外出
  • ゲームセンター・場外馬券売場に出かける
  • 飲酒・会合への出席
  • 宿泊を伴う旅行
  • SMプレイへの参加

会社はこれらを「療養専念義務違反」として懲戒処分の根拠としましたが、裁判所は「うつ病や不安障害といった病気の性質上、健常人と同様の日常生活を送ることは不可能でなく、これが療養に資することもある」として、これらの行動を懲戒事由とすることはできないと判断しました。

一方、同事件では主治医から「会社と関わる行動を禁じられていたにもかかわらず、会社への抗議活動・組合活動・会社批判ブログの執筆を繰り返した行為については、療養専念義務に反するとして懲戒事由に該当すると判断されました。

このケースから学べるポイント:

  • 外出・旅行・飲酒等は直ちに懲戒にならない
  • 主治医の指示に反する行為は懲戒対象になり得る
  • 海外旅行は国内旅行と異なる判断がされる可能性がある

過去の判例でも、休職中の旅行を理由とした処分が「重すぎる」「裁量権の逸脱」として無効とされたケースが多く存在します。

SNSへの投稿について

SNSへの投稿は、表現の自由として完全に禁止することは難しいですが、実務上は慎重に行うべきです。

旅行を満喫しているかのような投稿を見た同僚・上司が「休職中なのに遊んでいる」と感じることで、職場環境へのマイナスの影響が生じ得ます。また、投稿内容が「療養専念義務に反する」と判断される材料に使われるリスクもゼロではありません。

投稿する場合は、公開範囲を限定するなどの配慮が望ましいでしょう。

こんなお悩みはありませんか?

  • 休職中に外出したことを理由に会社から懲戒を示唆された
  • SNSの投稿を理由に会社から呼び出しを受けた
  • 休職中の権利・義務について正しく理解したい

不当な扱いを受けていると感じたら、まずご相談ください

「療養専念義務」とは何か

休職中の労働者には、自己保健義務(労働安全衛生法26条等)に基づき、療養に専念して早期復職に努める義務があります。また、労働契約が継続している以上、会社の利益を害してはならない信義則上の義務も負っています。

ただし、この「療養専念義務」は、外出や旅行を一律に禁じるものではありません。病状・回復段階に応じて何が「療養に資するか」はケースバイケースであり、医師の判断が最優先です。

問題になりやすい行動

  • 療養実績がなく、頻繁に長期の海外旅行を繰り返している
  • 定期的な通院・治療を怠っている
  • SNSで「毎日楽しく過ごしている」と頻繁に発信している
  • 主治医の指示に反する行動(例:「自宅で安静に」と指示されているのに毎日外出・外泊を繰り返す)
  • 休職中にアルバイト・副業をしている
  • 休職中に転職活動をしている(特に連日複数の企業を訪問するような態様は、療養専念義務違反として懲戒対象になり得る)

休職中の転職活動について

転職活動自体は職業選択の自由として基本的に自由ですが、私傷病休職中の転職活動は療養専念義務に抵触する可能性があります。

その判断にあたっては、①私傷病の種類・内容、②医師の指導・治療方針、③転職活動の態様を総合的に考慮します。主治医から「自宅療養に専念を」と指示されているにもかかわらず、連日複数企業を訪問する転職活動は療養専念義務違反として懲戒処分の対象になるおそれがあります。

休職期間中の収入や支払い

給与・賞与
支払いはなし
社会保険料
傷病手当金
労働保険料
無給でも生じる
業務外の
傷病で支給
無給のため発生しない

休職をする場合、出勤して労働を提供しない以上、無給となるようにも思います。しかし、休職期間中に収入が一切ないとなると、生活に困窮してしまいます。

そこで、休職期間中の収入について解説します。

給与・賞与

休職期間中、会社から給与や賞与といった賃金は支払われないのが原則です。

なぜなら、賃金は労働を提供したことに対する対価ですから、その労働を提供せずに休職している以上、賃金を受け取ることはできないからです。これをノーワークノーペイの原則といいます。

ただし、賞与の査定期間中に労働した場合には、賞与が一部支給されることもあります。

社会保険料

健康保険、厚生年金保険、介護保険といった社会保険料については、休職により給料の支払を受けなかったとしても毎月納付しなければなりません。社会保険料は使用者と労働者で折半して負担することになりますが、会社は休職中の社員の負担分も含めて保険料を支払う必要があります。

休職していない場合には、会社から支払われる賃金から社員負担分の社会保険料は控除されるのが通常です。

他方で、休職により賃金が支給されない場合には、社員負担分の社会保険料は会社から請求されることになります。ただし、会社が傷病手当金を代理受領している場合には、この傷病手当金から社会保険料を徴収されることもあります。

傷病手当金

傷病手当金とは、業務外で病気や怪我で会社を休みで賃金を受けられない場合に支給される生活保障です。

この傷病手当金は、以下の4点を満たすことが必要となります。

  • 業務外の病気やケガで療養中であること
  • 療養のための労務不能となっていること
  • 4日以上仕事を休んでいること。
  • 給与の支払いがないこと。

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)

労働保険料には、労災保険料と雇用保険料があります。

労働保険料は、全額会社負担となるため、社会保険料のように社員負担分の精算をすることはありません。

また、労働保険料は、支給される賃金を基準に計算されるため、休職者に給与が払われなければ労働保険料は発生しません。

休職前に確認すべきポイント

✅ チェックリスト

  • 就業規則に休職中の行動制限(旅行・海外旅行・SNS等)が定められていないか
  • 病状報告の頻度・方法・提出書類(診断書等)が規定されていないか
  • 連絡先・連絡手段・連絡頻度が定められているか
  • 試し出勤(リハビリ出勤)制度があるか
  • リワーク制度(社外の復職支援プログラム)を利用できるか
  • 休職期間の上限と、期間満了後の扱い(自然退職か解雇か)を確認したか

休職中のトラブルの多くは、事前の確認不足から生じます。休職に入る前に就業規則・雇用契約書を確認し、不明点は人事や弁護士に相談しておくことが重要です。

よくある質問

Q. 休職中に旅行に行ったら会社にバレますか?

SNSの投稿や同僚からの報告で発覚するケースがあります。就業規則で宿泊を伴う旅行の報告が義務付けられている場合は、事前または事後に報告が必要です。

Q. 休職中に旅行したことを理由に懲戒処分を受けました。無効にできますか?

旅行の事実だけで懲戒処分が認められるケースは少なく、過去の判例でも処分が「重すぎる」として無効とされた例があります。処分の内容・経緯を持参のうえ、弁護士にご相談ください。

Q. 休職中のアルバイトは認められますか?

就労できるなら復職すべきという考え方から、原則として認められません。発覚した場合、懲戒処分や傷病手当金の不支給につながる可能性があります。

Q. 傷病手当金をもらいながら外出・旅行しても問題ありませんか?

傷病手当金は就労不能な状態であることが支給要件です。外出・旅行の事実だけで直ちに不正受給とはなりませんが、就労可能と判断される状態であれば支給停止の対象になり得ます。主治医の指示に従った行動が重要です。

Q. 休職期間が満了したらどうなりますか?

就業規則の定めによりますが、一般的に「休職期間満了による自然退職」または「解雇」となります。期間満了前に復職できるよう、主治医・産業医と連携しながら準備を進めることが重要です。

休職の問題は弁護士に相談を

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休職中に外出や旅行が必ず禁止されるものではありません。病状によっては、外出することが推奨されることもあるでしょう。

ただ、あくまでも休職が療養することを主たる目的としていることに留意して行動するべきです。休職中であるにも関わらず、SNSなどで旅行を満喫している様子を頻繁に投稿することは慎むべきかもしれません。

また、休職中にするべき報告や行動制限をきちんと確認することも重要です。

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