コラム
更新日: 2024.07.30

養育費に大学費用を加算できる?奨学金を受けている場合の考え方|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

弁護士解説 離婚問題 大学費用を加算できるのか 養育費の終期と奨学金の関係

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、令和6年春の大学進学率は57.7%となり過去最高となりました。短大や専門学校も含めると84%にまで至っています。

このように、18歳を過ぎても大学に進学する子供が多くなったため、離婚後の養育費に大学の進学費用を含まれるのか、養育費の終期が大学卒業時まで延長できるのかが問題となることが多くあります。

ただ、養育費の終期は20歳までとなるのが通常であり、大学の進学費用を負担させるためには、養育費の義務者が大学進学に承諾していることが求められます。

本記事では、大学の進学費用の負担を養育費の義務者に求めることができるのかを解説していきます。

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養育費とは

子供の養育監護に必要となる費用です。養育費には、衣食住に必要となる生活費、学校教育費、医療費が含まれています。

非親権者の親は親権者の親に対して、養育費を支払う義務を負います。養育費の金額は、子供の年齢や人数、父母の収入に応じて計算されます。されます。

養育費の終期を大学卒業時とできるか

大学進学に伴う費用を養育費の義務者に負担してもらうためには、養育費の終期を大学卒業時とすることが必要です。

以下では、養育費の終期について解説します。

養育費の終期は20歳

養育費の終期は、原則として20歳までです。

成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、養育費の終期は従前と同様に20歳までとされるのが一般的です。

なぜなら、大学への進学率が50%前後であり、大学や専門学校に進学する子供は多いことから、成年年齢の引き下げがあっても、18歳以降も親の扶養を必要とする未成熟の状態となることが多いからです。

養育費の終期を大学卒業時とするための条件

養育費の終期を当然に大学卒業時までとすることはできません。

子供が大学に進学することを明示または黙示に承諾していることが必要です。仮に、義務者の承諾がなかったとしても、義務者の学歴、地位、収入等から、養育費の終期を20歳以降と定めることもあります。

ただし、通常、大学卒業時ではなく、22歳になる日以降一番早く到来する3月末日を終期とすることが多いです。例えば、令和6年7月に22歳になる場合には、令和7年3月末日が終期となります。

既に大学に進学している場合

別居時点で既に子供が大学に進学している場合には、養育費の義務者が大学進学に承諾していると認定される場合が多いです。

ただし、明確に大学への進学に反対している状況が立証される場合には、義務者の承諾は認められない可能性はあります。また、別居時と離婚時

義務者が明確に反対していたとしても、義務者の学歴が大学卒業であったり、22歳まで養育費を払えるだけの十分な収入を得ている場合には、養育費の終期が伸長される可能性があります。

大学に進学していない場合

離婚時点で、未だ子供が大学に進学していない場合でも、養育費の終期が伸びることがあります。

例えば、次のような事情がある場合には、大学進学の承諾が認められる可能性があります。

  • 大学までの一貫校に進学している場合
  • 大学への進学率の高い高等学校に進学している場合
  • 大学進学に向けた予備校に通っている場合

他方で、子供が幼く、大学進学までの年数が長い場合には、大学進学するか否かの予測を具体的に出来ないため、養育費の終期を伸長することは難しいことが多いです。

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加算される大学費用とは

大学進学を理由に養育費の終期が延長される場合、養育費の支払期間が伸びるだけでなく、大学進学に伴う大学費用の負担も求めることができます。

加算対象となる大学費用

養育費に加算される大学費用の対象としては、入学金、授業料、交通費、部活動費等の費目が考えられます。

ただし、すべての費用を加算できるわけではなく、義務者の収入や一般的に認められている大学費用の金額等を踏まえて、大学の進学のために必要となる合理的な金額に限定されます。

加算する大学費用の計算方法

養育費に加算するべき大学費用の計算方法には、いくつかあります。

一つは、公立学校の教育費相当額を控除する方法です。そもそも、養育費には、公立学校の教育費が含まれているため、教育費の二重負担を避ける必要から公立学校教育費を除く必要があります。

15歳以上の子の公立高等学校教育費相当額は年間259,342円とされています。これを大学費用から控除します。

もう一つは、子供の生活費指数から教育費の占める割合を控除する方法です。15歳以上の子の生活費指数85に対する教育費の割合は25となります。そこで、養育費の金額に85分の25の割合を掛けた金額を大学費用から控除します。

父母の収入比率で配分する

上記の計算方法で算出された大学費用を、父母の収入額の比率に応じて按分します。

具体的には、父と母の収入比率が80:20である場合には、大学費用の金額のうち80%に相当する金額を加算します。

ただし、事案によっては収入比率ではなく、均等の割合で負担することもあります。

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大学進学を理由に養育費の増額請求できるか?

養育費の終期や金額が確定した後に、子供が離婚後に大学進学した場合、大学進学を理由に養育費の増額を請求できる場合があります。

重要な事情変更といえるのか

養育費の増額が認められるためには、養育費の確定した時点で予定していなかった重要な事情の変更が生じたことが必要です。

養育費の合意等をした時点で、子どもが小学生以下であったために、大学への進学が将来の不確定事由であったと言える場合には、大学への進学が予期していなかった重大な事情の変更といえます。

大学進学を承諾していることが必要

大学の進学が重要な事情の変更であっても、当然に養育費の増額を求めることができるわけではありません。

大学進学による養育費の増額が認められるためには、養育費の義務者が大学進学に承諾していることが必要です。ただし、義務者の承諾がない場合でも、大学進学の事情、両親の学歴、義務者の年収や地位等を踏まえて、養育費の増額や終期の延長が認められる場合があります。

子がアルバイト収入を得ている場合

子供がアルバイト収入を得ていたとしても、原則としてアルバイト収入は考慮しません。

アルバイト収入の額は、大学費用を十分に賄える程の大きな額ではありませんし、アルバイト収入は、一時的で不安定なものです。

そのため、アルバイトの収入を得ていたとしても、養育費の算定において考慮はしないのが原則です。

ただし、養育費義務者が負担するべき大学費用が、義務者の収入額と比べて多額である場合には、アルバイト収入が考慮される可能性はあります。

子が奨学金を得ている場合

奨学金には、返済義務を負わない奨学金(給付型)と返済義務を負う奨学金(貸与型)があります。

給付型である場合、その奨学金を収入として扱うことはありませんが、大学費用の負担割合を修正する可能性はあります。

貸与型のうち、子や親権者が返済義務を負っていれば、原則として考慮することはできません。ただし、父母の収入額だけでは大学費用を支払うことができず、奨学金で大学費用の一部を支払うことが予定されている場合には、大学費用の負担割合を修正する可能性があります。可能性があります。

他方で、義務者が返済義務を負っている場合には、これを考慮して大学費用を加算するべきか、加算するとして負担割合をどう決めるべきかを判断するべきでしょう。

養育費を請求する流れ

養育費を請求するための手続を解説します。請求する時期が離婚前か離婚後なのかによって選択するプロセスが異なりますので、それぞれの場合に分けて紹介します。

離婚する前の手続

離婚する前の養育費の手続は、離婚手続に沿って、子供の親権者と養育費を決めていきます。

離婚協議

離婚する前であれば、子供の親権者を誰にするのかを協議した上で、養育費の金額や終期等について決めていきます。

離婚協議の結果、親権者や養育費、財産分与などの離婚条件について合意に至れば、離婚届を提出して協議離婚が成立します。

養育費の合意ができれば、養育費の具代的な内容を記載した合意書を作成するべきです。できれば、合意書は公正証書として作成することが望ましいです。なぜなら、強制執行認諾文言付公正証書を作成しておけば、養育費の未払い時に調停や訴訟をせずに強制執行できるからです。

離婚調停

夫婦間の話し合いが進まない場合には、離婚調停を家庭裁判所に申立てることになります。

離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦を仲裁し、調停の成立を目指します。話し合いの中では、子供の親権者や養育費について協議していきます。

調停手続を経て、夫婦間で合意に至れば調停が成立します。

離婚裁判(離婚訴訟)

調停手続を経ても夫婦間で合意に至らない場合には、離婚裁判を進めていきます。

離婚裁判では、夫婦が相互に主張と立証を繰り返し行い、審理を進めます。

審理が尽くされれば、当事者尋問を行なった上で、判決が下されます。ただ、当事者尋問の前に、裁判官から和解による解決の打診が行われます。和解協議の結果、裁判上の和解が成立し離婚が成立することも多くあります。

離婚後の手続

離婚時点で養育費の合意をせずに親権者だけ決めて離婚した場合です。

離婚後に、親権者は非親権者に対して、養育費の支払いを求め協議します。養育費の支払義務は、養育費の請求をした時から発生します。そのため、養育費の請求日を明確にするため、内容証明郵便を用いて養育費の請求をするようにします。

話し合いをしても合意できない場合には、養育費支払いの調停を行います。

調停でも合意に至らない場合には、調停は不成立となり、審判手続に移行します。

審判手続では、裁判官が父母の主張と証拠を踏まえて養育費に関する終局的な判断が下されます。

養育費増額請求の流れ

養育費の確定後に、事情の変更があった場合には、親権者は非親権者に対して、養育費の増額請求をします。

増額請求も同様に内容証明郵便により行います。

父母間で話し合いをしても奏功しない場合には、調停の申立てを行います。調停が成立しなければ審判手続に移行することになります。この点は先ほどの離婚後の手続と同様です。

養育費と大学費用の問題は弁護士に相談を

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養育費は子供の成長を支える大事な権利です。

相手方との話し合いを嫌って、養育費の金額や終期について十分な協議をすることなく離婚を成立させることが多くあります。離婚後も、養育費を請求することを諦め、経済的に逼迫した生活を余儀なくされているケースもよくあります。

養育費をきちんともらわないことは、子供の将来の選択肢を減らすことにもなりかねません。

相手方との協議に負担を感じる場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

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