コラム
最終更新日:2024.02.07

既婚者と知らなかった時でも慰謝料は払うべきか?知らずに不倫した時の注意点|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

離婚問題 性行為後に既婚者であると判明 私が慰謝料を支払うべきか

独身であるとの説明を信じて性行為をしたところ、後日その相手方の配偶者から不倫慰謝料の請求を受けることもよくケースです。

不貞行為の慰謝料請求を受けて初めて、交際相手が既婚者であることに気付くケースもあります。しかし、既婚者であると知らなかったとしても、当然にそれだけで不倫慰謝料の支払いを免れるわけではありません。仮に既婚者であることを知らなかったとしても、既婚者であることを知る機会があったのに、これを知ろうと努力しなければ、慰謝料請求は認められてしまいます。

また、既婚者であることを知る機会がなかった場合や十分に注意を尽くした場合でも、これを裏付ける証拠が必要です。客観的な証拠がなければ、やはり不貞慰謝料を支払う義務を負います。

今回の記事では、既婚者であることを知らない場合の不貞慰謝料の問題を解説します。

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既婚者と知らなかった時でも慰謝料を支払う義務を負う

交際相手が既婚者であると知らなかったとしても、既婚者と不貞行為に及んだのであれば、損害賠償を支払う義務を負います。

そもそも、既婚者であると知らなかったことを反証することは簡単ではありません。また、交際相手が独身と偽るなどして、既婚者であると知らなかったとしても、既婚者であることを知る機会があったのであれば、「既婚者かも?」という疑念を払拭するだけの確認・調査を尽くさなければ、慰謝料の支払義務から解放されません。

既婚者であることを知っていることを法律上「故意」といい、知らなくても知る機会があり十分な調査を尽くさなかった場合を「過失」といいます。そのため、既婚者と知らなかった場合には、慰謝料請求を排除するためには、この「故意」と「過失」がないことを反証する必要があります。

以下では、不貞行為の解説をした上で、「故意」「過失」について説明していきます。

不貞行為とは

不貞行為とは、配偶者以外の異性と性行為を行うことです。

不貞行為は性行為や性交類似行為に限定される

キスや食事に行くだけでは不貞行為には当たりません。また、愛情表現をするメールやLINEのやり取りだけでは不貞行為に当たりません。不貞行為は性器の挿入をする性行為に加えて、口淫や手淫などの性行為に類似する行為が含まれます。

性行為は一回でも不貞行為になる

不貞行為は、配偶者以外の異性との性的な関係をいいます。複数回にわたり性行為が行われるケースも多いですが、一回きりの性行為であったも不貞行為にあたります。

不倫相手も慰謝料の義務を負う

配偶者は、互いに不倫浮気をしない貞操義務を他方の配偶者に対して負っています。そのため、不貞行為は貞操義務に反する行為であり、夫婦関係の円満を壊すものですから、被害配偶者に対して不法行為基づく損賠償を支払う義務を負います。

加えて、浮気相手も、不貞行為を行った配偶者とともに不貞行為を行い、夫婦関係の平穏を害するわけですから、被害配偶者に対して、慰謝料を支払う義務を負います。

関連記事|浮気相手に不倫慰謝料請求できるのか|慰謝料請求の条件や注意点

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故意や過失があることが慰謝料請求の条件となる

不貞相手が慰謝料を支払う義務を負うためには、故意や過失があることが必要となります。

故意とは何か?

不貞行為の慰謝料請求における故意とは、不貞配偶者が既婚者であることを知らなかったことを言います。一般的に故意と言うと、わざと行うといったニュアンスが強いです。しかし、法律の世界では、故意=知っていることをいいます。

そのため、不貞行為の慰謝料請求の場面における故意とは、不貞配偶者が既婚者であることを不貞相手が知っている状態を指します。

なお、考え方によっては、既婚者であるだけでなく、夫婦関係が壊れていないことまで知っていることが必要と考える見解も存在しています。

過失とは何か?

過失とは、知る機会があったにも関わらず、不注意により知ることができなかった状態をいいます。

不貞行為における過失とは、既婚者であることは知らなかったものの、いろいろな事情から既婚者であることを知る機会があったのに、既婚者であることの調査を尽くさなかった状態をいいます。

不貞行為における過失が認められるポイント

過失が認められるか否かは、独身であることに疑念を持つ機会があったかが問題となります。

独身であることに疑念を持つか否かは、次の事情を考慮して判断します。

過失を基礎づける事情の例

  • 男女の関係
  • 出会う経緯・きっかけ
  • 関係の期間
  • 性行為の回数
  • 年齢
  • 指輪を装着していたか
  • 自宅への入室を頑なに拒否されていた

男女の関係

不貞配偶者と不貞相手の関係によっては、既婚者であることを知ることができたと言える場合があります。

会社の同僚・上司部下

不貞配偶者が会社の同僚や上司部下である場合、仮に既婚者であることを知らなかったとしても、既婚者であることを知る機会は十分にあったといえます。

学生時代の友達

不貞配偶者が学生時代の友人である場合、共通の知人や友人もいると思われます。その他のネットワークも含めて、独身であることに疑念を持つ機会はあったと考えられます。

出会う経緯(お見合いパーティーや独身専用のマッチングアプリ)

お見合いパーティー、独身専用のマッチングアプリ等で知り合った場合、独身であることが大前提となっており、不貞配偶者が既婚者であるとの疑いを持ちにくいと言えます。

交際期間が長い

アプリ等で知り合い一回きりの関係を持つ場合よりも、長期間にわたって不貞関係を持った場合には、独身であることの疑念を持つ機会があったと認定される可能性はあります。

年齢

不貞配偶者の年齢によっては、既婚者ではないか?との疑念を持つべきであったと認定される可能性があります。基本的には年齢だけで、過失の認定を受ける可能性は高くはありません。ただ、その他の事情とも合わせて、年齢が結婚適齢期を超えている場合には、独身であるとの疑念を持つことができたと判断されるケースもありました。

結婚指輪を付けていた

不貞配偶者が左薬指に指輪を装着していれば、既婚者であるとの疑念を強く持つことができると判断されます。

離婚した・バツイチであるという説明

不貞配偶者から『離婚した。』「バツイチになった。」と説明を受け、この説明を安易に信じてしまうケースはよくあります。

しかし、納得のできる具体的な説明ではなかったのに、単に離婚したという説明だけで何の疑問も持たなかったのであれば、過失が認定される可能性はあります。

また、不貞配偶者の説明に疑念を持つべき事情(土日だけ連絡が付かない、宿泊は絶対にしない、LINE以外のアプリを使っている等)があるのに、これを疑わずに鵜呑みにしてしまったのであれば、過失は認められる可能性があるでしょう。

自宅に入室させない

独身者であると偽るケースでは、自宅への入室を頑なに拒否することがあります。

不倫相手を自宅内に入室させると、配偶者や子どもの写真や私物などが目に触れてしまい、既婚者であることがばれてしまいます。既婚者の発覚を回避するために、自宅への入室を固く拒否している場合には、「既婚者ではないか?」と疑問を持つべき事情といえる可能性があります。

生活状況

不貞配偶者が単身赴任や別居婚をしている場合、その他の事情も加味して、既婚者であると認識することが難しいといえれば、過失は否定される可能性があります。

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不貞行為の慰謝料相場

不貞行為の慰謝料の相場は、50万円から300万円程です。

不貞慰謝料の金額を決める大きな要因は、不貞行為によって生じた結果、つまり、夫婦が離婚したのか、別居したのか、同居を継続しているのかです。

不貞慰謝料の相場

  • 離婚した 150万円〜200万円
  • 別居した 120万円〜150万円
  • 同居継続 100万円

その他に、次のような事情を考慮しながら、慰謝料として適切な金額を算出します。

慰謝料を算出する事情

  • 不貞行為の回数や期間
  • 婚姻期間の長短
  • 未成熟な子供の有無
  • 発覚後にも関係を継続したか
  • 男女の関係性
  • 反省や謝罪の有無

過失である場合には減額理由となる

不貞配偶者が既婚者であることを知らなかった(故意はない)場合、慰謝料額の減額要素になる可能性があります。

故意がある場合、既婚者であることを認識しながら性行為に及んでいます。他方で、既婚者であることを知らない場合、過失はあるにしても既婚者であることを知らずに性行為に及んでいます。そのため、故意がある場合と比べれば、過失しかない場合、不貞相手に対する非難の程度は小さくなると考えることができます。

不貞相手がするべき反論

被害配偶者の請求する慰謝料額がかなり高額に上るケースはよくあります。

安易に過大な請求を受け入れる必要はありません。適切に反論をして慰謝料額を減額させることは十分に可能です。

不貞行為の証拠を提出するよう求める

不貞行為の存在は、慰謝料を求める被害配偶者によって証明されなければなりません。慰謝料請求の内容に応じて、不貞行為の証拠を提出するように求めます。仮に、被害配偶者において、不貞行為を証する客観的な証拠がなければ、請求に応じる必要はありません。

ただ、安易に不貞行為の存在を否認すると、配偶者の反発を生み、交渉が難航する結果になるため、慎重に方針を決めるべきでしょう。

婚姻関係の破綻

不貞行為を行った時点で、既に夫婦の婚姻関係が破綻している場合、不貞行為は慰謝料の対象となりません。

ただ、婚姻関係の破綻はそう簡単には認定されません。既に離婚に向けて別居を始めていたり、離婚協議や離婚調停に着手している場合には、婚姻関係が破綻していると認定される可能性はあります。

しかし、食事を一緒にしない、会話をしないといった、いわゆる家庭内別居の状態であれば、婚姻関係が破綻している認定される可能性は低いでしょう。

婚姻関係が悪化していたこと

仮に婚姻関係が破綻にまで至っていないとしても、不貞行為の時点で婚姻関係が悪化している場合には、慰謝料額は低く抑えられます。

同居していたものの、離婚協議をしていたり、不貞行為前から不貞配偶者が不貞行為を繰り返していたような事情があれば、婚姻関係が悪化していたといえる場合があります。

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貞操権侵害による慰謝料請求

不貞配偶者が独身であると信じたことで、肉体関係を持った場合、貞操権の侵害を理由とした慰謝料請求が認められることがあります。

貞操権の侵害とは

貞操権とは、誰と性行為を行うかを自由に決めることのできる権利、純潔を侵されない権利です。

次の場合には、貞操権の侵害になる可能性があります。

• 既婚者であるのに独身であるとの説明を信じて性的な関係を持った

• 結婚するつもりがないのに、結婚を約束されたため、性的な関係を持った

• 既婚者であることは知っていたが、離婚すると嘘をつかれて性的な関係を持った

慰謝料額

貞操権侵害による慰謝料額として、10万円から100万円程が一般的な金額です。

ただ、性行為により妊娠や中絶といった事情がある場合には、慰謝料が高額になる傾向です。

慰謝料請求の流れ

不貞慰謝料の請求を受けてから解決に至るまでの流れを解説します。

慰謝料請求の通知を受ける

被害配偶者は、不貞相手に対して、不貞行為を理由とした慰謝料請求を行います。口頭による請求ではなく、文書で通知することがほとんどです。文書の中でも内容証明郵便により送付されることも多いでしょう。

通知書の内容をチェックする

慰謝料請求の通知を受けたら、その内容を精査します。不貞行為に関する説明が詳細か、不貞行為によって別居や離婚しているか、慰謝料額が高額に過ぎないかなどのポイントをチェックします。

被害配偶者と交渉する

被害配偶者との交渉を進めます。

不貞行為を認めるのか

不貞行為の説明が詳細であるために、不貞行為に関する証拠を十分に持っていると認められる場合には、不貞行為の存在を認めた上で謝罪することも選択肢の一つです。

他方で、不貞行為に関する説明が不十分であれば、不貞行為に関する資料の提出を求めることもあります。

金額の交渉

不貞行為の存在を認めるとして、金額の減額交渉をします。

被害配偶者は、通常、将来的な合意額を見越して、合意額にいくらかを加算した金額で請求しています。そのため、交渉により減額できることは十分に期待できます。

交渉に際しては、不貞行為による結果(別居の有無)、不貞期間、婚姻期間、求償権の放棄などを主張して、適切な慰謝料額を主張していきます。

合意書の作成

相手方と交渉の結果、合意に至れば合意書を作成します。合意書には、慰謝料額やその支払期限に加えて、口外しない、接触しない、違反した場合の違約金、清算条項などの規定も設けられます。また、慰謝料を分割で支払う場合には、分割払いに関する記載もします。

訴訟提起(裁判手続き)

交渉をしても合意に至らない場合には、交渉は決裂となり、被害配偶者は裁判所に対して訴訟提起をします。

訴訟手続とは

訴訟手続きでは、原告と被告の双方が準備書面と証拠の提出により主張と反論を行います。

双方の主張反論が尽くされると、裁判官から和解の提案が行われます。早期解決を実現させるため裁判上の和解が成立するケースは非常に多いです。

和解協議が決裂すると、証人尋問(当事者尋問)を行います。証人尋問を終えると数ヶ月後に裁判所より判決が下されます。

判決を受け取った日等の翌日から2週間以内に控訴をしなければ判決は確定します。

裁判所に行く必要があるか

当事者双方に代理人弁護士が就いていれば、裁判手続はMicrosoft社のTeamsを用いて行いますので、当事者本人だけでなく代理人弁護士も裁判所に出向く必要はありません。他方で、代理人弁護士が就いていない場合には、裁判所に出頭する必要があります。ただ、裁判所が遠方であるような場合には、電話会議システムにより対応することができます。

▶慰謝料調停に関する裁判所の解説はこちら

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不貞行為の被害配偶者は、不貞相手に対して、不貞行為に関して厳しく追及してくることも稀ではありません。不貞行為の加害意識から、被害配偶者の請求に対して十分な精査や反論をすることもなく支払いの合意をしてしまうことがあります。

さまざまな観点から反論をすることで、慰謝料額を減額させることは十分に可能です。

ただ、慰謝料の交渉をご自身で対応することはとても大きな心身の負担を招きます。

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