コラム
最終更新日:2023.12.21

離婚時に苗字を変えないメリットや手続きを解説|子どもへの影響や注意点を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

結婚して配偶者の苗字を名乗っている方は、離婚時に苗字を変えるか変えないかで迷うこともあるでしょう。

法律上は離婚すると旧姓に戻るのが原則ですが、簡単な手続きをすれば結婚時の苗字を名乗り続けることもできます。仕事や子どもへの影響を考えて、結婚時の苗字を名乗り続ける人は少なくありません。

この記事では、離婚時に苗字を変えないことによるメリットとデメリットを解説し、必要な手続きも紹介します。子どもの苗字や戸籍はどうすればよいのかなど注意点もご説明するので、ぜひ参考にしてください。

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離婚しても苗字を変えないことはできる?

離婚しても苗字を変えず、結婚時の苗字を名乗り続けることはできます。

現在の日本の法律では、夫婦は同じ苗字を名乗ることとされていま(民法第750条)。結婚して配偶者の苗字を名乗っていた人は、離婚後は旧姓に戻るのが原則です(同法第767条1項)。しかし、必要な手続きをすれば結婚時の苗字を名乗り続けることが認められます(同条2項)。

苗字を変えない場合の戸籍はどうなる?

苗字を変えない場合は、離婚時に新しい戸籍を作る必要があります。

一般的に婚姻中は、夫を筆頭者とする戸籍に妻も記載されていることが多いでしょう。この場合、妻は離婚後に元の戸籍(親の戸籍など)に戻るか、自分で新しい戸籍を作るかを選ぶことになります。

ただ、親の戸籍に戻る場合は自動的に旧姓に戻ってしまい、結婚時の苗字を名乗り続けることはできません。そのため、離婚後も苗字を変えない場合には、その苗字で、自分を筆頭者とした新しい戸籍を作らなければならないのです。

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離婚しても苗字を変えない理由

離婚後は旧姓に戻る人もいますが、苗字を変えない人も多いです。離婚しても苗字を変えない理由として多いのは、次のようなものです。

子どもへの影響を考慮

未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合、母親が子どもの親権者となるケースが多いです。母親と子どもが一緒に暮らしていくのに、苗字が別々では子どもが違和感を持ち、精神的に大きな負担を感じてしまうでしょう。

子どもに母親の旧姓を名乗らせることも可能ですが、その場合は友人などから親の離婚をからかわれたりするおそれがあります。何よりも、それまでずっと名乗ってきた苗字が変わることで、子どもは精神的に大きな負担を感じてしまうはずです。

その点、離婚後も母子ともに結婚時の苗字を名乗り続ければ、子どもへの悪影響を避けることができます。

名義変更の手続きが大変だから

苗字を変えてしまうと、名義変更の手続きが大変になります。戸籍の変更だけでなく、仕事をしている人なら、職場で様々な書類を提出する必要があるでしょう。

その他にも、銀行口座やクレジットカード、パスポートなどをはじめとして、名義変更の手続きを要するものは数多くあります。

このような面倒を避けるために、結婚時の苗字を名乗り続ける人も少なくありません。

再婚を考えているから

女性の場合、再婚をすると新しい夫の苗字を名乗るようになるでしょう。そのため、離婚時に旧姓に戻っていると、名義変更の手続きを繰り返す必要性が出てきます。

離婚時に再婚を視野に入れている人は、「どうせまた苗字が変わるのなら」と考えて、離婚時に苗字を変えないことも多いです。

離婚時に苗字を変えることのメリットとデメリット

一方で、離婚時に苗字を変えて旧姓に戻すとどうなるのかも気になることでしょう。ここでは、離婚時に苗字を変えることのメリットとデメリットをご紹介します。

苗字を変えるメリット

苗字を変えて旧姓に戻ることで得られる主なメリットは、次のようなものです。

  • 心機一転して再スタートを切りやすい
  • 実家の親も安心する
  • 戸籍の手続きの負担が軽い

人生の再スタート

離婚原因は様々ですが、配偶者への愛情がなくなって離婚したのであれば、苗字を変えることで心機一転しやすくなります。特に、配偶者と憎しみ合って別れた場合は、結婚時の苗字を名乗り続けることがストレスになるでしょう。旧姓に戻ることで過去を捨て、人生の再スタートを切ろうと考える人は多いです。

両親の安心

元配偶者の苗字を名乗ったままでは、実家の親が違和感を持ち続ける可能性があります。旧姓に戻れば、実家の親も「我が子が戻ってきた」と感じ、安心するでしょう。

手続的な負担

手続きの面では、旧姓に戻ると名義変更が必要ですが、戸籍の手続きとしては離婚届を提出するだけです。他に特段の手続きをする必要はありません。

苗字を変えるデメリット

苗字を変えて旧姓に戻ることで生じる主なデメリットは、次のようなものです。

・離婚したことを周囲に知られやすい

・子どもに悪影響を与えることがある

・名義変更の手続きが大変

苗字が変わってしまうと、離婚したことを職場の人や友人など、周囲の人に知られてしまう可能性が高いです。

ただ、戸籍上の苗字が旧姓に戻っても、仕事では通称として結婚時の苗字を名乗り続けることで、ある程度はこのデメリットを回避することもできます。子どもへの悪影響も、少しは抑えることができるでしょう。

それでも、戸籍上の苗字が変わる以上、名義変更の手続きを回避することはできません。

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離婚後にいつまで苗字を変えることができる?

苗字を変えるかどうかは、基本的に離婚後3ヶ月以内に決めなければなりません。離婚時に特段の手続きをしなければ旧姓に戻りますが、離婚後3ヶ月以内であれば、簡単な手続きで結婚時の苗字を名乗り続けることができます。

婚氏続称した場合

結婚時の苗字を名乗り続ける手続きをした後は、苗字を変えるためには特別な手続きが必要となります。確実に苗字を変えることができるとも限りません。

家庭裁判所に氏の変更許可申立てをしなければならず、やむを得ない理由がない限り苗字の変更は認められません。

したがって、苗字を変えることができるのは、基本的に離婚後3ヶ月以内で、かつ、結婚時の苗字を名乗り続ける手続きをするまでとなります。

離婚後しばらくしてから姓を戻すことはできる?

離婚後に結婚時の苗字を名乗り続ける手続きをした場合でも、やむを得ない事由があれば旧姓に戻すことが可能です。

この場合には、家庭裁判所の許可を得て「氏の変更」という手続きが必要となります。氏の変更を認めてもらうためには、「やむを得ない事由」が求められるのです(戸籍法第107条1項)。

したがって、単なる思いつきだけで旧姓に戻すことはできません。ただ、次のようなケースでは、氏の変更が認められる可能性が高いといえます。

・離婚時に、仕事上の必要性や子どもへの影響を考慮して、やむを得ず結婚時の苗字を名乗り続けたこと

・退職したり、子どもが成長したりして、結婚時の苗字を名乗り続ける必要性がなくなったこと

・苗字を変えて消費者金融から借金をするなどの不当な目的がないこと

離婚時に苗字を変えないメリットとデメリット

離婚時に苗字を変えないことにも、メリットとデメリットがあります。後悔しないためにも、しっかりと確認しておきましょう。

苗字を変えないメリット

苗字を変えないことによる主なメリットは、次のようなものです。

・離婚したことを周囲に知られずに済む

・仕事や子どもへの悪影響を避けることができる

・名義変更の手続きが不要

離婚しても苗字が変わらなければ、今までと同じように過ごすことも可能です。職場や友人などから離婚したことを詮索される可能性も低いですし、子どもと同じ苗字を名乗って安心させることも容易になります。

名義変更の手続きも不要なので、生活上の面倒を避けることもできます。

苗字を変えないデメリット

苗字を変えないことで生じる主なデメリットは、次のようなものです。

・心機一転を図りにくい

・再婚後に離婚した場合は親の苗字に戻れない

元配偶者の苗字を名乗り続けることには、心理的な抵抗を感じる人もいることでしょう。氏名を名乗る度に、元配偶者のことや結婚生活のことを思い出し、嫌な気持ちになるかもしれません。

また、再婚後に離婚すると親の苗字には戻れないことにも注意しておきましょう。この点については、後ほど詳しく解説します。

子どもの苗字と戸籍はどうなる?

離婚して子どもを引き取る場合には、子どもの苗字と戸籍も考えておく必要があります。選択肢は以下の3つです。事前によく検討しておきましょう。

父の戸籍に入れたまま結婚時の苗字を名乗る

母が子どもの親権者となる場合でも、離婚時に特に手続きをしなければ、子どもは父戸籍に入ったままとなります。子どもの苗字も、父の苗字のままです。

母の戸籍に入籍して結婚時の苗字を名乗る

子どもと母と同じ戸籍に入れるためには、母が新しい戸籍を作る必要があります。

その上で、子どもを母親の戸籍に入籍させるためには、氏の変更許可申立てをする必要があります。たとえ、母親が結婚時の苗字を名乗り続けており、父親と母親が同じ苗字であっても氏の変更の手続きが必要となります。具体的に、元夫が田中、元妻が婚氏続称で田中姓のままであっても、子供は、氏の変更許可をしなければ元妻(母)の戸籍に入籍できません。

なお、母が親の戸籍に戻り、その戸籍に子どもを入れることも可能ではあります。しかし、この場合には母の親と子ども(母の親にとっては孫)が養子縁組をしなければなりません。かつ、母も子も、結婚時の苗字を名乗ることはできません。

母の戸籍に入籍して母の旧姓を名乗る

母が旧姓で新しい戸籍を作り、その戸籍に子どもを入れて、子どもにも母の旧姓を名乗らせるという方法もあります。

元夫との関係を断ち、母と子で新たに出直そうと考えて、この方法をとる人も少なくありません。

この方法をとるためには、子どもの転籍届を提出する前に、家庭裁判所で「子の氏の変更」の手続きをする必要があります。例えば、母親が旧姓の木村に復氏しており、子供が父親姓である田中の場合には、氏の変更により木村姓に変更しなければ、母親の戸籍に入籍することは出来ません。ただ、離婚して母の旧姓に変更する場合は、問題なく許可されることがほとんどです。

婚氏続称制度の手続き

離婚後も結婚時の苗字を名乗り続けることができる制度のことを、「婚氏続称制度」といいます。

婚氏続称制度を利用するための手続きは簡単で、「婚氏続称届」(正式名称は「離婚の際に称していた氏を称する届」といいます。)を役所に提出するだけです。

婚氏続称の期限

ただし、婚氏続称届は離婚から3ヶ月以内に提出しなければならないことにご注意ください。離婚届と一緒に提出することもできます。

婚氏続称の提出先

提出先は、本籍地または住所地の市区町村の役所です。本籍地以外の役所に提出する場合は、戸籍謄本を添付する必要があります。

婚氏続称の必要書類

婚氏続称届の書式は、役所の窓口で入手できます。自治体によっては、ホームページからダウンロードできるようになっているところもあります。記入すべき事項は特に難しくないので、役所が用意している記入例などを参考にして記入するとよいでしょう。

そのほか、運転免許証等の本人確認書類を提出します。本籍地以外の市町村役場で提出する場合には、戸籍謄本も必要となります。

旧姓に戻すための手続き

離婚時に旧姓に戻す場合は、特に手続きは不要です。離婚届を提出するだけで済みます。

しかし、婚氏続称届を提出して結婚時の苗字を名乗り続けた後、旧姓に戻すためには「氏の変更」の手続きが必要です。

具体的には、家庭裁判所へ「氏の変更許可申立書」を提出します。このとき、以下のものも一緒に提出する必要があります。

  • 申立人の戸籍謄本
  • やむを得ない事由を証明する資料
  • 同じ戸籍に15歳以上の人がいる場合は、その人の同意書
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(84円~数百円。申立先の家庭裁判所で確認が必要。)

やむを得ない事由を証明する資料としては、申立人の婚姻前の戸籍謄本が基本的に必要です。その他にも、状況に応じて裁判所から様々な資料の提出を求められることがあります。

やむを得ない事由が認められなければ旧姓に戻すことはできませんので、困ったときは弁護士に相談することをおすすめします。

苗字を変えないで再婚し、離婚した場合の注意点

女性が再婚すると新たな夫の苗字に変わることが多いですが、さらに離婚すると、親の苗字には戻れないことに注意が必要です。

離婚すれば旧姓に戻るのが原則ですが、「旧姓」とは「ひとつ前の姓」を意味します。つまり、元の夫の苗字に戻るか、後の夫の苗字を名乗り続けるかのどちらかとなります。親の苗字は「二つ以上前の姓」となるため、原則として戻れないのです。

やむを得ない事由があれば「氏の変更」の手続きによって親の苗字に戻れますが、家庭裁判所の許可が得られず、氏の変更が認められない可能性もあります。

この点を考慮すれば、離婚した際には旧姓に戻しておく方が無難ともいえます。

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離婚時に苗字を変えるにしても、変えないにしても、メリット・デメリットがあります。後々のことも考慮して、慎重に判断した方がよいでしょう。

 離婚後の苗字について迷っている方や、氏の変更でお困りの方は、弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。豊富な経験に基づき、有益なアドバイスが得られることでしょう。

慰謝料や親権、財産分与、養育費、婚姻費用など離婚に関する悩みがある方も、弁護士に相談してみることをおすすめします。

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