はじめに:2026年4月、親権制度が大きく変わりました
2024年5月に成立した改正民法が、2026年4月1日に施行されたことで、離婚後の共同親権を選択できるようになりました。
これまでは離婚後の親権は父母のどちらか一方のみが持つ「単独親権」しか認められていませんでしたが、民法の改正後は、
- 父母の協議によって単独親権か共同親権かを選択できる(民法819条1項)
- 協議が調わない場合は家庭裁判所が単独親権か共同親権かを決定する(民法819条2項)
という制度に変わりました。
本記事では、改正法の内容を踏まえたうえで、父親が親権・監護権を獲得するための考え方とポイントを解説します。なお、法改正前に単独親権で離婚が成立している場合、施行日(2026年4月1日)を迎えても自動的に共同親権に変わるわけではありません。共同親権への変更を希望する場合は、家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てる必要があります。
共同親権と単独親権、何が変わったのか
共同親権とは
共同親権とは、離婚後も父母双方が親権を持ち続け、子の進学先や重大な医療行為の決定など重要な事項を共同で決定する制度です。日常的な行為(食事、習い事の選択など)は、子と同居する親が単独で決定できます。
単独親権との違い
| 単独親権 | 共同親権 | |
|---|---|---|
| 親権者 | 父母どちらか一方 | 父母双方 |
| 重大な決定 | 親権者が単独で決定 | 原則父母が共同で決定 |
| 日常の決定 | 親権者が単独で決定 | 同居親が単独で決定可 |
| 選べるケース | 協議・裁判で単独親権を選んだ場合、DVや虐待のおそれがある場合 | 父母の協議または裁判所の判断 |
父親にとっての意味
単独親権しかなかった時代は、「親権を取れるか取れないか」がすべてでした。共同親権が選択肢に加わったことで、たとえ「子と同居する親(監護者)」になれなくても、共同親権者として子の重要な決定に関与し続ける道が開かれています。
一方で、子と実際に同居し日常の世話をする「監護者」を父母のどちらにするかという問題は、共同親権下でも残ります。
父親が親権・監護者を取れる確率(最新統計)
令和6年度の司法統計によると、離婚調停・審判で離婚に至った夫婦のうち、父が親権者となったものは1,373件、母が親権者となったものは15,780件でした。割合にすると、父親が親権者となるのは約1割、母親が約9割という状況です。
これは単独親権を前提とした従来の統計であり、共同親権が施行された2026年4月以降は数値の傾向が変わっていく可能性があります。ただし、監護者の指定においては引き続き「これまでの監護実績」が重視されるため、父親が不利になりやすい構造そのものが解消されたわけではありません。
父親が親権・監護者になりにくいとされてきた理由
家庭裁判所が親権者・監護者を判断する際に重視してきた主な原則は次のとおりです。
(1)母性優先の原則
父親より母親のほうが乳幼児の養育に適しているとされる考え方です。特に子どもが5歳前後までの場合に重視される傾向があります。
(2)継続性の原則(現状維持の尊重)
子どもが現在置かれている生活環境に問題がなければ、その環境を維持するほうが子の福祉に資するという考え方です。別居後に長期間子どもと離れている父親は、この原則によって不利になりがちです。
(3)子どもの意思
子の年齢が上がるほど、本人の意思が判断材料として重視されます。15歳以上の場合、裁判所は子の意見聴取を行うことが法律上必須とされています。10〜12歳前後でも、意思が一貫し合理的根拠があれば考慮されることがあります。
(4)きょうだい不分離の原則
複数の子がいる場合、きょうだいを父母に分離せず同一の親のもとで養育すべきという考え方です。
これらの原則自体は、共同親権制度の施行後も監護者指定の判断基準として引き続き重視されると考えられています。
共同親権下でも「監護者指定」は重要
共同親権が導入されても、子が実際にどちらの親と同居して日常生活を送るかという監護者の指定は別問題として残ります。
裁判所の手続として、共同親権の父母の間でも「子の監護者指定の調停」を利用することができ、監護者として指定された親は、居所の決定や重大な医療行為の決定なども含めた子の身上監護全般を単独で決定できるようになります(財産管理や法定代理などを除く)。
つまり、「共同親権者になれるかどうか」より「監護者に指定されるかどうか」のほうが、実際の子育てへの関与度を大きく左右するといえます。これから父親が親権・監護権の問題に向き合う際は、この監護者指定を見据えた準備が重要です。
こんなお悩みはありませんか?
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別居前のご相談が、結果を大きく左右します
父親が親権・監護者に指定されるためのポイント
① 別居前からの監護実績を積み重ねる
おむつ替え、保育園の送迎、夜泣き対応、通院の付き添いなど、日常的な育児への関与実績は、後の判断において重要な資料になります。母子手帳の記載、育児日記、保育園の連絡帳などは具体的な証拠になり得ます。
② 別居後の監護実績を継続させる
別居に際して子どもと一緒に生活を始められた場合、その状態をできる限り長く安定的に継続させることが重要です。裁判所は「不必要に養育環境を変えるべきではない」という考え方を基本的に持っています。
③ 母親との面会交流に積極的に応じる
離婚後に親権・監護権を得られなかった親との面会交流に対して、日頃からどれだけ協力的かという姿勢は、「子の利益を優先できる親かどうか」の判断材料になります。
④ 監護補助者・周囲のサポート体制を整える
祖父母やきょうだいなど、監護を手伝ってくれる人(監護補助者)がいるかどうかも考慮されます。保育園・学校の先生との日頃のコミュニケーションも重要です。
⑤ 子どもの意思を尊重した関わり方をする
子どもの年齢が上がるほど、本人の意思が判断に影響します。日頃から子どもと信頼関係を築いておくことが、結果的に重要な要素になります
⑥ 母親側に監護上の具体的な問題がある場合は記録を残す
育児放棄、子への暴言・暴力、経済的に著しく不安定な生活など、監護能力に疑義が生じる事情がある場合は、写真・診断書・日記などの客観的資料を集めておくことが重要です。
父親に不利に働く事情
以下のような行動は、監護者・親権者の判断において不利な事情として扱われる可能性が高いため、絶対に避けてください。
- 配偶者への暴力を伴う強引な子連れ別居:有形力を行使しての子連れ別居は、その後の監護実績の積み重ねがあっても評価されにくくなります。
- 別居後の子の連れ去り:すでに母親が子と同居し別居が開始されている状況で子を連れ去る行為は、未成年者略取に該当しうる重大な問題です。
- 子の面前での配偶者への暴言・暴力(面前DV):子に対する直接の暴力でなくても、心理的虐待として扱われ、著しく不利な事情となります。
養育費は誰が誰に請求できるのか
子と同居して監護する側の親は、もう一方の親に対して養育費の支払いを求めることができます。これは親権者・監護者が父親であっても同様です。
母親の収入が父親より低い場合でも、養育費算定表に基づいて請求が可能です。母親に就労能力があるにもかかわらず無収入の場合、パート就労を想定した収入(目安として年収120万円程度)を仮定して算定されるケースもあります。
→ 養育費の算定方法について、詳しくは「養育費を払わないと科せられる4つのペナルティ」の記事もご覧ください。
親権・監護者を決めるための手続きの流れ
ステップ1:別居前の話し合い(任意)
可能であれば、別居前に父母間で監護者・親権の方向性について話し合います。合意できれば、その後の手続きの負担を大きく減らせます。
ステップ2:監護者指定調停・審判、子の引渡し審判
話し合いが難しい場合、家庭裁判所に「子の監護者の指定」の調停・審判を申し立てます。子を連れ去られた場合は、これと合わせて「子の引渡し」の審判、緊急性が高い場合は「審判前の保全処分」も検討します。
ステップ3:裁判官による審問
裁判官が父母それぞれに対し、別居時の状況や監護状況について直接質問します(1人あたり30〜60分程度)。
ステップ4:家庭裁判所調査官による調査
調査官が、父母双方からの聞き取り、子どもとの面談、保育園・学校の先生への聞き取り、自宅訪問などを行い、調査報告書を作成します。
ステップ5:審判・調停・離婚訴訟
調査結果を踏まえて、裁判所が監護者・親権者の判断を下します。話し合いがまとまる見込みがあれば調停に、まとまらなければ審判または離婚訴訟で最終的な判断が示されます。
よくある質問
Q. 共同親権になれば、子どもと一緒に暮らせますか?
A. 共同親権はあくまで「重要な事項の決定権」に関する制度であり、子と同居する権利を当然に認めるものではありません。同居して日常を共にするには、別途「監護者」の指定が必要です。
Q. すでに離婚していて単独親権(母親)です。共同親権に変更できますか?
A. 施行日(2026年4月1日)以降、家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てることで変更を求めることは可能です。ただし、共同親権への変更が子の利益になると裁判所が認める必要があり、自動的に変更されるわけではありません。
Q. 母親が不倫していれば父親が親権を取りやすくなりますか?
A. 不貞行為の有無と親権者・監護者としての適格性は、原則として別問題として扱われます。ただし、不貞行為を優先して子の監護を放置していたなど、監護への具体的な悪影響があった場合は考慮され得ます。
Q. 何から準備を始めればいいですか?
A. 別居を検討している段階であれば、別居前にご相談いただくのが最も有利です。すでに別居している場合も、現在の監護状況を整理し、早めに弁護士へご相談ください。
父親の親権・監護権問題は弁護士にご相談ください

2026年4月の共同親権制度の施行により、親権をめぐる考え方は大きな転換点を迎えています。一方で、「子と実際に同居して育てる」監護者の指定においては、これまでと同様、別居前後の監護実績や生活環境の安定性が重視される構造は変わっていません。
別居を考え始めた段階から、計画的に準備することが何よりも重要です。
難波みなみ法律事務所では、離婚問題・親権問題の解決実績を持つ弁護士が、共同親権制度にも対応した最新の知見に基づき対応いたします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
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