「養育費を払わないとどうなるの?」
養育費を約束どおり払わない場合、どのような影響を及ぼすのかイメージしにくいですよね。
実は養育費を払わなくても認められる状況もありますが、養育費の支払い義務がある場合には以下のような4つのペナルティが科されます。

法改正によって養育費に対する罰は重くなっており、状況によっては複数のペナルティが同時に科されることもあります。
ただし、上記のようなペナルティは親権者(養育費を受け取る側)がアクションを起こさなければ生じません。
よって、支払いを催促するなど、回収するための行動を起こさなければペナルティは科されないのです。
そこで本記事は、養育費を払わない状況に直面している人の不明点を解消し、取るべきアクションが分かるよう、以下の内容をまとめました。

そもそも養育費は子どもを扶養する義務を果たすためのお金で、法律上でも支払いを強く求めています。
しかし、支払い期間が長期間になりやすい養育費は、支払い義務者の状況や心境の変化によって払わなくなるケースも少なくなりません。
子どもの生活や教育をしっかり支えていくためにも、本記事を最後まで読み、養育費の義務や対処法について知識を取り入れていきましょう。
1. 養育費を払わないと科される法改正後の重い4つのペナルティ
養育費を払わないと4つのペナルティのいずれか、または複数の罰が科されます。
養育費には支払い義務がありますが、実際の受給状況は約25%と少ない実情を受け、2020年に養育費の一部を変更する民法改正が行われました。
改正内容には刑事罰を科す事項もあります。
養育費の不払いに対するペナルティや、実際の養育費の受給状況について詳しく解説します。
1-1.財産の差し押さえ
養育費を支払う義務があるにも関わらず、請求にも応じず支払わなかった場合、財産の差し押さえをして未払い分を回収します。
差し押さえ対象として代表的なものは以下のとおりです。
- 現金、絵画、ブランド品、宝石、家具、家電など
- 土地や家などの不動産(取得が婚前でも支払い義務者の名義であれば差し押さえ可)
- 給与、預貯金
差し押さえは親権者が裁判所に申立てを行うことで強制的に支払い義務者の財産を差し押さえることができ、未払いの養育費を回収することができるようになります。
このような養育費の回収のために行われる差し押さえを『強制執行』と言い、強制的に行うことが認められています。
よって、支払い義務者による異議申し立てや未払いした事実の撤回は認められません。
Tips! 効果的な差し押さえは「給与」と「預貯金」 上記の記載したように差し押さえ対象は様々ありますが、養育費の回収に効果的な差し押さえ対象は「給与」または「預貯金」です。その理由を解説します。 給与を差し押さえすると・・・給与を差し押さえると、給与の手取り額1/4が支払い義務者の勤務先から直接親権者(受け取る側)へ支払われるようになります。会社が親権者に直接払うため、毎月確実に養育費を受け取れるようになることが期待できるのです。 転職や退職によって再度払われない状況になることが不安になるところですが、退職金も差し押さえ対象に該当しますし、転職先の情報を把握できれば別途強制執行手続きを行うことで給与を差し押さえることが可能です。 預貯金を差し押さえすると・・・預貯金を差し押さえると、まとめて回収することが期待できます。給与のように差し押さえ範囲に制限がなく差し押さえることが認められているからです。 よって、預貯金額が大きい場合はまとめて回収することができるでしょう。ただし、預貯金の場合は強制執行1度につき1回の差し押さえとなります。まとめて回収できなかった場合、再度強制執行の手続きをしなければならないため、多くの預貯金を持っている場合に効果的です。 |
1-2. 遅延損害金の発生
養育費を払わないと通常の借金のように“遅延損害金”が発生します。
養育費も民法で認められた金銭債務だからです。
民法上、遅延損害金の利率は年3%(法改正前の場合は年5%)と定められており、養育費の延滞金について取り決めがない場合でも適用されます。
もしも延滞利率を取り決めている場合は、設定した利率を採用して算出された額の請求が認められます。
遅延損害金は支払い期限までに払われなかったすべて養育費に加算されるため、未払い期間が長いほど利息も大きくなります。
遅延損害金の計算方法は以下のとおりです。
▼遅延損害金の計算式
遅延金額 × 年率 ×(遅延日数÷365日) |
例えば、利率3%が適用される状況で、月々5万円の養育費の支払いが100日間遅延している場合、遅延損害金額は以下のように算出できます。
例
月々5万円 × 年率3% ×(遅延100日÷365日)=遅延損害金 405円 |
Tips!
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1-3. 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
養育費にはもともと「30万円以下の過料」とい金銭的制裁がありましたが、2020年の民法改正により『6か月以下の懲役または50万円以下の罰金』という重い刑事罰が科されるようになりました。
ただし、養育費の未払いがすぐにこのような刑事罰につながるわけではありません。
以下のような場合に刑事罰が科されるとされています。

民法改正では『第三者からの情報取得手続き』という制度が設けられ、親権者は裁判所を介して財産開示を求めることが認められるようになりました。
よって、支払い義務者は親権者の財産開示に応じる必要があり、財産開示手続きを拒否したり、無視したりすることが刑事罰につながります。
また、虚偽の陳述・報告をした場合も刑事罰にあたる事項です。
刑事罰で罰則を受けた場合は、懲役や罰金という制裁だけでなく、前科として経歴が残るものです。
仕事への影響や海外渡航の制限、生活や家族への影響など、様々な場面で支障が出るようになるでしょう。
1-4. 面会交流に影響が出る
養育費を払わないと面会交流に影響が出る可能性があります。
というのも、養育費の支払いを滞っている事実がある場合、親としての責任義務を果たしていないことに親権者は不安を抱き、子どもとの面会交流を拒否することは珍しくないことだからです。
ただし、本来親権者には面会交流を拒否することは認められません。面会交流を拒否することが認められるときは子どもに危険が及ぶケースのみと定められています。
例えば、以下のようなケースです。

子どもに危険が及ぶことが想定されるような特別な事情がない限り、面会交流は実施しなければならないとされています。
そもそも、面会交流は子どもが持つ権利であるうえ、法的な観点から見た場合、養育費と面会交流には一切関係性がないからです。
よって養育費の支払いを理由にして親権者が面会交流の決定を下せるわけではありません。
ただし、そうは言っても現実は養育費を払わない親に子どもを会わせることに不安を感じることは否めません。
養育費を支払わないことで子どもとの面会がスムーズにできなくなる可能性が高まるため、ペナルティの1つだと言えるでしょう。
1-5. 法改正が行われた背景
2020年に法改正が行われたことで、養育費を払わないことへのペナルティが従来よりも一層重いものになりました。
その背景について解説します。
1-5-1. 養育費の受給率の低さ
養育費の受給率の低さが、法改正の一因になっていると言えるでしょう。
平成28年に行われた調査によると、実際の受給状況は以下のような状況であることが分かっています。
参考)厚生労働省『母子世帯及び父子世帯に置ける養育費の需給状況(平成28年)』
養育費を受給し続けている家庭は少数派で、ほとんどの家庭が養育費を受け取れていない状況であることが分かっています。
養育費を支払わないことに対するペナルティを重くすることで心理的なプレッシャーを与え、払わない状況になることを防いだり、万が一受給ができない状況になったときには回収しやすくなるようにしたりと支払い率の向上を狙っています。
1-5-2. 強制執行する負担の軽減
法改正が行われた背景には強制執行(支払い義務者の財産差し押さえ)を行う際の大きな負担も挙げられます。
というのも、従来の強制執行には、事前に申立て人が差し押さえ対象の財産を特定しなければならず、特定することが大きなハードルになっていたからです。
養育費の未払いに困っている場合は、別居していることがほとんどで、支払い義務者の住まい先、勤務先、預貯金口座などの最新情報を共有していることは稀です。
そのため、財産の詳細を知ることは多くの人にとって容易なことではありません。
このような背景から強制執行はハードルが高く、養育費の回収を諦めざるを得ないという現状がありました。
法改正では、強制執行の申立てをしやすい環境に変え、財産開示手続きを無視できない刑事罰も加えました。
養育費の回収に関する手続きが中途半端に終わることを防ぐ効果があるため、受給率のアップが期待できます。
2.養育費を払わなくて良い場合とは?
払わないことでペナルティが科される養育費ですが、払わないことを認めるケースもあります。
それは以下のような場合です。

払わないことが認められるケースについて1つずつ解説します。
2-1. 払わないことに双方の同意がある
養育費を払わないことに双方の同意がある場合、支払いに強制力はなくなります。
そもそも養育費は当事者間の話し合いで合意を得た内容が優先されるからです。
よって、どちらか一方が払わない、もしくは受け取らないと主張しているからと言って適用されるわけではありません。
双方の合意を得た場合のみ、払わないことが認められます。
ただし、当事者間の話し合いで払わないことに合意を得た場合でも、子どもから『扶養料』を請求された場合には支払い義務が生じます。
子どもが請求できる『扶養料』については4章で詳しく解説しているので、気になる方は4章も参考にしてください。
2-2. 支払い義務者がやむを得ない状況に陥っている
支払い義務者がやむを得ない状況に陥っている場合も支払いの免除や減額が認められます。
具体的に言うと、支払い義務者に収入や財産がない場合です。
ただし、このような状況が認められる場合は以下のようなケースに陥っていることが前提です。
- 病気や怪我で働けなくなった
- 会社の都合でリストラにあい失職した
これらは故意や自己都合ではないことが条件です。よって「故意に怪我をした」「自己都合で起業した」などの理由によって無収入である場合、支払いの免除は認められません。
たとえ故意や自己都合ではない無収入に陥った状況でも、働ける能力があると判断された場合は養育費の支払い義務は継続します。
というのも、養育費は『生活保持義務』という義務に該当するもので、自分の生活水準と同等の生活を扶養対象の子どもにも与え、保持することが求められています。
「生活が苦しい」「余裕が出たら払う」などの言い分は認められず、支払い義務者の生活レベルを落としてでも支払い続ける義務があるものです。
収入や財産がないことによる養育費の支払い免除は、よほどの状況ではない限り認められるものではありませんが、1つのケースではあります。
2-3. 受取側の収入が想定以上に増えて支払い義務者を上回った
養育費を受け取る側の収入が大幅に増え、支払い義務者の収入を各段に上回っている場合、払わないことが認められることがあります。
養育費は双方の収入バランスで取り決めることが一般的だからです。
そのため、親権者の収入が支払い義務者の収入を大きく上回り、子どもを扶養し続けられる収入であると認められる場合、支払い免除または減額が認められます。
ただし、養育費を取り決めたときに、受け取る側の収入が上がることを想定していた場合は認められないでしょう。
また、子どもの状況によっては、受け取る側の収入が大幅に増えても認められないこともあります。
たとえば、「子どもが私立に通うことになり高額な教育費用を要する場合」「子どもに病気が見つかり高額な治療費が必要になる場合」などです。
このように養育費は取り決め内容や子どもの状況が大きく関わりますが、受け取り側の収入が想定以上に増えて支払い義務者の収入を大きく上回った場合は養育費の免除が認められる1つのケースとして挙げられます。
2-4. 養子縁組をして子どもを扶養する人ができた
養育費を受け取る側が再婚し、さらに再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、養育費の支払いの免除、または減額が認められます。
なぜなら、養子縁組をした場合、再婚相手が子どもを扶養する“第一次的な扶養義務者”に移行するからです。
再婚相手にも扶養義務が生じるため、実親が払う養育費の免除・減額が認められるようになります。
ただし、免除や減額が認められる場合は、再婚相手に扶養できる収入や財産がある場合です。
再婚相手が病気や怪我など、正当な理由によって働けない状況であると認められる場合には、支払い免除や減額は認められません。
Tips! 再婚をしても養子縁組をしていない場合は、再婚相手に扶養義務が生じていないので、養育費を払わないことは認められません。 |
2-5. 子どもが社会的自立をした
子どもが社会的に自立をした場合は、養育費の支払いを取り決めた期間内であっても養育費を打ち切ることができます。
具体的には子どもが以下のような状況になった場合です。
- 子どもが就職をして安定した収入を得られるようになった
- 結婚をした
養育費とは、子どもの社会的・経済的に自立するまで扶養するお金なので、一般的に社会的に自立したと認められる状況であれば、養育費の打ち切りは認められます。
ただし、「成人した」という理由で打ち切ることは認められません。成年年齢であっても大学に在学している状況である場合は社会的にも経済的にも自立をしているとは認められないからです。
子どもが自立した生活を送っている状況である場合が、養育費の払わない理由として認められます。
3. 払わない養育費の請求方法
養育費の支払い義務があるにもかかわらず養育費が支払われていない場合、どのような方法で請求し、回収すればいいのかを解説します。
5章で詳しく解説しますが、養育費には5年の消滅時効があるため、時効を迎える前に対処するようにしましょう。
3-1. 養育費についての公正証書がない場合
公正証書がない場合は以下の手順で請求を行い、回収を目指します。
公正証書がない場合は「そもそも養育費の支払いが必要なのか?」という話し合いからスタートします。
話し合いから回収までの流れについて解説します。
3-1-1. 養育費請求調停
まずは、養育費請求調停を申し立てます。
調停では裁判官1人と、調停委員2名で構成された調停委員会が進行します。
当事者双方の主張をすり合わせながら話し合いを持ちますが、調停委員をはさんで話し合いが進められるため、当事者同士が顔を合わせて話し合うことはありません。
養育費について話し合いを進める際にはたとえば、以下のような内容があります。
「養育費を支払うか、支払わないか」
「養育費はいくらに設定するか」
「支払うタイミングや支払い方法について」
「いつまで養育費の支払いが必要か」 など。
調停では当事者の都合に合わせて、およそ1~2ヶ月に1回のペースで開かれ、問題が解決するまで調停を重ねます。
養育費調停にかかる期間の目安 養育費調停にかかる期間は人それぞれですが、以下の割合を参考にしてください。 |
原則として本人以外の同席は認められていませんが、弁護士は同席することが認められています。
有利な内容で契約を交わしたいのであれば、弁護士に依頼するとよいでしょう。
この調停で合意ができたら、合意内容が記載された『調停調書』という法的効力を持つ書面が交付されます。
調停で合意したにもかかわらず、養育費の支払いが行われない場合は『調停調書』を使って強制執行することが可能となります。
もしも「調停で合意できない」「相手が出廷しない」などで調停が不成立になった場合は次の審判へ進みます。
3-1-2. 審判
調停で解決できなかった場合、自動的に『審判』に移行します。
審判とは、裁判官によって養育費の内容が判断されることで、裁判官は主に以下のポイントを判断材料にして養育費を取り決めます。
- 当事者の年収
- それぞれの環境(家族の人数や年齢、状況)
- 養育費算定表
- 調停での話し合いの内容
審判では裁判官による問いに当事者が回答する『審判期日』が行われ、審判期日当日には審判を行う部屋に当事者双方が同席し、裁判官から問われた内容について回答をします。
この『審判期日』は調停が不成立になった日から2週間~1か月後に第1回目の審判期日が指定され、裁判官が養育費の取り決めを判断できるようになるまで続きます。
ちなみに、養育費の取り決めでは1~2回の審判期日を経て審判が出されることが通常です。
このように審判を経て養育費の取り決めが行われた場合『審判書』という執行分が付与された書面が交付されます。
審判で定められた養育費を支払い義務者が怠った場合、強制執行の手続きに入ることが可能です。
3-1-3. 強制執行
調停または審判を通じて合意に至った契約内容には、法的効力を持つ契約書(調停調書または審判書)が発行されるため、強制執行に移ることができます。
強制執行の手続きから回収までの流れは、下記で解説する『養育費について記載した公正証書がある場合』へお進みください。
3-2. 養育費について記載した公正証書がある場合
『取り決め内容を守らなかった場合は強制執行する』ことに合意のある公正証書を作成している場合は以下の流れで請求や回収を行います。
順番に解説します。
3-2-1. 裁判所に申立てる
裁判所に必要な書類をそろえて『民事執行手続き』を申立てます。
申立てを行う裁判所は、養育費を払わない人の住所地を管轄している地方裁判所にて行ってください。
必要書類とは以下の書類です。
公正証書がある場合の申立てに必要な書類 |
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3-2-2. 差し押さえ命令の発令
書類に不備がないことを確認でき次第、申立ては成立となり、裁判所は差し押さえ命令を発令します。
差し押さえ命令は、養育費を払わない人(債務者)の住所と第三者機関(勤務先や銀行など)に発送され、伝達が行われます。
3-2-3. 取り立て
申立人には差し押さえ命令が伝達された日が記載された通知書が届きます。
その日付から1週間経過すると、申立人に取り立ての権利が発生するので、取り立てを実行することができます。
取り立ては債務者に連絡するのではなく、差し押さえ対象の勤務先や、銀行、生命保険株式会社など第三者機関に連絡し、やり取りを行って未払い分の回収をします。
回収ができたら裁判所に『債権取立届兼取下書』という書類を通して報告し、手続きは完了です。
4. 子ども本人から『扶養料』を請求することもできる
養育費は父母が取り決めるものですが、『扶養料』は子どもが直接的に非監護親へ請求することが認められている費用です。
経済的に扶養を受けられていない状況であれば、子どもから請求することが可能です。
ここでは子どもから請求をする『扶養料』の概要と、請求手順について解説します。
4-1. 扶養料の請求について
扶養料の請求は、養育費が支払われないことによって経済的に問題が生じる場合に認められるものです。
扶養料は養育費と同じ意味や役割を持ち、法律上でも、親には子どもを扶養する義務があると定められているためです。
この義務は『生活保持義務』という義務に該当し、自分の生活水準と同等の生活を扶養対象の子どもにも与え、保持することが求められます。
たとえ自己破産した場合でも、支払い義務者の生活レベルを落として支払い続ける義務があると定められています。
この生活保持義務という法律上の考えに則り、養育費そして扶養料の支払い請求が認められているのです。
扶養料という別枠が用意されている理由は、父母間で取り決めた養育費の内容や、実際の支払い状況が必ずしも子どもの扶養に充足しているとは限らない場合もあるからです。
たとえば、「養育費の不払いに合意しているために生活に支障が出ている」「進学したいけど養育費が払われず資金がない」などの場合に、子ども本人が請求を行うことで問題が解決されるケースがあります。
実際には扶養料を請求するケースは少ないですが、養育費を払わない問題を解決する手段の1つでもあることをおさえておきましょう。
4-2. 子ども本人が扶養料を請求する場合の手順
子ども本人から扶養料を請求する場合、以下の手順で進めます。
扶養料も養育費の取り決め方法と同じです。手順に沿って解説します。
4-2-1. 親子で話し合いを持つ
まずは非監護親に経済面で困窮している状況を伝え、扶養料を請求したい旨を伝えます。
もしも交渉することに不安を感じていたり、相手と話すことが困難だったりする場合は弁護士に相談してみてください。
本人が交渉を行う場合でも、弁護士が交渉を行う場合でも、相手と合意が得られたら手続きは完了です。
取り決めた内容を公正証書にして支払い効力を持たせると、もしも扶養料の支払いが行われない場合に強制執行を行えます。公正証書にして手続きを完了するようにしましょう。
4-2-2. 家庭裁判所に申立てを行う
親子間での話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない状況の場合、家庭裁判所に申立てを行います。
申立てを行う裁判所は扶養義務者の住所地の家庭裁判所、または当事者間で合意を得た家庭裁判所です。
申立てに必要な書類は以下のとおりです。
- 申立書とその写し1通
- 申立人の戸籍謄本
- 扶養義務者の戸籍謄本
4-2-3. 調停・審判
調停では養育費の取り決め時と同じく、調停委員が立ち会い、双方から事情を聞き調整をしながら扶養料について取り決めをしていきます。
やり取りは調停委員が行うため「顔を合わせたくない」「話し合いをしたくない」というケースでも、話し合いを進めることが可能です。
調停では当事者の都合に合わせて、およそ1~2ヶ月に1回のペースで開かれ、問題が解決するまで調停を重ねます。
扶養料調停にかかる期間の目安 扶養料の請求自体があまり行われないため、調停が終わるまでの期間に関する情報は少ないですが、取り決める内容は養育費と同じなので養育費調停にかかる期間の割合が参考になるでしょう。 |
もしも、調停で合意を得られなかった場合、審判に移ります。
審判では裁判官によって扶養料に判断が下されます。裁判官が扶養料の取り決めについて判断する材料は主に以下の内容です。
- 扶養義務者の収入
- 扶養料に対する双方の主張
- 環境や事情
- 子どもに関する資料
- 調停での話し合いの内容
調停や審判で下された内容は法的効力を持つ書面になるため、扶養料の未払いが生じた場合は強制執行に移すことができます。
扶養料の合意を得たにもかかわらず払わない状況になった場合、強制執行の流れの章を参考にして取り立てを行ってください。
5. 【注意!】養育費には時効がある
払われない養育費には時効が存在することをおさえておきましょう。
時効となった養育費には、前述したような手続きを踏んでも請求が認められない場合もあります。養育費を請求できるケースや期限について解説します。
5-1. 養育費の消滅時効は5年
養育費は法律上1つの債権であり、消滅時効は5年と定められています。
2020年の民法改正では消滅時効の項目が変更され、従来は『請求権が発生してから5年』と定められていましたが、『請求できることを知った時から5年、または行使できる時から10年』に変わりました。
ただし、養育費は請求できることを知った日と行使できるタイミングが同時になるため、従来の消滅時効期間に実質的な変更はありません。
よって養育費の消滅時効は改正前後にかかわらず、5年が消滅時効になります。
たとえば、10年間養育費の支払いが滞っているケースであっても、請求できるのは5年分ということです。
養育費の未払い請求をするのであれば、時効が訪れる前に請求手続きをしなければいけないことをおさえておきましょう。
5-2. 調停や審判を経た養育費の消滅時効は10年
養育費の消滅時効は他の債権と変わらず5年ですが、調停または審判の手続きで決められた養育費の場合は10年が時効期間になります。
よって、10年分の未払い金がある場合、10年間をさかのぼった額の請求が認められます。
5-3. 時効は止めることができる
養育費の時効は一時的に止めることができます。
時効の進行を止める措置が取れれば、未払いから5年近く経過しているときでも消滅せず請求対象にできる可能性もあるため参考にしてください。
養育費の時効を中断できる措置とは以下のようなものです。
時効を中断できる方法 | 内容 | 具体例 |
裁判上の請求による更新 | 裁判上で養育費の請求を行うと、時効の進行が中断されます。 裁判で権利が確定したときに時効も更新され、そこから時効の進行が開始となります。 |
養育費調停の申立て離婚訴訟の提起 |
強制執行による更新 | 強制執行を申立てた場合、強制執行が終了するまで時効は進みません。 強制執行を申立てて取り下げをした場合でも、6か月間の時効猶予が与えられます。 |
強制執行(給与や口座などの差し押さえ) |
債務承認による更新 | 支払い義務者が自身に支払い義務があることを承認した場合、承認したタイミングから時効がスタートします。 | 承認に関する誓約 |
催告 | 相手へ養育費の請求をしたら、請求したときから数えて6か月間は時効に猶予が与えられます。 | 内容証明郵便での請求 |
時効が迫っていて、申立てを行ったり、相手から債務の承認を得たりなどの時間がない場合は、内容証明郵便などで催告を行って6か月間の猶予を得ることがおすすめです。
時効となって請求権が消滅しないうちに対処するようにしましょう。
また、時効となってしまったケースであっても、弁護士に相談することで解決策を得られる場合もあります。
諦めずに法律に詳しい弁護士へ相談することも有力な1つの対策です。
6.養育費問題を解決するときに選ぶべき弁護士のポイントとは
養育費問題を抱えているときには、養育費の問題について詳しい弁護士を選ぶことがポイントです。
見るべきポイントは以下のとおりです。

弁護士にも得意不得意の問題がありますし、料金体系もそれぞれで異なります。
弁護士選びをする際のポイントについて解説します。
6-1. 離婚問題の解決実績がある
離婚問題の解決実績がある弁護士かは必ずチェックしましょう。
なぜなら、養育費の問題は離婚時に伴っているケースが多く、養育費の問題も同時に解決しているからです。
問題解決の実績が多ければ、実績をもとに解決方法を導いたり、交渉を優位にしたり、手続きをスムーズに進めたりなど多くのメリットが生まれます。
まったく別のジャンルを扱っている弁護士ではなく、離婚問題を解決している実績にフォーカスを当てて探すことがおすすめです。
6-2. 調停や裁判以外の解決方法を持っている
相談する際は、調停や裁判以外の解決方法を提案してくれるかも注目するようにしてください。
なぜなら、調停や裁判は依頼者の大きな負担となるものだからです。
調停や裁判は決着を決める手段でありますが、状況によっては別にも解決できるやり方がある場合もあります。
親身で経験豊富な弁護士であれば、依頼者の負担を少しでも軽減するよう様々なアドバイスを持ち、提案しながら解決に導いてくれるはずです。
頼りがいや信頼できるポイントにもつながるはずなので、提案する解決方法にも注目をするようにしてください。
6-3. リスクなど不利な点にも説明がある
依頼者にとってリスクや不利益になる点にも説明があり、依頼者の承諾を得たうえで問題解決へ進む弁護士を選ぶようにしましょう。
なぜなら、養育費を回収するために行う調停や裁判、強制執行にはリスクやデメリットも生じるからです。
依頼に従順に従う弁護士ではなく、弁護士だからこそ分かるリスクにも目を向けて説明してくれる弁護士を選ぶようにしてください。
6-4. 明瞭会計である
弁護士費用が分かりやすく、明確であるかも確認しましょう。
弁護士費用は決して安いものではありませんが、後々になって様々な料金がプラスされ、想定していたよりも高額な報酬を請求されるケースもあるからです。
弁護士によって報酬額の算出基準は異なります。支払い方法や支払い期日、追加料金の有無など、不明瞭な点がないことをよく確認してください。
7. 養育費に関するお悩みは難波みなみ法律事務所に相談しよう
養育費で困っていることがあれば難波みなみ法律事務所へご相談ください。
当事務所は経験豊富な弁護士が在籍し、離婚や養育費に関する案件を数多く手がけ、解決しています。
町のお医者さんにかかるような身近な弁護士であることを心がけていますので、まずはお気軽にご相談ください。
8. まとめ
養育費が払われない場合、様々なペナルティが科されることが認められています。
しかし、ペナルティを科して未払い分を回収するには、受け取り側の知識と行動力がなければなりません。
実際には多くの人が養育費が支払われない状況に直面していますが、諦めてしまっていることも多いことが現実です。
養育費の回収は精神的にも時間的にも負担がかかるものですが、養育費は子どもの権利でもあり、子どもの生活や教育を支える存在でもあります。
養育費問題を抱えているなら、サポートしてくれる弁護士を味方につける方法も視野に入れて対処していくようにしましょう。
難波みなみ法律事務所は養育費の問題に真摯に取り組みます。相談は無料なので、まずはお気軽にお話をお聞かせください。

弁護士・中小企業診断士。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。町のお医者さんに相談するような気持ちで、いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。趣味はゴルフと釣り、たまにゲームです。