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懲戒解雇を解説します!懲戒解雇の手続き・理由・会社側のデメリット

懲戒解雇とは

解雇とは使用者が労働者に対して、雇用契約を一方的に終了させる意思表示をいいます。
解雇には、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇などの種類があります。その中でも、懲戒解雇とは、企業秩序違反をした労働者に対する制裁罰である懲戒処分として行う解雇を言います。懲戒解雇は制裁罰ですので、解雇の中でも最も重い処分になります。
普通解雇とは、能力不足や勤務態度不良などの債務不履行がある場合に雇用契約を終了させるものです。
整理解雇とは、使用者側の経営上の理由により、人員を削減させるために行われる解雇です。
諭旨解雇とは、懲戒解雇に相当する懲戒事由がある場合で、使用者側が従業員に退職するように諭し、退職届を提出させたのちに解雇する処分をいいます。

懲戒解雇が労働者に与える影響

解雇予告手当の不支給(除外認定)

通常、解雇によって労働契約を終了させる場合、30日前に解雇の意思表示をするか、即時解雇であれば、30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支給する必要があります。
懲戒解雇などのように、労働者の責任により解雇をするような場合、所轄の労働基準監督署長の認定(除外認定)を受けることで、解雇予告手当を支給せずに即時解雇することができます。
通常は、懲戒解雇の前に除外認定の申請を行いますが、即時解雇をした後、解雇予告除外認定を得たとしても、その解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると考えられています(昭和63.3.14 基発150号)。
仮に、除外認定を得られなかったとしても、解雇通知後30日の経過あるいは解雇予告手当を支給したときの、いずれか早い日に解雇の効力が発生します(細谷服装事件最高裁昭和35年3月11日)。

細谷服装事件・最高裁昭和35年3月11日

使用者が労働基準法二〇条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の三〇日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきであつて、本件解雇の通知は三〇日の期間経過と共に解雇の効力を生じたものとする。

退職金の不支給

退職金には、在職期間中の功労に報いるという功労報奨としての性格があります。
そのため、就業規則において、重大な非違行為等を働き懲戒解雇された労働者に対しては、退職金を支給しないと規定していることがあります。
そこで、懲戒解雇がなされる場合、この退職金の不支給に関する規定に基づき、退職金を支給しないという取扱いがなされることがあります。
労働者にとって、懲戒解雇と普通解雇の最も大きな差異は、退職金の支給の有無といえるでしょう。

失業保険

懲戒解雇によって失業をしたとしても、受給要件を充足させる場合には会社都合として失業保険を受給することはできます。会社都合の場合、7日の待期期間満了後に失業の認定がなされれば、すぐに失業保険をもらうことができます。
しかし、解雇の中でも悪質性の高いケースについて、重責解雇として自己都合退職となることがあります。自己都合退職となると、7日の待期期間後、3か月間の給付制限期間があります。そのため、受給の開始は、これらの期間経過後となります。
重責解雇の場合でも、失業保険を受給することは可能ですが、受給するための要件が厳しくなります。

再就職も困難

採用時に、面接試験やその他書類の記載等を通じて懲戒解雇の事実を把握されると、採用を警戒されることが多く、再就職に重大な支障を及ぼします。
離職票、雇用保険受給資格者証、履歴書などの書類を通じて、退職理由を把握されることがあります。また、再就職先が、前職へ退職理由の問い合わせをしたり、退職証明書の取付けを求めることもあり、これらにより退職理由を発覚されることもあります。

小括

以上のように、懲戒解雇を受けた労働者には、退職金の不支給をはじめ、有形無形の様々な不利益が生じます。
そのため、懲戒解雇のケースでは、労働者から、その懲戒解雇が無効であることを前提とした、様々な法的請求がなされるリスクがあります。

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懲戒解雇が有効となるためには

はじめに

懲戒解雇をはじめとした懲戒処分とは、使用者が企業秩序・職場規律に違反した労働者に対して行う制裁としての不利益処分で、その有効性判断については、労働契約法15条において以下のとおり規定されています。

労働契約法15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

先程解説したように、懲戒解雇が労働者に及ぼす影響が大きいこともあり、懲戒解雇の有効性の判断は、懲戒処分の中でも極めて厳格になされます。

就業規則上の懲戒事由に該当すること

就業規則に懲戒処分の種類や懲戒事由が規定され、それが労働者に周知されている必要があります(労働基準法89条9項)。
労働者の行った行為が、就業規則等に規定されている懲戒事由に該当している必要があります。懲戒事由に該当する事実は、懲戒処分を行う時点で使用者が認識している事実に限定され、懲戒処分の後、新たに認識した別の非違行為を懲戒事由として追加することはできません。そのため、懲戒解雇時には、懲戒事由の有無や内容を慎重に聴き取り・調査を行う必要があります。

山口観光事件・最高裁平成8年9月26日

使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。

社会通念上相当であること

労働者の非違行為が、懲戒事由に該当するとしても、常に懲戒解雇が有効となるわけではありません。
まず、懲戒事由の内容・態様、これによってもたらされる結果の内容・程度、本人の反省の有無、これまでの処分歴などを踏まえて、懲戒解雇という処分が相当といえるかを判断します。また、懲戒解雇が最も重い処分であることを踏まえ、特段の事情がない限りは、懲戒解雇の前に、労働者本人に弁明の機会を付与する必要があります。

懲戒解雇が無効となった場合

これまで述べてきた理由から、労働者から懲戒解雇が無効であるとの主張がなされることがあります。以下、労働紛争の解決プロセスと解雇無効となった場合の使用者のデメリット・不利益を解説します。

紛争解決のプロセス

弁護士を通じた裁判外の交渉

一般的に、解雇無効等の労働紛争においては、いきなり労働審判や訴訟を提起することは珍しく、代理人弁護士を通じて、早期解決を図るために裁判外での交渉を行うことが多いです。
通常は、労働者側の代理人弁護士から、内容証明郵便により、懲戒解雇の無効主張をした上で、復職を求め解雇後の賃金を請求する内容の通知書が送付されます。
その後は、電話や面談を通じて交渉を行います。労働者側の代理人弁護士の属性や方針を見定めながら進めていく必要があります。
交渉の末、合意ができる場合には合意書を作成し終局的解決を図ります。

懲戒解雇が無効であることを認めざるを得ない場合には、解雇を撤回した上で、会社都合により合意退職をしたことを確認する内容の合意書を作成することが一般的です。また、合意退職の日付を和解時とする場合には、和解時まで賃金(バックペイ)を支払う旨の規定を設けることが通常です。

労働審判

裁判外での交渉が頓挫した場合には、次のステップに進みます。その一つが労働審判です。労働審判は原則3回の期日以内で審理が終了する手続なため、迅速な解決を実現できます。解決までのスピードが早い分、訴訟のような緻密な審理がなされない分、労働者側と使用者側も双方ともに一定程度の譲歩を迫られます。労働審判の場合、解雇無効による復職を目指す事案よりも、復職せずに合意退職の上金銭的な解決を図る事案が多い傾向です。

民事訴訟

民事訴訟の場合、労働審判とは異なり、双方から主張立証が何度も繰り広げられるため、一定程度の時間と費用を要します。その分、緻密な事実認定が行われ、それに基づく裁判所による判決には終局的・強制的な解決を図れます。判決あるいは和解に至るまでに一定期間(一年を超えるケースが多いです。)を要するため、使用者側には諸々の負担、例えば、解雇後の賃金、使用者の風評被害、弁護士費用等の負担が生じ得ます。

あっせん

労働者と使用者との間で起こった労働トラブルについて、「あっせん委員」の仲介によって話し合いを行う制度のことです。あっさんを行う機関は、各都道府県の労働委員会あるいは各都道府県労働局の紛争調整委員会となります。
あっせん手続は、強制力がない手続ではありますが、早期に解決することができるというメリットがあります。

懲戒解雇が無効となる場合のデメリット

解雇後の賃金(バックペイ)を支払う必要

原則

使用者が行った懲戒解雇が無効である場合、使用者は解雇後の賃金を払う必要があります。
そもそも、労働者は、その提供する労務の対価として賃金を得ますから、労務の提供をしないのであれば賃金を得ることはできません(ノーワーク・ノーペイの原則)。
しかし、民法536条2項本文では、『債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。』と規定されています。
懲戒解雇が無効である事案では、債権者である使用者の責任によって、労働者は労務を提供したくてもできない状況となります。そのため、就労意思を有する労働者については、たとえ就労をしていないとしても賃金の請求をすることができます。

このように、慎重な検討をせずに懲戒解雇をしてしまうと、労働者が就労をしていなくても平均賃金を支払う負担を強いられるリスクがあります。
このようなリスクを低減させるためにも、懲戒解雇をする前に、退職勧奨を行うなどして、可能な限り円満な退職を促すことが必要です。さらに、懲戒解雇が無効となる場合には、早期に解雇を撤回した上で復職できる条件を提示するなどして、労働者の労務を受領拒絶する状況を解消するべきでしょう。

就労意思や能力がないとき

ただし、解雇が無効な場合であっても、労働者に就労の意思又は能力がないときは、「債権者の責めに帰すべき事由」」により就労できなかったとはいえないため、賃金請求をすることはできないと解されています(ペンション経営研究所事件東京地判平成9年8月26日、ライトスタッフ事件東京地裁平成24年8月23日)。例えば、新たな職に専念して元の会社へ復帰する意思が認められない場合(単に他社へ就職した事実だけでは就労意思の放棄とはされません。)、私傷病により就労できない場合が想定されます。

中間収入があるとき

解雇後に他社へ就職し収入を得ている場合、使用者が満額の賃金を支払わなければならないとなると、労働者に二重の利益を付与することになります。
そのため、この場合には、他社から得ていた収入を控除した残額を支払えば足りるということになります。ただ、会社都合による休業手当が平均賃金の6割とされていることとの均衡から、たとえ他社の収入を控除した残額が平均賃金の6割を下回ったとしても、使用者は平均賃金の6割を負担する必要があります(あけぼのタクシー事件最高裁昭62年4月2日)。

中間収入の額が平均賃金額の4割を超える場合には、平均賃金の基礎に算入されない賞与等の賃金の金額を対象として利益額を控除することができるとされています(平成18年3月28日最高裁第3小法廷判決)。

あけぼのタクシー事件・最高裁昭和62年4月2日

使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が平均賃金額の四割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法一二条四項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる。

復職を認めないといけない

懲戒解雇が無効となれば、従業員が復職への強い意思を有している場合には、復職を認めざるを得ません。使用者側としては、合理的な理由なく業務変更や配置転換をすることは許されず、その他の労働条件の引き下げをすることはできません。さらに、懲戒解雇を通じて毀損された人間関係の回復や就労環境の整備を積極的に行う必要が生じます。

時間外手当の請求を受ける可能性

懲戒解雇を受けたことを起点として、懲戒解雇の無効確認に留まらず、これまでの時間外手当をまとめて請求するケースは多いです。
従前は時間外手当の消滅時効は2年とされていましたが、民法改正に伴い時間外手当の消滅時効は5年となりました。当面の間は3年となりましたが、早ければ、施行5年後となる2025年4月以降には5年の時効期間となります。
そのため、時間外手当の負担は、改正前と比べておやそ2.5倍の負担となります。

退職金を支給しなければならない

就業規則や退職金規定において、懲戒解雇時には退職金を支給しない、あるいは、減額する旨の規定が設けられることがあります。
しかし、退職金が永年の勤続の功労に報いるための性格を有し、退職後の重要な生活の糧となることから、退職金の不支給が適法とされるためには、懲戒事由が存在しているだけでなく、その事由がこれまでの勤続の功を抹消又は減殺する程の著しい背信行為であることまで必要と解されています。
そのため、懲戒解雇が無効であることを確認した上で、復職せずに合意退職するような場合、その無効となる理由にもよりますが、退職金を支払わざるを得なくなるケースが殆どかと思います。

その他

労働組合の団体交渉に応じざるをえなくなることもあります。また、労働者や労働組合等を通じて、懲戒解雇に関する情報が不特定多数に流布され、企業イメージが毀損し、人材確保が困難となったり、社内秩序が壊れるなどの諸々の不利益を被るリスクがあります。

まとめ

以上のとおり、懲戒解雇に伴い、使用者には裁判も含めた労働紛争に巻き込まれる等の諸々のデメリットを受ける可能性があります。懲戒解雇を行う際には、慎重な手続を要しますから、予め弁護士等の専門家にご相談することを推奨します。

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