コラム
最終更新日:2023.05.26

不貞行為の消滅時効は何年か?弁護士が解説します

不貞行為  不貞行為の時効 不貞行為の時効の止め方

不貞行為の慰謝料請求にも期限があります。いつまでも請求できるわけではありません。

不貞行為の証拠があるからといって、慰謝料請求することなく放置すると、いつの間にか時効が到来して、不倫慰謝料を請求できなくなってしまうかもしれません。

本記事では、不貞慰謝料の消滅時効と時効を止める方法を離婚問題に詳しい弁護士が解説します。

不貞慰謝料の時効は3年

砂時計

配偶者は、不貞行為を働いた配偶者に対して不貞慰謝料を請求できます。

また、不貞行為は、不貞配偶者とその不貞相手の共同の不法行為とされています。そのため、配偶者は、不貞相手に対しても、不貞慰謝料の支払いを求めることができます。

しかし、いつまでも請求できるとなると、いくら不倫・浮気をしたとしてと、法律関係があまりにも不安定になってしまいます。

そこで、不倫慰謝料には時効期間が設けられています。

不貞行為を理由とした慰謝料請求の消滅時効は3年です。

不貞慰謝料の消滅時効は、慰謝料を求める相手によって条件を異にします。

そのため、不貞慰謝料の請求相手に応じて解説します。

不貞相手に請求する場合

不貞相手に慰謝料請求をする場合、不貞行為の存在を知ったことに加えて、不貞相手の名前と住所を知ったことにより、消滅時効の時効期間が進行します。

不貞慰謝料は、不法行為の損害賠償請求権です。不法行為の損害賠償請求の時効については、以下のとおり規定されています。

第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。 不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

不貞相手の氏名と住所を知ったこと

不貞相手の氏名と住所を知ったことで、『加害者を知った時』にあたります。

加害者である不倫相手の名前と住所まで知らなければ、不貞慰謝料を請求したくても請求できません。

そこで、不貞相手の氏名は分かるが、住所までは知らないのであれば、不貞相手に対する慰謝料請求の時効は進行しません。

ただ、加害者である不貞相手を知った事実は不貞相手によって証明されなければなりません。

被害者である配偶者が、不貞相手の氏名と住所まで知ったことを証明することは、そう簡単ではありません。

不貞行為を知った時から進行する

被害者である配偶者は、不貞行為を知ることで、損害を知ったといえます。

かつては、不貞行為をした後、夫婦が離婚に至った場合、たとえ不貞行為を知ってから3年が経過していたとしても離婚時から時効はスタートすると考えられていました(東京高判平成10年12月21日)。

しかしながら、最高裁判所平成31年2月19日判決により、この考え方は否定されました。つまり、不貞行為の事実とその不貞相手を知ってから3年が経てば、いくら離婚が成立したとしても、不貞相手に対する慰謝料請求は時効により消滅することになります。

離婚時から進行することもある

不貞相手が、夫婦の離婚それ自体について不当に干渉するなどした結果、離婚に追い込まれたような場合には、不貞相手に対して離婚それ自体に関する慰謝料を請求することができます。

最高裁判所平成31年2月19日判決
夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、 協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚 姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。 第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦 の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至 らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

同棲している場合

不貞配偶者と不貞相手が同棲を継続していても、その同棲関係を知った時から進行すると考えられています(最高裁判決平成6年1月20日)。

つまり、同棲関係を知ってから3年が経過することで、同棲関係が続いていても、同棲関係を知るまでの不貞慰謝料は時効により消滅します。

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不貞配偶者に請求する場合

不貞行為の慰謝料請求は、不貞行為時から3年が経過していても、離婚時から6か月が経過するまでは消滅時効は完成しません。

この点で、不貞相手の不貞慰謝料の時効期間とは異なります。

民法第159条
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

離婚慰謝料は離婚時から進行する

離婚それ自体の慰謝料は、離婚時から時効期間がスタートします。

不貞行為を理由に離婚した場合、たとえ不貞慰謝料が時効により消滅したとしても、離婚時から3年が経っていなければ、離婚それ自体の慰謝料を請求できます。

TIPS!
慰謝料に2種類あり、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料があります。
離婚原因慰謝料とは、離婚原因となった不貞行為それ自体による精神的苦痛に対する慰謝料です。
離婚自体慰謝料とは、離婚という結果それ自体から生じた精神的苦痛に対する慰謝料です。
実務上は、離婚自体慰謝料と離婚原因慰謝料は重なり合っているものとして、厳密に区分されることなく審理されます。

20年経つと時効

不貞行為の時から20年が経過すると、時効により消滅します。

たとえ、被害を受けた配偶者が不貞行為や不貞相手を知らなかったとしても、20年が経過すれば時効となります。

民法の改正により、20年が経てば当然に権利を行使できなくなるわけではなく、加害者が消滅時効の援用をすることで、時効により消滅することになります。

時効を止める方法

時効期間である3年が経つまでに不貞慰謝料を請求しなければなりません。

時効期間が迫っている場合には、内容証明により慰謝料請求をした上で、6か月以内に訴訟提起をすることで時効の完成を防ぐことができます。

裁判上の請求

訴訟提起などな裁判手続きを行うことで、その裁判が終了するまで時効の完成が猶予されます。

判決の確定や裁判上の和解により権利が確定すると、時効が更新されます。つまり、時効期間がリセットされ、ゼロからスタートされます。

裁判上の請求をしただけでは、時効がリセットされるわけではないので注意してください。

催告

催告とは、被害を受けた配偶者が不貞相手に対して、裁判外で不貞慰謝料の請求をすることです。

催告をした場合、その時から6か月間は、時効の完成が猶予されます。

そのため、時効期間が迫っている場合、時効が完成しないようにするために、裁判外で催告をして時効の完成をひとまず止めた上で、6か月が経つまでに訴訟を提起するようにします。つまり、催告は裁判手続きをするまでの一時的な時間稼ぎとして機能します。

ただ、催告は何度も重ねて行うことができません。つまり、一回催告をした後に、再度催告をしても、6か月の期間が延長されることはありません。

内容証明で送付する

不貞慰謝料は、内容証明郵便を使って文書により請求するべきです。

なぜなら、口頭で伝えるだけでは、事後的に慰謝料請求をした事実とその日時を証明することが難しいからです。内容証明であれば、請求の内容と加害者がこれを受け取った日時を事後的に証明することができます。

3年経っていても諦めない

不貞行為の時から3年が経過していても、諦めずに弁護士に相談してください。

不貞行為の消滅時効の各要件は、加害者側で立証責任を負います。

そのため、被害者が不貞行為を知ったことだけでなく、加害者自身の氏名と住所を認識していたことを、加害者が証明しなければなりません。

単に、被害者が加害者の氏名・住所を知ろうと思えば知れた状況を証明するだけでは足りません。あくまでも、氏名と住所を知っていたことまで証明することを要します。

被害者が加害者に対して過去に慰謝料請求を文書により行なっていた経緯があれば、氏名と住所を知っていたことの証明はしやすいでしょう。

しかし、このような過去の出来事がなければ、加害者側において、加害者を知ったことを証明することは非常にハードルが高いと言えるでしょう。

そのため、被害者である配偶者はたとえ不貞行為の時から3年が経過しているとしても、諦めずに慰謝料請求をすることを検討するべきでしょう。

不貞慰謝料の問題は弁護士に相談を

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勘違いされることが多いですが、不貞行為から3年が経過していたとしても、上述したように、不貞行為の事実やその不貞相手を知らなかった場合には、消滅時効はスタートしません。つまり、その事実を最近知るに至ったのであれば、不貞行為に基づく慰謝料請求は可能です。

3年が経過していたとしても、諦めることなく一度弁護士に相談してみて下さい。

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