コラム
更新日: 2024.09.04

【弁護士監修】休職中に外出していいのか?休職制度や確認したいポイント|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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休職期間中労働する義務を免除され、復職するために療養することが求められます。そのため、休職期間中に自由に外出したり旅行をすることが認められないようにも思います。

しかし、休職しているからといって、一切外出できないというものではありません。休職の理由によっては、むしろ外出をすることが推奨されることもあるほどです。

他方で、SNSで休職期間を満喫しているかのような様子を発信することは控えるべきです。また、療養に繋がらないような派手な旅行をすることも控えるべきでしょう。

また、休職期間中は完全に自由ではなく、就業規則上で病状の報告や医者の受診を義務付けられていることもあります。さらに、上司に対する報告の方法や時期も規定されていることもあります。

そのため、休職期間中に求められている事項を事前に確認して適切に実施できるように注意しておきましょう。

今回は、休職制度や休職中の外出等が認められるのか、休業、休暇などの休職に似た制度も含めて解説します。

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休職制度とは何か

休職とは、ある従業員について労務に従事させることが、不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し、労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除すること又は禁止することを言います。

そもそも、労働者は、雇用契約に基づき使用者に対して労務を提供する義務を負っています。

しかし、私傷病等によって、この労務を提供する義務を果たせなくなると(つまり、債務不履行の状態となります。)、使用者はこれを理由に雇用契約を解除(解雇)することになります。

ただ、雇用契約の解除は、労働者の生活の基盤を奪う重大な法律行為となりますから、解雇の猶予措置として、休職制度を就業規則や雇用契約書に規定されていることが一般的です。

注意が必要な点は、休職制度は労働法等の法令で義務付けられている制度ではありません。

そのため、使用者内で休職制度が整備されていない場合には、使用者が任意で認めない限り、休職することはできません。

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休職の種類

傷病休職
勤務以外の事故により休職する場合
従業員が刑事事件において起訴されたことで休職する場合
他の会社に出向することで出向元を休職扱いにする場合
事故休職
起訴休職
出向休職
業務外の怪我・病気により休職する場合

休職にも休職する理由に応じて様々な種類があります。

傷病休職

休職の一つに傷病休職があります。

業務外の疾病により休職する場合が傷病休職です。他方で、業務上の疾病による場合には、労災による休業となります。

身体的な傷病だけでなく、適応障害やうつ病といったメンタルヘルスの疾病も傷病に含まれます。

休職期間中に治癒すれば復職し、治癒せず労務の提供ができない場合には自然退職あるいは解雇となります。

事故欠勤休職

交通事故などの私傷病以外の原因により一定期間欠勤した場合に行われる休職です。傷病手当と同様に、治癒すれば復職、治癒しなければ自然退職あるいは解雇となります。

起訴休職

刑事事件で起訴された労働者を、判決の確定又は一定期間休職させるものです。

出向休職

会社の指示により別会社へ出向するにあたって、出向元を休職とすることを出向休職といいます。

出向期間中は、出向元の休職することになります。

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他の制度との違い

 休業

休職と似て非なる制度として、休業があります。休業には、使用者側の都合による休業と労働者側の都合による休業があります。

詳細はこちらのコラムで解説しています。

①使用者側の都合による休業

使用者側の都合による休業には、資材不足による休業、機械の検査による操業停止、監督官庁の勧告による操業停止、新型コロナウィルスの感染が「疑われる」従業員を自主的な判断で休業させる場合の休業です。

この場合には使用者は基礎賃金の60%の休業手当を支給しなければなりません(労基法26条)。

②労働者側の都合による休業

他方で、労働者側の都合による休業とは、産前産後の休業(労基法65条、66条)、育児休業介護休業(育児・介護休業法)、労働災害による休業(労基法75条)があります。

産休・育休中は社会保険の支払いが免除されますが、基本的に賃金の支払いは行いません。それをカバーするため、加入している健康保険から出産手当金として賃金の3分の2相当額が支給されます。出産に要した費用についても出産育児一時金が支給されます。

また、雇用保険に加入している場合、育児休業給付金が【休業開始時賃金日額×支給日数 の67%】の割合で支給されます。ただ、育児休業開始から6ヶ月経過したあとは50%相当額に減額されます。

介護休業についても、同様に雇用保険に加入している場合、介護休業給付金が【休業開始時賃金日額×支給日数 の67%】の割合で支給されます。

労働災害の場合、労災保険から平均賃金の80%の休業補償が支払われます。

 休業手当休業補償
要件会社都合業務上の事故や病気による休業
負担する者会社労災保険
金額平均賃金の60%平均賃金の80%

欠勤

欠勤は、従業員に労働義務があるにもかかわらず、仕事を休む場合をいいます。休職や休業は、労働者の労働義務が免除される点で、欠勤とは異なります。

休暇

休職と同様に、休暇も労働義務があった日について、それを免除します。ただ、休職は、就業規則や労働協約等に基づき、労働者が労務に従事させることができない場合に労務の従事を免除するものですが、休暇は法令上の要件を満たせば、当然に労働者に認められた権利です。

年次有給休暇(労基法39条)、生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(同法68条)、子の看護休暇(育児・介護休業法16条の2以下)、介護休暇(同法16条の5以下)があたります。

年次有給休暇は、その名の通り有給ですが、その他の休暇については、有給か無給かは契約書や就業規則の定めによります。

休日

休日とは、労働者に労働義務がもともとない日を言います。他方で、上述しました休職、休暇、休業はいずれも労働義務があるものの、これが免除されるものです。

休日には、法定休日と法定外休日(所定休日)があります。

法定休日とは、労働基準法35条1項で規定された休日で、1週間に1日、あるいは4週間に4日の休日を従業員に対して付与しなければなりません。

法定外休日は、就業規則や雇用契約等で定められた休日をいいます。

法定休日に就労した場合、賃金が35%割増されます。法定外休日に就労した場合、深夜労働や保定労働時間を超えた労働ではない限り、賃金の割増はありません。

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休職期間中の収入や支払い

給与・賞与
支払いはなし
社会保険料
傷病手当金
労働保険料
無給でも生じる
業務外の
傷病で支給
無給のため発生しない

休職をする場合、出勤して労働を提供しない以上、無給となるようにも思います。しかし、休職期間中に収入が一切ないとなると、生活に困窮してしまいます。

そこで、休職期間中の収入について解説します。

給与・賞与

休職期間中、会社から給与や賞与といった賃金は支払われないのが原則です。

なぜなら、賃金は労働を提供したことに対する対価ですから、その労働を提供せずに休職している以上、賃金を受け取ることはできないからです。これをノーワークノーペイの原則といいます。

ただし、賞与の査定期間中に労働した場合には、賞与が一部支給されることもあります。

社会保険料

健康保険、厚生年金保険、介護保険といった社会保険料については、休職により給料の支払を受けなかったとしても毎月納付しなければなりません。社会保険料は使用者と労働者で折半して負担することになりますが、会社は休職中の社員の負担分も含めて保険料を支払う必要があります。

休職していない場合には、会社から支払われる賃金から社員負担分の社会保険料は控除されるのが通常です。

他方で、休職により賃金が支給されない場合には、社員負担分の社会保険料は会社から請求されることになります。ただし、会社が傷病手当金を代理受領している場合には、この傷病手当金から社会保険料を徴収されることもあります。

傷病手当金

傷病手当金とは、業務外で病気や怪我で会社を休みで賃金を受けられない場合に支給される生活保障です。

この傷病手当金は、以下の4点を満たすことが必要となります。

  • 業務外の病気やケガで療養中であること
  • 療養のための労務不能となっていること
  • 4日以上仕事を休んでいること。
  • 給与の支払いがないこと。

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)

労働保険料には、労災保険料と雇用保険料があります。

労働保険料は、全額会社負担となるため、社会保険料のように社員負担分の精算をすることはありません。

また、労働保険料は、支給される賃金を基準に計算されるため、休職者に給与が払われなければ労働保険料は発生しません。

休職期間中の外出や旅行等

例えば、メンタルヘルス等を理由に休職している場合、休職期間中に外出や旅行に行くことは懲戒処分などの対象になるのでしょうか?

たしかに、就業規則等で、休職期間中は治療に専念する旨の規定を設けているケースもあるかと思います。

しかし、そもそも、休職とは、何らかの事由により労務に従事できないため、労働者の労働義務を免除するものです。そのため、休職を理由に労働者の私生活の自由を厳しく制限することはできません。

よって、限度を超えたものでない限り、休職期間中に旅行や外出をしたとしても、これを理由とした懲戒処分を行うことは難しいと考えます。

休職中の過ごし方

休職、特に、私傷病休職の場合、その主たる目的は、労働者に傷病の治療の機会を与えて、職を失わないようにすることにあります。

そこで、休職により労働義務を免れているからといって、自由を満喫しすぎることは、休職の目的に反します。

そのため、復職できるように治療やリハビリに励むことが求められます。

また、休職期間後にいきなり復職すると労働者にとって大きな負担となることもあります。そのため、試し出勤(リハビリ出勤)を制度化されている場合には、大きな負担とならない限りで、スムーズな復職に向けてリハビリ出勤をすることも考えましょう。

さらに、リワーク制度がある場合には、その利用も検討しましょう。リワーク制度とは、復職に向けてリハビリや復職支援を行う社外のプログラムです。

休職期間中、一切の外出等が禁じられるわけではありませんが、あくまでも傷病の療養が目的であることを踏まえて行動するようにしましょう。

休職前に確認しておくポイント

休職中、トラブルを発生させないために、行動制限や会社との連絡手段を確認しておくことが重要です。

行動制限

休職期間中、休職者は療養に専念することが求められています。

そのため、就業規則上、休職期間中の行動制限が設けられていることがあります。例えば、宿泊を伴う旅行をする場合には報告すること、海外旅行は控えること、SNSへの投稿は控えることなどです。

報告・連絡手段

連絡手段についても確認しておきましょう。

就業規則上、月に1回受診することや病状を報告することを定めていることがあります。病状報告に際して、報告すべき内容や提出する書類(診断書)を事前に確認しておきましょう。

また、連絡する相手先や連絡手段、連絡頻度を確認して適切に実施するようにしましょう。

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休職中に外出や旅行が必ず禁止されるものではありません。病状によっては、外出することが推奨されることもあるでしょう。

ただ、あくまでも休職が療養することを主たる目的としていることに留意して行動するべきです。休職中であるにも関わらず、SNSなどで旅行を満喫している様子を頻繁に投稿することは慎むべきかもしれません。

また、休職中にするべき報告や行動制限をきちんと確認することも重要です。

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