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兼業・副業で解雇?!兼業と副業はどんな時に禁止されるのでしょうか?

【Q&A】

Q 就業規則で兼業禁止としています。従業員がこの就業規則に反して兼業・副業をしている場合、会社はその従業員を解雇することができるのでしょうか?

A 就業規則で兼業禁止を定めていたとしても、その兼業が本業に重大な影響を及ぼさない限りは、兼業していることをもって解雇することはできません。

【厚労省のガイドラインの策定】

厚生労働省において、平成30年1月、副業・兼業について、企業や労働者が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめたガイドラインを作成されました。さらに、企業も働く方も安心して副業・兼業を行うことができるようルールを明確化するため、令和2年9月にガイドラインを改定されました。

参照|副業・兼業の促進に関するガイドライン

 

収入を増加させたい、生活費の不足を補填したい、自分が活躍できる場を広げる、様々な分野の人とつながりができる、時間を有効活用したい等の様々な理由から、副業・兼業を希望する労働者は年々増加しています。また、副業・兼業の形態も、

正社員だけでなく、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまです。他方で、主として中小企業において、人材の定着を図りたい、本業に注力させたい等の理由から、就業規則等で兼業・副業禁止の規定を設けるケースが多いです。

兼業・副業は労働者の自由!

就業規則や雇用契約書において、兼業・副業が禁止していたとしても、これに反した労働者に対して、懲戒処分を課すことは違法となる場合があります。

なぜなら、「労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許されると考えられているからです(マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日))。

厚労省のモデル就業規則においても、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と規定されています。

ただ、以下のような事情がある場合には、その兼業・副業を禁止することは認められるため、例外的に、下記①~④のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止する規定を設けることは認められます。

① 労務提供上の支障がある場合(過労により労働者の健康を害するような場合)

② 業務上の秘密が漏洩する場合

③ 競業により自社の利益が害される場合

④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

副業・兼業に関する裁判例においては、就業規則において副業・兼業の許可制を規定したうえ、これへの違反を懲戒事由としている場合において、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは、禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を無効としています(東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日))。

兼業・副業のメリット・デメリット

働き方改革の流れから、兼業副業を解禁する動きが活発になっていますが、人的資源の限られている中小企業においては、死活問題といえます。そのため、副業兼業を導入するにあたっては、労働者側・企業側の副業兼業に関するメリット・デメリットをよく知っておく必要があるでしょう。

  • 労働者側

・メリット

① 技能の向上

離職せずに別の仕事に就くことで、多様なスキルや経験を得ることができようになり、労働者が主体的にキャリア形成を図ることができます。

②自己実現の機会

本業の所得や経験を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現の機会を得ることができます。

③ 所得が増加する。

④ 起業や転職に向けた準備

本業を続けながら、多様な職種に触れることで、将来の起業・転職に向けた準備や試行を行うことができます。

・デメリット

① 就労時間の長時間化

ダブルワークに伴い、就業時間が長くなる可能性があるため、健康状態を害するリスクがあります。

② 従業員としての義務を怠るリスク

兼業副業に注力するあまり職務専念義務を怠ったり、企業秘密の漏洩による秘密保持義務を怠ったり、競業への就労により競業避止義務を懈怠するおそれがあります。

  • 企業側

・メリット

①労働者の技能の向上

労働者が、兼業・副業先の就労により、社内では得られない知識・スキルを獲得することができます。

② 労働者の自主性の向上

労働者が、社外で自主的な副業・兼業を行うことにより、労働者の自律性・自主性が養われます。

③ 人材の定着

労働者の労働の自由を守ることで、本業への定着を促し、優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上します。

④事業機会の拡大

兼業・副業を通じて、労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を取り入れることで、事業機会の拡大を促します。

・デメリット

①情報漏えいのリスク

兼業・副業を行う労働者により、会社の機密情報や営業上の秘密等が外部に漏洩するおそれがあります。そのため、会社側としては、競合先への兼業副業を禁止し、企業秘密の漏洩についても、就業規則に明確な規定を設け、副業等をする労働者に対して副業に伴う注意点を指導することが重要です。

②人材流出のリスク

 副業は、人材の定着を促し得る一方で、自社に引き留めるだけの魅力がなければ、副業等を契機に、従業員が副業の方へ転職してしまうリスクはあります。

③安全配慮義務

労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされています(安全配慮義務)。副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者がこの労働者に対する安全配慮義務を負っています。副業等を行う労働者は、長時間労働により健康状態を害するおそれがありますから、本業及び副業の使用者はいずれも

労働者の全体としての業務量・時間が過重であることを把握し、労働者の健康に支障が生じないよう配慮することが必要です。

そこで、

・就業規則や雇用契約書において、長時間労働によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと

・ 副業・兼業の届出等に際して、副業・兼業の内容が労働者の安全や健康に支障を及ぼさないかを事前に確認するとともに、副業・兼業の状況の報告等を定期的に労働者と話し合いを行い、健康状態に問題がある場合には適切な措置を講じられるよう、ルール化しておくこと

が重要となります。

最後に

今後も副業・兼業は、コロナ禍の影響も重なり、より一層促進されるものと思われます。上述しましたように、副業・兼業にはメリットもある一方で、抑えておくべき留意点もあります。これらを予め十分に踏まえ、就業規則や雇用契約書に規定しておくなどのルール化をしておくことも重要となります。

当事務所では中小企業への法的アドバイスなどのリーガルサービスに力を入れております。労務管理のお悩みがおありでしたらお気軽にご相談下さい。

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