医師は他の職業と比べて高所得で社会的地位も高いですが、その反面で離婚率が高い職業であるともいわれています。
離婚を回避するためには、医師に特有の離婚理由・離婚原因を知り、早めに対策を立てておくことが重要となるでしょう。
また、収入や保有資産が大きい医師と離婚する際には、慰謝料や財産分与の金額も大きくなる傾向にあります。そのため、離婚を決めた場合には、一般的な会社員などと離婚する場合とは異なる注意点があります。
この記事では、医師の離婚率が高い理由や、医師の離婚手続で注意するべき点について解説します。
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医師は離婚が多い?
まずは、本当に医師の離婚は多いのかについてご説明します。
日本人全体の離婚率
厚生労働省が発表した「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、令和5年度の日本人の離婚率は1.52でした。
ただし、ここでいう「離婚率」とは、人口1,000人当たりの離婚件数のことを指しています。婚姻件数に対する離婚件数の割合を算出すると、令和5年度は「離婚18万3,808件÷婚姻47万4,717件」で38.7%となります。
しかし、このデータから単純に「結婚した夫婦の3組に1組以上が離婚している」ということはできません。なぜなら、上記の離婚件数の中には、結婚して間もない夫婦から数十年前に結婚した夫婦までが含まれているからです。
近年の日本では少子高齢化が進み、若年層の人口が減少傾向にあることを考え合わせると、「離婚率38.7%」という数値は、やや過大であるといえるでしょう。
正確な離婚率を割り出すためには、「○年に結婚した夫婦が離婚した割合」を算出する必要がありますが、このような追跡調査を行った公的データは見当たりません。
そのため、日本人全体の離婚率を数値で示すことは難しいですが、数十年前よりも離婚率が高くなっていることは間違いないといえます。
医師の離婚率
厚生労働省の「人口動態調査」では、離婚した夫婦のそれぞれの職業も大まかに分類されています。それによると、夫の職業は「専門的・技術的職業従事者」、妻の職業は「無職」(専業主婦)が最も多くなっています。
「専門的・技術的職業従事者」には医師の他にも、さまざまな専門職や技術職が含まれています。「医師の離婚は多い」といっても矛盾はしないデータとなっていますが、この他に医師の離婚率を表した公的データは見当たりません。
なお、当事務所ではさまざまな方から離婚に関するご相談を受けていますが、医師や医師の配偶者からのご相談は、やはり多いです。したがって、医師の正確な離婚率は不明ですが、弁護士としての肌感覚でいえば、医師の離婚は多いという印象があります。
医師特有の離婚理由・離婚原因
医師の夫婦には、以下のように特有の離婚理由・離婚原因があります。
このように、離婚に繋がりやすい原因が複数あることからしても、「医師は離婚が多い」という推測は、あながち誤りではないと考えられるでしょう。
医師は浮気が多いから離婚に至りやすい
「医師は浮気が多い」と決めつけることはできませんし、もちろん、浮気などしない医師も数多くいます。しかし、浮気しやすい条件が整っているということはいえます。
まず、医師の多くは経済力があるため、配偶者以外の異性と交遊するための金銭的な余裕があります。
また、医師は社会的地位が高いことから、異性からの誘惑も多いでしょう。
さらに、医師は男性が多いのに対して、医療の現場には看護師や医療事務スタッフなどで女性が数多く常駐していることが多いです。このような環境で、夜勤や宿直なども含めて長い時間を男女が一緒に過ごしていると、関係が深まる可能性は高いといえます。
医師はプライドが高いから離婚に至りやすい
医師の性格は人それぞれですが、概してプライドが高い人が多いことは否定できません。
自分の努力や才能によって難易度の高い大学の医学部に合格し、国家試験もクリアして高い社会的地位を獲得しているので、自分に自信を持っている人が多いのです。
日常の仕事においても数多くの人の命を救って高い収入を得て、周囲の人たちから「先生」と呼ばれて尊敬を集めていることから、自然にプライドが高くなるということもあるかもしれません。
プライドの高さは医師としての仕事でプラスに働くことも多いですが、夫婦生活においては軋轢を生み出す原因にもなりかねません。
夫婦といえども元は他人なので、共同生活を続けるためには妥協や譲歩が必要不可欠です。そこでプライドが邪魔をして自分の意見を押し付けてばかりいると、夫婦関係に溝が生じ、離婚問題に発展することがあります。
離婚後の心配がないから医師は離婚に至りやすい
医師には経済力があり、離婚後の生活に困らないということも、離婚率を高める要因の一つになっていると考えられます。
この点、低所得の世帯では、離婚するとなれば慰謝料や養育費の支払いが厳しいことから、離婚を思いとどまることもあります。配偶者側でも、慰謝料や財産分与、養育費などを十分に払ってもらえなければ離婚後の生活が厳しくなるため、納得できなくても夫婦生活を継続するケースが少なくありません。
しかし、十分な経済力があれば離婚後の心配がないため、夫婦生活に不満を抱えると離婚に踏み切ってしまいやすいのです。
激務によるストレス
医師の仕事は、かなりの激務です。そのストレスが夫婦関係の悪化を招くケースも少なくありません。
医師の多くは、日々、人の生死や健康問題に関わることによって重い精神的重圧を抱えています。それに加えて長時間労働が常態化している上に、夜勤や宿直などで勤務時間は不規則であり、緊急の呼び出しなども多いでしょう。
その上に、患者からのクレームや職場での人間関係などでストレスを抱えることも珍しくありません。
このような激務によるストレスを上手に解消できなければ、家族に当たってしまうこともあるでしょう。ひどくなるとDVやモラハラに発展し、耐えきれなくなった配偶者が子どもを連れて家から飛び出したり、離婚を申し出たりすることがあります。
多忙のため、家事・育児に協力的でない
医師は基本的に多忙であり、家事や育児に協力しにくいという実態があります。
普段の長時間労働に加えて、休日でも緊急の呼び出しや、学会への出席などのための出張、接待などで家を空けることが少なくありません。家にいられるとしても疲れてゴロゴロしてばかりで、子どもの相手などできないこともあるかもしれません。
配偶者が専業主婦(主夫)だとしても、家事と育児のすべてを完璧にこなすことは容易ではありません。
相手が仕事で疲れていることを理解していても、家庭をまったく顧みてもらえなければ不満が募り、離婚問題に発展することもあります。
医者の財産分与
離婚する際には、どちらが離婚原因を作り出したのかとは無関係に財産分与を請求できます。
高所得の医師は多くの財産を保有していることが多いため、一般的なケースと比べて財産分与の金額は高くなりがちです。
財産分与は夫婦共有財産を原則として2分の1ずつに分け合うものですが、医師との離婚では、このルールが修正される可能性があることに注意しなければなりません。
なぜなら、夫婦のどちらか一方が有する特別な才能や努力が、財産の形成・維持に大きく寄与したと認められる場合には、その人の取り分を多くしなければ公平とはいえないからです(大坂高等裁判所平成26年3月13日判決等)。
また、医師には大きく分けて、開業医(自営)、医療法人の経営者、勤務医という3種類の働き方があります。それぞれのケースごとに、財産分与における注意点をみていきましょう。
開業医(自営)の場合
個人事業主として医院やクリニックを経営している開業医の場合は、事業用資産も個人の資産に当たるため、基本的に財産分与の対象となります。
ただし、開業医は事業資金を借り入れていることも多いことに注意が必要です。事業のための借金が残っている場合には、その残高を積極財産と相殺し、残った金額のみを財産分与することになります。
また、開業医には退職金もなく、過去に厚生年金や共済年金に加入したことがなければ、年金分割もできません。
そのため、開業医との離婚では、分与すべき財産が意外に少ないこともあります。
もっとも、将来に備えて、婚姻期間中に小規模企業共済や私的年金、生命保険などに加入して掛け金を支払っていた場合、これらのものは財産分与の対象となることがあります。
医療法人を経営している場合
医療法人の経営者との離婚では、法人名義の資産と個人名義の資産とを分けて考えなければなりません。
法人と個人は法的に別人格とされているので、財産分与の対象となるのは、原則として個人名義の資産のみです。
ただし、次のような場合には、法人名義の資産であっても財産分与の対象となる可能性があります。
- 経営する医療法人が個人事業と同視できるほど小規模である場合
- 事業用資産と個人の資産が混同しており、明確に区別されていない場合
- 配偶者も共同で経営に関与していた場合
これらのケースでは、法人名義の資産であっても夫婦が協力して築いたと評価できることもあり、その場合には法人名義の資産も財産分与の対象となるのです。
医療法人の経営者は、定款に定めがあれば退職金を受け取ることができます。その場合は、退職金も財産分与の対象となる可能性があります。
退職金に関する定めがない場合でも、開業医の場合と同様に、小規模企業共済や生命保険などが財産分与の対象となる可能性があります。
また、法人の経営者は厚生年金への加入が義務付けられているため、年金分割は可能です。
勤務医の場合
第三者が経営する医療機関に雇用されている勤務医は給与所得者なので、財産分与に関する考え方は一般的な会社員の場合と同じです。
つまり、婚姻中に取得した財産は、基本的にすべて財産分与の対象となります。勤務先に退職金の支給規程があれば退職金も財産分与の対象となる可能性があります。厚生年金に加入していれば、年金分割も可能です。
ただし、個人の特別な才能や努力によって高収入を得ていることから、医師は配偶者よりも高い分与割合が認められる可能性がある点は、一般的な会社員とは異なります。
医師との離婚手続
医師との離婚手続きは、一般的な会社員などと離婚する場合の手続きと基本的に同じです。
以下では、医師と離婚する場合の注意点と併せて、離婚手続きの流れをご説明します。
交渉する
まずは、協議離婚を目指して相手と交渉しましょう。この交渉のことを「離婚協議」といいます。
離婚協議では、財産分与だけでなく慰謝料や親権、養育費など、他の離婚条件についても交渉することが大切です。
慰謝料の金額は離婚原因別に大まかな相場が形成されていますが、医師のように収入と社会的地位が高い相手との離婚では、相場よりも高額の慰謝料が認められることもあります。
養育費の金額については、裁判所の養育費算定表を参照すれば、ご自身と相手の年収や、子どもの人数・年齢に応じた目安が分かります。
ただし、慰謝料や養育費の適正な金額は、個別の事情によって大きく異なることがあります。適切な離婚条件を相手に提示するためには、一度、弁護士に相談してみた方がよいでしょう。
交渉の結果、納得のいく条件で合意ができたら、離婚届を提出することで協議離婚が成立します。
合意した内容を相手に約束を守ってもらうためには、離婚届を提出する前に、離婚協議書を公正証書で作成しておくのがおすすめです。
離婚調停の申立てをする
離婚協議で合意できなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停の申立てをします。
離婚問題については、いきなり裁判を提起することはできず、先に離婚調停を申し立てる必要があることにご注意ください。このことを「調停前置主義」といいます。
離婚調停では、裁判所が選任した男女各一名の調停委員が相手との話し合いを仲介してくれます。そのため、夫婦だけで話し合うよりも合意に至る可能性が高まります。
合意に至れば、調停離婚が成立します。調停が成立した場合には、当事者が合意した内容が記載された調停調書が作成されます。
調停調書には確定した判決と同一の法的効力が認められますので、納得できない場合は、たとえ調停委員から説得されたとしても合意しないように注意しましょう。
婚姻費用の申立てを一緒にする
相手と別居している場合は、離婚調停の申立てと同時に婚姻費用を請求する申立ても行いましょう。
婚姻費用とは、婚姻中の夫婦にかかる生活費のことです。別居していても離婚が成立するまでは夫婦なので、収入が低い側の配偶者は相手に対して婚姻費用を請求できます。
別居中の生活費を早めに確保するためにも、婚姻費用請求の調停は離婚調停と一緒に申し立てておきましょう。
離婚裁判を提起する
離婚調停でも合意できなかった場合は、家庭裁判所で改めて離婚裁判を提起します。
裁判では、ご自身の主張を証拠によって証明する必要があります。相手が離婚を拒否している場合には、浮気やDV、モラハラなど離婚原因となる事実を証明できる証拠が必要です。
相手が家事・育児に協力してくれないなどの理由で離婚を求める場合には、その事情が「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを主張した上で、夫婦関係の実態を証明できる証拠を準備しましょう。
適正な財産分与を獲得するためには、相手の財産の内容を証明できる証拠を提出することが大切です。相手がすべての財産を開示すれば問題ありませんが、財産隠しをされた場合には、財産分与を求める側が財産の存在と内容を証明しなければなりません。
以上の証拠は、別居後に集めようとしても難しいことが多いです。離婚話が出ると相手が証拠を隠すことも多いので、できる限り、離婚を切り出す前に十分な証拠を確保しておきましょう。
医師の離婚手続きは弁護士に相談を
医師との離婚では、高額の慰謝料や財産分与を獲得できるケースが多いです。
しかし、相手との交渉がスムーズに進まない場合には、十分な証拠を確保した上で離婚調停や離婚裁判を起こさなければならないこともあります。これらの手続きには手間もかかりますし、専門的な知識も要求されます。
また、医師が離婚する場合には、日々の激務に追われて時間的、精神的な余裕がなく、離婚協議や調停、裁判にじっくり対応するのが難しいこともあるでしょう。
当事務所にご依頼いただければ、離婚事件を解決に導いた実績が豊富な弁護士が代理人となり、離婚手続きを全面的にサポートいたします。
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