コラム
更新日: 2024.04.30

問題社員を解雇したい時の注意点|問題行為の種類に応じて解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

労働問題 問題社員の対応 安易な解雇は控えるべき

問題社員だから、「クビにすればいい。」と簡単に考えていると足をすくわれます。

今回は問題社員の対応方法について解説します。

無断欠勤を繰り返す問題社員への対応については、下記のコラムで解説していますので参考になさってください。

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問題社員とは

問題社員とは、遅刻欠勤を繰り返す、協調性がない、業務指示に従わない、人柄や素行が悪い、不正行為を行うなどの問題行動を行い、使用者がこれら問題行動に対して繰り返し注意・指導等をしても改善されない従業員を指します。

問題社員は、企業の風土や従業員個々の属性などにもよりますが、問題行動の原因が、自分自身によるものではなく、『上司や会社が評価しないから』という他責思考の強い傾向が特徴です。

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問題社員を放置するリスク

問題社員への対応を漫然と放置すると、様々な問題が起こり得ます。

社員のモチベーションを悪くする

問題社員は、同僚や部下に対して、日常的に会社の不満を漏らしたり、問題行為を繰り返すなどして、会社内の士気を低下させ、会社内の雰囲気を害します。その他の社員の離職を招くことすらあります。

新規採用・新規取引を困難にする

問題社員の放置により社内環境が悪くなると、離職した社員等を通じて掲示板やSNS上で会社の悪評が拡散されるリスクもあります。

これにより、会社の社会的評価が低下して、新規採用と新規取引が困難になる可能性もあります。

既存取引の解消

さらには、問題行為により、取引先や顧客からのクレームを招き、顧客との関係性を悪くし、最悪な時には取引関係が解消される場合もあります。

このように、問題社員の問題行動を放置することは、会社にとって嬉しいことは一つもありません。

問題社員の解雇は慎重に

問題社員の解雇は慎重に行いましょう。

問題行動を繰り返し行なっているのであるから解雇して当然だと考え、安易に解雇してしまうケースがあります。また、解雇予告手当さえ払えば、いつでも容易に解雇できると考え、解雇してしまうケースもあります。

しかし、懲戒解雇にしろ、普通解雇にしろ、解雇は無制限ではなく、合理的な理由があり、かつ、社会的に相当と言える場合に限り許容されます(解雇権濫用法理)。

解雇は社員の地位を一方的に奪う重大な処分ですので、解雇が有効となるためには、かなりハードルが高いと考えられています。

労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

不当解雇となった場合の負担

問題社員に対して不用意に解雇を言い渡してしまったことで、その解雇が起点となって、さまざまな問題が生じるリスクがあります。

以下で述べるリスクを回避するため、問題社員の対応は慎重に計画的に実施する必要があります。

労基署による調査

労働基準監督署に駆け込み、労基署から臨検が入るリスクがあります。

不当解雇のほか、時間外手当の不支給などの労働基準法違反の状況が告発されることで、労基署による調査が実施されるおそれがあります。

労働紛争の手間や費用

問題社員が依頼した代理人弁護士から、交渉の申し入れがなされることもあります。労働者側に弁護士が就いたことで、会社側も代理人弁護士に委任せざるを得なくなります。

交渉が頓挫した場合には、通常訴訟や労働審判に移行します。訴訟となれば1年以上、労働審判となれば半年前後の期間を要し、使用者側は、労働紛争に時間や手間を取られてしまいます。

バックペイや解決金の負担

解雇が無効と判断される場合、使用者は問題社員に対して、解雇から解決時までの期間に係る賃金(バックペイと呼ばれます。)と、解決金として賃金の数ヶ月分を支払うことがあります。

解雇の理由や相当性等に応じて、3ヶ月から1年分まで幅があります。

さらに、解雇無効に関連する請求に加えて、未払残業代等の請求がなされることがあります。

会社の社会的な評価が悪化する

金銭的な負担に限らず、解雇無効の紛争のために時間や労力を割かなければなりません。

また、会社の社会的信用が低下したり、従業員のモチベーションや忠誠心が低下するリスクもあります。

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解雇の前に退職勧奨をする

以上のとおり、問題社員に対する対応は企業経営上重大な課題であり適切な対応を必要としますが、勢い余って解雇することには多くのリスクがあります。

そこで、問題社員の対応をしつつ、解雇に伴うリスクを回避するため、計画的に『退職勧奨』を行い、問題社員による自発的な退職を促します。それでもなお、退職しない場合に初めて解雇の手続きに移行させます。

ただし、犯罪行為や重大な不正行為に及んだ場合には、退職勧奨ではなく、解雇処分を行うことで十分対応できるケースもあります。

そのため、以下で述べる退職勧奨に至るステップは、直ちに解雇処分に付すことが困難な程度の問題社員を対象としているものと考えてください。

退職勧奨とは

退職勧奨とは、使用者が特定の労働者に対して退職を働きかけて退職を動機付ける行為です。

その働き掛けの手段・方法が、限度を超えてしまい社会的相当性に欠ける場合には、損害賠償請求を受けたり、退職勧奨が実質的に解雇処分であるとして無効とされるリスクがあります。

退職勧奨を行うステップ

解雇ではなく退職勧奨だからといって、必要とされるステップを素っ飛ばして、いきなり勧奨できるわけではありません。ここまで手を尽くしたのに改善されなかったという地道なステップを踏まなければなりません。

①就業規則の作成・改訂

まずは、就業規則の作成です。

懲戒解雇を含めた懲戒処分が有効となるためには、就業規則に懲戒事由が予め規定されており、問題行動がこの懲戒事由に該当することが必要です。

就業規則がなければ、問題社員の問題行動に対して懲戒処分を課す根拠がないことになります。

万一、就業規則が存在しない場合には、速やかに作成するようにしてください。就業規則の作成に際しては、従業員の過半数代表からの意見聴取をした(労働基準法第90条)上で、就業規則を労働基準監督署に届け出て、社内で周知させます(労働基準法第106条)。

また、懲戒事由を列記した就業規則を作成していたとしても、懲戒事由の解釈はできる限り限定的になされるべきと考えられていますから、懲戒事由が曖昧で抽象的であれば、就業規則の改訂作業を進めなければなりません。

②ヒアリング

問題社員の問題行動を察知した後、曖昧な情報の中、いきなり問題社員からヒアリングをすることは適切ではありません。

情報源からの聞き取り、メール、日報等の客観的資料の収集、上司、先輩、同僚などから聞き取りを行うことにより、問題行動を的確に把握するように努めます。

その上で、問題社員当人から、問題行動についてヒアリングを行います。

ここで、問題社員と口論となってしまうと、事実確認を十分に行えません。 

そのため、問題社員のヒアリングの際は、「傾聴」と「共感」の姿勢を強く意識しながら、問題社員に存分に喋ってもらうように心掛けます。

③対処方法の提示

問題社員からのヒアリング内容やそれ以前に収集していた情報を総合して、問題社員に対して、会社としての考えや対処方法を示さなければなりません。

問題社員からの理不尽な要求に対しては毅然とした回答をしなければなりません。

問題社員の業務状況を正確に把握するために日報を作成させることも効果的です。

しばらく経過を観察し、状況が好転すればそれで足りますが、状況に変化がない、それどころか悪化する場合には、配置転換や懲戒処分を検討します。

④懲戒処分

問題社員の問題行動に改善が見られない場合、懲戒処分を検討します。

まずは、就業規則の懲戒事由に該当するかを慎重に判断します。

何らかの懲戒事由に該当することを前提として、軽微な問題行動の場合には、従業員に経済的な不利益が生じない戒告・訓戒・譴責などの懲戒処分を行い、従業員に対して始末書や報告書を提出させます。それでもなお、改善がなされない場合には、減給などのより重い懲戒処分を行います。

問題行動が軽微ではない場合、注意ではなく減給や降格といった重い懲戒処分を初めから行います。

問題行動が、犯罪行為かこれに準じるものである場合には最初から解雇処分に付すこともあります。

⑤退職勧奨をする

問題社員に対して段階的な懲戒処分を行いつつ、教育研修の機会を与えるなど改善の機会を与えてきたものの、改善に至らない場合には、退職勧奨を行います。

⑥退職届の提出

従業員が退職勧奨を受け入れる場合、従業員から退職届を提出してもらいます。

口頭ではなく、書面により、退職日を明確に記載された退職届を提出してもらいます。退職にあたって、退職金の上積みなどの退職条件が合意された場合には、合意書の作成も欠かせません。

退職勧奨をする時の注意点

退職勧奨においては、以下の点を留意しながら退職強要にならないように注意が必要です。

退職勧奨を行う際の進め方としては、過去の問題行動を取り上げた上で、再三にわたって指導や注意を行ってきたなどの雇用継続のための努力を尽くしてきたが、改善されなかったという、これまでの経緯を述べた上で退職勧奨をします。

解雇やクビというワードは絶対に使用せず、あくまでも従業員の意思による退職を促すということを忘れないようにしてください。

退職勧奨に対して、従業員が強く抵抗するなど受け入れないことも十分に予想されるため、「退職パッケージ」を用意しておきます。具体的には、特別退職金の支給・有給休暇買取・再就職支援といったものです。特別退職金は、勤続期間や退職時の職位などに応じて決定されます。このような退職パッケージを提案することで、退職勧奨に応じる動機付けをします。

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問題行為の類型に応じた対応方法

問題社員の問題行為には、様々な類型があります。問題行為の種類に応じた対応が必要です。

遅刻・欠勤

遅刻や欠勤を繰り返す社員に対する対応を紹介します。

口頭による注意から

最初は、ヒアリングを実施した上で、口頭で注意・指導を行い、改善されない場合には、書面あるいはメールの形で厳重に注意指導をしなければなりません。

懲戒処分を行う

書面による厳重注意をしてもなお、改善されない場合には、懲戒処分を検討します。懲戒処分にあたっては、これに該当する懲戒事由が就業規則に記載されているかを必ず確認します。

その懲戒事由に該当しているとしても、いきなり懲戒処分をするのではなく、従業員本人から遅刻や欠勤の理由などを具体的に聴き取り調査を行い、弁明の機会を与えるなどして慎重な手続を経る必要があります。

その上で、遅刻等に正当な理由がないと判断できる場合には、懲戒処分を行いますが、余程の事情が無ければ、最初の懲戒処分は最も軽い譴責とし、改善がなければ徐々に重たい処分とします。この場合には、懲戒理由を具体的に記載した通知書を交付します。

ただし、遅刻や欠勤が理由となり、取引先との取引が停止するなど、使用者側に大きな損害が発生したような場合には、最初から重たい処分を課すこともあります。

退職勧奨と解雇処分

改善なく遅刻等を行い、その都度、注意指導や懲戒処分を繰り返し行ってもなお、改善が見られない場合には、退職勧奨の上、退職しない場合には解雇処分をすることもあり得るでしょう。

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協調性不足

企業には多数の従業員が所属して働いていますから、従業員それぞれの協調性なくして企業の秩序を維持した事業活動を行うことはできません。そのため、従業員には、成績や能力だけでなく、協調性も求められます。

そこで、協調性を欠く言動を行う問題社員に対しては、何らかの処分を行い、企業秩序の回復を図る必要があります。

しかし、協調性を欠くというのは、主観的な部分が多く含まれており、従業員の個性によって協調性があったり、なかったりと判断される余地があります。 

そのため、協調性の有無に関する判断については、同僚社員や上司からその都度報告書や日報を提出してもらい、日頃から問題社員の協調性を欠く言動を記録に取るよう心掛け、事後的に問題行動を証明できるようにしておきます。

配置転換先がある企業の場合

協調性不足により職場内の業務に支障が生じている場合には、配置転換先がある企業においては、配置転換を行うなどして、改善の機会を与えます。配置転換に際しては、協調性不足が理由であることを明確に伝えるべきだと考えます。

これを伏して配置転換をすると、問題社員は理由も分からず配置先で就労を再開させるので改善の動機付けとならないからです。

新しい配置先でも同様に協調性不足が確認できるような場合、再度の配置転換を検討します。配置転換が可能な場合には、再度配置転換を行い、厳重注意や再教育の実施も行います。

このように手を尽くしても改善の様子を伺えない場合には、退職勧奨を行います。

配置転換先がない企業の場合

配置転換先がない場合、配置転換による改善の機会を与えることができません。

そうはいっても、協調性不足を理由にいきなり解雇すると無効と主張されるリスクが高いです。

そこで、協調性不足の言動に対して、注意指導から始め、改善されない場合には戒告等の軽い懲戒処分を行います。

その間、問題社員には日報を作成してもらうなどして、日々の業務の振り返りをしてもらいます。さらに、定期的にヒアリングや面談を行うなどして問題社員とのコミュニケーションも継続して行います。

それでもなお、協調性不足が改善されなければ、退職勧奨を行い、これに応じない場合には、弁明の機会を付与した上で普通解雇とします。

能力不足

能力不足が問題となる場合、その雇用契約において、どのような能力を備えていることが契約内容となっているのかがポイントとなります。

新卒採用された場合と、特定の能力を買われた中途採用の場合とでは、対応方法には当然差異があります。

新卒採用の場合

一般的に、新卒の一括採用の場合、特定の業務に関する特定の能力があるかどうかは契約内容とされていないことが多いです。 

長い時間をかけて社員教育や人事異動を行うことで具体的な職務能力を身につけていくことが予定されています。

そのため、新卒採用により入社した従業員の能力不足が解雇事由に該当するには、会社に重大な損害が発生する程に能力不足が深刻な場合に限定されるでしょう。

そこで、定期的な面談、社内外の研修の受講、配置転換、日報による業務報告などの能力不足を解消させるための措置を尽くすことが必要です。

それでも、能力不足が改善できない場合でも、その能力不足を理由とした解雇のハードルは高いです。そのため、解雇処分を行う前に、退職パッケージをセットにして退職勧奨を行うことを推奨します。

特定地位者として採用した場合

特定地位者とは、特定の能力を有していることを期待されて、営業部長や人事部長などの職務上の地位を特定して採用される者をいいます。

特定地位者の場合、職務上の地位に必要とされる能力を有していることが雇用契約の内容とされています。そのため、求められた能力が発揮されていない場合には、契約内容の履行がなされていない(つまり債務不履行)として、退職勧奨や普通解雇を検討します。

なお、特定地位者の場合、降格や配置転換などの解雇回避努力を講じる必要性は乏しいと考えられています。

解雇にあたっては、実力を発揮できる機会・期間があったか、地位特定者として十分な待遇を受けていたか、成果が挙がらない要因として実力以外の外的要因が無いかなどを考慮します。

特定地位者との労働契約の注意点

特定地位者の場合、特定の業務に関する能力を有していることが契約内容となる以上、そのことを明確にした労働契約書を作成しておく必要があります。

具体的には、以下の内容を含めた契約書や合意書を作成しておきましょう。

  1. 営業部長なり人事部長なり、就任する職務上の地位を明示します。
  2. 使用者として求める業務内容や能力を具体的に明記します。
  3. 最後に、会社が要望する成果の数値や内容の明示をします。

これらを備えていない契約の場合には、特定地位者としての雇用契約の成立が否定されかねず、能力不足を理由とした解雇のハードルを上げてしまいます。

専門職者として採用

職種が専門的で、一定年数の職務経験を買われた中途採用者の場合、特定の職務に関する一定程度の能力を有することが雇用契約の内容とされていますので、能力不足は債務不履行となり得ます。

しかし、地位特定者のように特定の職務上の地位を付与されているわけでもなく、地位特定者ほどの待遇を受けていないことがほとんどですから、地位特定者と比較して解雇のハードルは高くなります。

前提として、求人募集の内容、採用面接時の説明、履歴書の内容、雇用契約書の内容を踏まえながら、特定の職務に関する一定水準の能力を有していることが雇用契約の内容とされているかを確認します

そして、求められている一定水準の能力が不足している場合には、労働者本人との面談を通じて改善方法を提案したり、社内・社外の研修を受講させ、能力不足の解消に努めます。

それでもなお、改善されない場合には、適宜、注意指導を行いながら、配置転換を実施し、改善の機会を与えます。

このような能力不足を改善させるための手段を尽くしてもなお、改善されず、従業員本人も改善の意欲が乏しいような場合には、退職勧奨を実施することになります。

不正行為

従業員の中には、日報の虚偽作成、商品や備品の無断持ち出し・販売といった不正行為を働く者がいます。

このような不正行為による企業への悪影響は大なり小なり生じます。そのため、不正行為を行った従業員に対しては、解雇を含めた懲戒処分を検討します。

懲戒処分をする流れ

まず、不正行為が行われた事実を、監視カメラ、関係者の証言、虚偽作成された日報に加え、当該労働者自身の供述あるいは報告書などを基に十分に認定できる状況であることを要します。

その上で、問題社員から直接ヒアリングを行い、不正行為に関する言い分を聞き取りします。

次に、当該不正行為が就業規則に規定された懲戒事由に該当するかを検討します。懲戒事由については、あまりに広い解釈をすると、労働者の予測可能性を害してしまいますので、合理的に限定した解釈がなされることを要します。

選択する懲戒処分

懲戒処分の内容は、以下の要素を総合考慮して決定されます。

① 非違行為の動機、態様および結果
② 故意または過失の度合い
③ 非違行為を行った職員の職責、職責と非違行為との関係
④ 他の職員および社会に与える影響
⑤ 過去の非違行為の有無
⑥ その他、日頃の勤務態度や非違行為の対応等

例えば、日報の虚偽作成の場合、これによって使用者側に具体的な損害が発生していないのであれば、軽めの懲戒処分を選択します。

他方で、虚偽作成が原因となって取引先との関係悪化といった問題が現に生じている場合には、最初から重たい処分を選択することはあり得るでしょう。

次に会社の商品や私物を持ち出すなどの犯罪行為に及んでいる場合、組織内の秩序維持の必要性も高いこともあり、通常は懲戒解雇となるケースが多いです。 

再発防止のための対応策(キャッシュレス決済、売上のダブルチェック、監視カメラの設置等)を検討の上、速やかに導入する必要があります。

ただ、窃盗や横領の被害額が極めて僅少で、被害弁償も行われている場合には、解雇を回避することもあり得ると考えます。

セクハラ

職場内外で女性社員の体を触る、馴れ馴れしく接したことについて女性社員から素っ気ない態度を取られたので、きつくあたるといった言動を行う社員に対して、どのような対応が必要でしょうか。

セクハラとは

セクハラ対策が、企業秩序の維持を図るために重要な問題であることは既に広く知られているかと思います。

職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクハラ」という。)と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクハラ」という。)があります。

女性社員の体を触る行為は環境型セクハラ、きつくあたる行為は対価型セクハラとなります。

男女雇用機会均等法11条により、使用者は職場におけるセクハラ防止のために必要となる措置を講じなければなりません。

セクハラに対する処分の流れ

まずは対象となるセクハラ行為の事実確認を行います。

被害を受けたとされる従業員から詳細な事情をヒアリングした上で、被害女性のプライバシーに十分な配慮をしながら、上司や同僚社員からのヒアリング、メール・SNSなどの履歴を確認します。これらを終えると、セクハラを行ったとされる問題社員のヒアリングを行います。

セクハラの事実を認定できる場合には、原則として懲戒処分を行います。客観的な証拠が乏しいことを理由に、セクハラ問題をウヤムヤにすることは避けなければなりません。

双方の主張が真っ向から対立したとしても、どちらの供述が信用できるのかを精査し、会社としての判断を示します。

それでもなお、最終的な判断を下せない場合には、被害女性に対して、弁護士に委任した上で裁判手続を検討するよう打診するしかありません。

選択するべき処分内容

セクハラと一言で言っても、セクハラの限度を明らかに超えるような強制わいせつなどの犯罪に該当するものから、性的な発言に留まるものまで一定の幅があります。

また、セクハラの回数やこれによる被害者の被害の程度にも幅がありますので、これらの事情に応じて処分内容を判断します。

例えば、強制わいせつや強制性交に該当するような事案であれば、たとえ処分歴がなかったとしても初回から懲戒解雇等に付すべきでしょう。

着衣の上からお尻や胸を触るような事案の場合、過去に同様の行為による処分歴がなければ、上司による行為であれば降格、同僚同士で行為者に職位がなければ出勤停止などの懲戒処分に付します。初回から解雇にすることはリスクがあります。他方で、同様の行為による処分歴があれば解雇できる可能性があります。

次に、男女雇用機会均等法で規定するセクハラに該当する言動、例えば、性的な発言をしたり、執拗に食事に誘うなどの言動の場合、行為者の職位や回数なども踏まえ、戒告や減給等の懲戒処分に付します。

不倫

社外で会社とは関係のない女性と不倫関係を持ったとしても、プライベートの問題ですから、これを理由に懲戒処分を付すことはできません。

これに対して、社内での不倫関係の場合はどうでしょうか?たとえ社内不倫であったとしても、プライベートの範疇であれば、誰と交際関係を持とうが、会社はこれに干渉することはできません。

しかし、社内不倫により、社内の秩序が乱れ、業務遂行に支障が生じている場合には、配置転換を行うか、配転先がないような場合には戒告等の懲戒処分を付した上で、改善の見込みがなければ、社内不倫によって生じている影響も踏まえ、普通解雇することもあり得ると考えます。

問題社員の対応は弁護士に相談を

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問題社員には多様な類型が存在しており、企業の規模や業種も様々ですから、その類型や企業規模に応じた計画的な対応が必要とされます。就業規則の整備から着手しなければならない事案もあるかと思います。

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