コラム
最終更新日:2023.05.20

固定残業代とは?固定残業代のメリットとデメリットを弁護士が解説

残業を行う女性社員

会社が従業員に対して固定残業代を支払うことがよくあります。

しかし、固定残業代も常に有効というわけではありません。

今回は固定残業代について解説をしていきます。

本記事を読んで分かること

固定残業代とは?

固定残業代のメリットデメリット

固定残業代が有効となる条件

1.固定残業代とは?

「固定残業代制」とは、残業代等を支払う代わりに、あらかじめ固定された金額の残業代を支払う制度のことです。

固定残業代制には、①基本給の中に含めて支払う方法(組入型)②基本給とは分離させて一定額の手当を支払う方法(手当型)があります。 

2.固定残業代のメリット

残業時間をカットしたい

固定残業代を設けることで期待できるメリットは以下のとおりです。

2-1.不公平の解消

たとえば、業務効率の高い従業員Aが残業なしで仕事を行い、他方で業務効率の低い従業員Bが残業を行う場合です。

Bは残業を行う分、残業代を受給するため、同じ仕事でも、効率の良いAの給与額より効率の悪いBの給与額の方が高くなってしまい、従業員の間で不公平が生じます。

固定残業代は、残業をする・しないに関わらず所定の固定残業代が払われますから、従業員の不公平感を解消させることができます。

2-2.無駄な残業を削減

固定残業代は、残業をしなくても支払われます。

そのため、残業代を受け取るために必要のない残業を行う必要がなくなります。

このように固定残業代制は、無駄な残業を抑制し、業務効率の向上を図ります。

2-3.給与計算の手間を削除

固定残業代がない場合、毎月、残業時間を集計して残業代を計算しなければなりません。

これに対して、固定残業代を支給していれば、毎月の残業代計算の手間を省略することができます。

3.固定残業代が無効となる場合

固定残業代という名目で支給をすれば、常に残業代の支払いとして有効となるわけではありません。

後述する条件をクリアしなければ、固定残業代が残業代として支給されたことになりません。

3-1.残業の不払いとなる

固定残業代が残業代として有効ではない場合、固定残業代に対応する残業代は不払であったことになります。

そのため、残業時間に対して、固定残業代とは別に残業代を支払う必要が生じます。

3-2.基礎賃金が多くなる

固定残業代が残業代とされない場合には、残業代の計算の基礎となる基礎賃金に固定残業代も含まれることになります。

例えば、基本給20万円、固定残業代3万円の場合です。

固定残業代が有効であれば、固定残業代を除く残業代の計算の基礎賃金は基本給20万円となります。

固定残業代が無効となると、固定残業代も含めた23万円が基礎賃金となります。

残業代の計算基礎となる基礎賃金が高くなる分、残業代の金額も大きくなります。

3-3.付加金の負担

固定残業代が無効とされる場合、残業代の不払いがあったことになります。

そのため、残業代の不払いに対するペナルティとして付加金の支払いを命じられる場合があります。

TIPS!
使用者が、時間外労働等の割増賃金(同法37条)を支払わなかった場合には、裁判所は使用者に対して、未払分とは別に、これと「同一額の」付加金の支払を命じることができます。
労基法の改正によって、令和2年4月1日以降は、付加金の除斥期間が3年になりました。

4.固定残業代の有効要件

固定残業代が有効となるためには、①固定残業代を支給する合意が有効に成立していること②固定残業代と他の給与と明確に区分できることが必要です。

4-1.①合意について

固定残業代が有効となるためには、まず、労使間で固定残業代の合意が成立していることが必要です。

合意が成立しているか否かは、

①契約書や合意書の記載内容

②使用者から労働者に対する手当や割増賃金に関する説明の有無や内容

③実際の労働時間が固定残業代で想定された残業時間よりも長時間である(労働者の実際の労働時間等の勤務状況)

等を要素として判断します。

4-1-1.精算の実態

固定残業代で予定している残業時間を超えて残業する場合には、固定残業代とは別に、超えた分の残業代を支払う必要があります。

しかし、近時の最高裁の判例や裁判例を踏まえると、超過分の残業代を精算していない場合でも、直ちに固定残業代が無効となることはありません。

あくまでも、精算の合意とその実態は、固定残業代の合意が成立しているかを判断する一つの材料と解するべきでしょう。

4-1-2.固定残業代の残業時間

固定残業代で組み込まれている残業時間があまりにも長時間である場合、固定残業代の合意は無効となる可能性があります。

法律の改正により、残業時間の上限は原則1か月45時間となりました。

そのため、固定残業代の残業時間は、上限規制の45時間を目安とするべきでしょう。

過労死ラインである月80時間を超えるような長時間の残業時間を組み込む固定残業代の合意は無効とされる可能性は高くなるでしょう。

4-1-3.最低賃金を下回る

給与から固定残業代を引いた金額を決められた1か月の労働時間で割り、時給額を算出してみます。

この時給額が最低賃金を下回る場合には、最低賃金法に違反することになるため、その固定電話代の合意は無効となります。

4-2.②明確に区分できるか

固定残業代が通常の給与と明確に判別できることが必要となります。

上記のとおり固定残業代には、基本給に組み込むタイプと基本給とは分けて支給するタイプがあります。

4-2-1.組み込み型

固定残業代を基本給に組み込む場合、基本給のうち、どの部分が固定残業代にあたるのかを明示しなければなりません。

色々な考えや裁判例はありますが、固定残業代の金額だけでなく組み込む時間数まで明示しなければ無効される可能性はあるでしょう。

4-2-2.手当型

手当型の場合、その手当は基本給と分離しています。

そのため、固定残業代の金額がはっきりしています。

他方で、固定残業代で組み込まれている残業時間が明示されていない場合には、無効とされる余地はあります。

また、手当の名称、手当の計算方法、賃金体系等を踏まえて、その手当が固定残業代であるかが判然としない場合には、明確に区分されていないとして無効となる可能性があります。

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5.弁護士に相談しよう

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固定残業代(みなし残業代)が残業代の支払いとして機能しているかは、非常に難しい判断となります。

特に複雑な計算方法を採用している場合には、近時の最高裁の判例を踏まえると、詳細な整理が必要となります。

ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。

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