ECサイトなどで商品やサービスの宣伝をするときには、業態によっては、特定商取引法や各種業法による広告規制がありますが、これに加えて景品表示法による広告規制にも注意が必要となります。
景品表示法は、誇大広告などの消費者を惑わせる広告を禁止する法律です。
違反すると課徴金を課されたり罰則が適用されたりする可能性もあるので、適正な方法で宣伝活動を行いましょう。特に、景品表示法が禁止する「有利誤認表示」や「優良誤認表示」について具体例でわかりやすく説明していきます。
1.景品表示法が禁止する表示方法
景品表示法は、消費者が勘違いして不必要な商品やサービスを購入してしまわないように、事業者の広告宣伝方法を規制しています。
適用対象となるのは商品やサービスを提供するすべての事業者なので、ネット通販でもリアルの店舗営業でも、物の販売でもサービスの提供でも、ありとあらゆる事業者に適用されると考えてください。最近では、直接商品やサービスを提供しないアフィリエイターによる宣伝活動についても規制が及ぶと解されています。
代表的な規制内容として「有利誤認表示」と「優良誤認表示」の2種類があるので、それぞれ具体例とともに確認しましょう。
2.優良誤認表示とは
優良誤認表示とは、商品やサービスの性質について現実よりも優れたものであるかのように誤解させる広告表現です。あるいは事実に反して競争関係にある事業者の商品やサービスよりも著しく優良であることを示すものです。たとえば「産地偽装」や「原材料の偽装」は典型的な優良誤認表示といえます。
2-1優良誤認表示の具体例
- 料亭で「天然のマグロやトラフグ」を使っていると表示したのに、実際には養殖魚を使用していた
- おにぎりの米に「あきたこまち」を使っていると表示したのに実際にはブレンド米を利用していた
- 「国産ハチミツ」と表示していたのに実際には外国産のハチミツであった
- 野菜の販売で「化学肥料不使用」と表示していたのに、実際には栽培過程で化学肥料を使用していた
- 学習塾で「東大卒の講師が担当」などと宣伝していたのに、実際には東大以外の学生や卒業生が講師を努めていた
- 「飲むだけで簡単に痩せる」「たった一粒で激ヤセ」「寝ている間にダイエット」などと表示してサプリメントを販売していたけれども、実際には痩せる効果は実証されていなかった
- 国連のロゴマークを飲料水の商品ラベルに貼り付けて「世界で当社のみが国連から使用許可をいただきました」などと表示していたけれども、実際には国連から何の許可も受けていなかった
- 「ポリフェノール含有量日本一」など「最高」「最上級」を表す用語を利用した
- 「カシミヤを利用」と表示してコートやセーターを販売していたが、実際にはウール製であった
2-2合理的な根拠の提出(不実証広告規制)
優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、消費長は広告を行う事業者に対して、期間を定めて、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めます。
事業者が、合理的な根拠を示す資料を提出できない場合や表示の裏付けとなる合理的な根拠とならない場合には、優良誤認表示とみなされます(景品表示法7条2項)。
合理的な根拠となるための要件は以下のとおりです。
①提出資料が客観的に実証された内容のものであること
→試験や調査委によって得られた結果又は専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献であること
②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
2.有利誤認表示とは
有利誤認表示とは、自己の供給する商品やサービスの価格や取引条件について、実際よりも消費者に対し著しく有利であると誤認される、あるいは、競争関係にある事業者の価格や取引条件よりも著しく有利であると誤認される広告表示をいいます。
本当はお得ではないのに「お得だ」「今買うと得だ」「他の店よりもお得だ」などと思わせる広告が有利誤認表示です。
有利誤認表示の具体例
- 1ヶ月の期間限定ではないのに「1ヶ月のみの半額割引」などと表示して、1ヶ月が経過すると期間を更新して「期間限定割引」を繰り返している
- 「半額割引」と表示しているけれど、そのもととなる「通常時の料金」が現実の通常料金より高額に設定されているため、本当は通常時の半額になっていない
- 通常価格と割引価格の2種類が表示されているけれど、通常価格は架空の価格、あるいは実際に販売した実績のない価格であった
- 「スーツ・ジャケット全品半額」と表示していたが、現実には一定金額以上のスーツやジャケットだけが半額になっていた
- 「セット価格198000円」と表示していたが、実際には表示されたセット価格以外にも諸費用がかかる条件であった
薬機法にも要注意
健康食品やサプリを取り扱う場合には、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)にも注意が必要です。「痩せる」「花粉症が改善する」「ガンが治る、予防できる」などの「病気の治療効果」を標榜すると、景品表示法だけではなく「薬機法」違反にもなってしまいます。病気の治療効果をうたっても良いのは「医薬品」のみなので、一般の食材やサプリメントでは表示してはなりません。景品表示法とは異なり医薬品的な効果効能があることを表示すれば、その合理的な根拠の有無に関係なく薬機法違反となります。
衣類、食品、エステ、ネット通販など各種サービス、ありとあらゆる業種の広告に景品表示法が適用されます。ECサイトで顧客を募集する場合にはくれぐれも違反しないようにしましょう。
広告規制についてお悩みがありましたら、弁護士にご相談ください。