相続は人が亡くなることで発生します。
その後、相続財産は遺産分割のルールに則って分配されます。亡くなった方が遺言書を作成していた場合は、指定分割といって分配時に最優先されます。しかし、遺言書を作成していなかった場合、民法が定める法定相続に則って遺産分割するのが好ましいとされています。
本記事では、法定相続分について分かりやすく解説します。
初回30分無料で電話相談お受けします
【電話相談受付中】
法定相続分とは
法定相続分とは、民法によって定められた相続割合です。
各相続人の法定相続分は、亡くなった方との続柄によって決まることになっています。
ただし、法定相続分は絶対のルールではなく、遺産分割協議によって相続人全員が合意しているのであれば、法定相続分を無視した分配も可能となっています。つまり、法定相続分は遺産分割の際に1つの目安となる割合で、強制力のあるものではありません。
遺留分との違い
相続には法定相続分の他に、遺留分と呼ばれる権利があります。
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外が法定相続人だった場合に認められている、最低限相続できる割合のことです。遺留分は法定相続分とは異なり、遺言書より優先されます。
たとえば、特定の相続人にすべての遺産を相続させるといった遺言書が残されていたとしても、法定相続人は自身の遺留分を主張し、支払ってもらうことが可能となっています。
法定相続人の範囲
亡くなった方に配偶者がいた場合、配偶者は必ず法定相続人になります。
その他の法定相続人は、以下のように順位が定められて、同一順位の者が誰もいなかった場合に、次順位へと法定相続権が移ることになっています。
✓法定相続人の相続順位
・第1順位 子ども(直系卑属)
・第2順位 父母(直系尊属)
・第3順位 兄弟姉妹
たとえば、被相続人に子どもがいれば第1順位である子どもが法定相続人となりますし、子どもがいなければ父母、父母がいなければ兄弟姉妹、といったように相続権が移ります。
代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人が亡くなった時点で、相続人である子どもや兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、その相続人の子どもに相続権が代襲する(移る)ことです。
たとえば、被相続人が亡くなる前に、子どもがすでに亡くなっていた場合、その子(被相続人の孫)が代襲相続によって相続権を得ることになります。
かなり珍しいケースですが、被相続人の孫もすでに亡くなっていた場合は、ひ孫が相続することになり、これを再代襲相続といいます。ただし、兄弟姉妹の場合、代襲相続は1代までと制限されているため、再代襲相続は起こらないことになっています。
相続放棄した場合

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで法定相続人がすべての相続権を放棄し、はじめから相続人ではなかったことになる手続きです。一般的には、相続財産のトータルがマイナスになってしまう債務超過の際に利用することが多い手続きとなっています。
相続放棄した場合、当然ながら法定相続分や遺留分を得ることはできません。また、はじめから相続人ではなかったことになるため、代襲相続も発生しなくなります。
▶相続放棄に関する裁判所の解説はこちら
法定相続人の法定相続分
配偶者の法定相続分
配偶者の法定相続分は、そのほかの法定相続人の種類によって変わります。子供が法定相続人である場合には、配偶者の法定相続分は2分の1です。父母や祖父母等の直系尊属が法定相続人である場合には、3分の2です。きょうだいが法定祖遺族人である場合には、4分の3です。
子供の法定相続分
配偶者が存命であれば、子供の法定相続分は2分の1となります。子供が複数人いる場合には、2分の1に子の人数をかけることで、子ども一人あたりの法定相続分が算出されます。先に死亡している子供がいる場合には、その子供の子供(孫)が代襲相続人となります。
子供の法定相続分の計算方法
2分の1×子供の人数
例1)配偶者と子供3人の場合
① 配偶者 2分の1
② 子 供 6分の1
例2)配偶者と子供3人のうち2人が存命、死亡した子供に子供が3人いる場合
① 配偶者 2分の1
② 存命の子供一人あたり 6分の1
③ 死亡した子供の子供一人あたり 18分の1
父母の法定相続分
配偶者と父母が法定相続人である場合、父母の法定相続分は3分の1となります。父母の両方が存命であれば、3分の1を均等割りした6分の1が父母一人あたりの法定相続分となります。
きょうだいの法定相続分
配偶者ときょうだいが法定相続人である場合、きょうだいの法定相続分は4分の1となります。きょうだいが2名以上いる場合には、4分の1を兄弟姉妹の人数で掛けた数字が法定相続分となります。きょうだいが先に死亡している場合には、きょうだいの子供が代襲相続人となります。
きょうだいの法定相続分の計算方法
例1)法定相続人が配偶者ときょうだいが3人の場合
① 配偶者 4分の3
② きょうだい一人あたり 12分の1
例2)法定相続人が配偶者ときょうだい3人のうち2人が存命、死亡したきょうだい1人の子ども2人の場合
① 配偶者 4分の3
② きょうだい一人あたり 12分の1
③ きょうだいの子供一人あたり 24分の1


具体的相続分とは
相続人に、生前贈与や寄与分等がある場合には、法定相続分を加算減算することなく遺産を分配すると、相続人間に不公平を生じさせます。
そこで、遺産額に各相続人の法定相続分を掛けた金額に、特別受益を控除した算定される相続分、または、寄与分を加算して算定される相続分を「具体的相続分」といいます。
特別受益
被相続人から遺贈や生前贈与を受けている場合、これら利益を「特別受益」といいます。特別受益がある場合には、遺産の前渡しがあったとして、特別受益の金額を差し引いた数値が具体的相続分となります。これを特別受益の持ち戻しといいます。
寄与分
被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与した場合には、相続分に寄与分に相当する金額を加算して具体的相続分を算定します。被相続人に対して金銭を給付したり、病気療養中の被相続人の両要介護に従事するなど親族の扶養義務を超えた特別な貢献により、被相続人の財産の維持・増加に寄与したことが必要です。
寄与分の行為の類型
- 家業従事型
- 金銭等出資型
- 療養看護型
- 扶養型
- 財産管理型
家業従事型
金銭等出資型
療養看護型
扶養型
財産管理型
法定相続分を持たない人
生前の被相続人と深い関係にあったとしても法定相続分を持たない(持てない)場合があります。具体的には、以下のような場合となるので覚えておきましょう。
✓相続権を持たない人
1.内妻の妻
2.離婚した元妻
3.欠格者
4.廃除された人
内縁の妻(夫)
内縁の妻(夫)とは、婚姻届を提出していないため、法律上の夫婦関係はないものの、社会生活を送る上で夫婦と同様の生活を送っている相手のことです。いわゆる事実婚の夫婦です。
しかし、婚姻関係が認められない以上、法定相続人になることはできません。
離婚した元妻(夫)
配偶者は必ず法定相続人になりますが、離婚すると法定相続人になることはできません。
過去に夫婦関係があったとしても、血縁関係がある子どもとは違って、離婚した元妻(夫)というのはまったくの他人となってしまうため注意が必要です。
欠格者
以下に該当する行為を行ったものは、相続欠格者といって相続権が失われます。
- 故意に被相続人または同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした
- 被相続人が殺害されたのを知っていながら告発や告訴をしなかった
- 詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し、または変更を妨げた
- 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠ぺい等の工作をした
廃除された人
被相続人は、家庭裁判所に申し立てをし、法定相続人(生前の場合は推定相続人)を自らの意思で廃除することができ、これを相続廃除と言います。ただし、相続廃除が認められるには、以下の条件を満たしている必要があります。
・被相続人に対して虐待、もしくは重大な侮辱を加えた
・法定相続人(推定相続人)に著しい非行行為があった
相続廃除が認められると、その相続人は遺留分も失うことになります。廃除された人は、相続に関する一切の権利が失われます。ただし、相続廃除が認められたとしても代襲相続は発生します。もし、相続廃除された人に子がいれば、代襲相続が発生します。相続廃除が有効なのは、あくまでも廃除された当人のみです。
法定相続分を持たない人に対して財産を渡すには
法定相続分を持たない人に対して財産を渡したい場合は、以下の方法が有効です。
- 生前贈与
- 遺言書
- 養子縁組
生前贈与
生前贈与とは、生きているうちに第三者へ財産を贈与することです。配偶者や子どもといった法定相続人だけに限らず、好きな相手に財産を贈与できるメリットがあります。
ただし、贈与税が課税されることもあり、いつ、誰に、どれだけの財産を贈与するかについては、慎重に検討しなければなりません。
遺言書
遺言とは、亡くなった方が最後にできる意思表示です。被相続人は生前に遺言書を作成し、自らの意思で遺産の分配を指定することができます。
ただし、正確に作成しないと遺言書そのものが無効になってしまったり、遺言が原因となり相続人同士でトラブルが起こるリスクもあったりと、慎重に作成する必要があります。
養子縁組
養子縁組とは、養親と養子の間に法律上の親子関係を作る手続きです。
法律上の親子関係ができるということは、養子は法定相続人になることができます。ただし、元から法定相続人だった方からすれば、自身の相続分が減ることになるため、養子縁組がトラブルの引き金になることもあるため注意が必要です。
相続のための手続き
被相続人が遺した財産を相続人間で分けるためのプロセスを解説します。
遺産分割協議
まずは、相続人間で、遺産分けの話し合いを行います。遺産の範囲、特別受益や寄与分等を整理した上で、誰がどの遺産をどの程度取得するのかを協議します。この協議を遺産分割協議といいます。
相続人間の遺産分割協議が調えば、遺産分割協議書を作成します。
関連記事|遺産分割協議書の書き方とは?テンプレートを用いて弁護士が解説
遺産分割調停
遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割調停の申し立てを行います。
調停手続きでは、家庭裁判所の調停委員2人が申立人と相手方の双方を仲裁して、遺産分割の成立を目指します。
遺産分割調停が成立すれば、裁判所の作成する調停調書により、相続登記や預貯金の解約等の相続手続きを行うことができます。
遺産分割審判
遺産分割調停が成立しない場合には、遺産分割審判に移行します。
審判手続きでは、当事者双方が主張立証を行い審理を尽くした上で、裁判官が終局的な判断を下すプロセスです。調停手続きのように話し合いの要素は少なくなります。
裁判所の審判書を受け取った日の翌日から2週間以内に異議申立て(即時抗告)をしなければ、審判は確定します。
相続問題は弁護士に相談を

相続問題は、戸籍謄本の収集、遺産の調査、相続人との遺産分割協議といったプロセスを経る必要があります。特に相続人との話し合いには、大きな精神的な負担を招きます。
その上、相続問題には複雑な法律問題を含んでいます。
当事務所の弁護士は、信託会社の勤務経験を有しており、相続問題を数多く取り扱っています。一人で悩まずにご相談ください。当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。対応地域は、大阪府全域、和歌山市、和歌山県、奈良県、その他関西エリアお気軽にご相談ください。

弁護士・中小企業診断士。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。町のお医者さんに相談するような気持ちで、いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。趣味はゴルフと釣り、たまにゲームです。