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相続人の遺産の使い込みがある場合の対応を弁護士が解説します

相続問題とお金と不動産

親族が亡くなった後、亡くなった人の遺産を調べていると、預貯金が使い込まれていたり、勝手に不動産を売却されていることがあります。

相続人等によって遺産が使い込まれている場合の対応について解説します。

本記事を読んで分かること

使い込みの証拠の収集方法

使い込みの主張方法

想定される相手方の反論

民法の改正内容(906条の2)

1.使い込みを調べる方法

遺産の使い込みを証明することは、そう簡単ではありません。

特に相続人個人が自力で調べる場合には、調査方法等に限界があり、十分な資料収集ができないことがほとんどです。

その上、調査に伴う心身の負担も小さいものではありません。

それぞれの資料収集方法は、各機関によって異なります。

各機関に問い合わせをして、必要な資料を確認しなければなりません。

1-1.銀行の口座履歴

払戻しや送金の履歴が分かる

まず、遺産の使い込みで最も多いのが、預金の引出しや送金です。

亡くなった時の預金残高が想定よりも少ない場合には、生前、預金の使い込みがあった可能性があります。

そこで、亡くなるまでの通帳履歴の取寄せを行い、預金の入出金状況を確認するようにします。

取寄せができる過去の口座履歴について、金融機関によっては対応はマチマチですが、10年分の開示に応じてくれることが多いでしょう。

ただ、金融機関によっては5年分に限ることもあります。

また、金融機関によっては、履歴開示の手数料がかなり高額となることもあります。

1-2.振込明細書の取寄せ

送金先や手続を行った人の筆跡が分かる

高額の引出しや送金の場合、ATMではなく、銀行窓口による手続が必要となります。

送金等の手続に際して、窓口に提出する振込依頼書や払戻依頼書等の所定の用紙を提出することを要します。

振込依頼書等には、振込先の情報、金額、名義人の氏名が自筆で記載されています。

そのため、振込依頼書等の取寄せをすることで、振込依頼書等に示されている筆跡を手掛かりに、誰が誰に対していくら振込をしたのか、誰が預金の払戻しをしたのかを推測させることができることがあります。

1-3.介護記録

使い込み当時の財産管理能力が分かる

預金の引き出しがあった時の被相続人の心身の状況を証明するために、介護記録や診療録等の医療記録の取寄せを行うことがあります。

介護記録のほかにも、介護サービス利用票、ケアプラン(介護サービス計画書)等の記録があり、これらの資料の取り寄せも行うようにします。

介護記録等には、預金の使い込みがあった当時の被相続人の心身の状況が記載されており、預金の管理能力があったのかを読み取ることができる可能性があります。

1-4.介護認定記録

当時の財産管理能力や財産管理者が分かる

市役所や区役所等の自治体の介護係に対して、介護認定記録の取り寄せを行います。

介護認定記録には、被相続人の要介護状態に加えて、財産管理能力の有無程度が記載されています。

さらには、認定調査票内に預貯金等の財産を管理している関係者の情報が記載されていることもあります。

使い込み当時の被相続人の財産管理能力の程度と財産管理者が誰であるかを確認することで、相手方の使い込みの有無を検討することができます。

1-5.医療記録

使い込み当時の心身の状況が分かる

預貯金の使い込みの当時、被相続人が入院や通院している場合、診療録、診断書、看護記録等の医療記録を取寄せることで、使い込み当時の被相続人の心身の状況や財産管理能力の程度が分かるかもしれません。

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2.調査する方法

各資料を取寄せる方法は、各機関によって定められた方法に従い行います。

これを前提として、以下のとおり様々なルートで取寄せる方法が考えられます。

資料収集の方法
直接取り寄せる

弁護士会照会(23条照会)

調査嘱託

2-1.直接取寄せる方法

相続人本人による取寄せ

相続人自らが必要書類を取り寄せた上で、各機関に対して、資料の開示請求をする方法です。

しかし、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本その他諸々の必要書類を全て揃えることはそう簡単ではありません。

その上で、各機関で定められた申請書類を準備することはとても負担のかかる作業です。

中には、相続人全員の同意書を求めてくる機関もあります。

全員の同意が必要な場合には、事実上相続人自らが資料の開示を求めることは困難といえるでしょう。

弁護士による取寄せ

弁護士が相続人の代理人として、各機関に対して資料の開示請求をすることもあります。

弁護士によって戸籍謄本等の必要書類の取寄せが行われる点で、相続人の負担は小さくなります。

ただ、弁護士による取寄せであっても、相続人全員の同意を求めてくる場合には、直接の取寄せは難しくなります。

この場合には、後述の弁護士会照会を検討します。

2-2.弁護士会照会

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するために認められた制度です。

弁護士会が、照会の必要性と相当性について審査を行った上で、弁護士会を通じて各機関に対して、資料の開示や質問事項の回答を求めます。

報告義務を負う

照会を受けた機関は、正当な理由がない限り、照会に対する回答・報告義務を負っています。

ただ、回答を強制したり、回答拒否に対するペナルティを課すことはできません。

そのため、関係機関から直接の資料収集を拒否された場合でも、弁護士会照会を利用することで資料の開示ができることがあります。 最後まで諦めずに弁護士に相談することが重要です。

2-3.裁判所の調査嘱託

調査嘱託とは、家庭裁判所が各機関に対して、必要な調査を依頼し回答を求める手続です。

中立公正な司法機関である裁判所からの調査依頼ですから、各機関は裁判所からの照会に対して回答義務を負います。

そのため、各機関からの回答や資料の開示を強く期待できます。

ただ、調査嘱託は、調停手続や審判手続が係属していることが必要ですから、調停の申立てを行う前に調査としては適切ではありません。

3.想定される相手方の対応

紹介しました資料を様々なルートで取得したとして、これをどう利用するかは遺産の使い込みをした相続人の対応によります。

3-1.関与を否定する

まず一つ目が、そもそも預貯金の引き出しや送金に関与していないという主張がよく行われます。

相手方の関与否定の主張に対しては、通帳履歴や払戻依頼書等の資料を基に、預金の使い込みの関与を証明します。

送金先が相手方名義の口座であったり、依頼書の筆跡が相手方の場合には、相手方の関与は強く推認されるでしょう。

また、介護記録等から、被相続人が財産管理できる状態になく、相手方が通帳や届出印等を管理している状況を確認できる場合にも、相手方による関与を説明できるでしょう。

3-2.付き添い

次に、被相続人に付き添い、本人に代わって預金を引き出したという主張です。

このような主張についても、預金の引き出しがあった当時の被相続人の健康状態をチェックします。

被相続人の健康状態に加えて、相手方と被相続人の関係(同居しているか、仲が良いか等)を踏まえて、わざわざ相手方が付き添ったり、代わりに引き出す必要があったのかを検討します。

また、被相続人が引き出された預金額を必要とする状況にあったかを、その当時の生活状況から検討します。

その上で、相手方において、預金の引き出しの理由・使途を説明してもらいます。

例えば、施設に入所している高齢の被相続人が、500万円の預金引き出しているケースで、引出しの補助をした相手方において、この大金を使う合理的な理由を説明できないのであれば、相手方が使い込みをしたと推認できる可能性もあります。

3-3.本人の生活費等に充てた

最も多い主張が、被相続人の生活費等に支出したというものです。

相手方が被相続人の預金を引き出したこと自体は認めるものの、引き出した預金は相手方自身ではなく、被相続人のために費消したと主張するものです。

相手方が被相続人のために支出したというのであれば、その具体的な使徒を明らかにしてもらう必要があります。

その使徒が明示された場合、その支出の領収書や明細書を提出してもらいます。

相手方が明細等を保管していない場合には、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託により、支出先の機関から取引明細等の取寄せを検討します。

その結果、取引自体が存在しないことが分かれば、相手方の説明は虚偽の可能性があるため、相手方による使い込みの疑念が深まります。

日用品の購入

日用品の購入等の少額の支出の場合、領収書の提示がなかったとしても不自然ではありません。

ただ、引き出した金額と日用品の購入金額の整合性が認められない場合には、相手方の説明の全部または一部は事実に反している可能性があります。

生活費として渡した

預金を引き出して、これを被相続人に交付したという主張もなされます。

引き出した金額、被相続人の当時の財産状況、当時の被相続人の生活状況を踏まえて、相手方の説明の真偽を検討します。

4.証明責任

相手方の遺産の使い込みは、これを主張する相続人において証明しなければなりません。

相手方の主張に応じて証明対象は変わります。

つまり、関与を否定するのであれば、権限なく(法律上の原因なく)引き出した事実を証明しなければなりません。

関与は認めるが、被相続人のために使ったのであれば、被相続人の損失や相手方の利得を証明しなければなりません。

遺産の使い込みに関する直接的な証拠が薄く、間接的な証拠しかない場合でも、相手方の説明に対して状況証拠による反証に努めることが重要です。

▼相続に関する調停の裁判所の解説はこちら

5.死後に引き出した預金(民法改正)

被相続人が亡くなった後、相続人の1人が被相続人の預金を引き出した場合、その相続人以外の相続人全員の同意があれば、引き出した預金を相続財産として扱うことができます。

5-1.民法の改正前

民法の改正がなされる前は、遺産分割前に預金を引き出すと、非常に手間のかかる手続が必要となりました。

具体的には、相続開始後、遺産分割協議をするまでに引き出された預金は、相続人全員の同意がない限り、遺産分割の対象にはなりません。

しかし、預金を処分した相続人が同意をしなければ、別途、その相続人に対して、不当利得や損害賠償として請求する必要がありました。

相手方が引き出した分の支払いに応じない場合には、別途訴訟提起をする必要があります。

5-2.民法の改正

民法の改正により、相続の開始後、相続人の1人が預金を引き出した場合、それ以外の相続人の同意があれば、その引き出した預金を遺産分割の対象とすることができるようになりました。

改正前のように、引き出した相続人の同意は必要なくなりました。

ただ、民法の改正により、遺産分割をせずに、一定額の預金を引き出せるようになりました(民法909条の2)。

具体的には、預金額の3分の1に対する法定相続分に当たる金額を、遺産分割をせずに単独で引き出せるようになりました。

ただ、この引き出しにも限度があり、同一の金融機関から150万円が上限となります。

そのため、909条の2による預金の引き出しの範囲では、法令で認められた引き出しといえるため、これを遺産に戻すことはできないと考えます。

6.弁護士に相談しよう

弁護士に相談しよう

遺産の使い込みは、戸籍謄本の取り寄せに加えて、資料の収集や遺産の使い込みの証明が必要となります。

これらの作業には、専門的な知識や経験が求められます。

弁護士に相談することで計画的な証拠収集を行うことができます。

ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。

弁護士に依頼するメリット

資料収集を一任できる

使い込みの証明を説得的に行うことができる

使い込み以外の相続問題について相談できる

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