コラム
最終更新日:2024.02.15

遺留分は遺言書に優先する|遺言書の効力や遺留分請求について解説

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相続人には遺留分という権利があります。

しかし、亡くなった人が残していた遺言書が、相続人の遺留分を侵害する内容となっていることはよくあります。遺言書を作成すれば、遺言者の意思に沿って遺言執行者が遺言の内容を実現させます。しかし、いくら遺言を作成していたとしても、相続人の遺留分を侵害することまでは許されません。つまり、遺留分は遺言に優先することになります。

遺留分を侵害する遺言がある場合には、速やかに遺留分侵害請求を相続人や受遺者に対して行使する必要があります。他方で、遺言を作成する場合には、遺留分を侵害しないよう遺留分の対策を講じるべきです。

今回の記事では遺言が相続人の遺留分を侵害している場合の対応を弁護士が解説します。

本記事を読んでわかること

遺留分の基礎

遺言が遺留分を侵害する場合の対応方法

遺留分を侵害しない遺言の書き方
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遺留分は遺言書に優先する

遺留分の権利は、遺言書の効力に優先します。つまり、遺言書の内容が遺留分を下回るものであっても、相続人は遺留分侵害額請求を行使することができます。

遺留分を侵害する遺言も有効です。つまり、遺言者は遺言の要式に反しない限り、自由に遺言を作ることができます。

ただ、遺留分を下回る遺言書であれば、相続人は遺留分請求をすることで、遺留分侵害額に相当する金員を取りもどすことができます。このような意味で、遺留分は遺言書に優先する関係にあります。

遺留分とは?

遺留分とは、遺言によっても侵害することのできない、最低限保障された相続人の権利をいいます。

遺留分の割合は、法定続人の法定相続分に2分の1を掛けた割合です。

例えば、相続人が配偶者と子ども2人であれば、配偶者の遺留分割合は4分の1、子供一人の遺留分割合は8分の1となります。

なお、相続人が亡くなった人の親(直系尊属)である場合には、2分の1ではなく3分の1になります。

代襲相続人も遺留分権利者となる

被相続人が亡くなる前に子が死亡している場合、その子供の子ども、つまり、孫も祖父母の法定相続人となります。このような相続人を代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)といいます。代襲相続人も法定相続人ですから、遺留分の権利者となります。

代襲相続ではなく子供が相続放棄した場合、その子供は初めから相続人ではなかったことになるため、孫は代襲相続人することはなく、遺留分の権利者にもなりません。

TIPS!相続廃除と相続欠格
相続欠格や相続廃除があっても代襲相続は起こります(民法887条2項)。

兄弟姉妹には遺留分はない

遺留分は、兄弟姉妹には認められていません。

また、兄弟姉妹が被相続人よりも先に他界している場合、兄弟姉妹の子供(被相続人から見たら甥・姪)が相続人となります。

兄弟姉妹に遺留分がない以上、その子供である甥や姪にも遺留分は認められていません。

遺言書とは?

遺言

遺言(ゆいごん、いごん)には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。実務上、公正証書遺言と自筆証書遺言が利用されることがほとんどです。

自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の本文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。

公正証書遺言とは、遺言者が公証役場の公証人に遺言の内容を伝え、公証人がこれを筆記して作成した公正証書による遺言です。

公正証書であろうと自筆証書であろうと、いずれであっても、遺留分を侵害する場合があります。

遺留分を侵害する遺言とは

遺言書が、特定の相続人に全て、あるいは、大部分の遺産を相続する内容となっていることはよくあります。相続人ではない人(相続人ではない孫や子の配偶者等)に対して遺贈する内容も同様です。

この場合には、遺留分を侵害している可能性は高いでしょう。

また、遺言書作成時点では、遺留分を侵害しない内容になっていたとしても、被相続人が亡くなった時点で預貯金がかなり減額しているため、相続開始時点では遺留分を侵害する内容となっていることもあります。例えば、不動産を相続人Aに、預貯金を相続人Bにそれぞれ相続させる内容の場合です。

さらに、遺言の内容それ自体が遺留分を侵害しなくても、後述する生前贈与を加算すると、遺留分が侵害されていることもあります。

以上のように遺言の内容それ自体だけでは遺留分の侵害の有無や金額は明確ではありません。そのため、生前贈与や債務を調査して、計算しなければなりません。

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遺留分侵害額の計算方法

遺留分侵害額は、①遺留分を算定するための財産に遺留分の割合(法定相続分✖️2分の1)を掛けた金額に、②遺留分権利者が相続によって取得した金額や生前に贈与を受けた金額を控除した上で、③遺留分権利者が承継する被相続人の債務を加算して算出します。

①遺留分を算定するための財産

遺留分算定の基礎となる財産は、被相続人が亡くなったときに有していた財産です。これに加えて、生前に遺留分を侵害している相手方(遺留分義務者)に対する生前贈与を加算します。さらに、被相続人に住宅ローンなどの借入がある場合には、その債務額を差し引きします。

このように、亡くなった時点の遺産額だけではなく、生前贈与等も遺留分の対象となります。そのため、遺留分の侵害額の算定には、詳細な調査を要することが多いです。

遺留分算定の基礎となる財産の価額=(被相続人が相続開始時において有した財産の価額)+(被相続人の贈与財産の価額)−(被相続人の債務の全額)

生命保険は遺産にはならない

生命保険の保険金は、受取人固有の財産となり、遺産にはなりません。そのため、保険金は遺留分の基礎財産に含まれません。ただ、例外的に生命保険金の金額が、遺産全体額と比べてかなり高額に上っている場合には、生命保険も特別受益となり、遺留分の基礎財産に含まれる可能性があります。

全ての生前贈与ではない

生前贈与も遺留分の算定基礎となります。

生前贈与も加算しますので、遺言書の内容が遺留分が侵害されていなくても、生前贈与を加算することで遺留分が侵害されていることはあります。

ただ、全ての生前贈与が遺留分の対象となるわけではありません。

時期による要件

近年の法律改正により、相続人に対する生前贈与は、亡くなった日から10年前までに行われたものが遺留分の算定基礎となります。

また、相続人ではない人に対する生前贈与は、亡くなった日から1年前までに行われたものが遺留分の算定基礎となります。

ただし、被相続人と贈与を受けた人の双方が、遺留分権利者の遺留分が侵害されることを知りながら贈与をした場合には、1年あるいは10年よりも前の贈与であっても、遺留分の算定基礎となります。

特別受益であること

相続人に対する贈与は、特別受益であることが必要です。

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から、結婚や養子縁組のため、あるいは、生計の資本として生前贈与を受けているときの利益をいいます。

相続開始後ではなく、生前に遺産となるべきであった財産を受け取っている点で遺産の前渡しといえます。

全ての贈与が特別受益に当たるわけではありません。

贈与の金額が少額である場合には、それが結婚資金や生活費のための贈与であっても、扶養の範囲内といえる場合には、特別受益とはいえません。

また、金額が少額であっても、他の相続人も同様の贈与を受けているのであれば、特別受益として計上されないこともあります。

権利者の生前贈与も加算する

遺留分権利者も、生前贈与を受けている場合には、遺留分侵害額の計算において考慮されます。

全ての贈与が対象となるのではありません。

遺留分の計算で考慮されるためには、特別受益といえる贈与であることが必要です。

他方で、遺留分義務者の贈与のような期間制限はありません。条文上は、何年前の贈与も、権利者の生存贈与として計上されます。

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遺留分侵害請求のプロセス

遺留分を侵害する遺言書も有効です。

遺言書が遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額を得るためには、受遺者や相続人に対して、遺留分侵害額の請求をする必要があります。

遺言無効の主張ができないか検討する

まずは、遺言書が有効な遺言であるかを十分に検討するべきです。

遺留分を侵害する遺言も、遺留分の侵害を理由に無効となることはありません。しかし、遺言書の要式を守らない遺言書は無効となります。また、要式を守っていても、遺言能力がない状態で作成された遺言書も無効となります。例えば、認知症の影響で判断能力がかなり低下している高齢者が複雑な内容の遺言書を作成している場合には、遺言は無効となる可能性があります。

そのため、遺言の有効性に疑義が生じる場合には、遺留分侵害額請求の前提として遺言無効の主張をしておくべきでしょう。

内容証明で遺留分請求の通知する

遺留分侵害額請求には1年の期間制限(消滅時効)があります。

この1年間の計算は、被相続人が亡くなったことを知っただけでなく、遺留分を侵害する遺言や生前贈与があることを知った日から数えていきます。

そのため、この1年の期間制限内に遺留分侵害額請求をしていることを事後的に証明させるために、遺留分の請求は配達証明付内容証明郵便を用いて行うのが通常です。

一度、遺留分請求を期間内に行使すれば、遺留分侵害請求に基づく金銭請求は5年間の消滅時効となります。

遺留分侵害額請求の調停手続を進める

遺留分に関する内容証明の送付後、話し合いによる合意に至らない場合には、家庭裁判所に対して、遺留分侵害額請求の調停を申立てる必要があります。

調停手続きとは、家庭裁判所の調停委員(2名・男女)の仲裁を通じて、相続人間の相続問題等を解決するよう話合いを行うプロセスです。遺留分に関する争いは、調停手続を経ることなく、いきなり訴訟提起することはできません(調停前置)。

調停が成立することも

調停手続では、主に亡くなった時点の財産の内容やその金額、生前贈与の有無や金額が主たる争点となります。特に、不動産がある場合には、その不動産の評価額(固定資産評価額、路線価、実勢価格)が大きい争われることがあります。

また、生前贈与がある場合には、その生前贈与があるのか否か、あったとしてもこれが特別受益といえるのかが争われることが多いでしょう。調停手続を経て、遺留分に関する合意ができれば、調停は成立します。

TIPS!
固定資産評価額とは、固定資産税を徴税するために、固定資産税を計算するための不動産の評価額のことをいいます。固定資産税評価額は、実勢価格の7割程であるといわれています。
路線価とは、相続税の計算において、相続財産である土地価格を算出するための評価額のことをいいます。路線価は、時価の80%を目安とされています。

調停には強制力がある

調停が成立した場合、調停には確定判決と同じ効力を持ちます。そのため、相手方が合意した調停の内容を履行しない場合には、相手方の預貯金やその他財産を差押えることができます。差押えできる財産は、相続や生前贈与によって取得した財産に限らず、これら以外の財産も差押えの対象となります。

また、調停により確定した遺留分侵害請求は、10年間の消滅時効となります。

✓裁判所の遺留侵害の解説はこちら

遺留分侵害額請求の訴訟提起をする

調停手続を経ても合意に至らない場合には、遺留分侵害に関する訴えを地方裁判所に提起しなければなりません。訴訟手続では、調停手続のように話し合いの要素は小さくなります。双方が客観的な資料に基づいた主張や反論を繰り返します。訴訟においても、不動産の評価額や生前贈与が争点となることは多いです。

裁判上の和解

訴訟手続においても、双方の主張や反論がある程度尽くされた段階で、裁判官から和解の提案がなされます。この裁判所の和解案は、将来の判決内容よりも互いにメリットのある内容となっていることが多いです。そのため、裁判上の和解により解決することも多いでしょう。

和解の提案を受けても合意できない場合には、当事者尋問等を経て判決手続に移行します。

遺留分対策の遺言を作成することで紛争を予防

対策

以上のように、相続人の遺留分を侵害する極端な遺言書は、調停手続や訴訟手続といった紛争を生むきっかけとなります。

調停や訴訟等の裁判手続に要する時間は短くはありません。また、依頼する弁護士の費用や解決に至るまでの精神的負担はいずれも小さくはありません。そこで、このような遺留分の問題が生じないような遺言書の作成をするようにするべきでしょう。

他の相続人にも財産を相続させる

特定の相続人に対して全く相続させないという極端な内容の遺言は、相続問題を誘発させてしまいます。そのため、遺留分に相当する金額(あるいは、これに近い金額)の財産を取得できるようにすることが肝要です。

また、預貯金を相続させる場合には、遺言を作ってから亡くなるまでに、預貯金額が減額することも見越して、相続させる預貯金の金額や割合を決めましょう。

付言事項を活用して遺留分請求の自粛を求める

遺言書には、誰に何を相続させるのかという遺言事項に加えて、遺言者の家族に対する思いやメッセージを記載する箇所があります。

これを付言事項といいます。付言事項には、法的な拘束力はありません。しかし、付言事項に、遺言者の家族に対する感謝の気持ちや遺言書を書いた経緯等を詳細に記載することで、遺言者の真意や心情が伝わり、相続人たちの理解を促すことが可能となります。

これにより、たとえ遺言により遺留分を侵害されていても、遺言者の気持ちを尊重して、遺留分の請求を控えることもあります。

生命保険を活用することで遺産総額を少なくする

たとえ遺留分対策をしていたとしても、状況の変化により相続開始時に遺留分を侵害しているケースもあります。そこで、遺留分の基礎財産を減少させて遺留分の侵害額を抑えるために、預貯金の一部を一時払いの生命保険の保険料に切り替える方法が考えられます。また、生命保険に加入しておくことで、保険金が遺留分請求を受けた場合の原資となり、速やかな対応をすることも可能となります。

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遺留分の問題は弁護士に相談しよう

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遺言が遺留分を侵害している場合、その侵害額を具体的に算出することは簡単ではありません。

遺留分権利者と義務者に対する生前贈与を確認する必要があります。

また、遺産や生前贈与された財産の評価額が大きく対立することもあります。

ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。

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難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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