親族が亡くなった場合、その相続人にはさまざまな相続手続きが立ちはだかります。その中でも重要な手続きの一つが遺言の検認です。
検認期日は家庭裁判所から一方的に指定されます。そのため、検認期日に出席できないことも当然ながらあり得ます。
ただ、検認期日に欠席したからといって、相続手続きに大きな不利益が生じるわけではありません。検認後、裁判所から検認調書といって検認時に確認された遺言の内容を確認することもできます。また、検認それ自体によって、遺言の有効無効が確認されるものでもありません。
本記事では、検認の意義や欠席した場合のリスクについて、分かりやすく解説します。
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、相続人等に対し遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認して、証拠として残す手続きです。注意すべき点は、遺言書が有効か無効かを確認する手続きではないということです。
この検認は遺言の執行を行うための前提条件であり、遺言書の提出を怠り、家庭裁判所の検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で開封した場合には、5万円以下の過料を課せられるおそれがあります。
検認が必要な遺言書は自筆証書遺言
検認を必要とする遺言書は自筆証書遺言であって、公正証書遺言は検認を必要としません。
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で記し、押印して作成する遺言の形式です。
この自筆証書遺言が遺されている場合には、遺言書の保管者や発見者は、遺言者の死後遅滞なく、家庭裁判所に検認の申し立てをしなければなりません。
法務局で保管された遺言は検認不要
自筆証書遺言であっても、法務局で保管されている場合には、検認手続きを行う必要がありません。
平成30年7月13日「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が公布されました。この法律により、自筆証書遺言を法務局にて保管してもらうことができるようになりました。
遺言書の保管時に、民法の要式に合致しているかなどの外形的なチェックが行われます。また、遺言書の原本だけでなく、画像データも法務局にて管理されます。原本であれば遺言者死亡後50年間、画像データは150年間、保管されます。
申立人は欠席できない
遺言書の検認申立てをした申立人本人は、検認期日に欠席することができません。
なぜなら、申立人は、被相続人の遺言書を持参した上で検認期日でこれを提出しなければ、遺言書の開封や遺言書の状況を確認することができないからです。
また、遺言書の検認手続きを経ることなく遺言書を開封したり、遺言執行をした場合には、ペナルティとして5万円以下の過料を受けるおそれがあります。
(過料) 第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。 民法 | e-Gov法令検索 |
申立人が欠席しないようにするためには
申立人は、検認期日には必ず出頭しなければなりません。出頭をしなければ検認期日が空転してしまい、出頭したその他の関係者にも迷惑をかけてしまいます。
そこで、申立人が欠席しないようにするための対応を紹介します。
確実に出席でかる日程で調整する
検認期日は、通常、裁判所が一方的に決めるのではなく申立人と事前に日程調整をした上で検認期日が決められます。
そこで、裁判所と日程調整をする際に必ず出頭できる日程で調整するようにします。スケジュールがタイトな場合や出頭が不確実である場合には、時間的に余裕が持てる日程で調整することが望ましいでしょう。
代理人弁護士に依頼する
検認期日に出頭できない場合、弁護士に委任をして代理人として出頭してもらう方法が考えられます。
弁護士に依頼することで費用面の負担は生じますが、検認調書からは分からない当日の様子や印象を説明してもらえるメリットがあります。
遺言書の検認後に遺産分割協議や調停手続において、弁護士に依頼することを考えている場合には、検認手続から先行して依頼することを検討しても良いでしょう。
検認期日の再調整をする
万が一、指定された検認期日にやむを得ない理由で出頭できない場合には、家庭裁判所に早い時期に連絡をした上で検認期日の再調整を要請しましょう。
家庭裁判所によって運用が異なりますが、検認期日当日に無断で欠席するようなことはないようにしましょう。
申立人以外は欠席できる
申立人により検認の申立てがあれば、家庭裁判所から相続人に対して検認期日を知らせる通知が届きます。
検認期日は、相続人のスケジュールを踏まえて調整するものではなく、一方的に指定されるため、相続人自身の都合により出頭できないことはあります。そのため、申立人以外の相続人が検認期日に欠席してしまうことがあります。
罰則はない
検認期日に申立人以外の相続人が欠席したとしても、これに対して過料のようなペナルティを受けることはありません。
遺言書の内容も後日確認できる
検認期日では、遺言書が開封されて、遺言書の内容や状況が確認されます。また、ケースによっては、裁判官から遺言の封筒の表書きや遺言書本体の筆跡・押印が遺言者本人のものと思うか等の質問がされることがあります。
検認期日を欠席すると、その場で遺言の状況や当日のやり取りを見聞できませんが、その後に作成される検認調書によりこれらの内容を確認することもできます。
申立人以外が検認期日を欠席するデメリット
申立人以外の相続人等が検認期日に欠席した場合、いくつかのデメリットがあります。そのため、できる限り指定された検認期日には出頭することが望ましいでしょう。
ただ、いずれのデメリットについても、検認調書の内容を確認することで十分に解消することはできます。
遺言の内容を検認日に確認できない
検認期日には、申立人が自筆証書遺言を持参して家庭裁判所に出頭した上で、家庭裁判所が遺言書を開封し、遺言書の内容を確認します。
そのため、検認日に欠席してしまうと、検認日に遺言の内容を確認することができません。
ただし、検認期日終了後、家庭裁判所は検認調書を作成します。検認調書には、遺言書の写しが添付されます。そのため、家庭裁判所に対して、検認調書の閲覧謄写を申請すれば、自筆証書遺言の内容を確認することはできます。
検認期日当日のやりとりを直接見聞きできない
先ほど述べたように、検認期日では遺言書の開封をした上で、裁判官から申立人らに対して、色々な質問がされることがあります。
検認期日に出席すれば、当日のやり取りを直接見聞きすることができます。
しかし、検認期日を欠席すると、当日のやり取りを直接見聞きできず、当日の雰囲気や回答者の表情などが分からないというデメリットはあります。
ただ、検認期日の当日のやり取りは検認調書を閲覧することで確認することができますし、当日の雰囲気や表情といった主観的な事情は、何らかの紛争の決め手になる事情にはなりにくいでしょう。
検認日当日の流れ
遺言書の検認は、家庭裁判所で行われます。検認日当日は指定された時間までに家庭裁判所に出頭する必要があります。
家庭裁判所で受付をする
検認手続の開始にあたっては、まず家庭裁判所の窓口で申立人や関係者が受付をします。裁判所の担当から事件番号を聞かれるため、裁判所から送付された書類に記載された事件番号を伝えると、待合室に案内されます。
遺言書の内容の確認をする
申立人が裁判官や相続人等の同席の中で、遺言書を提出します。
裁判官は、相続人らの立ち会いの下、遺言書を開封します。その上で、遺言書の記載内容や外観を確認します。
裁判官から質問がされる
遺言の開封後、裁判官から相続人らに対して、封筒の表書き、遺言書の筆跡、押印されている印影が遺言者のものであるか質問されることがあります。
ただし、裁判官の質問に対する回答によって、何らかの事実が確定されるものではありません。
検認調書が発行される
検認の手続きが終わると、遺言書の原本に検認済証明書が添付、契印された上で、申立人に返還されます。
また、裁判所書記官が検認した遺言書のコピーを添付し、開封時の状況、当事者の発言などを記載した検認調書を作成します。検認調書は裁判所にて保管されるため、裁判所に検認調書の謄写申請をすることで、内容を確認することができます。
遺言の検認手続きの問題は弁護士に相談を
遺言の検認は、遺言書の外形的な状況を確認するための手続きです。そのため、遺言の検認それ自体によって、その後の相続手続きを決定づけるようなものではありません。ただ、遺言の検認によって相続手続きが終わるわけではありません。検認される遺言を基に相続手続きが進行する以上、検認期日の通知を受け取って漫然と放置することは控えるべきです。初回相談30分を無料で実施しています。
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