遺言書の検認は、遺言執行を行うために行われる重要な手続きです。
遺言書の検認は、遺言の内容を保全するための手続であって、遺言それ自体の有効性を確認する手続ではありません。つまり、検認さえすれば、遺言が有効になるわけではありません。
ただ、遺言の検認をしなければ、遺言の内容を実現させる遺言執行を行うことができません。
自筆証書遺言がある場合には、遺言の内容を実現させるために、検認の申立てを行い、適切に手続を進めていきましょう。
本記事では、遺言書の検認とは何か、なぜ検認が必要なのか、具体的な手続きの流れについて詳しく解説します。
遺言書の検認とは
遺言書の検認は、家庭裁判所が遺言の存在と内容を認定するために遺言の状態を保存するための手続きです。
検認それ自体によって、家庭裁判所が遺言の有効無効を判断することはなく、あくまでも証拠保全のプロセスになります。
検認の目的(遺言書の偽造・変造を防止する手続き)
検認の目的の一つは、相続人に対して、遺言の存在とその内容を知らせることにあります。検認により遺言の内容が開示されることで、相続手続で承継できる遺産の内容や金額を把握できるとともに、遺言の内容によっては遺言無効や遺留分請求を行うか否かを検討する場合もありますから、検認はその検討を行う機会になります。
2つ目の目的は、検認時における遺言書の状態を明らかにした上で、検認後の偽造変造を防止することにあります。検認時の遺言を確認することで、検認後に遺言の内容を書き換えたり、破棄することができなくなります。
3つ目の目的は、検認時に民法の要式に従っているか否かを判断するために裁判官が遺言の内容について必要な事実を調査するという点もあります。
検認の対象となる遺言書は自筆証書遺言・秘密証書遺言
検認が必要となる遺言書の種類は、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自筆で記載し、署名押印する形式の遺言書です。また、秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま遺言の存在だけを公証役場に証明してもらう遺言です。
検認が必要となる遺言は、この自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つになります。
一方、公正証書遺言は、公証人が作成し、複数の証人の立ち会いの下で作成されるため、検認の必要がありません。また、法務局で保管されている自筆証書遺言についても同様に、検認手続きが不要となっています。
遺言書の検認の効力
遺言書の検認手続きは、遺言書そのものの有効性を判断するものではありません。
検認はあくまで、遺言書の存在と内容を確認して保全するためのものであり、遺言の有効無効そのものを判断するものではありません。
そのため、検認手続きを経たからといって、その遺言の有効性が問題にならないわけではありません。遺言の内容や作成時の遺言者の状態等によっては、遺言の無効を主張される可能性はあるため注意が必要です。
遺言書の検認をする理由
遺言の検認を行う理由は、遺言の偽造や変造を防ぐだけでなく、相続手続きのルールとして検認を行うことが定められており、これに反した相続手続を進めるといくつかのペナルティが科されるリスクがあります。
遺言書の検認をせずに遺言執行をするとどうなる?
法律上、自筆証書遺言があれば、検認を受けなければならないと規定されています。
万が一、遺言書の検認を行わずに遺言執行を行うと、5万円以下の過料を科される可能性があります。ただし、検認を行わずに遺言執行をしたとしても、遺言それ自体が無効になるわけではありません。また、相続登記や銀行手続においては、遺言だけでなく検認済証明書の添付がなければ、相続手続に応じないことがほとんどですので、検認をせずに行える遺言執行は限定されるかと考えます。
遺言書を勝手に開封するとどうなる?
遺言書を家庭裁判所での検認手続きを経ずに勝手に開封すると、法律により5万円の過料が科される可能性があります。
検認手続きを経ずに開封してしまうと、検認前に遺言の偽造や変造が行われるリスクがあるため、法律上、遺言の開封は検認手続きで行うことが求められています。
ただ、検認前に遺言の開封をしたとしても、直ちに遺言が無効になるわけではありませんが、偽造などの主張を受けるリスクが生じます。
遺言書の検認申立ての流れ
遺言書の検認申立にはいくつかのステップがあり、これら手続きを踏むことが必要です。
まず、遺言書の検認申立てに必要な書類を準備し、家庭裁判所に提出します。その後、裁判所が検認期日を指定し、申立人および関係者が検認期日に出席します。検認期日において、遺言書の内容が確認され、検認済証明書が発行されます。最終的に、検認済証明書を基に遺言執行が行われます。
検認申立ての必要書類を収集する
検認申立てを行うためには、いくつかの必要書類を準備する必要があります。
主な書類としては、以下のとおりです。
- 申立書
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
- 申立人及び相続人全員の戸籍謄本
- 収入印紙
- 郵便切手
- 遺言書原本
検認の申立書は、裁判所のウェブサイトからダウンロードをすることもできますし、家庭裁判所の窓口で書式をもらうこともできます。
申立書の書き方がわからない場合には、裁判所に問い合わせるか弁護士に相談することを検討しましょう。
家庭裁判所に検認の申し立てをする
必要書類が揃ったら、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して検認の申し立てを行います。申立先の裁判所は、申立人の住所地ではなく遺言者の住所地の管轄裁判所ですので間違えないように注意をしましょう。
申し立ては、申立人が直接裁判所に出向いて行うか、郵送で行うことが一般的です。
検認期日を調整する
検認申立てをすれば、家庭裁判所から検認期日を調整するために連絡が入ります。通常、裁判所から複数の候補日が提示されますので、確実に出頭できる日程を選択します。申立人は、検認期日に出頭しなければ検認を行うことができませんので、検認期日は慎重に調整してください。
一般的には、申立日から1か月から1か月半ほど先の日程で調整しますが、時期によっては前後します。
検認期日が調整されると、家庭裁判所は各相続人に対して、検認期日の通知をします。
検認期日当日
検認期日当日、申立人は、遺言書を持参して家庭裁判所に出向きます。その他の相続人も同様に指定された日時に家庭裁判所に出頭します。
裁判所の職員から待合室を案内されるので、しばらく待合室で待機します。しばらくすると、裁判所書記官が呼びにきますので、ラウンド法廷等に入室します。
入室後、裁判官が、相続人の立ち会いの下、申立人の持参した遺言書の開封を行います。その上で、遺言の内容を確認します。ケースによっては、裁判官から相続人らに対して、遺言書の封筒の表書きや本体の筆跡、押印されている印影が遺言者本人のものと思うかなどの質問が行われることがあります。この時の質疑応答は検認調書に記録されます。
検認済証明書を受け取る
検認手続きを終えたら、家庭裁判所に対して、検認済証明書の交付申請をします。相続登記や預金口座の解約などの相続手続を行うためには、検認済証明書の提出が必須となるため、検認期日の直後に交付申請をするようにしましょう。
遺言執行者選任の申立て
遺言の内容をを実現させる、つまり、遺言の執行をするためには、遺言執行者を選任することがあります。相続人全員の協力を得られる場合には、遺言執行者の選任を要さないこともあります。
遺言の中で遺言執行者が指定されていれば、その人が遺言執行者として遺言の執行を行います。
しかし、遺言の中で遺言執行者の指定がされていない場合には、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをしなければなりません。また、遺言書で執行者の指定がされていても、既に死亡している場合や認知症等で判断能力が低下している場合にも、遺言執行者の選任が必要となります。
遺言執行を行う
検認済証明書を基に、遺言執行者は遺言書の内容に従って相続手続きを開始します。まず、遺言執行者が選任すれば、遺産の調査を行った上で財産目録を作成して、これを相続人に交付します。その後、預貯金の解約や名義変更、株式の名義変更や現金化、不動産の相続登記などの手続を進めていきます。
検認期日に欠席するとどうなるか?
指定された検認期日に家庭裁判所に出頭できないことがあります。申立人以外の相続人や受遺者は出席するか否かは自由です。一方、申立人が検認期日に欠席してしまうと、遺言の検認を行えず、検認期日が空転してしまいます。
申立人が欠席する場合
申立人は、調整した検認期日に遺言書を持参して検認期日に出頭しなければなりません。万が一、検認期日を欠席してしまうと、5万円の過料を受ける可能性もあります。
万が一、検認期日に出頭できない場合には、事前に家庭裁判所に連絡をした上で検認期日の再調整を要請するか、代理人弁護士を選任して、弁護士に代理人として出頭してもらうか検討しましょう。
申立人以外が欠席する場合
申立人以外の関係者、例えば相続人や受遺者が検認期日に欠席したとしても、これに対するペナルティはありません。
検認期日を欠席すると、検認期日当日に遺言書の内容を確認できなかったり、当日のやり取りをリアルタイムで見聞きできないデメリットはあります。しかし、家庭裁判所が作成する検認調書に遺言のコピーが添付されますし、当日のやり取りも録取されているため、先ほどのデメリットのほとんどは解消できます。
検認手続は難波なみなみ法律事務所へ
遺言書の検認は、遺言の存在や内容を確認し、検認後の偽造変造を防ぐだけでなく、遺言執行を行うために法律上必要とされるプロセスです。
検認の申立てに際しては、戸籍謄本を取り付けて相続人の確定作業を行わなければなりません。また、検認期日には、出席した相続人と顔を合わさなければなりません。
これらの手続に不安をお持ちであれば、早い時期に弁護士に相談することをお勧めします。
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