離婚したいけれど、お金に余裕がなくてお困りの方も多いことでしょう。
離婚すること自体に高額のお金はかかりませんが、離婚手続きや離婚後の生活では、さまざまなお金が必要となります。
本記事では、「お金がないけど離婚したい!」とお考えの方に向けて、離婚に必要なお金や、お金がなくても離婚を進める方法について解説します。
お金がないと離婚できないのか?
お金がなくても離婚することは可能です。
しかし、お金がない状態で離婚を急ぐと、別居中の生活費が不足したり、離婚後も苦しい生活が続く可能性が非常に高いのが実情です。
実際にも、別れたい一心で慌てて離婚したために経済的な窮地に追い込まれ、後悔している方は少なくありません。
したがって、離婚を切り出す前に、離婚に必要なお金を確認した上で、どのように離婚手続きを進めていけばよいのかを検討することが重要となります。
離婚するために必要なお金
離婚するためには、主に以下のようなお金が必要です。
別居中の生活費や教育費
離婚する前に別居する場合は、そのための費用がかかります。
実家に戻る場合は負担が少ないですが、それでも引っ越し費用は必要です。
賃貸住宅を借りる場合には、敷金や礼金、仲介手数料、家具・家電を買いそろえるための費用など、初期費用がかかります。その上に、毎月の家賃や食費などの生活費も必要となります。
子どもを連れて別居するなら、生活費に加えて教育費もかかります。
協議離婚でかかる費用(公正証書作成費用)
協議離婚の手続きに費用はかかりませんが、離婚協議書を公正証書で作成する場合には、そのための費用がかかります。
離婚に際しての慰謝料や財産分与などの金額を公正証書に記載する場合には、以下の手数料を公証役場で支払わなければなりません。
公正証書に記載する金額の合計 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円超~200万円以下 | 7000円 |
200万円超~500万円以下 | 1万1000円 |
500万円超~1000万円以下 | 1万7000円 |
1000万円超~3000万円以下 | 2万3000円 |
3000万円超~5000万円以下 | 2万9000円 |
5000万円超~1億円以下 | 4万3000円 |
公正証書の作成手数料をどちらが支払うかは、夫婦の話し合いで決めます。相手方が支払いを拒否する場合、あなたが慰謝料や財産分与を受け取る立場なら、手数料を自己負担してでも公正証書を作成する方が得策です。
調停離婚でかかる費用
調停で離婚するためには、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てる必要があります。その際に、以下の費用がかかります。
・申立手数料1,200円(収入印紙)
・連絡用切手代1,500円~2,000円程度(裁判所により異なる)
・戸籍謄本などの取得費用450円~数千円程度(事案により異なる)
・裁判所へ出向くための交通費 など
連絡用切手代は、切手を購入して裁判所へ提出します。金額と組み合わせは、事前に申立先の家庭裁判所へお問い合わせください。
裁判離婚でかかる費用
調停離婚ができなかった場合は、引き続き離婚裁判を提起することになるでしょう。その場合には、さらに以下の費用がかかります。
・訴状印紙代
・連絡用切手代
訴状印紙代は、その裁判で相手方へ支払いを請求する金額に応じて異なります。例えば、慰謝料や財産分与などで合計300万円を請求する場合は、2万円分の収入印紙が必要です。
連絡用切手代は、5,000円~6,000円程度で、裁判所によって異なります。
事前に提訴先の家庭裁判所へお問い合わせの上、訴状印紙代と連絡用切手代をご確認ください。
弁護士費用
離婚手続きを弁護士に相談・依頼する場合には、以下の費用がかかります。
・相談料(法律相談を利用する際に支払う費用)
・着手金(弁護士が事件処理に着手するために必要な費用)
・報酬金(事件処理の結果、得られた結果に応じて算出される費用)
・実費
・弁護士の日当 など
具体的な金額は弁護士によって異なりますし、事案の内容によっても大きく異なることがあります。ごく大まかな目安を示すとすれば、総額で以下のとおりです。
・協議離婚にかかる弁護士費用30~60万円程度
・調停離婚にかかる弁護士費用60~80万円程度
・裁判離婚にかかる弁護士費用70~100万円程度
お金がない状態で離婚を進める方法
ここでは、お金がなくても離婚を進める方法について解説します。
婚姻費用を請求する
離婚する前に別居する場合は、相手方へ婚姻費用を請求しましょう。
婚姻費用とは、夫婦の生活にかかる費用のことであり、別居しても離婚が成立するまでは、収入が低い側から高い側に対して請求可能です。
その金額は夫婦の話し合いで決めますが、一般的には裁判所の「婚姻費用算定表」を参照して話し合います。
一例として、妻が14歳以下の子ども1人を連れて別居する場合、夫の年収500万円、妻の年収150万円だとすれば、婚姻費用算定表によると1ヶ月あたり8~10万円が目安となります。
相手方が支払いを拒否する場合は、早急に婚姻費用請求調停を申し立てましょう。
離婚時に養育費・慰謝料・財産分与を受け取る
離婚後の生活に備えるためには、離婚時に相手方から、できる限り多くのお金や財産を受け取ることが重要となります。
離婚時に請求できる主な金銭・財産としては、以下のものがあります。
・養育費
・慰謝料
・財産分与
それぞれの詳細については、次章で解説します。
年金分割を請求する
老後の生活に備えるためには、年金分割を請求することが考えられます。
年金分割の詳細については、次章で解説します。
離婚時に請求しておくべきもの
離婚時に相手方へ請求できるものとして、主に以下のものが挙げられます。
請求できる項目や金額は事案の内容によって異なりますが、請求可能な項目については適切な金額を請求しておくべきです。
養育費
養育費は、未成熟の子どもを養育するために必要な費用です。未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合に、親権者となる親からもう一方の親に対して請求できます。
具体的な金額は夫婦の話し合いで決めますが、一般的には裁判所の「養育費算定表」を参照して話し合います。
一例として、8歳と6歳の子どもがいて、妻が離婚後に2人の親権者となる場合、夫の年収500万円、妻の年収150万円だとすれば、養育費算定表によると1ヶ月あたり6~8万円が目安となります。
ただし、子どもが何歳になるまで支払ってもらえるのか、私立学校や大学の学費を支払ってもらえるのか、などで揉めるケースも多いです。弁護士にご相談の上、できる限り高い金額を目指した方がよいでしょう。
財産分与
財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して築いた「夫婦共有財産」を、離婚に際して分け合うものです。
結婚後に取得した財産は名義を問わず、基本的にすべて夫婦共有財産となります。ただし、贈与や相続など、夫婦の協力とは無関係に取得した財産は除かれます。
分割割合は、原則として2分の1ずつです。夫婦の一方が専業主婦(主夫)の場合でも変わりません。ただし、夫婦の一方が医師、大企業の社長などで、特別な才能・努力で高収入を得ていたようなケースなどでは、分割割合が偏ることもあります。
慰謝料
慰謝料は、相手方が不倫やDV、モラハラなどで離婚原因を作った場合に、それによる精神的苦痛に対する賠償金として請求できるものです。
したがって、性格の不一致や価値観の相違などで、どちらが悪いともいえない離婚の場合には、慰謝料を請求できないことにご注意ください。
慰謝料を請求できる場合でも、金額は事案の内容により大きく異なります。おおよその相場としては、数十万円~300万円程度です。
年金分割
年金分割は、婚姻期間中に夫婦が支払った厚生年金保険料の納付記録を分割するものです。
分割できるのは厚生年金の部分のみなので、相手方に支給される年金の2分の1をもらえるわけではないことにご注意ください。
また、相手方が国民年金にしか加入していない場合は、年金分割を請求することはできません。
離婚手続きの種類とその進め方
ここでは、離婚手続きの種類と、その進め方を解説します。
離婚手続きの種類
離婚手続きには、主に次の4種類があります。
・協議離婚…夫婦で合意し、離婚届を提出することによって成立する離婚
・調停離婚…離婚調停で夫婦が合意することによって成立する離婚
・審判離婚…離婚審判で裁判所が離婚を命じることによって成立する離婚
・裁判離婚…離婚裁判による判決で裁判所が離婚を命じることによって成立する離婚
離婚するケースの大半は、協議離婚です。協議離婚が成立しない場合には調停離婚、調停離婚も成立しない場合には裁判離婚、というように進んでいきます。
実務上、審判離婚は稀であり、調停が不成立となったら離婚裁判に進むケースがほとんどです。
協議離婚と調停離婚の違い
協議離婚と調停離婚は、どちらも夫婦の合意による離婚という点で共通しています。
しかし、協議離婚では夫婦が直接話し合って合意するのに対して、調停離婚では家庭裁判所において、調停委員会を介して話し合って合意するという点で異なります。
また、協議離婚では離婚届を提出した時点で離婚が成立するのに対して、調停離婚では夫婦が合意し、調停が成立した時点で離婚が成立するという違いもあります。ただし、調停離婚でも戸籍を改めるために離婚届の提出は必要です。
公正証書を作成しておくこと
協議離婚が成立した場合には、離婚条件に関する取り決めを証拠化するために、離婚協議書を作成すべきです。あなたが慰謝料や財産分与、養育費などを受け取る立場なら、公正証書で離婚協議書を作成しておくことをおすすめします。
なぜなら、相手方が約束を破った場合に、公正証書があればすぐに強制執行を申し立て、相手方の給料や預金口座などを差し押さえて、金銭を回収することが可能となるからです。公正証書がなければ、調停や裁判をしてからでなければ差押えはできません。
なお、強制執行を申し立てるためには、公正証書に「強制進行認諾文言」を付しておくことが必要ですので、忘れないようにしましょう。
公的支援制度の活用
別居中においても、離婚後の生活においても、お金が足りない場合には公的支援制度を活用することが考えられます。
ここでは、主な公的支援制度をご紹介しますので、該当するものがあれば活用を検討するとよいでしょう。
児童扶養手当
児童扶養手当は、離婚や死別などによってひとり親となった家庭へ支給されるものです。
子ども1人あたり最大で月額45,500円(2024年度)を受け取ることができます。ただし、受給額は養育者の所得や子どもの人数によって異なります。
新たに児童扶養手当を受けるためには、自治体に現況届を提出して認定を受けなければなりません。申請手続きの詳細は、お住まいの自治体の子育て支援係の窓口でご確認ください。
公営住宅や家賃補助の申請手続き
離婚や別居でご自身が家から出て行く場合には、家賃の負担が重くのしかかることでしょう。
しかし、多くの自治体では、ひとり親世帯が公営住宅に優先的に入居できたり、その家賃を減免してもらえたり、一般の賃貸住宅に入居する場合でも家賃補助を受けられたりする制度が設けられています。
利用条件や申請手続きは自治体によって異なりますので、お住まいの自治体の役所で相談してみましょう。
ひとり親医療費助成
ひとり親世帯の医療費についても、その一部が自治体から支給される制度が設けられていることが多いです。
助成の内容や申請手続きは自治体によって異なりますので、お住まいの自治体で、児童福祉の担当課に問い合わせてみましょう。
生活福祉資金貸付制度の利用
生活費や教育費が不足する場合には、生活福祉資金貸付制度を利用して、無利子または低金利でお金を借りられる可能性があります。
例えば、離婚後に当座の生活費がない場合、最大で60万円まで借りることが可能です。保証人を立てた場合は無利子、保証人がいない場合の金利は年1.5%です。
消費者金融やクレジットカード会社などからの借金は金利が高いので、お金を借りるなら、まずは生活福祉資金貸付制度の利用を検討してみましょう。
ただし、一定の利用条件がありますので、詳細についてはお住まいの地域の市区町村社会福祉協議会へお問い合わせください。
生活保護
最終手段としては、生活保護を受給するのもひとつの方法です。
お金がなくて生活ができない場合には、生活保護によって必要最低限の生活費を受給することが可能です。
離婚後の経済的な自立を目指す
離婚後は配偶者の収入に頼ることはできなくなるので、経済的な自立を目指すことも重要です。
以下では、離婚後に就職して収入を得るための方策をご紹介します。
育児と仕事を両立させるための就職活動
子どもを連れて離婚した場合には、育児と仕事を両立させる必要があります。就職後にトラブルを招かないように、育児との両立が可能な就職先を探しましょう。
近年では柔軟な働き方を認める職場も増えていますので、就業条件をよく確認した上で応募し、面接でも事情を話して、可能な範囲で相談してみることをおすすめします。
職業訓練や資格取得でスキルアップを目指す
就職する前に、職業訓練を受けて資格を取得したり、スキルアップを図ったりするのもおすすめです。公共の職業訓練は原則無料ですし、一定の条件を満たせば給付金を受け取ることもできます。
働きながらでも、資格取得やスキルアップで増収を目指すとよいでしょう。
ハローワークやマザーズハローワークの活用
なかなか就職先が見つからない場合には、ハローワークも利用するのも有効です。
ハローワークには「マザーズハローワーク」や「マザーズコーナー」が設けられていて、きめ細かな就職支援が行われています。
子育てしながら働くための、さまざまな相談に乗ってくれますので、お近くのハローワークに出向いてみるとよいでしょう。
離婚時にかかる費用を抑えるための工夫
離婚時にかかる費用を抑えるためには、以下の方法もあります。
夫婦間での話し合いで解決させる
夫婦だけの話し合いで解決できれば、公正証書作成の手数料を除いて、特に費用はかかりません。
弁護士に依頼する場合でも、協議離婚が成立すれば弁護士費用を抑えることが可能です。
法テラスや自治体の無料相談窓口の活用
法テラスでは、収入や資産に関する条件を満たせば、弁護士による無料相談を利用できます。「代理援助」の審査に通れば弁護士費用を立て替えてもらうことも可能で、その場合は原則として毎月1万円を法テラスへ償還していきます。
自治体の相談窓口でも、弁護士による無料相談を利用できます。
ただし、法テラスや自治体の相談窓口で紹介される弁護士は、離婚問題に詳しいとは限らないことに注意が必要です。
カウンセリングサービス
「離婚カウンセリング」を利用すれば、弁護士に依頼するよりも低コストで離婚できる可能性があります。
ただし、離婚カウンセラーは法律の専門家ではありませんし、離婚調停や離婚裁判には対応できません。そのため、必ずしも満足のいく結果が得られるとは限りません。
離婚問題は難波みなみ法律事務所へ
お金がないと離婚手続きも進めにくいことがありますが、愛情が冷め切った状態で結婚生活を続けるのも考えものです。
「お金がないけど離婚したい!」とお考えの際は、まず弁護士の無料相談をご利用ください。離婚手続きの進め方や、相手方からいくらくらいのお金をもらえるのかについて、専門的なアドバイスを受けた上で、今後のことを検討するとよいでしょう。
当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。
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