コラム
公開日: 2025.01.18

土地を相続したくない、どうする?相続手続のポイントや対処法を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

土地を相続したくないと考えている人も多くいるのではないでしょうか。

土地をもらいたくないと考える背景は様々です。山林だから、価値が低い、居住していないなどの理由が挙げられるかと思います。

土地を相続したくない場合、土地以外の遺産、預貯金や金融資産を取得して、その他の相続人に土地を取得してもらうのが理想です。

しかし、いずれの相続人も土地を相続したくないと考える場合には、その他の選択肢を考慮しなくてはなりません。土地の売却に加えて、相続土地国庫帰属制度を利用するなどが考えられます。

この記事では、土地を相続したくない場合の具体的な手続きや対処法について詳しく解説します。

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土地を相続したくない時の選択肢

土地を相続したくない場合、いくつかの選択肢があります。まず、土地以外の遺産を相続して、土地をその他の相続人に相続してもらうのがベストです。しかし、この遺産分割が難しい場合には、以下で挙げる選択肢を検討することになります。

相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度は、土地を相続したくない場合に利用できる制度の一つです。この制度では、特定の要件を満たす土地を国に帰属させることで、相続人の負担を軽減することが可能です。

まず、相続土地国庫帰属制度を利用するためには、申請できない場合及び承認されない場合に当てはまらないことが必要です。

申請できない場合
①建物がある土地
②担保権や使用収益権が設定されている土地
③通路など他人の利用が予定されている土地
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
土地不承認となる場合
⑥一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用又は労力がかかる土地
⑦土地の管理・処分を阻害する工作物、有体物が地上にある土地
⑧土地の管理・処分のために、除去しなければならない有体物が地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑩その他、通常の管理・処分に当たって過分の費用又は労力がかかる土地
参照|法務省 相続土地国庫帰属制度の概要

国庫帰属制度を利用することで、相続人は維持管理費や固定資産税といった金銭的負担を軽減できるメリットがあります。また、管理責任からも解放され、将来的なトラブルの心配もありません。

なお、国庫に帰属することで国が管理することになった場合には、一定額の負担金を納付しなければなりません。

このように、相続土地国庫帰属制度は、土地を相続したくない場合の有効な選択肢の一つとなります。

相続してからすぐに売却する

土地を相続した後、すぐにその土地を売却して現金化する方法が挙げられます。

まず、相続した土地の市場価値を正確に把握することが大切です。不動産会社に依頼して、適正な価格を査定してもらうと良いでしょう。その上で、迅速に売却するためには、不動産仲介業者に土地の売却仲介を依頼しましょう。アクセスの良さ、周辺環境、将来の開発計画、売却の時期などによって、買い手が見つかるかが左右されます。

ただ、山林や田舎の土地であれば、土地の売却はかなり難しくなることが予想されます。

また、土地の売却には税金の問題も考慮が必要です。譲渡所得税が発生する可能性があるため、税理士に相談して、税負担を最小限に抑える方法を模索することが賢明です。

自治体に寄付する

自治体に土地を寄付する方法が挙げられます。

全ての土地が自治体によって受け入れられるわけではありません。土地がその地域の公共の利益に資するかどうかが重要となります。

一般的に、自治体は、不動産の管理コストがかさむため、土地の寄付を受け入れる際には慎重になることが多いです。特に、利用価値が低い土地・山林や、維持管理に費用がかかる土地については、寄付することが難しくなる傾向です。

また、その土地が公共施設や公共事業に利用できる場合には、自治体に寄付をせずとも、通常の売却活動により売却できる見込みはあるでしょう。

相続放棄をする

相続放棄は、相続人としての地位を失わせることで、相続人の権利や義務を放棄する手続きであり、故人の負債がプラスの財産を上回る場合や相続トラブルを避けたい場合に選ばれることが多いです。

そのため、相続したくない土地がある場合に、その他に相続できる預貯金等の遺産がなければ、相続放棄は選択肢の一つとなります。

ただ、相続放棄をすることで、土地だけでなく、その他の財産も相続できなくなるため、注意が必要です。

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土地を相続したくない時の相続放棄の注意点

相続放棄は、土地を相続したくない時の選択肢の一つです。ただ、相続放棄をするにあたっては、いくつかの注意点があります。

相続放棄には期限がある

土地を相続したくないことを理由に相続放棄を選択する場合、相続放棄の期限には注意しなければなりません。

相続放棄はいつでも行えるわけではありません。まず、生前に相続放棄をすることはできません。その上で、相続開始後に自分が相続人であることを知ってから3か月以内に、戸籍謄本等の必要書類を揃えて、故人の住所地を管轄する家庭裁判所に手続を行う必要があります。

相続放棄をしても管理責任が生じる

相続放棄をした後も、他の相続人が管理できるまで遺産を管理する責任が生じます。2023年の法改正により、相続放棄後の管理責任(保存責任)は、放棄に際して相続財産を現に占有している場合に生じるものと規定されました。そのため、不動産を現に占有している場合には、その不動産を管理する責任があるため、注意しましょう。

民法940条 

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

土地だけを相続放棄することはできない

特定の土地を相続したくないために相続放棄をする場合、相続したくない土地以外の遺産も承継することができません。つまり、相続したくない土地の相続だけを放棄することはできません。

そのため、相続放棄を判断する際には、土地を含めた遺産を承継した時のメリットとデメリットを比較した上で慎重に判断することが望ましいでしょう。

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相続したくない土地を放置することのリスク

相続したくない土地を放置すると、様々なリスクが生じる可能性があります。

まず、相続登記を怠ることにより、法律で定められた過料が科されることがあります。また、固定資産税も発生し続けます。

さらに、放置された土地は管理が行き届かず、近隣住民とのトラブルの原因となることがあります。相続手続きをしないで放置することで、時間が経つにつれて相続人が増え、権利関係が複雑化することも避けられません。

相続手続きを放置することで生じる様々なトラブルを未然に防ぐためにも速やかな対応が求められます。

相続登記をしないと過料がかかる

2024年4月から、相続によって取得した土地の相続登記が義務化されます。

この制度に基づき、相続により取得したことを知ってから3年以内に相続登記さずに放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料は、行政上の義務違反に対するペナルティであり、正当な理由なく義務を怠った場合に課されます。

固定資産税がかかる

土地を相続すると、毎年1月1日を基準に課される固定資産税という税金がかかります。

相続開始後に新しい所有者が正式に決まるまで、法定相続人全員は法定相続分に沿って、固定資産税の納税義務を負います。

固定資産税の負担は、土地を所有している限り発生し続けます。たとえ、その土地に誰も住んでいなくても固定資産税はかかります。また、適切な管理がされていない空き家(管理不全空き家)である場合には、固定資産税は6倍に跳ね上がるリスクがあるため、適切な管理が求められます。

このように、土地を相続する場合は固定資産税の負担も含めてしっかり管理する必要があります。

維持管理費の負担が生じる

土地を相続する際に生じる維持管理費は、相続人にとって見逃せない負担となります。

先ほどの固定資産税等の税負担だけでなく、土地上に建物がある場合には、それに関連する火災保険料や水道・電気料金なども発生します。

草刈りや修繕といった管理費用も考慮しなければなりません。特に、土地が広大であったり、手入れが必要な場合、定期的な費用がかさむことになります。更に、特定空き家に指定されると、行政からの指導や追加の税負担が発生することも考えられます。

土地を相続する際には、これらの維持管理費用の負担を十分に把握することが重要です。

近隣住民とのトラブル

土地の相続において、近隣住民とのトラブルは避けて通れない問題の一つです。特に枝木や塀等の越境や家屋の老朽化は、近隣住民とのトラブルを招きます。

相続した土地を手入れせずに放置していると、土地上の枝木や雑草が隣地に越境してしまうことがあります。

また、家屋の倒壊問題については、特に長期間放置された空き家でしばしば発生します。

家屋の倒壊により隣地に被害が及べば、損害賠償請求を受けるおそれもあります。

以上の理由から、相続した土地を適切に管理することはとても重要です。もし管理が難しい場合は、専門業者への依頼や、老朽化物件の売却を検討することも一つの解決策です。

権利関係を複雑にさせる

土地の相続において、権利関係が複雑になることは避けたい問題です。特に、遺産分割をせずに放置していると、時の経過により相続人が増えてしまい、遺産分割が困難になるケースがあります。複数の相続人が存在すると、それぞれの権利や意見が絡まり合い、合意を得ることが難しくなるのです。

相続手続を放置することなく遺産分割を通じて権利関係を整理しておくことは、相続人間の将来の紛争を防ぐための鍵となります。

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土地の相続を避けるために生前にできること

土地の相続を避けるためには、生前にできる方法があります。まず、土地を売却することが考えられます。また、リースバックを利用する方法もあります。これらの方法を活用することで、相続に関する問題を事前に解決し、他界後の家族への負担を減らすことができます。

生前に売却する

土地を生前に売却するという選択肢は、土地を相続したくないという相続人の悩みを事前に解決させる手段です。

生前に土地を売却しておくことで、相続人間で土地を押し付け合うなどの問題を解消できます。

また、土地を現金化しておくことで相続税の支払いに備えて現金を確保することもできます。

さらに、土地の売却によって得た資金を他の用途に活用できる点も大きなメリットです。土地を現金化しておくことで柔軟な資金運用が可能となり、ライフプランの選択肢が広がります。

リースバックを利用する

リースバックは土地を相続したくない場合に有効な選択肢となります。

リースバックとは、自宅を売却した上で、買主との間で自宅の賃貸借契約を締結して自宅に住み続けることをいいます。

リースバックにより、売却代金を得られる上で、住み慣れた環境を維持することが可能になります。

リースバックにおいても、相続後の土地の押し付け合いを回避することができます。

しかし、リースバックの場合、自宅の売却価格が通常より低くなる可能性があることや、賃料負担が発生することなど、デメリットも存在します。これらを考慮に入れた上で、家族や相続人と十分に相談し、リースバック契約の条件を詳細に確認することが重要です。

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本記事では、土地を相続したくないと考える人に向けて、様々な対処法を詳しく解説しました。国庫帰属制度や自治体への寄付、相続放棄の手続きなど、選択肢は多岐にわたりますが、それぞれに注意すべき点が存在します。特に相続放棄を選択する場合、土地だけを放棄することができない点や、相続放棄をしても管理責任が残る可能性があることを理解しておくことが重要です。また、土地を放置するリスクとして、固定資産税や維持管理費の負担、さらには近隣住民とのトラブルなどが考えられます。

相続を避けたいと考える場合、事前に土地を売却するなど、生前の対策も有効です。

土地の相続については、弁護士の助言を受けながら慎重に進めることが肝心です。

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