コラム
公開日: 2024.12.09

子あり夫婦がセックスレスで離婚する時の注意点|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

子あり夫婦にとって、離婚を検討するにあたって、親権問題や子供への影響は大きな関心事です。特に、子供が幼い場合には、離婚することによる心身の負担を最小限に抑えるように細心の注意を払う必要があります。

また、セックスレスが離婚原因となっている場合でも、セックスレスだけでは離婚の決め手にはなりにくいのが現実です。ただし、セックスレスだけでなく、不倫やDV・モラハラなどの他の有責行為が存在している場合は、離婚請求や慰謝料請求が認められます。

セックスレスを理由に離婚に踏み切る際は、夫婦で冷静に話し合うことから始め、合意できない場合は調停や裁判を検討します。その過程では、弁護士の専門的アドバイスを受けることをおすすめします。ご自身の人生の再設計だけでなく子供の幸せも踏まえて、適切に離婚手続きを進めていくことが大切だと言えるでしょう。

この記事では、セックスレスを理由に離婚する際の具体的な注意点や手順について詳しく解説します。慰謝料の請求や財産分与、養育費の取り決めなど、離婚に伴う諸問題に適切に対処することで、子どもの幸せを守りながら、新たな人生をスタートさせることができるでしょう。

セックスレスとは

セックスレスという言葉を耳にする機会が増えています。一体セックスレスとはどのような状態を指しているのでしょうか。

一般的に、セックスレスとは夫婦間で性交渉がない、あるいは極端に少ない状態が続いている状況を意味します。具体的には、1ヶ月に1回未満の性交渉頻度である場合や、半年以上性交渉がない場合などがセックスレスに該当すると考えられています。

セックスレスが長期化すると、夫婦間のコミュニケーション不足や感情的な乖離を引き起こし、最終的には離婚に至るケースも少なくありません。実際、セックスレスが原因で離婚を選択する夫婦は年々増加傾向にあるのです。一般社団法人日本家族計画協会の調査によると、47.2%の夫婦がセックスレスの範疇にあり、夫婦のセックスレスは年々増加しています。

セックスレスの原因と子供の出産

セックスレスの原因は多岐に渡ります。仕事や育児による疲労・ストレス、パートナーへの不満、性的な不一致、年齢による衰え、健康上の問題など、様々な要因が複合的に絡み合っているケースが多いのです。特に、子育て中の夫婦は、育児による心身の疲れやプライベートな時間の不足から、性的な交流が減少しやすい傾向にあります。

一般社団法人日本家族計画協会のアンケート調査によると、セックスに対して積極的になれない理由は以下の結果になっており、男女問わず、子供の出産がセックスレスに影響していることが分かります。

男性では、

  • 「仕事で疲れている」35・2%
  • 「家族(肉親)のように思える」12・8%
  • 「出産後何となく」12・0%

女性では

  • 「面倒くさい」22・3%、
  • 「出産後何となく」20・1%、
  • 「仕事で疲れている」17・4%

セックスレスで離婚はできるか

セックスレスで離婚をすることは可能なのでしょうか。結論からお伝えすると、セックスレスだけを理由とした離婚については、相手方の合意があれば問題ありませんが、相手方が拒否する場合には、強制的に離婚できるだけの理由にはなりにくいでしょう。

セックスレスだけでは離婚原因にはなりにくい

セックスレスはそれだけで離婚原因とはなりにくいのが現状です。

相手方が離婚に応じない場合、民法で定められた離婚原因が存なければ離婚することはできません。

法定の離婚原因とは、以下の事由をいいます。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続しがたい重大な事由

セックスレスは1から4の事由には当たりませんから、5の婚姻関係を継続し難い事由に該当するかが問題となります。

しかし、5項に該当するためにはおよそ夫婦関係を修復できない程度に夫婦関係が破綻していることを客観的に説明できなければいけません。例えば、性交渉を求めてもかなりの長期間に及んで性交渉を拒否し続けている場合には、セックスレスは離婚原因になるでしょう。

ただ、セックスレスを理由に夫婦関係が破綻していることを証明できないことが多くあります。なぜなら、セックスレスのような家庭内で、かつ、センシティブな問題を事後的に客観的な証拠を基に説明することができないことがほとんどだからです。

セックスレスに不倫やDV・モラハラがあれば離婚原因となる

セックスレスに加えて、配偶者の不貞行為やDV・モラルハラスメントなどがあった場合は、離婚原因になります。

セックスレスが原因となり、夫婦仲が悪化することで、不貞行為やDVなどの有責行為に発展することがあります。

配偶者がほかの異性と性行為を行う不倫は、明らかな離婚原因の1つです。加えて、配偶者への暴力や著しい侮辱や人格非難など、婚姻を継続しがたい重大な背信行為があれば、裁判所はセックスレスと総合的に判断して離婚を認める可能性が高くなります。

セックスレスが原因で長期間別居していれば離婚原因となる

セックスレスにより夫婦仲が悪くなり、別居に至った場合、その別居が長期間に及べば、離婚原因は認められます。

長期間の別居により、夫婦関係が破綻するに至ったと判断できれば、夫婦関係を継続し難い重大な事由に該当します。この場合、別居期間の長短に加えて、同居期間、別居に至る経緯、別居期間中の夫婦の交流などの事情を総合的に判断します。

そのため、別居に至る原因がセックスレスである場合、セックスレスと長期間の別居との掛け合わせにより離婚原因が認定される可能性があります。

セックスレスで離婚することと子どもの親権は別問題

セックスレスが原因で離婚を考えている夫婦は多いでしょう。

しかし、離婚の理由と子どもの親権問題は、切り離して考える必要があります。

セックスレスが離婚理由であっても、それだけで親権が決まるわけではありません。親権は、子どもの利益を最優先に考えて決定されます。つまり、子どもにとってどちらの親が適切な養育者であるかが重要なのです。

裁判所は、親権者を決める際に様々な要因を考慮します。例えば、子どもとの心理的な結びつきの強さ、子どもの意向、各親の経済力や監護能力などです。セックスレスという夫婦関係の問題は、これらの要因とは直接関係がありません。

もちろん、夫婦仲が悪化すれば子どもへの影響もあるでしょう。しかし、離婚理由が何であろうと、夫婦仲が悪くなれば多かれ少なかれ子供の心身に影響は生じます。セックスレスだからといって、その一事で親権を失うわけではないのです。

したがって、セックスレスで悩む子あり夫婦は、離婚と親権を切り離して考えれば十分です。離婚後も子どもとの関係を大切にしながら、それぞれが幸せを追求していくことが重要です。

セックスレスで慰謝料請求できるか?

セックスレスを理由に慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

セックスレスで慰謝料請求する条件

夫婦のいずれかがセックスを理由もなく拒否し続けた場合には、慰謝料請求することが認められます。

加えて、セックスレスの他にも有責行為がある場合も、慰謝料請求が認められます。例えば、配偶者からのDVや不貞行為など、婚姻関係を破綻させる他の要因が存在する場合、慰謝料請求が認定される可能性があります。

他方で、病気や高齢による性不全のために性行為できない場合や夫婦共に性行為を望んでいなかったような場合には、慰謝料請求は認められにくいでしょう。

慰謝料の相場

セックスレスを理由とした慰謝料の相場は、ケースバイケースで大きく異なります。

慰謝料の金額は、婚姻期間の長さや、セックスレスの期間、セックスレスの原因、その他の有責行為の有無、それによって被った精神的苦痛の程度などを総合的に判断して決定されます。

慰謝料が認められる場合、慰謝料額は、100万円から300万円程度認められるケースが多いようです。ただし、セックスレスのみを理由とした慰謝料請求では、高額な慰謝料を得ることは難しいとされています。

他方、セックスレスに加えて、配偶者の不貞行為やDVなど、他の有責行為が認められる場合は、慰謝料の金額が上積みされる可能性があります。状況に応じて、弁護士と相談しながら適切な請求額を見極めることが重要です。

セックスレス等の証拠を確保する

慰謝料請求を有利に進めるためには、セックスレスや不貞行為、DVの証拠を適切に収集しておく必要があります。証拠の確保は、弁護士のアドバイスを受けながら、慎重に行うことが求められます。

セックスレスについては、性交渉の頻度や拒否の様子を記録しておくと良いでしょう。日記やカレンダーに、具体的なエピソードを書き留めておくことで、客観的な証拠として活用できます。また、カウンセラーに相談している場合には、その相談記録等を確保しておくことも良いでしょう。

不貞行為については、写真や動画、メールのやり取りなどが有力な証拠となります。探偵に依頼して、不貞の事実を立証することも一つの方法です。 

DVについては、暴力の痕跡を写真に撮っておくことが重要です。医療機関で診断書を作成してもらうのも有効でしょう。

子あり夫婦が離婚する時の注意点

ここでは、特にセックスレスを理由とした離婚の際の注意点について解説いたします。

セックスレスで離婚した場合の子供の親権

セックスレスを理由に離婚した場合でも、親権の決定に直接的な影響はありません。親権は、子どもの利益を最優先に考えて決定されるべきものだからです。

親権者の決定には、子供の監護状況や別居後の生活状況、子どもの年齢や意向などが考慮されます。セックスレスであったことそのものは、親権の決定には直接関係ありません。

子どもの養育費の取り決めをする

離婚後、非親権者の親は親権者となる親に対して、子どもの健全な成長のために養育費を支払う義務があります。養育費の金額は、子どもの年齢や人数、親の収入などを考慮して決定します。裁判所が公開している養育費算定表を用いて簡易的に養育費を算出することがよくあります。

養育費の取り決めができれば、その内容を明記した離婚協議書や公正証書などに作成しておくことが重要です。口頭での約束では、後々トラブルの原因になりかねません。

財産分与に資料を確保する

離婚の際には、夫婦で築いた財産を分割する必要があります。財産分与の対象となるのは、結婚後に取得した共有財産です。結婚前からの財産、贈与や相続で得た財産は、特有財産として財産分与から除外されます。

財産分与を適切に行うためには、預金通帳や不動産の登記簿謄本、年金の情報など、財産に関する資料を事前に収集しておくことが大切です。これらの資料がないと、正確な財産の把握が難しくなります。

離婚後の経済的な安定を図る

子どもを引き取る親は、離婚後の生活の安定を図る必要があります。特に経済面での準備が重要となります。

具体的には、再就職や資格取得の準備、新居の確保、ひとり親支援制度の活用などが考えられます。子どもの養育環境を整えるためにも、経済的な安定は欠かせません。

セックスレスの離婚の進め方

ここでは、セックスレスの離婚を進めていく上で重要なポイントを順を追って説明していきます。

離婚や子供の影響を真摯に考えてみる

セックスレスを理由に離婚手続きを進めていく前に、離婚が自分自身や子供にどのような影響を与えるのかを慎重に考えるべきです。特に幼い子供がいる場合、離婚によって子供の心理面に大きな影響を与える可能性があります。

そのため、離婚後の生活設計や子供に与える影響を、十分に検討しておくことが重要です。場合によっては、カウンセリングを受けるなどして、専門家のアドバイスを参考にすることも必要です。

離婚協議の申し入れをする

離婚を決意したら、まずは配偶者に対して離婚協議の申し入れをします。その際、離婚の理由や離婚条件について、冷静に説明することが大切です。

離婚の話し合いに際しては、財産分与や子供の親権、養育費などについて話し合います。離婚それ自体に加えて離婚条件について合意ができれば、その内容を記した合意書を作成してください。

合意書は、後々のトラブルを防ぐためにも、弁護士に相談しながら作成することをおすすめします。

離婚調停の申立てをする

離婚協議が不調に終わった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、調停委員が双方の主張を聞き、話し合いを進めていきます。

セックスレスが離婚の理由である場合、調停委員に対してセックスレスの事実を詳しく説明し、離婚理由があることを主張することが重要です。調停で合意に至らない場合は、離婚訴訟へと進むことになります。

離婚裁判をする

調停でも離婚の合意に至らない場合は、離婚訴訟を提起することになります。裁判では、セックスレスの事実を証明する証拠を提出し、離婚の正当性を主張します。

裁判の過程では、弁護士を代理人に選任した上で、適切な主張や立証を行うことが重要です。裁判の結果、離婚が認められれば、離婚が成立することになります。

以上が、子あり夫婦がセックスレスを理由に離婚する際の基本的な流れです。離婚は、夫婦だけでなく子供にも大きな影響を与える重大な決定です。十分に時間をかけて検討し、適切な手順を踏んで進めていくことが大切だと言えるでしょう。

子あり夫婦の離婚問題は難波みなみ法律事務所へ

セックスレスは、多くの夫婦が抱えている深刻な問題です。これが理由に離婚を考える人も少なくありません。また、セックスレスを要因に別の有責行為を招くこともあります。

しかし、子供がいる夫婦では、離婚によって子供に対して生じる様々な影響を考慮せざるを得ません。父母が離れて暮らすことによる心理的な影響は大きく、離婚後の経済的な不安定により生活環境が悪化する可能性もあります。そのため、セックスレスで離婚を考えている場合、本当に離婚するべきか、修復の余地がないかを真摯に考えてみるべきでしょう。

当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。

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