コラム
公開日: 2026.01.20

家賃滞納があった場合の立退きの流れ|注意点や強制執行までのステップを弁護士が解説

借主が家賃を滞納する場合、最終的には立ち退きを求めることになります。しかし、家賃滞納を理由とした立ち退きには法的な手続きが必要で、すぐに強制退去となるわけではありません。家賃を滞納しているからといって、自力で明渡しを実現させてはいけません。

この記事では、家賃滞納から立ち退きまでの流れを、弁護士がわかりやすく解説します。

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家賃滞納があってもすぐに立ち退きは要求できない?知っておくべき基本ルール

一度家賃を滞納しただけで、賃貸借契約の解除が認められることは稀です。裁判所は、家賃の滞納期間や金額、滞納に至った経緯などを総合的に考慮して判断します。

したがって、貸主は感情的に対応するのではなく、法的な手順を冷静に踏むことが非常に重要です。

立ち退き要求の目安は「3ヶ月以上」の滞納

家賃滞納が発生した場合、具体的に何か月分の滞納があれば、契約の解除と立ち退きを要求できるかについて、法律上で明確な規定はありません。しかし、裁判所が賃貸借契約の解除を認めるかどうかの判断基準となるのは、「貸主と借主の信頼関係が破壊されたか」という点です。この「信頼関係破壊の法理」に基づき、過去の多くの裁判例では「3ヶ月以上」の家賃滞納が、信頼関係破壊の一つの目安とされています。

たとえば、家賃の支払いが1ヶ月や2ヶ月といった短期間・少数回の遅れであれば、一時的な支払い忘れや手違いの可能性も考慮されるため、直ちに信頼関係が破壊されたと見なされることは稀です。

ただし、この3ヶ月という期間はあくまで一般的な目安であることに注意が必要です。滞納に至った経緯、賃貸人による再三の催告に対する借主の態度、賃貸借期間の長短など、個々の事情が総合的に考慮されます。

信頼関係が破壊されたと判断されるその他ケース

家賃の滞納期間が3ヶ月未満であっても、貸主と借主の「信頼関係が破壊された」と判断されるような重大な契約違反があった場合、賃貸借契約が解除され、立ち退きを求められる可能性があります。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

繰り返しの家賃滞納と改善が見られない場合

過去に何度も家賃滞納を繰り返し、再三の催告にもかかわらず改善が見られないケースです。このような状況では、たとえ一時的な滞納であっても信頼関係が損なわれたと判断されることがあります。実際に、2ヶ月分の不払いでも契約解除が認められたケースも存在します。

賃貸借契約で定められた用法に違反する行為

たとえば、住居専用の物件を大家さんの承諾なく事務所や店舗として利用するような場合には、用法義務違反となるため、たとえ賃料不払いが3か月に至っていなくても契約解除の理由となり得ます。

また、賃借権を第三者に無断で譲渡したり、物件を又貸し(無断転貸)したりする行為がある場合には、契約解除の対象となりますし、転貸に至っていなくても用法義務違反になり得ます。

他の入居者や近隣住民に著しい迷惑をかける行為

騒音を繰り返し発生させたり、悪臭をまき散らしたり、ゴミ出しのルールを無視したりする行為などがこれにあたります。こうした行為が再三の改善要求をしても改善されない場合、契約不履行の理由となります。

家賃滞納と立退料の関係

借主の家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合、貸主は借主に対して立退料の支払いをする必要はありません。

立退料とは、貸主が賃貸借契約の更新拒絶や中途解約をする際に、不充分な正当な事由を補足するために支払う金銭等を指します。他方で、家賃滞納を理由とした立ち退きは、あくまでも債務不履行に基づく解除を理由とするものであって、更新拒絶や中途解約による契約の終了とは異なるものです。

そのため、借主が家賃を滞納しており、その程度が当事者の信頼関係を破壊させる程のものであれば、立退料を支払うことなく賃貸物件の明渡しを求めることができます。

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家賃滞納が発生したら?立ち退き交渉までの4ステップ

家賃滞納が確認された場合、感情的にならず、法的な手順に従って冷静に対応することが重要です。

以下では、貸主側が訴訟を避けるために取るべき具体的な4つのステップを、時系列に沿って詳しく解説します。

ステップ1:電話や書面による支払いの督促

家賃の支払いが期日までに確認できない場合、まずは入居者へ電話で連絡を取ることが初期対応の基本です。

この段階では、単に支払いを促すだけでなく、相手の状況を確認する姿勢も必要です。支払い忘れや一時的な経済的な問題など、滞納理由をヒアリングしましょう。高圧的な態度は避け、あくまでも支払いを求める姿勢で臨むことが、事後の円滑な解決につながります。早朝や深夜を避け、入居者のプライバシーに配慮した時間帯に連絡を入れるよう心がけましょう。

電話で連絡が取れない場合や支払いの約束が履行されない場合は、書面での督促に移ります。督促状には、滞納している家賃の金額、具体的な支払期日、振込先を明確に記載し、誤解が生じないようにすることが重要です。

ステップ2:連帯保証人への連絡と支払い要請

借主本人が滞納家賃の支払いに応じない場合や、借主本人と連絡が取れない状況が続く場合は、次の段階として連帯保証人への連絡を検討します。連帯保証人は、法的に借主本人と同等の支払い義務を負う立場にあります。そのため、賃貸人は連帯保証人に対し、滞納家賃の支払いを直接請求することが法的に可能です。

一般的に、家賃滞納から約1ヶ月が経過した時点で、滞納者本人と連帯保証人の双方へ督促状を送付するケースが多く見られます。この督促状には、具体的な支払期限を定め、期日までに支払いがない場合は法的な手段に移行する可能性も示唆する内容を盛り込むと効果的です。

ステップ3:内容証明郵便による催告と契約解除の最終通告

これまでの電話や書面による督促に応じない場合、内容証明郵便を送付します。内容証明郵便は、「いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明するもので、後の訴訟において重要な証拠となる法的効力を持つものです。

滞納家賃が3か月以上である場合や賃料不払い以外にも契約不履行がある場合には、賃料の支払いの催告をした上で契約の解除をすることもあれば、催告することなく即時解除することもあります。

ステップ4:訴訟前の最終手段「明け渡しの任意交渉」

内容証明郵便を送付しても家賃の支払いにも退去にも応じない場合、訴訟を提起する前に、最後の話し合いの機会として「明け渡しの任意交渉」を行うことがあります。

借主との交渉の場では、貸主側から以下の内容を明確に提示し、合意形成を目指すことが大切です。

  • 明け渡しの具体的な期日
  • 滞納家賃の支払い計画
  • 未払い賃料や原状回復に関する譲歩案

場合によっては、未払い賃料の全部又は一部を免除したり、原状回復義務の免除するなどの譲歩案を提示することも早期解決を図るための有意な選択肢となります。

交渉の際は、感情的にならず、もし合意に至らなければ次は訴訟手続きに移行するという事実を冷静に伝える必要があります。交渉がまとまった場合は、口約束で終わらせず、必ず合意内容を記載した「合意書」を作成しましょう。

強制退去に向けた法的手続き

明け渡しに関する任意交渉が不成立に終わった場合、裁判所を介した法的な手続きへ移行せざるを得ません。以下の項目では、建物明渡請求訴訟の具体的な流れ、強制執行の手続き、そしてそれらにかかる費用や期間の目安について詳しく解説します。

手続き①:建物明渡請求訴訟を提起する

任意での交渉が不成立に終わった場合、建物の明け渡しを法的に求める「建物明渡請求訴訟」を提起します。判決を得ずに自力で明け渡しを実現することは禁止されているため注意してください。

訴訟を提起するには裁判所に訴状を提出します。賃貸借契約の解除が認められるためには、借主の債務不履行と信頼関係の破壊を証明する客観的な証拠を提出することが必要不可欠です。以下のような証拠を準備しましょう。

  • 賃貸借契約書
  • 家賃の入金履歴がわかる記録
  • 借主とのメッセージや書面等のやり取り
  • 内容証明郵便を含むこれまでの督促に関する記録

裁判所がこれらの証拠に基づき、賃貸借契約における信頼関係が破壊された事実を認めれば、明け渡しを命じる判決が下されます。

手続き②:判決確定後、強制執行を申し立てる

勝訴判決を得たにもかかわらず、入居者が任意での退去に応じない場合、貸主は建物明渡しの強制執行を裁判所に申し立てる必要があります。たとえ勝訴判決を得ていても、貸主が自ら入居者を連れ出したり、室内の荷物を運び出したりする「自力救済」は法律で禁じられています。そのため、必ず法的な手続きを踏まなければなりません。

強制執行の申立ては、物件所在地を管轄する地方裁判所の執行官室に対して行います。

強制執行の申立て後の具体的な流れは、以下の二段階です。

明渡しの催告

まず、執行官は、強制執行の申立てから2週間ほどを目処に物件を訪れて入居者に対し、約1ヶ月後を期限とする「明渡しの催告」を行います。この催告では、執行官が公示書を物件内の目立つ場所に貼り付け、退去期限などを告知します。

断行

期限内に入居者が任意で退去しない場合、次に「断行」と呼ばれる強制執行が実施されます。残置物がある場合には、執行業者によって、明らかなゴミであれば破棄し、それ以外の動産類については、倉庫などの保管場所に搬出した上で、鍵を交換することで物件の明け渡しを完了させます。

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貸主が絶対にやってはいけない対応

家賃滞納が発生した場合でも、大家さんが法的な手続きを踏まず、自力で問題を解決しようとする「自力救済」は、固く禁じられています。もしこれらの禁止行為に及んだ場合、大家さん自身が借主から損害賠償請求を受けたり、場合によっては刑事罰を科されたりする重大なリスクを負うことになります。

次の項目では、「自力救済」にあたる具体的な行為について詳しく解説します。

勝手に部屋に入る・鍵を交換する

貸主であっても、借主の許可なく賃貸物件の部屋に立ち入る行為は、刑法第130条で定める住居侵入罪に該当する可能性があります。これは、たとえ貸主が物件の所有者であっても、借主の住居の平穏が法的に保護されているためです。そのため、借主の同意がない限り、無断での立ち入りは認められません。

また、家賃滞納があったとしても、貸主が勝手に鍵を交換し、借主を部屋から締め出す行為も、自力救済の禁止に違反します。たとえ権利者であっても、裁判所の手続きを経ずに実力で権利回復を図ることは原則として認められていません。

以上のように、これらの貸主の自力救済は、借主から慰謝料などの損害賠償を請求されるだけでなく、住居侵入罪や不法侵奪罪などの刑事罰に問われるリスクも伴うため、決して行うべきではありません。

無断で室内の荷物を処分する

家賃を滞納している借主の室内にある家財道具(残置物)の所有権は、依然として借主にあります。したがって、賃貸人がこれらの家財道具を勝手に処分することは、「自力救済の禁止」という原則に反し、法的に認められていません。

もし無断で処分した場合、借主から損害賠償を請求されるリスクがあるだけでなく、器物損壊罪などの刑事罰に問われる可能性も生じます。家財道具を法的に処分するには、必ず裁判手続きを経て「強制執行」を行う必要があります。

執拗な取り立てや張り紙による督促

家賃滞納の取り立てでは、社会通念から逸脱した方法は控えるべきです。深夜や早朝の訪問、勤務先への執拗な連絡といった行為は、違法と判断される可能性があります。これらの行為は、借主を精神的に追い詰めるだけでなく、刑法上の脅迫罪、強要罪、さらには住居侵入罪といった犯罪に該当するリスクも伴います。

また、玄関ドアや集合ポストなど、第三者の目に触れる場所に家賃滞納の事実を張り紙で告知する行為も避けるべきです。これは、借主の名誉を不当に傷つけ、侮辱する行為として、名誉毀損罪や侮辱罪に問われる可能性があります。

弁護士への相談・委任を検討する

家賃滞納を理由とした立退きの手続きには法律の専門知識が不可欠であり、書類作成から裁判所での複雑なやり取りまで、多大な時間と労力を要します。このような状況では、法律の専門家である弁護士への相談を検討しましょう。

以下では弁護士への相談や委任のメリットやデメリットを解説します。

面倒な手続きや交渉をすべて一任できる

家賃滞納問題の解決には、専門知識を要する複雑な法的手続きが数多く存在します。例えば、内容証明郵便の作成・送付、賃貸借契約の解除通知、建物明渡請求訴訟の提起、そして最終的な建物の強制執行などです。

弁護士に依頼すれば、これらの煩雑な書類作成や法的な手続きをすべて委任することができ、弁護士が介入することで、貸主ご自身の負担を大幅に軽減できるでしょう。

精神的な負担から解放される

家賃滞納をする借主との直接交渉は、借主にとって計り知れない精神的ストレスとなります。督促のたびに感情的な対立が生じ、冷静な対応が難しくなることも少なくありません。このような状況は、時間と労力を奪うだけでなく、貸主の精神的な疲弊につながり、他の業務にも支障をきたす可能性があります。

弁護士に依頼すれば、貸主は滞納者と直接やり取りする必要がなくなります。弁護士が交渉の窓口となることで、感情的な衝突や不要なトラブルを回避できます。

まとめ:冷静かつ法に則った対応で解決を目指しましょう

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 不動産問題ならお任せください。

家賃滞納の問題は、大家さんにとって精神的にも経済的にも深刻な問題です。しかし、焦りや憤りから感情的な行動に出てしまうと、かえってトラブルを拡大させ、思わぬ事態を招きかねません。

また、賃貸物件の鍵を無断で交換したり、滞納している入居者の荷物を勝手に処分したりする行為は、「自力救済の禁止」という原則にも反します。自力救済は、住居侵入罪や器物損壊罪に問われる可能性があるだけでなく、入居者から損害賠償を請求されるリスクもあります。

問題解決に向けて最も確実な方法は、回り道のように思えても、法的な手続きに沿って冷静に対応することです。ただし、法的手続きには専門知識が必要であり、書類作成や裁判所とのやり取りには多大な時間と労力がかかります。そのため、法律の専門家である弁護士への相談が有効な選択肢です。弁護士は、賃貸人の代理人として、交渉から訴訟、強制執行に至るまで、一貫して手続きをサポートし、法的に正しい手順で、円滑な解決へと導いてくれるでしょう。

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