コラム
公開日: 2025.08.09

家賃滞納は何ヶ月で強制退去?滞納期間ごとのリスクと今すぐできる対処法

, , , 不動産問題, 何か月の家賃滞納で強制退去できるか?, 3か月が目安? 家賃滞納の問題を解説,

借主が家賃を滞納している場合、オーナーであれば、貸主との契約解除を検討することは誰しもあると思います。しかし、賃料の滞納があれば当然に契約を解除して明け渡しを求めることができるわけではありません。

この記事では、家賃滞納が何ヶ月続くと強制退去になるのか、滞納期間ごとのリスクを詳しく解説します。また、もし家賃の支払いが難しい場合の対処法についてもご紹介。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

家賃滞納で契約解除になるまでの期間は「3ヶ月」が目安

3

結論として、家賃を3ヶ月以上滞納すると、貸主から賃貸借契約を解除され、法的手続きを経て強制退去させられるリスクが非常に高まります。

ただし、この3ヶ月という期間は、あくまで一般的な目安に過ぎません。以下では、家賃滞納と契約解除の関係について詳しく解説します。

なぜ3ヶ月以上の滞納で強制退去できるのか?

家賃滞納が3ヶ月以上になると、貸主と借主の間に築かれた「信頼関係が破壊された」と法的に判断される可能性が高まります。

賃貸借契約は、単なる物件の貸し借りではなく、双方の信頼関係に基づいた継続的な契約です。1〜2ヶ月程度の滞納であれば、未だ信頼関係は修復できると判断される可能性があります。一方、3ヶ月以上の滞納については、借主が家賃を支払う意思や能力を欠いていると判断され、貸主との信頼関係を破壊させる重大な問題として捉えられます。

裁判実務においても、賃貸人が賃料不払いを理由に契約を解除するためには、原則として3ヶ月分以上の賃料滞納が必要とされる傾向にあります。

逆に、3か月滞納があっても契約の解除が認められないケースもあります。例えば、3か月分の賃料滞納であったものの、銀行預金を引き出すための印鑑を紛失したことが不払いの理由であり、これを貸主も知っていたこと、借主が賃料を支払う意思と能力を十分に持っていたことなどから、信頼関係を破壊しない特段の事情があるとして解除を認めなかった事例があります(東京地方裁判所判昭和54年12月14日)。

滞納1~2ヶ月でも契約解除できる可能性はある?

一般的に家賃滞納から強制退去までの目安は3ヶ月とされていますが、滞納期間が3ヶ月未満であっても契約解除される可能性はゼロではありません。3ヶ月という期間は、あくまで裁判で強制退去が認められやすい目安に過ぎないことを理解しておく必要があります。

契約解除の判断において最も重視されるのは、滞納期間の長さだけでなく、貸主と借主間の「信頼関係が破壊されたか否か」という点です。信頼関係の破壊の有無は、滞納の金額や期間、滞納の経緯や理由、過去の滞納の有無や期間、催告の有無・内容、催告後の賃借人の対応等を総合して判断します。

そのため、たとえ現在の滞納家賃が1〜2か月程度であっても、信頼関係の破壊を認める事情があれば、解除は認められます。

例えば、以下のような不誠実な態度は、滞納期間が短くても信頼関係の破壊と見なされ、契約解除が認められる要因となります。

  • 過去に何度も家賃滞納を繰り返している(常習性がある場合)
  • 家賃の支払い催促の連絡を完全に無視し続けている
  • 虚偽の支払い約束を繰り返すなど、不誠実な対応が見られる

実際、1〜2ヶ月の滞納であっても、過去に再三滞納を繰り返すなど悪質な場合は解除が認められるケースもあります。

3か月滞納後に借主が支払った場合に解除できるのか?

借主が3か月以上滞納をした後に、その滞納家賃全額を支払った場合に、貸主は過去の滞納を理由に解除できるかが問題となることがあります。

借主が滞納家賃を完済している以上、債務不履行の状況を解消させたとして賃貸借契約を解除できなくなる可能性があります。解除通知後に借主が滞納家賃5か月分を弁済した事案では、貸主の解除の効力を否定した事案もあります(東京高等裁判所昭和54年12月18日)。

LINEで法律相談 こちらから友達追加
クレジットカード利用可

要注意!家賃滞納から強制退去に至るまでの4ステップ

借主が家賃を滞納している場合でも、自力で借主を追い出すことができるわけではありません。強制退去に至るまでには、貸主が法的な手続きに沿って段階的に進めていかなければなりません。これらのプロセスを理解しておくことは、滞納問題への冷静な対処につながります。

具体的には、以下の4つのステップを踏むことになります。

  • 支払い催促と解除通知
  • 連帯保証人への連絡
  • 訴訟提起
  • 強制執行

ステップ1:電話や書面による支払い催促(滞納~1ヶ月)

家賃の支払期日を過ぎても支払いを確認できない場合には、家賃の支払いを催促します。これは一般的に、支払期日から数日〜1週間程度を目安に行います。最初の連絡は、電話による確認や、普通郵便による督促状の送付が主な手段となります。中には、メールやSMSで連絡をするケースもあります。

この段階での連絡は、単なる残高不足や支払い忘れの可能性を考慮し、比較的穏やかな「お知らせ」の形で行うことが多いでしょう。郵送する書面には、滞納している家賃の金額、本来の支払期日、そして新たに設定された支払期限を明記します。

支払いの督促をしても借主が放置したり、不誠実な態度をするような場合には、毅然とした態度で対応することが求められます。

ステップ2:内容証明郵便による契約解除通知(滞納2~3ヶ月)

家賃の滞納が3ヶ月に及ぶと、「内容証明郵便」で賃貸借契約の解除通知を送付することを検討します。内容証明郵便とは、いつ、誰が、どのような内容の文書を相手に送ったかを郵便局が公的に証明する制度です。そのため、法的な証拠として扱われる、非常に重要な通知と位置づけられます。

この通知書には、滞納している家賃の最終的な支払いを求める催告と、指定された期日までに支払いがない場合は賃貸借契約を解除するという明確な意思表示を記載します。例えば、「家賃が3ヶ月滞納している」「令和7年8月31日までに支払うよう求める」といった具体的な内容が示されます。

内容証明郵便による解除通知が放置されると、次のステップである明け渡し請求訴訟といった法的措置に移行させることになります。

ステップ3:連帯保証人への連絡

借主本人が滞納家賃の支払いに応じない場合には、連帯保証人に対して滞納家賃の支払いを求めます。

連帯保証人は、借主本人と同等の支払い義務を負う存在です。一般的な保証人と異なり、「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」がないため、借主本人の支払能力や支払いの拒否に関わらず、連帯保証人は家賃を代わりに支払う義務を負います。

連帯保証人に対する通知は、内容証明郵便で行うことが望ましいでしょう。通知書内には、滞納の事実、具体的な滞納額、支払期限を明記します。

ステップ4:裁判と強制執行による立ち退き(滞納3ヶ月以降)

内容証明郵便を送付しても状況が改善しない場合や連絡が取れない場合、貸主は最終的な手段として「建物明渡請求訴訟」を提起することになります。これは、賃貸借契約の解除と物件の明け渡しを法的に求める手続きです。

訴訟が提起されると、借主には裁判所から訴状が送達されます。借主が3か月以上の家賃を滞納している場合には、借主側に汲むべき特段の事情がない限り、多くのケースで貸主の請求が認められ、明け渡しを命じる判決が下されるでしょう。

明渡請求を認める判決の確定後も借主が自主的に退去しない場合、「強制執行」による強制的な明け渡しが行われます。これは、部屋から家財道具を運び出し、鍵を交換するなど、強制的に立ち退きをさせる法的な措置です。

強制執行にかかる費用には、以下のようなものが含まれ、これらはすべて借主が負担することになりますが、一旦貸主側で支払う必要があります。

  • 荷物の搬出・保管費用
  • 執行官費用
  • 解錠業者費用

【注意】オーナーがやってはいけない自力救済行為

家賃滞納という問題に直面した際、オーナーが「自分の権利だから」と、法的な手続きを経ずに実力で解決しようとすることは、「自力救済」と呼ばれ禁止されています。たとえ正当な権利があったとしても、法的なプロセスを経ない自力救済は違法行為と見なされます。

具体的には、以下のような行為が自力救済に該当するため、決して行ってはなりません。

  • 入居者に無断で合鍵を使って室内に立ち入る
  • 入居者の許可なく鍵を交換して締め出す
  • 室内の家財道具を勝手に処分したり、外に運び出したりする

これらの行為は、住居侵入罪や器物損壊罪などの刑事罰に問われる可能性があります。

また、入居者から不法行為として、精神的苦痛に対する慰謝料を含む損害賠償を請求されるリスクも生じます。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

家賃滞納は賃貸経営の重大リスク!放置が招く深刻な事態とは

家賃滞納は、単なる入金遅れにとどまらず、賃貸経営に重大な影響を及ぼす深刻な問題です。

滞納を放置すると、それが長期化・常習化し、家賃の回収がさらに困難になるリスクが高まります。最終的に、滞納された家賃の回収や賃貸借契約の解除を進めるには、弁護士への依頼や訴訟といった法的措置が必要となる場合があります。

このような法的手段には、時間や費用、そして、精神的な負担が大きくかかることを理解しておく必要があるでしょう。

収益の悪化と空室期間の長期化

家賃滞納は、オーナーの収益に直接的な悪影響を及ぼします。本来得られるはずの家賃収入が途絶えることで、アパートローンやマンションの管理費、固定資産税といった毎月発生する固定費の支払いに支障をきたし、キャッシュフローが悪化するリスクがあります。資金繰りに余裕がない場合は、経営そのものが圧迫される可能性も否めません。

さらに、滞納者が退去に応じず物件に居座り続けた場合、オーナーは新たな入居者を募集できません。これは、本来得られるはずだった家賃収入を失う「機会損失」に直結します。

問題が解決し、滞納者がようやく退去した後も、物件の原状回復やクリーニング、そして新たな入居者の募集活動が必要になりますが、この募集期間も家賃収入は発生しません。結果として収益のない空室期間が長期化し、さらなる経済的負担となるでしょう。

他の入居者への悪影響

家賃滞納は経済的な問題に留まらず、以下のような迷惑行為に繋がるケースも散見されます。

  • ゴミ出しルールの違反
  • 騒音トラブル

このような状況は、物件全体の住環境や治安を悪化させ、快適な居住空間が損なわれる原因となり、他の入居者の不信感や不満を招きます。

こうした住環境の悪化や管理会社・オーナーへの不信感は、真面目に家賃を支払う他の入居者の退去を招く可能性があります。誠実な入居者が流出すると、新たな空室リスクが発生し、収益悪化という悪循環を引き起こす危険性が高まります。家賃滞納問題は、個別のトラブルに留まらず、物件全体の価値を低下させる深刻なリスクであることを認識しておくべきでしょう。

法的措置にかかる時間と費用

家賃滞納が長期化し、法的な手段に訴える場合、解決までには相当な時間と費用がかかることを理解しておく必要があります。

まず、明け渡し訴訟を提起するまでに、家賃滞納を確認してから約4ヶ月から6ヶ月の期間を要することが一般的です。さらに、訴訟提起後に初回期日に借主が欠席するような場合には3か月前後で判決が出されますが、借主が出席して反論をしてくる場合には、6ヶ月から1年ほどの期間を要します。場合によっては、それ以上の期間を要することもあります。判決確定後、借主が任意に退去しない場合には、強制執行を行う必要があり、2か月前後の期間を必要とします。これら期間を合計すると、訴訟から強制退去が完了するまでには1年以上の期間を要するケースも少なくありません。

次に、費用の面でも大きな負担が発生します。弁護士に依頼する場合、着手金として22万円から33万円程度、さらに弁護士報酬が必要となります。また、訴訟に必要な印紙代や予納郵券代なども別途発生します。さらに、明け渡しを実現するための強制執行には、執行官への手数料や、滞納者の私物の搬出・保管費用などが別途必要となり、オーナーの金銭的負担は、一層増大します。これらの執行費用は最終的に借主へ請求できるものの、支払い能力のない相手からの回収は困難なケースも多いため、オーナーが負担せざるを得ないリスクがあることを認識しておくべきです。

滞納された家賃を回収するための具体的な選択肢

対策

家賃滞納への対応は、入居者との契約解除や物件からの退去交渉のみならず、滞納家賃そのものを確実に回収することも重要な課題です。

主な回収方法としては、以下の3つが挙げられます。

  • 家賃保証会社に代位弁済を請求する
  • 連帯保証人に支払いを請求する
  • 法的手段によって回収する

以下では、それぞれの回収方法について、具体的な手順や注意点を詳しく解説していきます。状況に応じた最適な方法を選択し、早期の家賃回収を目指しましょう。

家賃保証会社に代位弁済を請求する

家賃保証会社と契約している場合、入居者が家賃を滞納した際には、借主に代わって滞納家賃を支払う「代位弁済」を請求できます。これはオーナーにとって、未回収リスクを大幅に軽減し、安定した家賃収入を確保できる、最も確実で手間のかからない回収方法です。

連帯保証人に支払いを請求する

家賃滞納が解決しない場合や、入居者本人と連絡が取れない場合には、連帯保証人への請求が選択肢となります。貸主は、連帯保証人に対して主債務者である借主本人の支払能力に関わらず、直ちに滞納家賃の支払いを求めることができます。

連帯保証人への請求は、電話で現状を説明し、支払いを促すことから始めます。電話で連絡が取れない場合や、より強い意志を伝える必要がある場合は、内容証明郵便の送付を検討しましょう。

法的手段による回収

保証会社が付いていない場合や連帯保証人からの家賃回収が難しい場合、裁判所を介した法的手続きがあります。代表的な裁判手続として、「通常訴訟」のほか、「支払督促」と「少額訴訟」の二つが挙げられます。

支払督促は、裁判所への出廷が不要で、書記官の書面審査のみで進められる迅速かつ費用を抑えた手続きです。ただし、相手方から異議申し立てがあると、手続きは自動的に通常訴訟へと移行する点がデメリットとして挙げられます。

一方、少額訴訟は、60万円以下の金銭請求を対象とし、原則として一度の期日で判決が下されるため、スピーディーな解決が期待できます。

滞納額や入居者の反応によって、どちらの手続きが適しているかは異なります。これらの手続きには専門的な知識が必要となるため、ご自身での対応が難しい場合は、弁護士などの専門家へ相談することも有効な選択肢です。

家賃滞納トラブルを未然に防ぐための予防策

家賃滞納問題への対応は、問題が発生してからの迅速な対処も重要ですが、最も効果的なのはトラブルそのものを未然に防ぐことです。

以下では、家賃滞納トラブルを未然に防ぐための具体的な予防策を詳しく解説します。

入居審査の段階で支払い能力を慎重に見極める

家賃滞納を未然に防ぐ上で、入居前の審査の段階で申込者の支払い能力や属性等を正確に見極めることは極めて重要です。安易な審査は将来的な滞納リスクに直結するため、慎重な確認が求められます。

家賃保証会社の利用を入居条件にする

家賃滞納リスクを効果的に軽減するには、家賃保証会社の利用を必須とすることが非常に有効な予防策です。家賃保証会社の利用により、オーナーは安定した家賃収入を確保しやすくなり、滞納による経済的損失のリスクを大幅に低減できます。

契約書に滞納時の取り決めを明記しておく

家賃滞納トラブルを未然に防ぎ、万が一の事態に迅速かつ円滑に対応するためには、賃貸借契約書に滞納時の具体的な取り決めを明確に記載しておくことが極めて重要です。これにより、トラブル発生時の明確な根拠となり、入居者への心理的な抑止力としても機能します。

賃貸借契約書に明記すべき主な項目は以下の通りです。

  • 遅延損害金に関する条項
  • 契約解除に関する条項
  • 連帯保証人や緊急連絡先への連絡に関する条項

家賃滞納の問題は難波みなみ法律事務所へ

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 不動産問題ならお任せください。

本記事では、家賃滞納が発生した際の具体的な対応手順から、契約解除の法的な基準、家賃を回収するための選択肢、さらにはトラブルを未然に防ぐための予防策まで、オーナーが知っておくべき重要な情報を詳しく解説しました。

感情的な対応や、法的な手続きを無視した「自力救済」は、かえってオーナー自身が法的なリスクを負う原因となりかねません。 

連帯保証人への連絡や内容証明郵便の送付、訴訟手続といった法的に有効な手段を講じることが、問題の早期解決と家賃回収の鍵となります。

しかし、オーナー自身でこれらの対応を全て行うには、専門知識と多大な時間、そして精神的な負担が伴うのも事実です。ご自身での督促や交渉に限界を感じた場合や、賃貸借契約の解除、強制退去といった法的手続きに不安がある場合は、決して一人で抱え込まずに弁護士へ相談することを強く推奨します。弁護士は法律の専門家として、滞納家賃の回収や建物明け渡し請求訴訟の代理を担い、オーナーの負担を大幅に軽減できます。

当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。お気軽にご相談ください。

対応地域は、大阪難波(なんば)、大阪市、大阪府全域、奈良県、和歌山県、その他関西エリアとなっています。

よく読まれている記事

PAGE TOP