コラム
公開日: 2025.11.17

民事裁判の流れを完全解説!費用や期間、準備まで初心者向けにやさしく紹介

民事裁判と聞くと、難しくて時間がかかるイメージがあるかもしれません。しかし、裁判は、当事者間の紛争を解決するための大切な手段です。この記事では、民事裁判の流れを分かりやすい図解で解説します。

裁判を起こすための準備や、費用、期間など、初めての方でも安心して理解できるよう、丁寧に解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください。

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目次
  1. そもそも民事裁判ってどんなもの?刑事裁判との違い
    • 民事裁判は私人間のトラブルを解決するための手続き
    • 警察が介入する「刑事裁判」との根本的な違い
    • 話し合いでの解決を目指す「民事調停」という選択肢も
    • 民事裁判の種類
  2. 【7ステップで解説】訴えから解決までの民事裁判の全貌
    • ステップ1:訴えの提起|裁判所に「訴状」を提出する
    • ステップ2:訴状の送達と答弁書の提出|相手方の反論
    • ステップ3:第1回口頭弁論|裁判官の前で互いの主張を確認
    • ステップ4:続行期日|主張と証拠を出し合い争点を整理
    • ステップ5:証拠調べ|証人や当事者への質問が行われる
    • ステップ6:結審と判決|裁判所が最終的な判断を下す
    • ステップ7:控訴・上告|判決に不服がある場合の手続き
  3. 民事裁判にかかる費用はどれくらい?
  4. 民事裁判を起こす前にやっておくべき準備
  5. 民事裁判で有利に進めるために重要な3つのこと
    • 主張したいことを裏付ける「証拠」を準備する
    • 事実を時系列で分かりやすく整理しておく
    • 判の途中での「和解」も視野に入れる
  6. 民事裁判は自分でできる?弁護士に依頼するべき?
    • 本人だけで裁判を進めることのメリット・デメリット
    • 弁護士に依頼する利点とサポート内容
    • まずは無料相談で弁護士に話を聞いてもらうのがおすすめ
  7. 民事裁判に関するよくある質問
    • 裁判所からの通知を無視するとどうなりますか?
    • 判決が出ても相手がお金を払わない場合はどうすればいいですか?
    • 少額のトラブル(60万円以下)に適した「少額訴訟」とは?
  8. まとめ|民事裁判の流れを理解し、冷静な対応を心掛けましょう

そもそも民事裁判ってどんなもの?刑事裁判との違い

民事裁判とは、私人間で発生したトラブルを、法律に基づいて解決する手続きです。私人とは、国や地方交渉団体などの公的な存在ではなく、一般の個人や民間の企業など私的な団体のことをいいます。

例えば、友人との金銭の貸し借りや、隣人との間で土地の境界線、近隣の騒音問題などで意見が食い違う場合には民事訴訟の対象となります。これらの身近な争いを、裁判官が法に照らして判断し、解決を目指します。

一方、刑事裁判は、国が、犯罪を犯したとされる人に対して罰則を科すために行われるものです。民事裁判のように私人間の権利義務を定めることを目的とはせず、拘禁刑や罰金といった刑罰が適用されるかを検討します。このように、当事者、目的、そして結果において大きく異なります。

民事裁判と刑事裁判の主な違いは以下の通りです。

項目民事裁判刑事裁判
当事者個人、法人(訴える側と訴えられる側)国(検察官)と犯罪を犯したとされる人
目的私人間のトラブル解決、権利義務の確定犯罪に対する罰則の適用を検討する
結果損害賠償、契約履行、土地の境界確定など有罪・無罪の確定、有罪の場合は拘禁刑、罰金などの刑罰

この章では、民事裁判の基本的な概念を分かりやすく解説します。また、「裁判」と聞くと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、話し合いで解決を目指す「民事調停」という選択肢もあり、簡易裁判所でも多くの身近なトラブルが扱われています。

民事裁判は私人間のトラブルを解決するための手続き

民事裁判は、個人間、または個人と企業などの法人との間で生じた法的な争いを解決するための手続きです。

例えば、以下のような身近な問題が民事裁判の対象となります。

  • 友人や知人に貸したお金の返還を求めたい場合
  • 隣人との間で土地の境界線に争いがある場合
  • 家賃滞納による建物の明け渡しを請求したい場合
  • 交通事故で受けた損害の賠償を請求したい場合

このように多岐にわたるケースにおいて、国の司法機関である裁判所が、当事者双方の主張や提出された証拠を法律に照らして判断します。そして、最終的に「判決」という形でどちらの権利が認められるかを確定させます。この判決には強制力があるため、当事者間の紛争を最終的かつ根本的に解決することが民事裁判の目的です。

警察が介入する「刑事裁判」との根本的な違い

刑事裁判は、国が犯罪を犯した疑いのある人(被告人)に対し、刑罰を科すかどうかを決めるための手続きです。当事者の構図も大きく異なり、民事裁判が「原告対被告」であるのに対し、刑事裁判は「検察官(国)対被告人」となります。その目的は、有罪か無罪かを判断し、有罪であれば懲役や罰金といった刑罰を科すことです。これは、損害賠償など当事者間の権利義務の確定を目的とする民事裁判とは根本的に異なります。

また、刑事裁判では「無罪推定の原則」適用されるため、検察官(国)は犯罪事実のすべてを立証しなければなりません。これに対し、民事裁判では原告と被告が対等の立場となり、それぞれが主張する事実を立証することになります。ただし、相手方が認めた事実は立証しなくてもよいこととされています。

ここでは、刑事裁判と民事裁判の主な違いをまとめます。

項目刑事裁判民事裁判
当事者検察官(国)対被告人原告対被告
目的有罪・無罪の判断、刑罰の適用当事者間の権利義務の確定(損害賠償など)
立証責任検察官(国)各当事者
立証すべき事実犯罪事実のすべて事故が主張する事実のうち、相手方が認めないもの

見出しにある警察の介入についても、刑事事件では警察が捜査を行い、犯罪の証拠を集めますが、個人間の金銭トラブルや物の返還請求といった民事の紛争には原則として介入しません。これを「民事不介入の原則」といいます。例えば、貸したお金の取り立てや物の返還請求といった純粋な私人間の争いは、この原則の対象となるでしょう。そのため、民事的な問題は、当事者自身が裁判などの法的手続きを通じて解決を図る必要があります。

話し合いでの解決を目指す「民事調停」という選択肢も

「民事調停」は、裁判官と調停委員が間に入って、当事者間の話し合いにより円満な解決を目指す手続きです。裁判のように判決で勝ち負けを決めるのではなく、双方の合意形成を目的とします。また、原則として非公開で進められるため、プライバシーが保護されることも特徴です。

この手続きの大きなメリットは、裁判に比べて費用が安く、手続きが比較的簡単なことです。ご自身で申し立てを行う場合の費用目安は以下のとおりです。

民事調停にかかる費用の目安

項目費用目安
全体費用数千円〜1万2千円程度
収入印紙代1,200円
郵便切手代1,000円程度
戸籍謄本取得費用450円

さらに、解決までの期間も民事裁判より短い傾向があるため、迅速な解決が期待できるでしょう。

もし話し合いで合意に至らなかった場合は「調停不成立」となりますが、その場合でも民事裁判へ移行して解決を目指すことが可能です。

民事裁判の種類

ひと口に「裁判」といっても、多種多様な手続きがあります。

ここでは、主な民事裁判の種類をまとめてご紹介します。

民事裁判の種類内容
通常訴訟  最も一般的な民事裁判の形態。金銭請求、不動産の明渡し、交通事故の損害賠償請求など、私人間の多様な法的トラブル対象となる。
少額訴訟  60万円以下の金銭支払いを求める場合に利用できる、簡易的な民事裁判。手続きは迅速に進められ、原則1回の期日で審理が完了する。
手形小切手訴訟    手形や小切手による金銭の支払いを求める場合に利用できる特別な手続き。証拠が書証と当事者尋問に限定されるなど、早期解決のための特則がある。
人事訴訟離婚や親子関係、養子縁組など家庭内のトラブルを扱う裁判。
行政訴訟    国や地方公共団体など行政機関の行為に対して、市民がその違法性を争うための裁判。当事者は「公的機関対私人」となるが、民事訴訟の例に従って手続きが進められる。
民事調停裁判官と調停委員を介して、話し合いによる解決を図る手続き。
労働審判  労働者と使用者との間のトラブルを迅速かつ適正に解決するための手続き。
支払督促  金銭の支払いを簡易・迅速に求める手続き。書類のみの審理で簡易災異板書の書記官が支払を命じる。

以下、この記事では、特に断らない限り「通常訴訟」のことを「民事裁判」と称して解説していきます。

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【7ステップで解説】訴えから解決までの民事裁判の全貌

民事裁判は、金銭トラブルや近隣問題といった身近な争いを解決するための重要な手段です。予期せぬトラブルに直面した際、誰もが当事者となる可能性があります。万一の事態に冷静に対応するためにも、基本的な流れを理解しておくことが重要です。

本章では、民事裁判で「訴えの提起」から「判決」に至るまでの全容を、大きく7つのステップに分けて解説します。各ステップにおいて「誰が」「何をするのか」を具体的に示すことで、初めての方でも裁判の全体像をスムーズに把握できるよう配慮しました。

以下に示すフローチャートで、全体の流れと各ステップの関係性を視覚的に捉えながら、ぜひ読み進めてみてください。

ステップ1:訴えの提起|裁判所に「訴状」を提出する

民事裁判は、トラブルの解決を求める側である「原告」が、裁判所に「訴状」という書類を提出することから始まります。この訴状は、ご自身の主張を裁判官に伝えるための、極めて重要な最初の書面となります。

訴状には、主に以下の3点を明確に記載する必要があります。

訴状の主な記載事項

項目内容
誰に(被告)訴える相手方(被告)の氏名や住所を記載します。法人の場合は、本店所在地、法人名、代表者名を正確に記載することが求められます。
何を(請求の趣旨)相手方に対して具体的に何を求めるのかを簡潔に示します。例えば、金銭の支払いを求める場合は「被告は原告に対し、金○○万円を支払え」といった表現になります。
なぜ(請求の原因)その請求に至った経緯や理由を、事実に基づいて具体的に説明します。請求を正当化するために必要な事実をきちんと記載することが重要です。

訴状の提出先は、原則として訴えられる側である被告の住所地を管轄する裁判所です。提出時には、以下の書類などを併せて提出する必要があります。

  • 作成した訴状(副本を含む)
  • 主張を裏付けるための証拠書類の写し
  • 裁判所に納める手数料としての収入印紙
  • 裁判所から相手方へ書類を送付するための郵便切手(予納郵券)

ステップ2:訴状の送達と答弁書の提出|相手方の反論

訴状が受理されると、裁判所から被告に対し、「特別送達」という特殊な郵便で送付されます。特別送達は、郵便局員が直接手渡しで送達を証明する郵便物であり、受け取り時には印鑑またはサインが求められます。これは、相手方が「受け取っていない」と主張するのを防ぐための重要な手続きです。仮に受け取りを拒否した場合でも、法律上は送達されたものとみなされることがあります。

訴状を受け取った被告は、その内容を詳しく確認し、自身の反論や事実の認否を記載した「答弁書」を作成し、指定された期限までに裁判所へ提出しなければなりません。この答弁書は、被告が裁判において自身の立場を表明する最初の機会であり、今後の裁判の行方を大きく左右する重要な書類となります。

もし被告が答弁書を提出せず、さらに第1回口頭弁論期日を欠席した場合、以下の事態が生じる可能性があります。

  • 原告の主張をすべて認めたとみなされる(民事訴訟法159条3項による「擬制自白」の成立)。
  • 「欠席判決」として原告勝訴の判決が下される。
  • 確定判決が出た場合、強制執行される。

このため、もし被告の立場で裁判所からの書類を受け取った場合には決して無視せず、適切に対応することが極めて重要です。

ステップ3:第1回口頭弁論|裁判官の前で互いの主張を確認

第1回口頭弁論期日の日時は、訴状が受理された段階で裁判所と原告との協議を踏まえて指定されます。訴状の提出からおおよそ1ヶ月~1か月半程度先の日時に指定されることが多いです。日時が指定されると、被告にも通知されます。

、この期日には、原告と被告の双方が裁判官の前に出廷します。原告が事前に提出した訴状と、被告が提出した答弁書の内容を、それぞれ口頭で「陳述します」と述べることで、正式に法廷における主張として扱われます。

それから、裁判官を交えた三者でそれぞれの主張内容を確認し合い、今後の裁判の進め方などについての協議も行われます。

実際の法廷での所要時間は、5分から10分程度と短いことがほとんどです。これは、すでに書面で主張が提出されているため、その内容を簡潔に確認することが主な目的となるためです。最後に裁判官から今後の裁判の進行に関して具体的な指示が出されます。指示の内容は、例えば以下の通りです。

  • 次回の期日設定
  • 準備すべき主張書面
  • 提出が求められる証拠

ステップ4:続行期日|主張と証拠を出し合い争点を整理

第1回口頭弁論期日で審理が終了することはまれで、多くの場合、審理を続けるために「続行期日」が設定されます。民事裁判では、この続行期日が複数回にわたって開かれるのが一般的です。

続行期日では、主に以下のことが行われます。

  • 原告と被告が準備書面を提出し、互いの主張や反論を詳しく展開します。裁判では口頭でのやり取りは少なく、書面による主張が中心となるため、準備書面は裁判の結果を左右する重要な書類となります。
  • 自身の主張を裏付ける証拠(契約書、領収書、メールのやり取りなど)も提出されます。
  • 裁判官が提出された書面や証拠をもとに、当事者間の主張の食い違い、すなわち「争点」を整理します。

この争点整理は、今後の証拠調べや判決の基礎となる極めて重要な段階です。

続行期日はおよそ1か月に1回のペースで開かれ、事件の複雑さによっては複数回にわたって実施されます。この準備書面のやり取りは、裁判の中で最も時間を要する段階となることがよくあります。

ステップ5:証拠調べ|証人や当事者への質問が行われる

これまでは書面による主張と証拠提出が行われてきましたが、裁判官が判決を下すためには、書面だけでは把握しきれない事実や当事者の真意などを、直接確認する必要が生じます。そこで行われるのが「証拠調べ」です。この手続きにおいて、裁判官が当事者や証人の話を直接聞き、事件の真相を明らかにするための重要な審理が進められます。

証拠調べの中心となるのは、「証人尋問」です。証人尋問とは、自身の主張を裏付けるために、関係者や専門家などを証人として法廷に招き、証言を求める手続きです。

証人尋問の手続きは、一般的に以下の流れで行われます。

  • 主尋問:自身の主張をサポートする弁護士(味方弁護士)からの質問
  • 反対尋問:相手方の弁護士からの質問
  • 再主尋問:必要に応じて味方弁護士が行う再質問
  • 補充尋問:必要に応じて裁判官が行う質問

また、裁判の当事者である原告や被告本人に直接質問を行う「当事者尋問」も実施されます。これは、証人尋問と同様に、当事者本人の話の信憑性や主張の根拠を明確にするための、非常に重要な機会です。裁判官は、証人の証言内容や当事者の供述内容、受け答えの様子などを総合的に見て、どちらの主張に信頼性があるかを判断します。そのため、証拠調べは判決に直結する、極めて重要な局面といえるでしょう。

ステップ6:結審と判決|裁判所が最終的な判断を下す

これまでの主張や証拠調べが全て終了し、裁判官が審理完了と判断した時点で、「結審」(弁論終結)となります。一度結審すると、原則として新たな主張や証拠を提出することはできません。仮に提出されたとしても、裁判所が弁論の再開を認めず、受け付けないことが多いため、当事者はそれまでに、自身の主張を裏付ける全ての書面や証拠を出し尽くし、事実関係を明確にしておく必要があります。

結審から約1ヶ月~2ヶ月後を目安に、「判決言い渡し期日」が指定されます。この期日には、裁判官が法廷で最終的な判断である「判決」を言い渡します。判決には、当事者の請求を認めるかどうかの結論(主文)と、その結論に至った理由が詳細に示されます。この判決は法的な拘束力を持ち、当事者間の紛争に最終的な解決をもたらす、極めて重要な判断です。

ステップ7:控訴・上告|判決に不服がある場合の手続き

第一審(地方裁判所または簡易裁判所)の判決に納得がいかない場合、上級の裁判所に対して不服を申し立てることができます。第一審の判決に対する不服申し立ては、高等裁判所へ「控訴」という形で行われます。この控訴は、判決書が当事者に送達された日の翌日から2週間以内という厳格な期間制限が設けられています。したがって、判決に不服がある場合は速やかに対応する必要があります。

控訴審の判決にも不服がある場合、さらに最高裁判所へ「上告」することができます。上告が認められる条件は控訴よりも限定されており、主に以下の理由が挙げられます。

上告が認められる主な理由

理由の種類具体的な内容
憲法違反判決に憲法の解釈の誤りなどの憲法違反がある場合
重大な法令違反判決に影響を及ぼす、法律の解釈・適用に明らかな誤りがある場合

これは、最高裁判所が法律解釈の統一を図る役割を担っているためです。

控訴や上告の期間内に不服申し立てを行わず、その期間が経過すると、判決は「確定」し、法的な強制力を持つことになります。確定した判決は、原則として覆すことはできません。そのため、判決に不服がある場合は、指定された期間内に適切な手続きを行うことが極めて重要です。

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民事裁判にかかる費用はどれくらい?

民事裁判を検討される際、多くの方が費用について不安を感じるのではないでしょうか。ここでは、実際に必要となる費用を「裁判所に納める実費」と「弁護士に依頼する場合の弁護士費用」の2つに分けて解説します。

裁判所に納める実費の目安

裁判所に納める実費としては、主に以下のものが挙げられます。

  • 手数料(訴状に貼付する収入印紙代)
  • 予納郵券(書類送達などに使う郵便切手代)
  • 証人の旅費・日当

これらの費用のうち、手数料と予納郵券は民事裁判を起こすための実費として必ず発生する費用であり、訴状を提出する際に納めなければなりません。

手数料は収入印紙を訴状に貼って提出する形で納めますが、相手方に請求する金額、すなわち「訴額」によってその額が変わります。訴額が大きくなるほど、手数料も高くなります。

以下に、主な訴額に応じた手数料の目安を示します。

訴額手数料の目安
50万円5,000円
100万円1万円
300万円2万円
500万円  3万円
1,000万円5万円

予納郵券は、裁判所から被告への訴状送達や、その後の各種書類のやり取りにかかる費用です。この費用は、被告の人数や裁判の進行状況によって異なりますが、おおよそ数千円程度が目安となります。あらかじめ裁判所に金額を確認し、郵便切手を購入した上で、訴状と一緒に裁判所の窓口へ提出する形で納めます。

証人の旅費については原則として実際に要した交通費の実額が支給され、日当は8,200円を上限として裁判所が決定した金額が支給されます。どちらも、民事裁判を起こす際に原告が予納する必要はなく、判決や和解で裁判が終了する際に、裁判所が個別の事案に応じて判断し、具体的な金額を決定します。

以上の費用は、まとめて「訴訟費用」と呼ばれます。その総額は一般的に数万円から十数万円程度が目安です。

訴訟費用を最終的に誰が負担するかは、裁判所が決定します。原則として裁判に負けた側が負担することとされてはいますが、具体的な負担割合は事案の内容に応じて裁判所が決めるため、「原告3割、被告7割」のように、それぞれが何割かずつ負担するように命じられることも多いです。和解が成立した場合には、それぞれが要した訴訟費用を各自で負担することとされるのが一般的です。

もっとも、訴訟費用を清算するためには、裁判所に対して「訴訟費用額確定処分の申し立て」をしなければなりません。そこまでして訴訟費用の清算をするケースは少数です。したがって、裁判の結果にかかわらず、原告が手数料と予納郵券を負担しているケースが多いのが実情です。

弁護士に依頼する場合の費用相場

弁護士に依頼するために必要な費用は、主に以下の4種類に分類されます。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 実費・日当

相談料は、30分あたり5,000円から1万円程度が相場ですが、初回無料としている事務所も多くあります。

着手金は、正式に依頼した時点で支払う費用であり、結果の如何にかかわらず返金されません。請求する経済的利益の額に応じて異なり、数十万円から設定されるのが一般的でしょう。報酬金は、裁判解決後に得られた経済的利益に応じて支払われる成功報酬で、得られた経済的利益の10%〜20%程度が目安です。

旧日本弁護士連合会報酬等基準を参考にした、経済的利益ごとの着手金と報酬金の目安を以下に示します。

経済的利益の額着手金の目安報酬金の目安
300万円以下経済的利益の8% ※着手金の最低額は 10 万円経済的利益の16%
300万円超3,000万円以下(経済的利益の5%)+9万円 ※着手金の最低額は 10 万円(経済的利益の10%)+18万円

この基準によれば、請求額100万円の民事裁判を弁護士に依頼した場合、着手金として10万円程度、最終的に100万円を回収できた場合は報酬金として16万円程度が目安となるでしょう。

その他、交通費や通信費などの実費や、弁護士が裁判所へ出向く際の日当(半日3万円〜5万円、1日5万円〜10万円)なども発生する場合があります。法律事務所によって料金体系は異なるため、依頼前には必ず複数の事務所から見積もりを取り、費用について明確な説明を受けることが非常に重要です。

民事裁判が始まってから終わるまでの期間

民事裁判が始まってから解決に至るまでの期間は、事件の性質や複雑さにより大きく異なります。簡単な事件であれば数か月で終わることもありますが、争点が多かったり、事実関係の確認に時間を要したりする複雑な事件では、数年以上かかるケースも少なくありません。

最高裁判所が公開した統計データによれば、2022年の地方裁判所における民事裁判第一審の平均審理期間は10.5か月でした。ただし、これはあくまで平均値であり、個々の事件によって大きく変動します。

裁判が長引く主な要因としては、以下の点が挙げられます。

  • 争点の多さ: 原告と被告の主張が多岐にわたり、整理に時間を要する場合です。
  • 証拠調べの長期化: 証人尋問や専門家による鑑定など、証拠の収集や確認に時間を要する場合です。特に、証人尋問が行われた事件では平均で19.2か月かかることもあります。
  • 当事者間の対立: 双方の主張が激しく対立し、和解交渉が難航する場合です。

もし第一審の判決に不服があり、控訴や上告へと手続きが進んだ場合は、さらに数か月から数年の期間が追加でかかることになります。そのため、これらの要因をあらかじめ理解しておくことが重要です。

もっとも、最高裁判所が公開する司法統計によると、2024年に地方裁判所で終結した民事裁判の審理期間を見ると、約58%の事件が6ヶ月以内に、約76%の事件が1年以内となっています。したがって、手続きが順調に進めば、1年程度のうちには民事裁判が終了すると考えてもよいでしょう。しかし、審理期間をむやみに長引かせないためには、次にご説明するように、民事裁判を起こす前の準備が重要となってきます。

民事裁判を起こす前にやっておくべき準備

民事裁判を起こして納得のいく結果を得るためには、事前の準備が重要となります。今すぐに相手を訴えたい気持ちになることもあるかもしれませんが、落ち着いて以下の準備を進めていきましょう。

勝訴の見込みがあるかを見極める

民事裁判で勝訴するためには、ご自身の主張が法的に筋の通ったものでなければなりません。感情的になって裁判を起こしても、法的に正当な根拠のある主張ができなければ、敗訴する可能性が高いことに注意が必要です。

ご自身の主張が法的に正当なものであったとしても、証拠による裏付けがなければ、やはり勝訴することは難しいです。そのため、主張を裏づけるためにどのような証拠が必要か、手元に証拠があるか、ない場合は新たに入手できそうか、などを検討する必要があります。

もし、勝訴の見込みが乏しいと考えられる場合には、民事調停で話し合って柔軟な解決を図るなど、他の解決方法を検討した方がよいかもしれません。

相手方に支払い能力があるかを確認する

金銭の支払いを求める民事裁判を起こす場合、勝訴の見込みがあるとしても、相手方に支払い能力がなければ、勝訴しても判決書が紙切れとなってしまうおそれがあります。

事前に相手方の支払い能力を見極めるのは難しい場合もありますが、話し合いなどを通じて、可能な限り探ってみた方がよいでしょう。

もし、民事裁判を起こした後に、相手方の支払い能力が厳しいと判明した場合には、和解協議において分割払いなどを提案し、少しでも回収を図った方がよいケースも多いです。

裁判費用を準備できるかを確認する

次に、裁判所に納める実費と、弁護士費用の金額を見積もってみましょう。それだけの金額を支払ってでも、民事裁判を起こすことによって利益が得られるのかを見極めることも重要です。

裁判所に納める実費が用意できない場合は、提訴と同時に「訴訟救助の申し立て」をすることで、支払いが猶予される可能性があります。ただし、最終的には支払いを命じられることも多いので、勝訴の見込みと、金銭回収の見込みを見極めておくことが重要となります。

弁護士費用が用意できない場合には、一定の条件の下に、法テラスの「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。この制度を利用できれば、法テラスが弁護士費用を立替払いしてくれます。立て替えてもらったお金は、法テラスに対して原則として毎月1万円ずつの分割で償還していくことになります。

なお、民事法律扶助制度を利用しなくても、状況に応じて着手金の分割払いに応じている法律事務所も多いです。まずは無料相談を利用して、その際に弁護士費用の支払い方法についても相談してみるとよいでしょう。

必要書類を作成・収集する

以上のステップを踏まえて民事裁判を起こすことに決めたら、訴状や証拠書類などの必要書類を作成・収集していきます。

もっとも、弁護士に依頼した場合、このステップは全面的にサポートしてもらえます。弁護士との打ち合わせにおいて、ご自身の主張や希望をしっかりと伝えた上で、弁護士の指示やアドバイスに従って、提訴の準備を進めていきましょう。

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民事裁判で有利に進めるために重要な3つのこと

民事裁判では、単に「正しい」ことを主張するだけでは、必ずしも望む結果が得られるとは限りません。法廷では、客観的な証拠に基づき事実を立証し、法律に則った形で論理的に訴える戦略的な準備が不可欠です。感情論ではなく、冷静かつ具体的なアプローチが求められるでしょう。実際、裁判所は提出された「書類」を非常に重視するため、たとえ口頭で強く訴えたとしても、裏付けとなる「証拠」がなければ主張は認められにくいのが現実です。

ここでは、民事裁判を有利に進めるために特に重要な3つのポイントを解説します。

民事裁判を有利に進めるための3つのポイントは以下の通りです。

重要事項内容
証拠の準備主張したいことを裏付ける客観的な証拠を集める。
事実の整理事実関係を時系列で分かりやすく整理する。
和解の検討裁判途中での和解による解決も視野に入れる。

これらの点を意識して民事裁判に臨むことで、ご自身の主張が裁判所に適切に伝わり、より良い解決に繋がる可能性が高まるでしょう。

主張したいことを裏付ける「証拠」を準備する

民事裁判では、裁判官は提出された客観的な証拠に基づいて事実を判断します。そのため、証拠の有無が判決内容を大きく左右する、最も重要な要素となります。個人の主張だけでは、その真実性を認めてもらうことは困難であることを理解しておく必要があります。

証拠の種類は多岐にわたります。具体的には、以下のものが挙げられます。

  • 契約書
  • 借用書
  • メールやLINEのやり取り
  • 写真
  • 録音データ
  • 医療機関の診断書

これらは「書証」や「準文書」として、裁判官が事実を認定する上で重要な判断材料となります。

ご自身の主張を裏付ける証拠を、事前にしっかりと洗い出し、手元にあるものを整理することが何よりも重要です。不足している証拠があれば、積極的に収集する準備を進める必要があります。

もし証拠が手元にない場合でも、あきらめる必要はありません。弁護士に依頼することで、「文書送付嘱託」(民事訴訟法第226条)といった法的な手続きを通じて、第三者が持つ文書などを裁判所に提出させ、証拠として収集できる可能性があります。

事実を時系列で分かりやすく整理しておく

民事裁判を有利に進めるためには、トラブルの発生から現在までの出来事を、事実に基づき日付順に整理することが極めて重要です。複雑な事実関係であっても、時系列で分かりやすく整理されていれば、裁判官は事件の全体像を正確かつ論理的に把握しやすくなります。これにより、主張に一貫性が生まれ、説得力が増すでしょう。

具体的な整理方法としては、表や年表形式でまとめることが有効です。例えば、以下の要素を意識して記載すると、客観的で理解しやすいものになります。

  • いつ
  • どこで
  • 誰が
  • 何をしたか

以下に、時系列表の記載例を示します。

日付出来事関連証拠
202X年1月1日〇〇社とA氏が契約を締結しました。契約書、メール
202X年2月10日A氏が〇〇社に電話で苦情を伝えました。録音データ、通話記録
202X年3月1日〇〇社がA氏に一方的に契約解除を通知しました。解除通知書

また、単に出来事を並べるだけでなく、それぞれの項目を裏付ける証拠(契約書、メール、写真、録音データなど)を紐づけておくことで、主張の信頼性はさらに高まります。このような準備は、裁判の進行をスムーズにするだけでなく、ご自身の主張を裁判所にきちんと伝えるためにも不可欠な作業です。

判の途中での「和解」も視野に入れる

民事裁判では、判決を待つことなく、当事者双方が話し合いを通じて紛争を解決する「和解」という選択肢があります。これは、当事者双方が互いに主張を譲り合い、合意に至ることで訴訟を終結させる手続きです。和解は裁判のどの段階でも可能であり、裁判官から和解を勧められることも珍しくありません。

和解の主なメリットは以下の通りです。

  • 裁判の長期化を防ぎ、当事者の時間的・精神的負担を軽減できること。
  • 判決を待つよりも早期に紛争が解決するため、上訴によるさらなる長期化も回避できること。
  • 判決では実現が難しい、より柔軟な内容での解決が期待できること(例:分割払いや謝罪など、訴訟の範囲を超えた具体的な条件を合意に含めることも可能)。

和解が成立すると、その内容は「和解調書」に記載されます。この和解調書は確定判決と同一の法的効力を持つため、相手方が合意内容を守らない場合には、法的な手続きに則り強制執行を行うことも可能です。和解は単なる話し合いに留まらず、このように法的な拘束力を持つ有効な解決策となります。

民事裁判は自分でできる?弁護士に依頼するべき?

民事裁判に直面したとき、「自分一人で裁判を進められるのか、それとも弁護士に依頼すべきか」という疑問は、多くの方が抱くことでしょう。裁判の手続きは専門性が高く、見慣れない法律用語や複雑な対応に不安を感じる方も少なくありません。

この章では、ご自身で裁判を進める「本人訴訟」と、弁護士に手続きを任せる場合の、それぞれのメリットとデメリットを具体的に比較します。双方の特徴を詳しく解説することで、ご自身の状況に合わせた最適な選択をするための判断材料を提供することを目指します。

本人だけで裁判を進めることのメリット・デメリット

民事裁判をご自身で進める「本人訴訟」には、いくつかのメリットとデメリットがあります。

まず最大のメリットは、弁護士に依頼する際に必要となる着手金や報酬金といった費用が発生しない点です。これにより、金銭的な負担を大幅に軽減できます。

一方で、デメリットも複数存在します。具体的には以下の点が挙げられます。

  • 民事訴訟法をはじめとする専門的な法律知識や複雑な手続きを、全てご自身で理解し、対応する必要があります。
  • 訴状や準備書面といった法的な書類の作成には、専門用語の理解と論理的な構成力が必要とされ、これには膨大な時間と労力がかかるでしょう。
  • ご自身の主張を裏付ける客観的な証拠集めも、かなりの労力を伴います。
  • 相手方と法廷で直接対峙することによる精神的な負担も避けられないでしょう。
  • 不慣れな手続きや感情的な主張を繰り返すことは、裁判を不利に進める原因となり、希望する結果が得られないリスクを高めることにもつながりますので、十分な注意が必要です。

弁護士に依頼する利点とサポート内容

民事裁判を弁護士に依頼する主な利点は、以下の点に集約されます。

  • 最適な訴訟戦略の立案:法律の専門家として、勝訴の可能性を高める最適な「訴訟戦略」を立ててくれる点です。例えば、裁判を有利に進めるための主張の組み立て方、有効な証拠の選定、相手方の主張に対する的確な反論など、個々の事案に応じた戦略的なアプローチが期待できます。弁護士は、単に法律を適用するだけでなく、事件の目的達成に向けて最適な戦略を策定し、依頼者の利益を最大化することを目指します。
  • 煩雑な手続きの代行:訴状や準備書面といった専門的な書類の作成から、裁判所への出廷まで、煩雑な手続きを全て代行してくれるため、依頼者の時間的・精神的な負担を大幅に軽減できます。裁判において書面の提出は特に重要ですが、弁護士が担当することで、法的な要件を満たした適切な書類が提出され、手続きが円滑に進みます。
  • トラブル相手との交渉窓口:弁護士がトラブルの相手方との交渉窓口となるため、依頼者が直接相手とやり取りするストレスから解放されます。特に、裁判の途中での和解交渉においても、法的な知識に基づき、依頼者にとって有利な条件で話し合いを進めやすくなります。

まずは無料相談で弁護士に話を聞いてもらうのがおすすめ

民事裁判に関するお悩みを抱えている方は、まず弁護士の「初回無料相談」を活用されることをおすすめします。多くの法律事務所が初回30分~60分程度の無料相談を実施しているほか、法テラスでも資力基準を満たせば3回まで利用可能です。

無料相談では、弁護士に依頼すべきかの判断材料、費用の目安、勝訴の見込みなど、正式なご依頼前に専門家の見解を伺うことができます。

相談時には、以下の関連資料を持参すると良いでしょう。これにより、弁護士は状況を正確に把握し、より具体的かつ的確なアドバイスを提供しやすくなります。

  • トラブルの経緯を時系列でまとめたメモ
  • 契約書
  • メールなどのやり取り
  • その他の関連資料

複数の弁護士に相談し、ご自身が信頼できると感じる弁護士を見つけることが、裁判を有利に進める上で重要な一歩となります。

民事裁判に関するよくある質問

民事裁判の基本的な流れや費用について理解が深まったところで、ここでは、これまで解説しきれなかった、多くの方が抱きがちな具体的な疑問点をQ&A形式で解説します。例えば、「裁判所からの通知が届いた場合、どう対応すればよいのか」、「特別送達を受け取ったら無視しても大丈夫なのか」といった初歩的な疑問から、「判決が出たにもかかわらず相手がお金を支払ってくれない場合はどうすればよいのか」といった実務的な問題まで、幅広く取り上げます。さらに、少額のトラブルに特化した「少額訴訟」のような特別な手続きについてもご紹介し、皆様が抱える不安を解消できるよう、分かりやすくお答えしていきます。これらの情報を通じて、裁判に関するより実践的な知識を深め、いざという時に冷静に対応できるようになることを目指しましょう。

裁判所からの通知を無視するとどうなりますか?

裁判所からの通知、特に訴状を無視する行為は、非常に危険です。結論として、相手方の主張が全面的に認められ、「欠席判決」が言い渡され、訴えられた側(被告)が敗訴する可能性が非常に高まります。

これは、被告が答弁書を提出せず、かつ第1回口頭弁論期日にも出廷しなかった場合、「擬制自白」が成立するためです。民事訴訟法では、被告が争う意思がないと判断されると、原告の主張する事実をすべて認めたものとみなすこととされています。この擬制自白が成立すると、裁判官は原告の主張に基づいて判決を下すことになります。

万が一、欠席判決が言い渡された後でも、判決書が送達された日の翌日から2週間以内であれば、上級の裁判所に「控訴」を提起し、不服を申し立てる手続きが可能です。しかし、一度下された判決を覆すには、控訴審で新たな主張や証拠を提示する必要があり、時間と労力がかかります。

このような事態を避けるためにも、裁判所からの通知、特に訴状を受け取った際は、以下の点を迅速に行うことが極めて重要です。適切な対応を怠ると、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

  • 通知の内容をすぐに確認する。
  • 決して無視しない。
  • 弁護士などの専門家に速やかに相談する。

判決が出ても相手がお金を払わない場合はどうすればいいですか?

民事裁判で勝訴判決が出ても、相手方(債務者)が自動的に支払いをするとは限りません。もし相手方が判決に従わず支払いに応じない場合、「強制執行」という法的な手続きをとることで、債権を強制的に回収できます。強制執行とは、裁判所が債務者の財産を差し押さえ、債権者の権利を法的に実現させる手続きをいいます。

対象となる財産は多岐にわたります。

  • 給与
  • 預貯金
  • 不動産
  • 自動車などの動産

などが含まれます。この手続きを行うためには、確定判決書、和解調書、公正証書といった「債務名義」と呼ばれる書類に基づき、別途裁判所へ強制執行の申し立てが必要です。

強制執行の申し立てにかかる主な費用は以下の通りです。

項目費用目安備考
収入印紙代4,000円債権差押命令申立書などの書類提出時に必要
郵便切手代3,000円程度 
予納金事案による動産執行などで別途必要になる場合があります
弁護士着手金1件あたり5万円程度弁護士に依頼する場合
弁護士報酬金回収金額に応じる弁護士に依頼し、実際に回収できた場合に発生する

少額のトラブル(60万円以下)に適した「少額訴訟」とは?

「少額訴訟」とは、60万円以下の金銭の支払いを求めるトラブルに限定された、特別な民事訴訟手続きです。この制度の最大の利点は、原則として1回の期日で審理が完結し、即日判決が言い渡されるため、迅速な解決が期待できる点です。通常の民事裁判と比較して手続きが簡略化されており、専門家である弁護士に依頼せずとも、ご本人でも進めやすいように工夫されています。また、裁判費用も手数料(収入印紙代)が最大でも6,000円と、通常の裁判に比べて費用を抑えられる傾向にあります。

ただし、いくつか注意すべき点もあります。例えば、相手方が通常訴訟での審理を希望した場合、手続きはそちらへ移行します。さらに、少額訴訟の判決に不服がある場合でも、控訴はできません。ただし、判決の告知を受けた日から2週間以内であれば、「異議申し立て」を行うことは可能です。異議申し立てが受理されると、通常の民事裁判の手続きに移行し、同一の裁判所で改めて審理が行われます。

この制度は、少額のトラブルを簡便かつ迅速に解決したい場合に有効な手段となるでしょう。

まとめ|民事裁判の流れを理解し、冷静な対応を心掛けましょう

本記事では、民事裁判の全体像を詳しく解説しました。訴えの提起から判決に至るまでの7つのステップ、裁判にかかる費用と期間、そして有利に進めるための準備など、民事裁判に関する多角的な情報をお伝えしました。金銭トラブルや近隣問題、不動産紛争など、私たちの身近で起こりうる法的トラブルを解決するための民事裁判は、複雑に感じられるかもしれませんが、各手続きの目的やポイントを理解することで、その全体像をより明確に捉えられたことと思います。

正しい知識を身につけることは、民事裁判に直面した際の漠然とした不安を和らげ、冷静に対応するために不可欠です。また、ご自身の主張を裏付ける客観的な証拠の準備、事実関係の時系列での整理、そして裁判の途中で和解という選択肢を視野に入れることなど、具体的な準備の重要性についても解説しました。これらの準備によって、裁判の進行がスムーズになり、より良い解決につながりやすくなります。

もし現在、法的トラブルを抱え、民事裁判を検討しているのであれば、一人で抱え込まず、弁護士への相談を強くお勧めします。弁護士は法律の専門家として、以下のような多岐にわたるサポートを提供します。

  • 複雑な手続きの代行
  • 最適な訴訟戦略の立案
  • トラブル相手との交渉

これにより、ご自身の時間的・精神的な負担を軽減し、問題解決への最も確実な道筋を示してくれるでしょう。初回無料相談を利用できる法律事務所も多いため、まずは専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。

本記事が、民事裁判に関する皆様の疑問や不安を解消し、適切な一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

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