コラム
公開日: 2025.02.23

相続放棄の5つの主な理由と申述書作成のポイント|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

相続は人生の大きな転機の一つですが、時として重荷になることもあります。

相続放棄を考えている方の中には、さまざまな事情や悩みを抱えている方も多いでしょう。

借金の問題や複雑な家族関係など、相続を受け入れることに躊躇する理由は人それぞれです。そこで、この記事では、相続放棄の主な理由と申述書作成のポイントについて詳しく解説します。この情報を参考にすることで、相続放棄を検討している方々は、相続放棄するべきか否かの判断をするための助けとなるでしょう。また、申述書の作成に不安を感じている方も、具体的なポイントを押さえることで、より確実に手続きを進められるようになります。

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相続放棄とは?基本的な概念を理解しよう

相続放棄を行うと、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされ、相続に関するすべての権利と義務から解放されます。その反面、一度相続放棄をすると撤回することができなくなります。また、相続放棄の影響は本人だけでなく、他の相続人にも及ぶ可能性があります。

以下では、相続放棄の基本的な事項について説明します。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を受け継ぐ権利を放棄する行為です。

相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して書類を提出することで行うことができます。

相続放棄を行うと、相続人は、はじめから相続人ではなかったことになるため、被相続人の財産に対する権利を完全に失います。これはプラスの財産の取得だけでなく、被相続人が負っている債務も引き継がないことを意味します。相続放棄は一度行うと撤回できないため、慎重に検討する必要があります。

相続放棄の手続きは、相続人が家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出することで行います。申述書には相続人と被相続人との情報、相続開始を知った日や放棄する理由などを記載します。

相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄には、メリットとデメリットが存在します。

最大のメリットは、被相続人の債務を引き継がなくて済むことです。相続財産に多額の借金などの負債が含まれている場合、相続放棄によってそれらの債務から解放されます。これにより、相続人自身の財産や生活を守ることができます。

一方で、相続放棄には重要なデメリットもあります。最も大きなデメリットは、遺産一切を取得できないことです。相続放棄をすると、たとえ後になって相続財産の中に価値のある資産が見つかったとしても、それを取得することはできません。また、相続放棄は撤回できないため、一度決断すると取り返しがつきません。

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相続放棄を選択する5つの代表的な理由

相続放棄を選択する理由は様々ですが、主に5つの代表的な理由があります。

まず、被相続人の債務超過が挙げられます。相続人は被相続人の債務も引き継ぐため、多額の借金がある場合は相続放棄を選択することがあります。

次に、相続財産が不透明な場合です。被相続人の財産状況が不明確で、予期せぬ債務が発覚する可能性がある場合、リスクを避けるために相続放棄を選択することがあります。

三つ目の理由は、被相続人と疎遠や不仲だった場合です。長年関係が途絶えていたり、生前のトラブルなどにより相続を望まない場合があります。

四つ目は、既に生前に財産を承継している場合です。被相続人から生前贈与を受けているなど、実質的に相続を済ませている場合は、相続放棄を選択することがあります。

最後に、他の相続人への配慮が挙げられます。兄弟姉妹間で経済状況に差がある場合や、被相続人の介護を担当した相続人がいる場合など、公平性を考慮して相続放棄を選択することがあります。

これらの理由は、個人の状況や家族関係によって異なりますが、相続放棄を検討する際の重要な判断材料となります。相続放棄は一度行うと撤回できないため、慎重に検討することが大切です。

債務超過している

相続放棄の理由として最も一般的なのが、被相続人の債務超過の状況です。被相続人が多額の借金や負債を抱えていた場合、相続人はその債務も引き継ぐことになります。これは相続人にとって大きな経済的負担となる可能性があります。

債務超過の状態とは、被相続人の負債が資産を上回っている状況を指します。例えば、住宅ローンの残債が不動産や預貯金の金額を超えている場合や、事業の失敗による多額の借入金が残っている場合などが該当します。このような状況下で相続を受け入れると、相続人は自身の財産を使って被相続人の債務を返済しなければならなくなる可能性があります。

相続放棄を選択することで、相続人は被相続人の債務から解放されます。これにより、自身の財産や生活を守ることができます。特に、被相続人の債務が莫大で、相続人の資産や収入では到底返済できないような場合、相続放棄は賢明な選択肢となります。

相続財産が不透明

相続財産の内容が不明確な場合、相続放棄を選択する理由の一つとなります。被相続人の生前の財産状況が把握できていない、あるいは債務の存在や規模が不透明な場合、相続人は大きなリスクを負う可能性があります。

例えば、被相続人が生前に多額の借金を抱えていたり、個人事業を行っていたりした場合、その全容を把握するのは困難です。相続人が知らないうちに多額の債務を引き継ぐ可能性があり、自身の財産までも失うリスクがあります。

このような不透明な状況下では、相続放棄を選択することで、予期せぬリスクや責任を回避することができます。相続放棄により、相続人は被相続人の債務や複雑な財産関係から切り離され、自身の財産や生活を守ることができます。

被相続人と疎遠・不仲

被相続人との関係が疎遠や不仲であることは、相続放棄を選択する重要な理由の一つです。

長年にわたり連絡を取っていない、あるいは生前から関係が悪化していた場合、相続人は被相続人の財産を受け取ることに抵抗を感じる可能性があります。例えば、幼い頃に両親が離婚してから何十年もの間、一度も会ったことのない父親が他界したような場合です。

このような状況では、相続人は被相続人との間に精神的な距離があり、被相続人やその親族と接点を持ちたくないと感じたり、財産を受け取ることで罪悪感や後ろめたさを感じることがあります。さらに、疎遠や不仲の関係にあった場合、被相続人の財産状況や債務の有無について十分な情報を持っていないことも多く、相続によって予期せぬ負担を背負うリスクを避けるために相続放棄を選択することがあります。

生前に財産を承継している

相続放棄の理由として、被相続人から生前に財産を承継している場合があります。

これは、被相続人が存命中に財産の一部または全部を相続人に贈与や譲渡していることを指します。

生前贈与を受けている場合、すでにプラスの財産を承継していることから、相続手続きにかかる労力や費用を考慮すると、相続放棄が合理的な選択となることがあります。特に、借金などの債務のみが残されている場合には、債務の承継を避けるために相続放棄を選択することもあります。

ただ、生前贈与により被相続人が無資力となることで、債権者の債権回収を困難にさせる場合には、詐害行為として生前贈与が取り消されるリスクがあります。

また、生前贈与によりプラスの財産が大幅に少なくなり、他の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求を受けるリスクもあります。

他の相続人への配慮

相続放棄の理由の一つとして、他の相続人への配慮が挙げられます。これは、家族間の関係性や経済状況を考慮した上での判断です。

被相続人の介護や看病を主に担当した相続人がいる場合、その労をねぎらう意味で相続放棄を選択することもあります。これにより、介護や看病に尽力した相続人に対して、より多くの相続財産が配分されることになります。

また、家族の和を保つために相続放棄を選択するケースもあります。相続を巡って争いが生じる可能性がある場合、あえて相続放棄することで紛争を回避し、家族関係の維持を優先することができます。逆に、他の相続人との関係が悪く、遺産分割協議などの話し合いをすることを避けるために相続放棄を選択するケースもあります。

相続放棄の手続き方法と注意点

相続放棄の手続きを進めるにあたっては、いくつかの注意点があります。

まず、法定期限内に家庭裁判所へ申述することが必要となりますが、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きを完了させなければならないため、迅速な対応が求められます。

手続きの流れとしては、まず必要書類を準備します。被相続人や相続人本人の戸籍謄本や申述書などの書類を揃えた上で、家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。

相続放棄の手続きは複雑で重要な法的手続きです。不明点がある場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の申述書の書き方のポイント

相続放棄の申述書を作成する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。

申述書は重要な書類であるため、慎重に作成し、必要に応じて弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

申述人と被相続人の情報を正確に記載する




 申        述       人	 本  籍
(国 籍)	       都 道
       府  県
	住  所	 〒     -                             電話    (      )    
                               (     方)
	  フリガナ
氏  名	   	昭和
平成   年    月   日生
令和    (    歳)
	
職業

	



	被相続人との関係	※       1 子   2 孫  3 配偶者  4 直系尊属(父母・祖父母)
被相続人の・・・
5 兄弟姉妹  6 おいめい  7 その他(         )
 法
 定
代
理
人
等	※
1 親権者
2 後見人
3
	

住 所	〒     -                    電話    (      )    
                           
 (     方)

		フリガナ
氏  名	

	フリガナ
氏  名	


被
 相
続
人
	本    籍
(国 籍)	             都 道
     府  県
	最後の
住 所		死亡当時
の 職 業	
	フリガナ 氏  名		平成・令和   年   月   日死亡

申述書の作成において、申述人である相続人と被相続人の情報を正確に記載することは非常に重要です。

申述人とは相続放棄を行う相続人本人のことを指し、被相続人は亡くなった方のことを指します。申述人の情報としては、氏名、本籍地、住所、生年月日、職業、被相続人との関係を漏れなく記入します。氏名は戸籍に記載されている通りに正確に書き、旧姓や通称は使用しないようにしましょう。

申述人が未成年である場合には、法定代理人として親権者の住所や氏名を記載します。

被相続人の情報も同様に、氏名、本籍地、最後の住所、最後の職業、生年月日、死亡日を記入します。被相続人の氏名も戸籍通りに記載し、死亡日は正確な日付を記入することが重要です。最後の住所は、手続きを行う家庭裁判所の管轄に影響するため、被相続人が亡くなる直前に住んでいた住所を、住民票や戸籍の附票等を参照して記載します。

相続開始を知った日は正確に記載する


申   述   の   理   由
※
相続の開始を知った日・・・・平成・令和   年   月   日

1 被相続人死亡の当日    3 先順位者の相続放棄を知った日
2 死亡の通知をうけた日   4 その他(          )

相続放棄の申述書を作成する際、相続開始を知った日を正確に記載することは非常に重要です。この日付は、相続放棄の期限を決定する基準となるため、慎重に扱う必要があります。

相続開始を知った日には、死亡の当日、死亡の通知を受けた日、先順位の相続放棄を知った日及びその他があります。

通常、相続開始を知った日とは被相続人の死亡日とされることが多いですが、海外にいた場合や連絡が遅れた場合など、実際に死亡を知った日が異なることもあります。

また、申述人が、先順位の相続人が相続放棄したことで相続人となった次順位の相続人である場合には、死亡を知った日ではなく、自分が被相続人の相続人になったことを知った日を記載します。

相続放棄の期限は、相続開始を知った日から3ヶ月以内と定められています。そのため、この日付が不正確だと、相続放棄の期限に誤りが生じる可能性があります。

相続放棄の理由を記載する 

放 棄 の 理 由
※
1 被相続人から生前に贈与
 を受けている。
2 生活が安定している。
3 遺産が少ない。
4 遺産を分散させたくない。
5 債務超過のため。
6 その他

申述書の『放棄の理由』欄にチェックを入れる必要があります。

『放棄の理由』欄には以下の項目が列記されているため、該当する理由に丸印を付けます。

被相続人と疎遠になっている場合や相続人と不仲である場合には、「その他」を選択して、括弧内に簡単に理由を記載します。

Information

1 被相続人から生前に贈与を受けている。
2 生活が安定している。
3 遺産が少ない。
4 遺産を分散させたくない。
5 債務超過のため。
6 その他(        )

相続財産の概略を記載する

相 続 財 産 の 概 略
農 地・・・・・ 約    平方メートル
山 林・・・・・ 約    平方メートル
宅 地・・・・・ 約    平方メートル
建 物・・・・・ 約    平方メートル
現金・預貯金・・ 約    万円
有価証券・・・・ 約    万円 

 負  債・・・・・・・ 約      万円

相続放棄の申述書には、相続財産の概略を記載する欄があります。

相続財産の概略欄には、不動産、預貯金、有価証券、負債などを記載する箇所があり、把握している相続財産があれば記載します。あくまでも概略ですので、厳密な内容でなくても構いません。

しかし、実は認識している相続財産があるにも関わらず、意図的に記載しなかったり虚偽の情報を記載をすると、相続放棄が認められなくなる可能性があるため、注意しましょう。

手書きだけでなくパソコン入力も可能

相続放棄の申述書は、手書きで記入するだけでく、パソコンを使用して入力することも認められています。

パソコン入力のメリットとしては、修正が容易であること、複数の相続人がいる場合に同じフォーマットを使用できること、文字の判読性が高いことなどが挙げられます。ただし、パソコン入力の場合でも、最終的には申述人の押印が必要です。

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相続放棄後に注意すべき点

相続放棄を行った後は、いくつかの重要な点に注意する必要があります。まず、相続放棄は一度行うと撤回することができません。次に、相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。これにより、親戚に予期せぬ負担がかかる可能性があります。 さらに、相続放棄をした人であっても、現に占有している相続財産がある場合は、その保存義務があります。

これらの注意点を十分に理解し、必要に応じて弁護士に相談しながら慎重に対応することが重要です。

相続放棄の撤回はできない

相続放棄は一度行うと撤回することができません。相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると、その効力は相続開始時に遡って発生し、相続人としての地位を失うことになります。

そのため、相続放棄後に、予想していない財産が見つかったとしても、相続放棄を撤回して財産を承継することはできません。

次順位の相続人に迷惑がかかる

同順位の相続人全員が相続放棄を行うと、相続権は次順位の相続人に移ります。親戚が突然相続人となることで、被相続人の債務を背負う可能性があり、先順位の相続人と同様に相続放棄をせざるを得ない状況になることも珍しくありません。このように、相続放棄をすることで、叔父や叔母などの親戚に一定の迷惑がかかってしまう可能性があります。

相続放棄を検討する際は、自身の状況だけでなく、次順位の相続人への影響も十分に考慮する必要があります。

相続財産の保存義務(ただし現に占有している場合に限る)

相続放棄を行った後でも、相続財産を現に占有している場合には、その財産に対して保存義務が生じます。

例えば、相続放棄をした人が被相続人の所有する家に住んでいる場合、この自宅を適切に管理する義務を負います。また、被相続人の預金通帳を保管している場合も、それらを安全に保管し、次の相続人に引き渡すまで適切に管理しなければなりません。

保存義務は、相続放棄をした人が実際に占有している財産にのみ適用されます。相続財産であっても、自分が占有していない財産については保存義務は発生しません。この保存義務を怠った場合、損害賠償責任を負う可能性があります。そのため、相続放棄をした後も占有している財産がある場合は、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、適切に管理する必要があります。

第940条 
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用:民法 | e-Gov法令検索

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本記事では、相続放棄の主な理由や申述書作成のポイントについて詳しく解説してきました。相続放棄を選択する理由は、債務超過や財産の不透明さ、被相続人との関係性など、個々の状況によって異なります。

手続きを行う際は、3ヶ月の期限を厳守し、必要書類を揃えて家庭裁判所に申述することが重要です。

相続放棄後は撤回できないため、十分な検討が必要です。また、次順位の相続人への影響や、占有している財産の保存義務にも注意が必要です。

相続放棄の手続きに不安がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。適切な判断と手続きにより、相続に関する問題を円滑に解決することができるでしょう。

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