立証の正確な意味を理解していますか?何かの事実を明らかにする、という意味合いで使用されることが多いですが、どの程度にまで至れば立証できたといえるのかは、立証というワードを用いるシーンによって異なります。
この記事では、「立証とは」何か、その本質的な意味から立証責任の意義を分かりやすく解説します。
立証とは
立証とは、自分の主張が正しいことを、客観的な証拠や根拠を用いて裏付ける行為を指します。以下では、立証の基本的な意味を解説します。
立証の基本的な意味
「立証」という言葉は、辞書では「証拠を挙げて物事を明らかにすること」や「証拠によって証明すること」と説明されています。
つまり、「立証」とは「証拠によってある事柄や主張をしっかりと成り立たせる」行為であると理解できます。したがって、主観的な意見や感想を提示するだけでは、およそ立証とは言えません。ある主張の正しさを裏付けるためには、客観的な証拠を示すことが不可欠です。
立証の程度
立証活動を通じて、裁判官が一定の事実が存在するという心証を形成できる場合には、特定の事実を認定することになります。この事実認定に必要となる心証の程度を証明度といいます。
証明度に達するためには、一点の疑義も許さないほどに立証する必要まではありませんが、証明する必要のある事実が存在することを確信できる程度(高度の蓋然性)に立証することが必要です。
他方で、少額訴訟では、迅速な処理の必要性や一期日審理の原則から、高度の蓋然性よりは低い相当程度の蓋然性で足りると解されています。
最高裁昭和50年10月24日東大ルンバール事件判決
訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであ
り,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである。
「疎明」との違い
「疎明(そめい)」とは、裁判官が事実の有無について「一応確からしい」との心証を持つ状態であり、そのような心証を形成するために提出する証拠は疏明資料と呼ばれます。
この疎明は、迅速な判断が必要となる裁判手続きで求められています。例えば、仮差押えや仮処分といった民事保全手続きが挙げられます。
相手の主張を覆す「反証」とは
「反証(はんしょう)」とは、相手方の主張や立証に対し、その内容が真実ではないことを示すために、反対の証拠を提出する行為です。具体的には、主要事実の立証責任を負う者が証拠により証明した場合に、相手方が証拠を用いることで、主要事実の存在を真偽不明にする立証活動です。
証拠の種類
立証とは、証拠を用いて、ある特定の事実が存在するとの確信を抱かせることを言います。この立証に必要となる証拠には、様々な種類と役割があります。
直接証拠

主要事実を直接に証明する証拠を「直接証拠」といいます。直接証拠としては、契約書、合意書、遺言書などが挙げられます。
直接証拠があれば、特定の事実関係の立証がし易くなりますが、直接証拠自体の有効性が問題となることはしばしばあります。具体的には、形式的証拠力と実質的証拠力を検討することになります。形式的証拠力とは、文書の記載内容が名義人の意思に基づいて真正に作成されたと認められる場合を指します。実質的証拠力とは、文書の記載内容が、証明すべき事実の証明に役立つ効果を指します。特に、形式的証拠力との関係では、二段の推定が重要です。二段の推定とは、本人の印鑑による印影がある場合には、その印影は作成者本人の意思により押印されたものと推定され、その結果、その文書全体が作成者本人の意思に基づいて作成されたものと推定されるものです。
間接証拠

間接事実を証明する証拠を間接証拠といいます。
立証対象の事実が全て直接証拠によって立証できるわけではありません。直接証拠がない場合でも、ある特定の事実が存在していることを推認させることのできる事実(間接事実といいます。)を立証させることで、間接的に特定の事実の立証を行うこともしばしばあります。
つまり、間接事実a1、a2、a3を総合することで、主要事実Aを推認させる場合に、このa1、a2、a3の存在自体を証明するために間接証拠を提出するような場合です。例えば、XがYに100万円を渡したことが立証命題である場合に、これを直接証明できる証拠(借用書や領収書)がなかったとしても、①Xが銀行口座から100万円を引き出した事実と②Yの口座に100万円が入金された事実を総合することで、XがYに100万円を渡した事実を推認できる可能性があります。①の間接事実を証明するためにXの口座履歴や引出しの明細書などの間接証拠、②の間接事実を証明するためにYの口座履歴などの間接証拠を提出することが考えられます。
「立証責任」の基本
自身の主張を裏付け、相手を納得させる「立証」を考える上で、「立証責任」という概念は避けて通れません。これは、ある事実が不明な場合に、どちらの当事者がその不利益を負うべきかを示す原則です。
以下では、まず立証責任の基本的な概念を解説します。
立証責任とは?
「立証責任」とは、裁判において、ある事実の存在を主張する当事者が、その事実を証拠によって証明する責任を指します。主要な事実の有無が不明確な場合、どちらの当事者がその不利益を負うかを決定する上で重要な概念です。
この責任が果たされず、裁判官が、要証事実の存在を確信できなかった場合、その事実は「存在しない」ものとして扱われます。結果として、その事実の存在を主張した側は、自己に有利な法律効果を認められず、敗訴するなど不利益な判断を受けることになります。
例えば、「貸したお金が返済されない」と主張して返済を求める裁判では、お金を貸した側(原告)が、金銭授受の事実を借用書や銀行の振込履歴といった証拠によって立証する責任を負います。もし立証できなければ、その金銭の授受はなかったものと判断され、原告は不利益を被ることになります。
立証責任の分配
証明責任がどのような基準で当事者双方に分配されるのかを解説します。
証明責任は、自分に有利な法律効果を求める当事者が負うべきという考えです。この考え方を法律要件分類説といいます。
法律要件分類説は、法律要件を定めた法律をいくつかの種類に分類した上で、それぞれがいずれの当事者に有利に働くかによって証明責任の分配をする考えです。
具体的には、権利の発生を求める場合には、その権利の発生を求める当事者が証明責任を負いますが、その権利の発生を妨げる主張をする場合には、その権利発生を妨げる主張する当事者が証明責任を負います。さらに、いったん発生した権利の消滅を主張する場合には、その主張をする当事者が証明責任を負います。
例えば、貸金の返還を求める当事者は、貸金返還の請求原因となる金銭の授受と返還の合意について証明責任を負います。これは、貸主が権利の発生を求めているからです。他方で、相手方が、貸金を返済して貸金返還請求が消滅していることを主張する場合には、その弁済の事実について証明責任を負います。
証明が必要としない場合
当事者が自白した事実と裁判所に顕著な事実は証明を必要としない事実です。
立証責任を負わない当事者が主要事実を認める場合には、裁判上の自白が成立します。また、積極的に自白した場合でなくても、その事実を争わない場合にも自白したものとみなされます(擬制自白)。自白が成立した事実については、証拠による証明を必要とせず、裁判所は証拠調べを実施することができなくなります。
また、一般的に知られており誰にとっても明白である公知の事実や裁判所にとって明白な事実についても、同様に証明を必要としません。
まとめ
本記事では、「立証」が証拠によって自身の主張の正しさを裏付ける行為であることを解説しました。これは単なる主張の表明に終わらず、客観的な根拠を提示することで、主張する事実が存在することを裏付けます。また、「証明」が疑いの余地のない真実を明らかにする高度な確実性を求めるのに対し、「疎明」は「一応確からしい推測」を示すものであり、「反証」は相手の主張を覆す目的で行われることなど、それぞれの言葉が持つニュアンスや用いられる文脈の違いについてもご理解いただけたことでしょう。









