「顧問弁護士」という存在について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?「何かあった時だけ頼ればいい」と考えている経営者も少なくありません。
顧問弁護士は、契約書のチェックから労務問題、債権回収まで、法的な側面からサポートする頼もしい存在です。今回は顧問弁護士が企業のためにどのような役割を果たすのかを具体的な業務内容から徹底的に解説いたします。顧問弁護士に依頼するメリットやデメリット、選び方のポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
顧問弁護士とは?~企業を法務面から支えるパートナー~

顧問弁護士の基本的な定義と、なぜ企業にとって不可欠な存在となりつつあるのかを解説します。
顧問弁護士の基本的な役割とスポット依頼との違い
顧問弁護士の基本的な役割は、企業が日常的に直面する法的課題に対し、継続的かつ予防法務的な観点からサポートすることです。
トラブルが顕在化する前に法的なリスクの芽を摘み取り、法的な側面から企業の安定的な経営を支えます。日常的な法律相談はもちろん、経営判断に伴う法的リスクの事前診断など、幅広い法務ニーズに継続的に対応します。
一方、スポット依頼は、特定の法的問題や紛争が発生した際に、その都度弁護士に解決を依頼する形態です。特定の契約トラブルや債権回収など、個別の案件に対応することが目的となります。その案件が解決すれば、弁護士との関係は基本的に終了します。顧問弁護士が紛争発生時だけでなく予防的なサポートまで行う一方、スポット依頼は法的な問題が顕在化した際に一時的な対応を依頼するものになります。
なぜ中小企業に顧問弁護士が必要とされているのか?
近年、中小企業を取り巻く法的環境は、めまぐるしく変化しており、法律改正を顧みない経営を行うと、思わぬ負担を強いられます。例えば、残業時間が60時間を超える場合の残業代の割増率が50%になるルールは2023年4月から中小企業にも適用されるようになりました。また、残業代の消滅時効はかつての2年から3年に伸長し、いずれは5年にまで伸びることが予定されています。
また、社会全体のコンプライアンス意識が高まる中、中小企業であっても、コンプライアンスの遵守は強く求められています。SNSなどにより情報が瞬時に拡散される現代において、一つの法的な問題が企業の信用を大きく損なう可能性があります。
さらに、働き方の多様化や労働関連法の改正により、不当解雇の問題に加えて、ハラスメントや残業代請求といった労務リスクも増加傾向にあります。これらの問題は発生後の対応が非常に難しくなるケースが多く、事前の予防策が極めて重要です。顧問弁護士は、就業規則の整備や賃金設計の見直しを通じて、労務トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

顧問弁護士の具体的な業務内容~こんなことまで頼める!~

顧問弁護士は、企業活動の様々な場面で頼りになる存在です。単にトラブルが発生した際の「火消し役」としてだけでなく、経営者の皆様が日々の業務で直面する小さな疑問から、企業の将来に関わる重要な局面まで、幅広い法的ニーズに対応します。具体的にどのような業務を依頼できるのか、一つずつ詳しく見ていきましょう。
日常的な法律相談・アドバイス
顧問弁護士の最も基本的な役割の一つが、日常的に発生する様々な法的疑問への対応です。日々の業務運営においては、取引先とのやり取りや、顧客からの軽微なクレームに対する初期対応など、「こんなことを弁護士に聞いてもいいのだろうか」と感じるような些細な疑問が生じることも少なくありません。
顧問弁護士がいれば、こうした疑問点について、電話やメール、さらにはチャット(LINE、ChatWork)といった企業が利用しやすい方法で、法律の専門家から迅速な法的見解やアドバイスを得られます。
問題が小さなうちに気軽に相談することで、潜在的なリスクの芽を摘み取り、トラブルが深刻化する前に適切な対応策を講じることが可能となります。
各種契約書の作成・リーガルチェック
ビジネスにおいて、契約書は非常に重要な役割を果たします。
顧問弁護士は、新規の契約書案を作成するだけでなく、既に存在する契約書や、取引先から提示された契約書の内容が法的に問題ないか、自社にとって不利な条項が含まれていないかなどを専門的な観点からチェックする「リーガルチェック」も行います。これにより、将来起こりうる契約トラブルのリスクを低減し、予期せぬ損害から企業の権利を守ることにつながります。
労務問題の予防・対応(就業規則整備含む)
近年、解雇や残業代未払い、ハラスメントといった労務トラブルが増加しており、企業にとって看過できないリスクとなっています。
労務問題は、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、訴訟に発展した場合には多大な時間や費用を要します。特に残業代請求においては、本来の金額に加え、付加金や遅延損害金が加算されるリスクもあります。問題が深刻化する前に対応することが重要です。
顧問弁護士は、トラブルを未然に防ぐ「予防法務」として、就業規則の作成に加えて、賃金の設計や労働時間の管理を行うなどして、現状の見直しをサポートいたします。
さらに、実際に問題が発生した際には、初期対応から事実関係の調査、従業員との交渉、そして労働審判や訴訟への対応まで、企業の状況に応じた最適な解決策を提案し、実行いたします。
債権回収のサポート
取引先からの売掛金の未払いなど、債権の回収は多くの企業が直面しうる重要な課題です。
未払いが発生した場合、迅速かつ適切な対応が回収成功の鍵となります。顧問弁護士は、こうした債権回収のプロセス全体にわたり、法的な視点から強力にサポートします。
具体的には、支払いが滞っている相手に対して、弁護士名義で内容証明郵便を作成・送付することで、相手に法的なプレッシャーを与え、支払いを促します。さらに、弁護士が直接、取引先と交渉することで、より円滑な解決を目指すこともあります。
それでも回収が難しい場合には、支払督促、訴訟、強制執行といった法的手続きに移行すべきかを判断し、適切な手段を選択します。早期に弁護士へ相談することで、取りうる手段を把握し、計画的に債権回収を進めることが可能となります。
紛争・トラブル発生時の交渉・訴訟対応
ビジネスを行う上で、残念ながら取引先や顧客、あるいは従業員との間で予期せぬ紛争が発生するリスクはゼロではありません。
顧問弁護士は、このような紛争が発生した初期段階から、速やかに状況を把握した上で、事態の悪化を防ぐためのアドバイスを行います。
相手方との直接交渉が難しい場合でも、弁護士が代理人として交渉にあたることで、冷静かつ建設的な話し合いを進めることが可能です。
もし交渉による解決が困難で訴訟に発展した場合でも、顧問弁護士は強力な味方となります。訴訟活動に必要な証拠収集に関するアドバイスや、訴状や準備書面の作成をサポートします。
顧問弁護士のサポートを得ることで、紛争の早期解決や、有利な条件での和解が期待でき、さらには訴訟での勝訴に繋がる可能性も高まります。
従業員向け研修の実施
顧問弁護士は、経営者だけでなく、企業全体のリスク意識を高めるために、従業員向けの研修を実施することもあります。
これは、従業員一人ひとりの知識を向上させ、法令遵守やコンプライアンス意識を組織全体に浸透させる上で、非常に有効な手段となります。


顧問弁護士を導入するメリット~法的リスク軽減と事業成長の加速~
顧問弁護士の導入は、潜在的なリスクを管理・低減し、事業の継続的な成長を法務面から力強く後押しする重要な経営戦略となり得ます。
顧問弁護士を活用することで得られるメリットは多岐にわたります。主なメリットは以下の通りです。
【予防法務】法的なトラブルを未然に防ぐ
顧問弁護士導入の最大のメリットの一つは、「予防法務」を強化できる点にあります。トラブルが発生する前に、潜在的な法的リスクを発見し、適切に対処することで、問題を未然に防ぐ考え方です。日々の事業活動で生じる様々な疑問点や懸念事項に対し、顧問弁護士へ電話やメールなどで気軽に相談し、専門的なアドバイスを得られます。これにより、社内だけでは見過ごされがちなリスクの芽を早期に摘み取ることが可能です。
【迅速対応】緊急時にも優先的に相談でき、スピーディーな問題解決へ
顧問弁護士と契約している大きなメリットの一つは、予期せぬ法的トラブルや緊急性の高い事態が発生した際に、優先的に相談に乗ってもらえる点です。日頃から自社の事業内容や内情を理解している顧問弁護士であれば、一から状況を説明する手間や時間がかからず、スムーズに本題に入れます。これにより、緊急時にも迅速な法的アドバイスを得ることが可能になります。
迅速な初動対応は、問題の拡大を防ぎ、解決までの時間を短縮することに繋がります。
【コストの最適化】法務部を設置するより費用を抑える
企業内に法務部を設置する場合、採用コストに加え、専門知識を持つ人材の人件費(給与、社会保険料など)がかかります。これに加えて、オフィススペースや法務システム導入費といった固定費も発生し、年間数百万円ものコスト負担となります。特に企業内弁護士を雇用するとなれば、その費用はさらに大きくなる傾向があります。
一方で、顧問弁護士に依頼する場合の費用は、当事務所のスマートプランで9500円、それ以上のプランであれば月額3万円から5万円となります。年間で換算しても数十万円のコストで済みます。これは、法務部を設置した場合の年間数百万円のコストと比較すると、大幅なコスト削減につながります。
【企業価値向上】対外的な信用力向上とガバナンス強化
顧問弁護士の存在は、企業の対外的な信用力を大きく向上させます。取引先や金融機関などの様々なステークホルダーにとって、顧問弁護士がいることは、その企業が法務リスク管理を重視し、コンプライアンス体制を整備していることの証となります。プランによっては、自社のウェブサイト上で顧問弁護士の名称を表示することもでき、対外的な信用度のアップに繋がります。
【継続的な視点】自社の状況を深く理解したパートナーによる長期的なサポート
顧問弁護士と継続的な関係を築くことで得られる大きなメリットは、自社の状況を深く理解したパートナーによる長期的な視点でのサポートを受けられることです。
単発の法律相談では、企業の設立経緯や事業内容、業界特有の慣習、さらには経営者の考え方といった内部事情までを十分に伝えることは難しいでしょう。
しかし、顧問弁護士は日頃から密にコミュニケーションを取り、これらの情報を継続的に把握しています。そのため、表面的な法令知識だけでなく、企業の体質や課題に合わせた、より実態に即したアドバイスや法的支援が可能になります。
顧問弁護士の費用相場と契約時に確認すべきこと

顧問弁護士の導入を検討する際、多くの方がまず気になるのがその費用ではないでしょうか。顧問弁護士の費用については、弁護士会による統一的な基準はなく、個々の弁護士事務所や契約内容によって異なります。
顧問料の月額目安は自社のニーズに応じて
中小企業における月額顧問料の相場は3万円から10万円程度とされています。企業の規模や業種、自社のニーズ、相談頻度などによって、自社に見合った顧問料を見定める必要があります。
当事務所のスマートプランであれば税込9500円で法律相談をお受けできます。その反面、法律相談以外のサービス(契約書チェック、内容証明の作成、紛争案件の対応)について通常通りの弁護士費用が掛かります。滅多に法律相談がないものの、万が一の事態に備えたい企業にはお勧めのプランになります。
毎月の相談件数が一定数を超える場合には、月額3万円以上のプランを検討して頂きます。3万円以上のプランであれば、法律相談以外のサービスが充実しています。
自社の規模や事業内容、想定される法務リスクを踏まえ、コストとサービス内容のバランスが取れたプランを選ぶことが重要です。
顧問契約に含まれる標準業務と別途費用が発生するケース
顧問契約で通常含まれる標準業務は、日々の業務で生じる法律的な疑問への法律相談です。プランによっては、法律相談のほか、契約書、社内規程の簡単なレビューなども含まれるのが一般的です。
電話やメール、オンライン会議での質疑応答が中心となりますが、月あたりの相談件数や回数、あるいはチェックできる書面の分量などに上限が設けられているケースが多い傾向にあります。
他方、顧問契約の範囲を超える業務は、別途費用が発生するのが通例です。例えば、訴訟対応や労働審判といった裁判所を通じた手続き、あるいは複雑な契約書の新規作成、就業規則の全面的な見直しや作成、遠隔地への出張を伴う業務などがこれに該当します。
契約期間、更新、解約条件のチェックポイント
顧問弁護士との契約は、一般的に1年契約が主流です。当事務所の顧問契約も契約期間を1年とさせて頂いています。その上で、契約期間の満了日前3か月までに解約通知を頂けなければ、自動更新とさせて頂いております。自動更新は手続きの手間を省くメリットがある一方で、意図しないまま契約が継続されるリスクもあるため、契約の管理をしっかりとして頂く必要があります。
さらに、契約期間中に中途解約をした場合には、残期間分の顧問料を負担する必要が生じることも一般的ですので、契約書をチェックしておくことが大切です。
契約期間、更新、解約に関する条件が契約書にすべて明確に記載されているか確認し、少しでも不明瞭な点があれば、必ず契約前に弁護士に質問して解消しましょう。
自社に合った顧問弁護士を選ぶための3つの重要ポイント
顧問契約を検討する際は、どのように弁護士を選べば良いのでしょうか。数多くの弁護士の中から自社に最適なパートナーを見つけることは、期待する効果を最大限に引き出す上で非常に重要です。中小企業が顧問弁護士を選ぶ際に重視すべき3つの重要ポイントについて詳しく解説します。
自社の業界・事業内容に精通しているか
顧問弁護士を選ぶ上で非常に重要なのは、依頼を検討している弁護士が、自社の業界や事業内容にどれだけ精通しているかという点です。
業界にはそれぞれ特有の商習慣や規制が存在します。これらを深く理解している弁護士であれば、より的確で実践的なアドバイスやサポートが期待できます。
弁護士の専門性や過去の取り扱い実績などは、事務所のホームページを確認したり、初回相談時に具体的な事例を質問したりすることで、見極めることができるでしょう。自社のビジネスに寄り添える経験や実績を持つ弁護士を選ぶことが、顧問契約の成果を高める鍵となります。
コミュニケーションの取りやすさとレスポンスの速さ
顧問弁護士は、長期にわたり企業の法務をサポートするパートナーです。そのため、専門知識だけでなく、日常的なコミュニケーションが円滑に行えるかどうかも非常に重要な選定ポイントとなります。法律の専門家ではありますが、専門用語を多用せず、経営者や担当者が理解しやすい言葉で丁寧に説明してくれる弁護士であれば、安心して相談できます。また、気軽に相談しやすい雰囲気であるかどうかも確認したい点です。
料金体系が明確で費用対効果が見合っているか
顧問契約を検討する際は、顧問料が自社のニーズや想定される利用頻度に見合っているか、費用対効果を慎重に判断することが重要です。単に月額料金の安さだけで判断するのではなく、以下の点を事前にしっかり確認しましょう。
- 契約に含まれる具体的なサービス範囲(相談時間、回数、書面チェック件数など)
- 契約に含まれない業務(契約書作成や訴訟対応など)の追加料金体系や割引率
特に、月額1万円といった安価なプランは、サポート範囲が限定的な場合が多いのが通常です。
顧問契約は難波みなみ法律事務所へ
中小企業にとって顧問弁護士がどのような役割を担い、どのようなメリットがあるのか、そして自社に合った顧問弁護士を選ぶための重要なポイントについて解説しました。
顧問弁護士は、単にトラブル発生時に法的な対応を依頼する存在に留まりません。契約書の確認や整備による「予防法務」、日常的な法律相談への対応、さらには労務問題や債権回収といった具体的なトラブルへの対処まで、幅広い側面から企業経営をサポートします。
顧問弁護士は、安定した企業経営を目指す中小企業にとって、まさに強い味方と言える存在です。本記事を参考に、顧問弁護士の活用を検討してみてください。
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