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更新日: 2024.03.26

遺留分で寄与分は考慮しない|遺留分と寄与分の関係・5種類の寄与分を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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遺留分の問題において、寄与分を考慮するべきかが問題となることがあります。

つまり、遺留分は、最低限保障される相続人の権利です。その遺留分の侵害額を計算する上で権利者側や義務者側に寄与分がある場合に、これを考慮するのかが問題となるのです。

法律上、明確に、遺留分の計算上寄与分を考慮しない、あるいは、寄与分を考慮すると規定されているわけではありません。

また、寄与分は遺産分割をするための前提問題とされているため、遺留分において考慮することが予定されていません。

そのため、結論として、遺留分の問題では寄与分を考慮することはできません。

本記事では、遺留分と寄与分の関係について解説します。

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遺留分の計算上寄与分は考慮しない

結論から言うと、遺留分請求額の計算過程において、寄与分は考慮されません。

遺言や生前贈与が相続人の遺留分を侵害している場合、相続人は遺留分侵害額請求をすることが認められています。この遺留分侵害額の計算方法は民法で具体的に定められています。

しかし、遺留分を請求する側だけでなく、遺留分請求を受けている側のいずれにおいても、寄与分を考慮して遺留分請求額を算出することは予定されていません。これはすなわち、たとえ、生前に被相続人に対して特別の寄与があったとしても、それを理由に遺留分の侵害額が少なくなったり、遺留分請求額が多くなることはないということを意味します。

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寄与分とは何か?

寄与分とは、故人の財産の維持や増加に特別な寄与をした場合に、その特別の寄与をした相続人が他の相続人よりも多くの遺産を受け取ることができるという制度のことです。

具体的には、相続財産から寄与分を除いたものを相続財産として相続分を算定し、特別の寄与をした相続人には、その相続分に寄与分を加えた額を相続分とするという制度です。

寄与分の5つの種類

寄与分が認められる場合には、以下のような場合があります。

① 家業従事型

亡くなった人(被相続人)の営んでいた農業、漁業、商業などの事業に無報酬あるいは無報酬に近い形で継続的に従事していた場合です。

したがって、家業に従事していた相続人が被相続人から、これに見合った給与を得ていたような場合には、寄与分は認められません。

② 金銭等出資型

相続人が被相続人に財産や資金を提供した場合です。

不動産の購入資金を援助したり、介護施設への入所費用を援助したりしたような場合です。

③ 療養看護型

相続人が被相続人の療養看護に無報酬ないしこれに近い形で携わった場合です。

被相続人が病気を患っていることを前提とするため、単に同居して家事の援助しただけでは認められません。

また、この場合も、その相続人が被相続人から相応な報酬を得ていたような場合には、寄与分は認められません。

④ 扶養型

相続人が被相続人を継続的に扶養していた場合です。

⑤ 財産管理型

相続人が被相続人の賃貸不動産等の財産を無報酬ないしこれに近い形で管理していた場合です。

この場合も、その相続人が被相続人から相応な報酬を得ていたような場合には、寄与分は認められません。

いずれの場合にも、「特別の寄与」をしたことが要件とされていますので、親族であれば当然する程度の援助をしたというだけでは、寄与分は認められません。

遺産相続で受け取れる寄与分には上限がある

寄与分は、被相続人の財産の価額から遺贈の価額を除いた額を超えることができません。遺贈とは、被相続人が遺言において他人に財産を与える行為のことです。

例えば、相続財産が2000万円、相続人が子ら2人で、そのうちの1人が1500万円の遺贈を受けたとします。この場合、他方に1000万円の寄与分があるとしても、遺産の2000万円から遺贈の1500万円を除いた500万円しか寄与分は認められないことになります。

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遺留分とは?

遺留分とは、被相続人の財産のうちの一定の割合について、法定相続人に相続権を保障するものです。

被相続人は、遺言により、その財産を原則として自由に処分することができますが、遺留分は、その自由な処分について制限し、法定相続人を保護しようとする制度です。

遺留分の割合

遺留分の割合は2分の1とされ、直系尊属のみが相続人である場合には、相続財産の3分の1とされています。兄弟姉妹には、遺留分は認められていません。 

例えば、相続財産が2000万円、相続人が子ら2人で、被相続人が相続人のうちの1人に全ての相続財産を相続させるという遺言をしたとします。この場合、他方の相続人には、500万円の遺留分があるので(2000万円×1/2×1/2)、その相続人は500万円を相続することができ、相続財産の全部を相続させるとされた相続人は1500万円(2000万円-500万円)しか相続することができないことになります。

遺留分侵害額請求に対して、寄与分を主張して拒否することはできない

遺留分侵害額請求訴訟において、寄与分があることを主張して、遺留分侵害額の支払を拒否することはできません。

寄与分と遺留分は異なる制度だから

寄与分と遺留分とは別個の制度だからです。

つまり、寄与分は、遺産分割をする前提問題です。寄与分について争いがあると、寄与分を定める審判の申立てを家庭裁判所に対してする必要があります。それに対して、遺留分の問題は、地方裁判所で審理が行われる民事訴訟です。

このように、寄与分を決める手続きと遺留分に関する手続きはそれぞれ異なるプロセスで取り扱われるため、遺留分の手続きで寄与分の有無や金額を定めることは法制度上予定していないのです。

遺留分侵害額の計算方法

遺留分の計算過程で、遺留分の請求を受けている義務者側の寄与分は考慮されません。遺留分侵害額は、次の計算式で算出されます。

①遺留分侵害額=②遺留分額−(遺留分権利者が相続によって得た財産額−相続債務分担額)−権利者側の特別受益額
②遺留分額=③遺留分算定の基礎となる財産額×個別的遺留分
③遺留分算定の基礎となる財産額=(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額)+(贈与財産の価額)−(相続債務の全額)

寄与分は遺留分侵害額の計算で考慮しない

以上の計算式からも分かるように、義務者側の生前贈与などの生前贈与が、遺留分の侵害額を増やす方向で考慮されることはあります。しかし、義務者側の寄与分が遺留分の侵害額を少なくする方向で考慮することは予定されていません。 

例えば、相続財産が3000万円で、相続人が子ら2人で、被相続人が子らのうちの1人に全ての相続財産を相続させるとの遺言をしたします。この場合、もう1人の子については、750万円の遺留分(3000万円×1/2×1/2)が認められることになります。

これに対し、全ての相続財産を相続させるとの遺言をされた子が1000万円の寄与をしたのであるとしても、遺留分侵害額請求に対して寄与分があることを主張して遺留分侵害額の請求を拒むことはできません。

遺留分権利者も寄与分を主張できない

遺留分侵害額を計算する上で、遺留分の請求をする権利者側の寄与分も考慮されません。

遺留分侵害額は遺留分額に相続によって取得する財産と生前贈与を控除した上で、権利者が負担する相続債務を加算して算出します。

この計算過程で、権利者側の寄与分が加算することは規定されていません。

寄与分に対する遺留分侵害額請求はできない

遺産分割により決まった寄与分に対して遺留分請求することも認められていません。つまり、遺留分を侵害する寄与分を定めることもできます。

寄与分は遺留分との関係では制限がないからです。そのため、遺産分割協議や遺産分割審判により、遺留分を侵害するような寄与分が定められても、その寄与分それ自体に対して遺留分請求をすることはできないのです。

例えば、相続財産が3000万円で、相続人が子ら2人で、その1人について2000万円の寄与がある場合、寄与分がなければ他の1人は750万円の遺留分(3000万円×1/2×1/2)が認められるはずです。

しかし、寄与分があるため、500万円の相続分((3000万円-2000万円)×1/2)しか認められないことになります。

寄与分があるために、遺留分を下回る相続分しか相続することができなくなるのです。そのため、寄与分によって遺留分を下回る相続分しか相続することができない場合であっても、寄与分を認められた相続人に対して遺留分侵害額請求をすることはできません。

寄与分と遺留分に関する裁判例

寄与分が遺留分に優先するとしても、寄与分を無制限に定めることができるとなると、遺留分制度の存在意義が失われてしまいます。

そこで、裁判所が寄与分を定めるに当たっては、他の相続人の遺留分についても考慮すべきであるとする裁判例があります(東京高等裁判所平成3年12月24日判決)。

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遺留分の問題は非常に難解な法律問題を含み専門性が高い分野の一つです。その上、相続人間の対立は、精神的に大きな負担を招きます。また、適切な対応をしなければ大きな経済的な損失が生じるおそれもあります。

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