コラム
公開日: 2024.10.08

「離婚したいけどできない」を解決!ケース別にできる対策|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

人生の中で離婚を決断することは、非常に大きな選択です。

しかしながら、「離婚したいけどできない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

例えば、経済的な不安や、配偶者の同意が得られない、さらには子どもへの影響を心配して離婚をためらう場合もあります。さらには、自分が有責配偶者であるために、離婚を請求できないという方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、こうした悩みを持つ方々に対し、ケースごとの具体的な対策を提供し、あなたが直面している問題の解決をサポートします。ぜひ、ご自身の状況に合わせて、どのように進むべきかを考え、次のステップに進むための手助けにしてください。

離婚したいけどできない4つの理由

まず、なぜ離婚が難しいのか、その主な理由を理解することから始めましょう。ここでは、特に多い4つの理由について解説します。

経済的理由で離婚に踏み切れない

離婚を考える際、多くの方が真っ先に直面するのが、離婚後の経済的な不安です。特に専業主婦である妻が離婚を望む場合、離婚後の生活費や養育費など、将来的な金銭面の不安が大きな障害となることが少なくありません。

日本では、多くの家庭において妻が専業主婦やパートタイムで働くケースはまだまだ多いです。そのため、離婚後に収入が安定せず、生活が維持できないのではないかと心配することがよくあります。また、未成熟の子どもがいる場合、養育費の負担や私立学校の授業料などをどのように確保するかが問題となります。経済的な自立が難しい場合、離婚に踏み切るのが困難になるのは当然のことです。

さらに、離婚後の住居の確保や引っ越し費用も見積もる必要があります。これらの費用がかさむことで、離婚後の生活が不安定になる可能性が高まります。離婚は、感情的な問題だけでなく、金銭的な面でも慎重な計画が必要です。

 配偶者が離婚に応じてくれない

次に考えられるのが、配偶者が離婚に同意してくれないケースです。たとえ自分が離婚を強く望んでいても、相手が「離婚したくない」と考えている場合、協議が進まないことがあります。

離婚を拒む理由は、妻(夫)に対する愛情の深さから夫婦関係の修復を希望している、離婚後に子供らと離れて暮らす寂しさ、財産分与や慰謝料などの負担を避けたい、離婚後の経済的な生活不安などがあります。特に、離婚後の生活が不安定になることを恐れ、現状を維持しようとする配偶者も少なくありません。

このような場合、離婚の話し合いが平行線をたどることが多く、スムーズな解決が難しい場合があります。離婚協議が難航する場合には、離婚調停や、最終的には離婚裁判に持ち込むことが必要になります。離婚裁判は時間も費用もかかりますが、最終的には判決による終局的な解決が図られます。

子どものことを考えて離婚をためらってしまう

子どもがいる場合、離婚による影響を心配することはよくあります。子どもへの精神的な負担や、生活環境の変化により、子供の健全な成長に悪影響を及ぼすことを考え、離婚に踏み切れない人は多くいます。

親として、子どもの幸せや将来を考えると、簡単に離婚に踏み切ることはできないでしょう。

しかし、夫婦間の対立や不和が続くことで、かえって子どもの健全な成長を妨げるリスクもあります。家庭内での争いが子どもにストレスを与え、精神的な負担がかかることは容易に想定されます。そうであれば、離婚することで、親同士の緊張が緩和され、結果的に子どもにとっても良い環境が生まれる場合もあります。このような視点も含めて、離婚の影響を冷静に考えることが重要です。

自分が有責配偶者である

有責配偶者とは、法律上の離婚原因を作り出した配偶者のことを指します。例えば、浮気や暴力などが離婚原因である場合、その離婚原因を作り出した配偶者が有責配偶者とされる可能性があります。このような場合、有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、非常に厳格な条件を満たすことが必要です。

したがって、自分が有責配偶者である場合、離婚を望んだとしても、相手が離婚に同意しない限り、離婚が成立しないという問題が生じます。つまり、離婚したくても、相手方が求める条件が厳しすぎるため離婚できない状況となります。

離婚したいけどできないときの経済的な解決策

経済的な理由で離婚に踏み切れない場合、まずはその問題を解決するための具体的な方法を考えてみましょう。以下では、経済的な不安を払拭するための解決策をいくつか紹介します。

離婚前に必要な貯金を準備する

離婚を考え始めたら、まず最初に行うべきことは、離婚後の生活を支えるための貯金を準備することです。離婚後には、生活費や住居費、引っ越し費用などが必要になるため、一定の資金を確保することが非常に重要です。

例えば、家計を見直し、節約できる部分を探して貯金を増やす努力をしましょう。さらに、アルバイトやパートタイムの仕事を増やすことで、収入源を確保し、将来的な不安を少しでも減らすことが大切です。

また、生活費や教育費、将来的な出費を予測し、それに見合った貯金目標を設定しましょう。計画的に貯金を進めることで、離婚後の生活を安定させることができます。

ただし、同居中に貯めた預貯金は財産分与の対象となりますので、その点は留意しましょう。

資格取得や再就職で経済的自立を目指す

定職に就いていない場合や、収入が不安定な場合は、まず経済的自立を目指すことが重要です。離婚後に安定した生活を送るためには、安定した収入源を確保する必要があります。 

そのため、就職に有利な資格を取得したり、職業訓練に参加することなどが求められます。資格を取得することで、就職や転職の際に有利になる場合が多いです。

また、再就職を目指す際には、できるだけ早い段階で準備を始め、少しずつスキルを身につけておくことが大切です。これにより、離婚後の経済的不安を軽減することができ、安心して新しい生活をスタートできるでしょう。

ひとり親の支援制度を活用する

離婚によってひとり親になった場合、自治体によっては、ひとり親家庭に対する支援制度が充実しています。

児童手当に加えて、児童扶養手当や医療費助成、保育料の減額など、さまざまな支援を受けることができる場合があります。まずは、自分が住んでいる市区町村の窓口で、どのような支援制度が利用できるのか確認しましょう。

これらの支援制度を活用することで、経済的な安定が得られ、安心して離婚後の生活を送ることができるでしょう。

実家にサポートしてもらう

実家に頼れる場合は、実家の親族のサポートを受けることも一つの選択肢です。特に子どもの面倒を見てもらうことができれば、安心して仕事に専念することができ、経済的自立がスムーズに進むこともあります。

離婚後に一時的に実家に戻ることができれば、居住費や食費等の生活費の負担を軽減することができ、貯金を増やす余裕が生まれることもあります。また、親や兄弟姉妹がサポートしてくれることで、子育ての負担が軽減され、仕事と家庭のバランスを保ちながら新しい生活を始めることができるでしょう。

実家のサポートは、離婚後の生活を安定させるために非常に有効な手段です。頼れる家族がいる場合は、積極的に相談し、サポートを受けることを検討しましょう。

離婚したいけど配偶者が応じないときの解決策

配偶者が離婚に応じてくれない場合でも、適切な手続きを踏むことで離婚を進めることができます。以下では、離婚の種類や具体的な対策について説明します。

協議離婚を目指す

離婚の中でも最も一般的な方法が「協議離婚」です。協議離婚は、双方の合意によって成立するものであり、最もスムーズで簡便に離婚が進む方法です。話し合いによって解決できれば、裁判などの煩雑な手続きも不要ですし、費用も抑えることができます。

まずは、相手と冷静に話し合いを行い、離婚に向けた合意を得ることを目指しましょう。相手が拒絶している場合でも、何度も説得を重ねることで、最終的には同意に至ることもあります。

ただし、感情的な対立が激しい場合、話し合いが難航することも考えられます。その場合は、弁護士に相談することで、冷静なアドバイスを受けながら話し合いを進めることができます。弁護士を通じた交渉は、感情的な衝突を避け、円満に協議を進めるための有効な手段です。

離婚調停を申し立てる

協議離婚が難しい場合、次のステップとして「離婚調停」を申し立てることが考えられます。離婚調停は、家庭裁判所で行われる手続きで、調停委員が夫婦の間に入って夫婦双方の話し合いをサポートしてくれます。

調停委員は中立的な第三者の立場から公正に問題を解決しようと努めるため、感情的な対立を避けながら、冷静な話し合いが進められることが期待されます。相手が強く離婚を拒否している場合でも、調停委員の説得によって解決に至ることも少なくありません。

離婚調停は、家庭裁判所で行われる手続き一つであり、時間や費用がかかる場合もありますが、弁護士のサポートを受けながら進めることで、よりスムーズに進行することが期待できます。

離婚裁判を行う

調停でも解決しない場合、最終的には「離婚裁判」を行うことになります。離婚調停において話し合いを重ねても合意に至らない場合には、離婚調停は不成立となります。

離婚裁判では、離婚原因の有無、財産分与、慰謝料といった法律的な問題を詳細に審理し、その結果、裁判所が判決を出すことで終局的な解決を目指します。

裁判は1年半ほどの時間がかかる場合が多く、弁護士に委任すれば費用もかかるため、離婚手続としては最終手段として位置付けられます。しかし、調停が不成立に終わった場合や、相手が完全に離婚を拒否している場合には、離婚裁判に移行せざるを得ないといえます。

離婚裁判は専門的な手続きが多く、これに対応するために大きな心身の負担を招きますが、弁護士のサポートを受けることで、負担を軽減させながら手続きを円滑に進めることができます。

子どもがいて離婚に踏み切れないときの解決策

離婚を考える際、子どもの存在が重大な判断要素となることはよくあります。子どもへの悪影響を避けるためにも、離婚前後でどのように子どもと接するべきかを理解することが大切です。

面会交流の実施

面会交流は、子供と離れて暮らす親が定期的に子どもと会う機会を持つための制度です。子どもにとっても、離婚後も親との関係を維持することは非常に重要です。

面会交流を適切に行うことで、離婚後も安定した親子関係を築くことが可能となり、子供の健全な成長を促します。つまり、定期的な面会を行い、子どもとの時間を大切にすることで、子どもへの悪影響を小さくすることが期待できます。

養育費の取り決めをする

離婚後の経済面での不安を払拭させるために、養育費の取り決めをしておくことが重要となります。

離婚後に養育費の取り決めをしていないひとり親は多くいます。しかし、養育費は、離婚後の子供の養育環境を満たすための重要なものであり、養育費を払うことは親権を持たない親の責務です。

離婚後の子供の生活環境が悪化することを懸念している場合には、養育費の取り決めをしっかりと行うべきです。できれば、強制執行を容易にするために公正証書を作成しておくことが重要です。

有責配偶者として離婚が難しいときの解決策

自分が有責配偶者である場合、離婚を進めることが非常に難しいのが原則ですが、一定の条件を満たすことで離婚が認められる場合があります。なお、有責配偶者による離婚請求であっても、配偶者が離婚に応じる場合には、以下の条件を満たすことは求められません。

長期間の別居

有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、夫婦が長期間にわたって別居していることが条件となります。

有責配偶者の離婚請求が認められるためには、長期間の別居が前提となります。必要とされる別居期間は、未成熟子が成人するまでの期間を踏まえて考慮されます。

まずは別居を始め、必要な期間を確保することで、離婚の道が開けることがあります。

未成熟の子どもがいない

有責配偶者からの離婚請求が認められるためのもう一つの条件は、未成熟の子どもがいないことです。未成熟の子どもとは、経済的に自立していない未成年の子どものことを指します。

未成熟の子どもがいる場合、離婚による影響が大きいため、有責配偶者による離婚請求が難しくなります。

配偶者に過度な負担をかけない

有責配偶者として離婚を進める際には、配偶者に対して過度な負担をかけないことが重要です。離婚によって配偶者が精神的、社会的、経済的に過酷な状態に置かれる場合には、有責配偶者の離婚請求は認められません。

離婚により配偶者が酷い状態にならないように、慰謝料、財産分与などの面で適切な対応をすることが求められます。

離婚を我慢し続けるリスクとその影響

離婚を我慢し続けることには、さまざまなリスクがあります。問題を先送りにすることで、後悔や精神的な負担が大きくなる可能性があるため、慎重に考える必要があります。

早く離婚すればよかったと後悔が残る

離婚を長期間我慢し続けた結果、「早く離婚すればよかった」と後悔する人も少なくありません。

早い時期に離婚していれば、もっと自由に自分の好きなことができたかもしれないと考えることがあります。また、年齢を重ねると再就職や再婚が難しくなることもあります。 

このように、自分の人生において、どのタイミングで離婚するべきかを慎重に考えることが大切です。

お金や義両親の介護で苦労する

離婚を我慢し続けることで、経済的な負担や、親の介護に関わる問題が発生することがあります。

配偶者に浪費癖がある場合、離婚を先延ばしにすることで、預貯金を失ってしまうリスクがあります。

さらに、婚姻期間が長くなることで、相手の両親が老齢となり、義両親の介護をさせられることもあります。このような負担が増えることで、精神的にも肉体的にも疲弊してしまう可能性があります。

子どもに悪影響を与える

夫婦間の問題を抱えたまま共同生活を続けることは、同居する子どもに悪影響を与えるリスクもあります。例えば、喧嘩が続く家庭や、会話がほとんどない家庭では、子どもが精神的なストレスを抱えることがあります。このような状況が長期に渡り続けば、子供の健全な成長を妨げてしまいます。

離婚することで、親同士の関係が改善され、結果的に子どもにとっても安定した環境が提供されることがあります。

離婚前に必ず確認すべきポイント

離婚を決断する前に、以下のポイントを確認しておくことが重要です。これにより、離婚後の生活をより安定させることができます。

財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を2分の1の割合で清算することです。離婚や別居前に、夫婦の財産がどれくらいあるのかをしっかりと把握しておくことが重要です。

財産分与の対象となるものには、預貯金や不動産、車、保険、退職金などが含まれますが、逆に結婚前に持っていた財産や、相続で得た財産などは特有財産となり、財産分与の対象から除外されます。

慰謝料

離婚の原因が浮気や暴力などの場合、慰謝料を請求することができます。ただし、性格の不一致や価値観の違いなど、相手が一方的に悪いとは言えない場合には、慰謝料の請求が難しいこともあります。

離婚慰謝料の相場は、離婚原因や婚姻期間などの事情に応じて異なりますが、弁護士に相談し、適切な金額を算定してもらうことが重要です。

婚姻費用

離婚を前提に別居した場合、婚姻費用を請求することができます。婚姻費用とは、離婚が成立するまで請求できる、社会生活を送るために必要となる生活費です。

婚姻費用の金額は、夫婦の収入額、子供の人数や年齢等の事情を基に算出されます。

親権

未成年の子どもがいる場合、親権の問題も重要です。自分が親権を取得するのか、それとも相手が親権者となるのか、夫婦間でしっかりと考えておく必要があります。

親権は、子どもの生活環境や、親の養育能力などを考慮して決定されるため、子どもの最善の利益を優先して決定しましょう。

養育費

親権を取得した場合、相手方から養育費を受け取ることができます。

養育費は、子どもの生活費や教育費を支えるために支払われるもので、家庭裁判所が公開している養育費算定表を基に養育費の金額を計算することができます。

養育費は、子どもの年齢や、親の収入に応じて決定されるため、家庭裁判所で相談しながら金額を決めることが一般的です。

まとめ

「離婚したいけどできない」という悩みを抱えている方々に向けて、経済的な理由や配偶者の同意が得られない場合の解決策などを紹介してきました。それぞれの状況に応じた対策を講じることで、少しずつ解決の糸口が見つかり、未来に向けた一歩を踏み出すことができるでしょう。

離婚手続には多くの困難を伴いますが、法律の専門家である弁護士のサポートを受けることで、離婚問題を適切に解決させることが可能となります。離婚に関する問題に直面している方は、ぜひ当事務所に相談してください。

難波みなみ法律事務所では、経験豊富な弁護士があなたの状況に応じたアドバイスを提供し、スムーズな離婚手続きをサポートします。

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