コラム
公開日: 2025.01.21

相続放棄後に生命保険金をもらえるのか?受け取れないケースや相続税を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

相続放棄をした後に、故人の生命保険金を受け取っていいのだろうか、と不安に思う人は多いです。

相続放棄とは、故人(被相続人)の財産や債務を一切引き継がない手続きのことです。しかし生命保険金については、相続財産とは扱われず固有の財産として見なされる場合があります。そのため、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることは可能です。ただ、生命保険の中には、被相続人の相続財産と扱われるものもあります。そのため、この場合には、相続放棄後に保険金を受け取ることは認められません。

本記事では、相続放棄後に生命保険金が受け取れるケースや受け取れないケース、さらに相続税との関係などを解説していきます。

相続放棄後も生命保険金を受け取れる

相続放棄後でも死亡保険金を受け取れる場面があるのは、生命保険金が受取人固有の財産と扱われるためです。

ここでは、相続放棄の基礎知識や生命保険がどのように扱われるかを解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人としての地位を放棄することで、被相続人の財産や債務を一切継承しない手続きです。

家庭裁判所に対して、自分のために相続開始を知った日から3カ月以内に申述する必要があり、いったん相続放棄が認められると原則として撤回できません。

相続財産に多額の負債が含まれているときに活用されることが多いですが、相続放棄後の生命保険金の扱いについては、保険契約の内容をよく確認しておくことが大切です。

生命保険は受取人固有の財産

生命保険の死亡保険金は、被相続人の財産とは切り離されて受取人の固有財産として認められます。

相続放棄をすると相続人の地位を失うわけですから、生命保険金を受け取ることもできなくなるように思うかもしれません。

しかし、そうではありません。保険契約時に受取人を相続人に指定することで、保険会社が契約者の死亡を機に、受取人に対して直接保険金を支払われます。つまり、保険金は被相続人の相続財産に組み込まれることなく、受取人に対して保険金が支払われるためです。

そのため、相続放棄により相続人としての地位を持たなくなっても保険金を受け取れることができるのです。

相続放棄により生命保険金を受け取れない場合とは

すべてのケースで相続放棄後も生命保険金を受け取れるわけではありません。次に、生命保険金が相続財産とみなされることで、相続放棄後に保険金を受け取れないケースを見ていきましょう。

生命保険金を確実に受け取るためには、契約内容がどのようになっているかがカギを握ります。受取人の指定によっては、死亡保険金が相続財産扱いとなってしまい、相続放棄の影響を受けることがあるためです。

受取人が被相続人である場合

生命保険契約で、契約者と受取人の両方が被相続人に指定されているケースでは、死亡保険金は相続財産に含まれることになります。

死亡保険金が相続財産に含まれると、相続放棄をした相続人には保険金を受け取る権利がなくなります。

したがって、保険金の受取人が誰になっているのかは、相続放棄を検討する段階で必ず確認しておくべきポイントです。

生命保険の解約返戻金は相続財産であるため受け取れない

解約返戻金は、契約者が保険契約を途中で解約した際に受け取るお金です。 

死亡保険金とは異なり、解約返戻金は契約者としての権利に基づいて受け取れる財産であるため、相続財産に含まれます。

そのため、生命保険の解約返戻金を請求する行為は相続財産に手を付ける行為とみなされる可能性があり、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。

生命保険金に対する相続税

相続放棄をしても、生命保険金が課税対象になるケースがあります。相続税の非課税枠や基礎控除との関係を踏まえ、どのように課税されるのか解説します。

死亡保険金は、法律上“みなし相続財産”として扱われ、相続税の対象となることがあります。

相続放棄をしても相続税が課税される可能性がありますが、法定相続人が減ることで非課税枠が小さくなる点にも注意が必要です。

相続放棄しても死亡保険金に相続税が課税される

死亡保険金は、受取人の固有財産として認められるため、相続財産にはあたりません。しかし一方で、相続税法との関係では、死亡保険金は“みなし相続財産”として相続税の課税対象になる場合があります。

そのため、相続放棄をして相続人の地位が無くなったとしても、相続税を納税しなければならない事態が生じることもあるわけです。

相続放棄をすると生命保険金の非課税枠を利用できなくなる

死亡保険金には、法定相続人1人あたり500万円までが非課税となる枠があります。

相続放棄を行った場合でも、相続放棄をした相続人も含めて非課税枠を計算します。つまり、相続放棄前の相続人は3人、相続放棄により相続人が2人になったとしても、非課税枠は1500万円となります。

500万円✖️3人=1500万円

しかし、相続放棄により相続人ではなくなると、相続人ではなくなるため非課税枠を利用できなくなります。

そのため、死亡保険金の金額が大きい場合には、相続放棄で非課税枠を利用できなくなることを念頭に置きながら、相続放棄をするべきかを検討しましょう。

相続税が課税されない場合(基礎控除内) 

相続税は、課税対象となる遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。

基礎控除額は、3000万円に『法定相続人の人数に600万円を掛けた金額』を加算した金額となります。ここでいう法定相続人には、相続放棄をした人も含まれます。

3000万円➕法定相続人✖️600万円

例えば、相続放棄前の相続人が4人で、相続放棄により相続人が3人になっても、基礎控除額は5400万円となります。

3000万円➕4人✖️600万円🟰5400万円

そのため、遺産総額に死亡保険金を加算した金額が基礎控除以下であれば、相続税は課税されません。

生命保険の受領後に相続放棄はできるか

生命保険金を先に受け取ってしまった後でも、相続放棄を行えるかどうかは保険契約の内容次第です。ここではどのような場合に可能なのか、逆にどのような場合に不可能なのかを見ていきます。

生命保険金の受領が相続財産の処分にあたるかが判断の分かれ目になるケースがあります。

受取人として固有の権利に基づき受け取った保険金であれば、相続放棄はできますが、死亡保険金が相続財産とされる場合には、すでに財産を取得したとみなされる可能性があるため注意が必要です。

相続放棄ができる場合

保険金の受取人が相続人として指定されている場合、死亡保険金は受取人固有の財産であり、相続財産とは捉えられないため、保険金を受領しても相続財産を処分したとはみなされません。

したがって、死亡保険金を受け取った後に相続放棄をすることは認められます。

相続放棄ができない場合

保険金の受取人が被相続人となっているような生命保険契約の場合、死亡保険金は相続財産に含まれます。この場合に、保険金を受け取ってしまうと、相続財産の一部を処分したとみなされ、相続放棄が認められないリスクがあります。

事前に保険契約の内容をしっかりと確認し、相続放棄を検討する場合には慎重に手続きを進めることが大切です。

相続放棄をする時に生命保険金を受け取るまでの流れ

相続放棄をする場合もしない場合でも生命保険金を受け取る手続きは基本的には同じです。ただ、相続放棄との関係でいえば、誰が死亡保険金の受取人に指定されているかを注視する必要があります。

相続放棄自体も、3か月の熟慮期限があるため、速やかに情報を整理して必要書類をそろえ、保険会社の手続きと並行して裁判所での手続きを行うことが大切です。

生命保険の有無を確認する

まず、被相続人がどの保険会社で契約をしていたかわからない場合、預金通帳の口座履歴を確認します。口座履歴上、保険料の支払いがある場合には、どの保険会社に保険料が支払われているのかを確認します。口座履歴で手掛かりがない場合には、生命保険協会に被相続人を契約者とする保険契約の照会をします。生保協会への照会により、被相続人名義の生命保険契約の有無を網羅的に確認することができます。

保険証券や約款を確認する

生命保険会社が分かれば、保険証券や約款を確認し、契約者・被保険者・受取人が誰であるかを改めて確かめます。

受取人が相続人と指定されているのか、被相続人と指定されているのかを注意深く確認します。もし契約内容が判然としない場合には、保険会社に直接に確認するようにしましょう。

戸籍謄本等の必要書類を準備する

生命保険金の請求には、保険金請求書のほか、死亡診断書、戸籍謄本や被相続人の除籍謄本などが必要となります。

保険会社に必要書類を提出する

準備した書類と保険金請求書を保険会社へ提出し、支払い手続きに進みます。提出書類の不備があると保険金の受け取りに時間がかかる場合がありますので、記載漏れや誤字脱字がないかをしっかりと確認することが大切です。

相続放棄の問題は難波みなみ法律事務所へ

相続放棄をしても死亡保険金を受け取れる場合は多くあります。相続放棄をしたからといって安易に保険金の受け取りを諦めるべきではありません。

死亡保険金を受け取れるかどうかは、受取人の指定内容によって大きく左右されます。相続放棄後でもあなたの固有財産として受け取れる可能性はありますが、相続税などの税負担も考慮に入れておきましょう。相続放棄の手続きでつまずきそうであれば、弁護士への相談や依頼をすることをおすすめします。相続放棄には3か月の期限が設定されていますから、遅くならないように早めに相談することが大切です。

初回相談30分を無料で実施しています。面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。対応地域は、大阪難波(なんば)、大阪市、大阪府全域、奈良県、和歌山県、その他関西エリアとなっています。

よく読まれている記事

PAGE TOP