離婚を決意し、離婚調停を申し立てたものの、相手がなかなか応じず、離婚調停が話にならないとお悩みの方もいるのではないでしょうか。
調停は、裁判所を介して冷静に話し合いを進めるための制度ですが、相手が感情的になってしまったり、条件面で折り合いがつかなかったりと、スムーズに進まないケースも少なくありません。
本記事では、調停が話し合いの場として機能しない原因を詳しく解説し、具体的なにならない状況を打開するための対処法を、弁護士監修のもとご紹介します。調停でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
離婚調停で「話にならない」と感じる4つの典型パターン
離婚調停は、本来、当事者同士が冷静に協議し、互いの主張を整理しながら解決を目指すための場です。しかし、実際には相手の言動や態度によって話し合いが全く進まず、「話にならない」と感じてしまう状況も少なくありません。以下では、離婚調停が膠着状態に陥りやすい典型的な5つのパターンについて詳しくご紹介します。
1. 相手が感情的になり暴言や人格否定を繰り返す
離婚調停は冷静な話し合いの場であるにもかかわらず、相手が感情的になり、怒鳴りつけたり、罵声を浴びせたりするケースは少なくありません。感情的な言動は、建設的な話し合いを困難にし、精神的負担を著しく大きくさせます。
調停委員が間に入って冷静さを促しても、相手の感情的な態度が収まらない場合、調停はまさに「話にならない」状態に陥りやすい典型的なパターンと言えるでしょう。相手への人格非難や誹謗中傷は、調停委員にも悪い印象を与えかねません。
2.話し合いを拒否・無視するなど非協力的な態度をとる
離婚調停において、相手方が話し合いに非協力的な態度を示すことで、議論が全く進まないケースは少なくありません。
非協力的な態度とは、具体的に以下のような言動や行動を指します。
- 調停委員からの質問に対し「知らない」「覚えていない」と繰り返す
- 終始黙り込む
- ため息ばかりつく
- 関係のない話題に逸らす
- 必要な収入証明書や財産目録などの資料提出を拒否する
このような態度は、調停の進行を停滞させ、相手に精神的な負担をかけることで、申立人を疲弊させようとする戦略である可能性も考えられます。調停委員は、両当事者が協力しながら、円満な解決を目指すことを期待しています。そのため、相手方の非協力的な態度は、「話し合いによる解決の意思がない」と調停委員に判断され、調停が不成立となることがあります。
3.現実離れした要求ばかりで譲歩しようとしない
離婚調停において、相手方が法的な根拠や社会的な常識から著しくかけ離れた要求を繰り返すことは、話し合いが進まなくなる典型的なパターンの一つです。例えば、慰謝料として一般的な相場とされる50万円から300万円程を大きく上回る慰謝料額を請求するケースや、養育費、財産分与について、一方的に高額な支払いを要求するケースなどが挙げられます。
このような非現実的な要求の背景には、手続を引き伸ばすことで離婚自体を避けたい、嫌がらせをしたい、単に法的な知識が不足しているといったことがあります。
相場や根拠に基づかない要求が繰り返されると、議論の土台が成り立たなくなり、調停委員も妥協点を見出すことが困難になるため、調停は膠着状態に陥り、結果的に調停が不成立となる可能性があります。
4.調停に欠席する、または遅刻を繰り返す
相手方が正当な理由なく調停期日に欠席したり、たびたび遅刻したりする状況も、調停が進行しない一因となります。調停は当事者双方の出席が原則であるため、相手方が出席しない限り、実質的な話し合いは開始できません。このため、相手方が調停期日に欠席し続けると、調停手続きが全く進展しない状態に陥ってしまうでしょう。
このような行為は、相手方が調停手続きを軽視しているか、あるいは意図的に解決を先延ばしにしようとしている、不誠実な態度の表れと捉えることができます。


なぜ離婚調停で話し合いが進まないのか?考えられる4つの原因
相手が非協力的な態度をとる背景には、何らかの理由や心理が必ず隠されています。なぜ相手がそのような態度を取るのか、その背景にある真の原因を客観的に分析することが、膠着状態を打開することができます。
以下の項目では、離婚調停が長期化したり、あるいは全く進まなかったりする代表的な4つの原因を解説します。
相手に離婚する意思が全くない
離婚調停が進まない大きな原因の一つに、相手方に離婚の意思が全くないケースが挙げられます。相手が「離婚したくない」「やり直したい」と明確に主張している場合、親権や養育費、財産分与といった離婚の前提条件に関する具体的な話し合いに全く応じない状況に陥りやすくなります。
このような離婚拒否の背景には、単純な復縁への希望や愛情だけでなく、さまざまな心理が隠されていることが考えられます。具体的には、以下のような要因が挙げられます。
- 「世間体が悪い」といった体面に関する不安
- 「離婚によって経済的に困窮する」といった現実的な不安
- 相手から離婚を切り出されたことへの意地やプライド
- 再婚されたくない
- 申立人がDV、モラハラ、不貞行為をしている
調停委員が双方の間に入り、冷静に離婚の方向で説得を試みても、相手方が頑なに拒否し続けると、話し合いは平行線をたどるため、調停での合意形成は極めて困難となるでしょう。
モラハラ気質で相手を支配下に置きたい
モラハラ気質の相手は、支配欲が非常に強く、対等な話し合いに応じる意思がないことが特徴です。自己中心的で他者への共感が低い傾向にあり、自分の非を認めることが困難な場合が少なくありません。そのため、離婚調停の場においても、精神的な優位に立とうとします。
具体的には、調停委員を介した話し合いの場でも、相手を論破しようとしたり、人格を否定するような発言を繰り返したりすることがあります。また、モラハラ加害者は、調停では以下のような言動を取る傾向があります。
- 意図的に話し合いを長引かせ、離婚の成立を妨げようとする。
- 無理な要求を突きつけ、離婚そのものを妨害しようとする。
- 自身がモラハラをしているという自覚がないことが多く、離婚を切り出されると頑なに拒否する。
財産分与や慰謝料など、経済的損失を避けたい
財産分与や慰謝料など、経済的損失を避けたいという動機は、離婚調停を難航させる主な原因の一つです。離婚に伴う金銭的負担、特に財産分与、慰謝料、養育費などの支払いを回避したい、あるいは少しでも減らしたいと考える相手は少なくありません。このような状況では、相手は調停の場で非協力的な態度をとることが多くなります。
調停を軽く見ており、真剣に応じていない
離婚調停が長期化する原因の一つとして、相手方が調停を単なる「話し合いの場」と軽視している場合が見られます。家庭裁判所で行われる手続きではあるものの、離婚訴訟のような強制力がないため、その後の手続きへの影響を十分に理解していないことに起因すると考えられます。このような認識不足から、相手は調停の場を真剣に捉えず、安易な態度で臨んでしまうことがあります。
離婚調停が話にならない時に試すべき具体的な対処法

「話にならない」という状況でも、解決を諦める必要はありません。
以下の項目では、調停を有利に進めるための効果的な対処法について解説します。
調停委員を味方につけるための準備と伝え方
離婚調停を円滑に進める上で、調停委員の理解と協力を得るための準備は極めて重要です。
まず、ご自身の主張したい内容、例えば離婚原因、親権、財産分与などについて、時系列で整理したメモや陳述書を用意し、論理的に説明できるよう準備しておくことが大切です。これにより、調停委員はあなたの状況や希望を正確に理解しやすくなります。
次に、主張を裏付ける客観的な証拠を整理し、提示することが有効です。具体的には、以下のような証拠が考えられます。
- 不貞行為を示す写真、SNSの履歴、ホテルの領収書
- DVやモラハラを証明する診断書、録音データ、メールやLINEの記録
- 養育費や財産分与に関する給与明細、納税証明書
これらの証拠は、調停委員の判断材料となり、ご自身の主張に説得力をもたらすでしょう。
さらに、調停の場においては、感情的になることを避け、相手を一方的に非難せず、あくまで冷静かつ丁寧に話す姿勢が不可欠です。調停委員からの質問にも誠実に回答することで、調停委員との信頼関係の構築を目指しましょう。
弁護士に代理人を依頼して精神的負担を減らす
離婚調停において、相手方が非協力的な態度を取り、話し合いが全く進まない状況は、当事者にとって大きな精神的負担となります。
このような場合、弁護士に代理人を依頼することは、解決への有効な手段です。弁護士は依頼者の代理人として調停期日に出席するため、依頼者は精神的苦痛を軽減させることができます。多くの依頼者が、弁護士に依頼することで精神的な負担が大幅に軽減されたと感じています。また、万が一、調停が不成立となった場合の審判や離婚裁判(訴訟)まで見据えた戦略的な対応が可能となります。これにより、今後の見通しが立ちやすくなり、先行きへの不安も軽減されるでしょう。
調停の「不成立」も視野に入れておく
調停はあくまで当事者間の話し合いによる合意形成を目指す手続きであり、合意に至らなければ不成立となることは珍しくありません。
調停が不成立になったとしても、それは離婚手続きの終わりを意味するものではなく、次のステップへ進むための転換点となり得ます。特に、相手方が全く譲歩せず、話し合いの余地がない場合、早期に調停を不成立とするように裁判所に上申することで、いたずらに時間を浪費するのを避け、強制力のある離婚裁判に移行させることができます。
最終手段としての「離婚裁判(訴訟)」とは
審判離婚によっても合意に至らない場合、最終的な法的手段として「離婚裁判(訴訟)」が残されています。
これは、当事者間の話し合いによる解決を目指す調停とは異なり、家庭裁判所の裁判官が双方の主張や証拠に基づき、離婚の可否や条件について「判決」を下す、強制力のある手続きです。判決が確定すれば、相手方の意思に関わらず離婚が成立します。
裁判で離婚を認めてもらうためには、民法第770条に定められた「法定離婚事由」が存在することを客観的な証拠で証明する必要があります。法定離婚事由には、不貞行為、悪意の遺棄、婚姻を継続し難い重大な事由などが含まれます。
一般的に、訴訟提起から判決までには1年以上の長期間を要することが多く、弁護士費用を含め、金銭的・精神的負担も大きくなりがちです。これまでの調停で記録された相手の非協力的な態度や暴言などは、「婚姻を継続し難い重大な事由」を立証する上で重要な証拠となり得ます。そのため、裁判を検討する際は、専門家である弁護士に相談し、適切な証拠収集と戦略を立てることが不可欠です。
不誠実な態度に対する適切な対応
離婚調停が長期化し「話にならない」状況が続いても、ご自身の心と体を守り、平穏な状態を保つことが大切です。以下の項目では、これ以上心身をすり減らさないために、具体的な方法を解説していきます。
頼れる専門家や相談窓口
離婚調停が長期化したり、相手が非協力的な態度を取ったりすることで、「話にならない」状況が続くと、精神的に追い詰められてしまう方も少なくありません。しかし、このような状況を一人で抱え込む必要はありません。特に、弁護士であれば、法的な見地から具体的なアドバイスを受けたり、代理交渉を依頼したりできます。弁護士は、法的手続き全般に精通しており、複雑な問題や調停の長期化が予想される場合に有効です。
冷静さを保つためのセルフケア
離婚調停が長引いたとしても、意識的に心身を休ませ、冷静さを保つためのセルフケアが非常に重要です。
まずは、意識的に調停と関係のない時間を作りましょう。好きな音楽を聴いたり、読書に没頭したり、友人とおしゃべりを楽しんだり、ウォーキングやヨガなどの軽い運動を取り入れたりする方法が有効です。これらの時間は、気分転換になり、心の負担を軽減してくれるはずです。
もし精神的な負担が大きく、ご自身だけでは対処が難しいと感じる場合は、心理カウンセラーなどの専門家へ相談することも検討しましょう。弁護士とは異なる視点から心のケアを受け、心の健康を維持することも、調停を乗り越える上で非常に有効な手段です。
離婚調停の問題は難波みなみ法律事務所へ

これまで、離婚調停が「話にならない」と感じる具体的な状況、その背景にある原因、そして現段階で取れる対処法について解説しました。相手方が感情的になったり、非協力的な態度を取ったりすることで調停が膠着状態に陥ると、精神的にも時間的にも大きな負担となるでしょう。
当事者間で感情的な対立が激しく、法的な知識が不足している状況では、どれだけ努力しても話し合いは建設的に進まないことがあります。一人で抱え込み、心身をすり減らし続けることは、決して良い結果をもたらしません。
このような膠着状態を打破し、ご自身の望む未来を切り開くためには、法律の専門家である弁護士に相談することが最も有効な手段です。
弁護士は、万が一調停が不成立に終わったとしても、離婚裁判(訴訟)といった次のステップまで見据え、戦略的な対応をサポートします。早期に弁護士へ依頼することで、手続きの長期化を防ぎ、結果として心身の疲弊を最小限に抑えることにもつながるでしょう。
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