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モラハラ夫のチェックリストと対処方法を弁護士が解説
「もしかして、私の夫はモラハラかもしれない」
そう感じるなら、一度モラハラ夫のチェックリストに当てはまらないか、確認してみましょう。1つでも該当するものがあれば、あなたはモラハラ被害者かもしれません。
この記事ではモラハラ夫の特徴チェックリストとモラハラ被害者になりやすい方のチェックポイントをご紹介します。
まずは当てはまる項目があるか確認してみて、次の1歩を踏み出すステップにしてみてください。
モラハラとは
モラハラとはモラルハラスメントの略称で、道徳や倫理に反した嫌がらせです。
殴ったり蹴ったりするなどの身体的な暴力とは異なり、心無い言動や理由なく無視し続ける等により相手の心を傷つけるのがモラハラです。
厚生労働省の令和元年(2019)人口動態統計の年間推計によると、離婚件数は21万組に上っており、3組に1組以上が離婚をしている状況です。
最高裁判所が開示している平成29年度司法統計のデータによれば、離婚原因ランキングは、男性は1位の「性格が合わない」に次いで「精神的に虐待する」が2位、女性は1位の「性格が合わない」2位の「生活費を渡さない」に次いで「精神的に虐待する」が3位となっており、モラハラが離婚原因の多くの割合を占めていることが分かります。
モラハラ夫のチェックリスト
- すぐに大声で怒鳴る
- 怒ると物にあたる、暴れる、物を壊したことがある
- 自分が暴れて散らかしたり物を壊したりした後、妻に掃除や後片付けを強要する
- 「お前はばかだ、最低の人間だ」と言ってくる
- 実家の親族や友人をバカにされる
- 体調が悪くても「家事をして当たり前」という態度で気遣いは一切しない
- 体調が悪いと「自己管理ができていない」と攻めてくる
- 反論すると切れる
- 絶対に反省しない、自分の非を認めない
- 妻や子どもの買い物や学費などに対しては異常にお金に細かいのに、自分の買い物にはお金を使っている
- 妻のスマホをチェックしている、盗み見している
- 家計簿をつけさせて、収支の報告をさせられる、内容について細かく指摘される
- 妻が実家に帰るのに良い顔をしない
- 妻と実家との関わりを絶とうとする
- 妻と友人付き合いを絶とうとする
- 妻が仕事に出ようとすると妨害する
- 生活費を入れてくれないことがある
- 無視され続けることがある
- 何時間でもしつこく理屈で責め立ててくることがある
- 怒り出すきっかけやタイミングを読めない
- 「ママのようになってはいけないよ」などと子どもに妻(母親)の悪口を吹き込む
- 「俺が稼いでるから、おまえらが生活できるんだ」と言ってくる
- 主婦業、家事育児を軽んじている発言をする
- 料理を食べたい気分にならないと言って、作り直すよう言ってくる
- 周囲からは「良い夫」と勘違いされている
- 「夫婦の問題は夫婦で解決すべき」などと言って、周囲に相談しないよう言ってくる
上記に1つでも当てはまるものがあれば、あなたの夫(妻)はモラハラかもしれません。
モラハラ被害者になりやすいタイプの特徴
以下はモラハラ被害者になりやすい方の特徴です。あてはまっていたら、被害を受けている可能性があります。
- 「私さえ我慢していればいい」「子どものためにもこの生活を壊すことはできない」「私一人では生きていけない」と思い、夫の言動を我慢している
- 「夫の言っていることが間違っているのでは?」と思っても、すぐに打ち消して指摘することはない
- 夫が帰ってくる時間になると、怖くて動悸や吐き気などが起こり、体調が悪くなる
- 夫がなぜ怒るかわからないので、常に怒らせないよう気を張り詰めてビクビクしている
- 夫がいないと、自分ひとりでは生きていけない気がする
- 自分がいないと夫は生きていけないのではないか?と心配で離れられない
- 家事や家計管理が不完全なのは、自分が悪いと思っている
- 夫の機嫌を損なわないため、子どもの行動まで制限している
- 夫が生活費を払ってくれないので自分の独身時代の貯金を切り崩したりカードローンなどで借金したりした
- 夫が良い顔をしないので、実家や友人とかかわらなくなった
- 結婚して以来、夫の顔色が気になるので自分がやりたいことは何もできなくなった
モラハラの判定基準
「モラハラに遭っているのではないか?」と感じているなら、以下の判定基準に当てはめてみましょう。
相手に自覚や配慮があるか
モラハラ夫は、自分の言動で相手を苦しめていると自覚していません。「自分は正しい」と思い込んでいるので、妻が間違いを指摘すると逆切れして怒鳴ったり暴れたりするケースもよくあります。
そういった人とは話し合っても改善は期待できないでしょう。永遠にモラハラが続いてしまう可能性もあります。
夫がまったく配慮してくれない、一切謝らない、逆切れするなどの言動が続いているなら、今後の生活を考え直すべき状況です。
悪いことをしていなくても、理由なく責められる
「自分が悪いことをしていないのに責められる」なら、相手はモラハラの可能性が高いといえます。
確かに家事や育児などで失敗し、相手に迷惑をかけたら、ある程度は責められても仕方がないでしょう。
そうではなく、何もしていないのにいきなり怒り出すのがモラハラの特徴です。
モラハラ夫は何をきっかけに怒り出すかわからないので、配偶者は振り回されてほとほと疲れ切ってしまう傾向があります。
理由なく怒り出す性格も一生改善しない可能性が高いので、婚姻生活を続ける限り振り回されるでしょう。
モラハラ被害を受けているときの対処方法
自分は被害者であると自覚する
モラハラ被害を受けている方は「自分さえ我慢していればいい」「夫が怒るのは自分のせい」「自分一人では生きていけない」と思い込んでいるケースがあるものです。
しかし上記のような考えは、長年にわたるモラハラ夫の言動によって形成されてしまったものにすぎません。
実際にはあなた一人が我慢する必要はなく、夫が怒るのはあなたのせいではありません。
モラハラ被害者だった女性が離婚して子どもも引きとり、自立して暮らしている例はいくつもあります。
「自分はモラハラの被害者だ」と自覚し、「自力で生きていける」自信を取り戻しましょう。一人で抱え込んでいると前向きな気持ちになりにくい場合、カウンセラーや弁護士などに相談してみてください。
別居を検討する
モラハラ夫と同居していると、毎日モラハラ言動を受け続けてしまうので、なかなか前に進めません。まずは別居して夫と離れ、落ち着いて考えられる環境に身を置きましょう。
子どものいる方は、子どもも連れて出るようお勧めします。
モラハラ被害を受けていると無力感が強まって「子どもを育てられない」と考えてしまう方もいますが、実際にはそのようなことはありません。
むしろモラハラ夫に子どもを任せる方が悪影響です。将来のモラハラの連鎖につながる可能性もあります。
「自分で子どもを育てたい」お気持ちがあるなら、別居の際には子どもも一緒に連れて出ましょう。
別居の時点で子どもを置いて出て行ってしまうと、子どもの親権を取れなくなるリスクがあります。子どもの親権を希望される場合には、必ず子どもを連れて別居を開始させることを心がけてください。
万が一、子どもを連れて家を出ることができなかった場合には、一日も早く子の引き渡し・監護権者指定の仮処分の手続に着手する必要がありますので、その場合にはすぐに弁護士に相談しましょう。
別居中の生活費について
婚姻中に働いていなかった方は「別居すると自分や子どもの生活を維持できない」不安を感じるケースもよくあります。
しかし別居中の生活費は「婚姻費用」として夫に請求できるので心配要りません。
別居しても、夫婦である限りはお互いに生活費の分担義務が及ぶからです。
婚姻費用は、裁判所が定める算定表に従って計算されます。
たとえ、夫が住宅ローンを支払っていたとしても、婚姻費用額から住宅ローンの満額を控除することは認められませんので、婚姻費用の支払を求めることはできます。
モラハラ夫が生活費の支払いを拒否する場合、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てましょう。調停委員が相手に支払うよう説得しますし、それでも相手が納得しない場合には「審判」となって裁判官が相手に婚姻費用の支払い命令を出してくれます。
モラハラ夫が審判を無視する場合、給与や預金などからの差し押さえも可能です。
生活費が足りないからといって、モラハラ夫とのつらい生活に耐える必要はありません。
離婚を真剣に考える
モラハラ夫と別居して落ち着いたら、離婚を真剣に検討してみてください。
モラハラは相手の性質であり、一生変わらない可能性が高いものです。
離婚しない限り、あなたやお子様はずっと相手のモラハラに振り回され、支配され続けることになってしまいます。
早めに断ち切ったらあなたご自身の人生もやり直せて、お子さまのためにもなるでしょう。
離婚に迷われているなら、弁護士が状況をおうかがいしてアドバイスさせていただきます。もちろん無理に離婚を勧めることはいたしません。一方で、モラハラ夫と決別するために離婚をされるなら、全力でサポートいたします。
少しでも「モラハラに遭っているかもしれない」と感じるなら、一度お気軽にご相談ください。
モラハラの証拠を揃えましょう
離婚調停や離婚訴訟において、相手方の離婚原因を根拠に離婚や慰謝料を求めるためには、その離婚原因を客観的な証拠により証明しなければなりません。
実際にモラハラの被害を受けていたとしても、これを客観的に証明できるだけの十分な証拠がなければ、裁判ではモラハラの被害を認定してもらえません。
暴力などのDV行為については、整形外科の診断書やカルテ、傷跡の写真といったように客観的な証拠を集めやすいですが、これに対して口頭による非難などのモラハラは、有形力の行使を伴わないため、客観的な証拠を収集しにくいことが多いです。
特に、テレビドラマの影響もあり、知人や家族等の証言によって証明できると考える方がいますが、証言のみによってモラハラの事実を証明することは非常に難しいです。
そのため、モラハラ被害については、日頃から、証拠の残しておくことが非常に重要となります。
例えば、暴言の録音、LINE等のやりとろの保存、日記の定期的な作成といったものがよく証拠として提出されます。日記については、過去の出来事をまとめて作成するのではなく。出来事が起きる都度、作成するよう心掛けてください。
最後に
モラハラを理由とした離婚請求や慰謝料請求には、計画的な証拠取集が非常に重要となります。解説しましたモラハラの特徴が当てはまる場合には、お早めに弁護士に相談して計画的な対応を進めていきましょう。

弁護士・中小企業診断士。たまに熱くなり過ぎることもありますが,いつでもお気軽にご相談ください。初回相談料(30分)無料。趣味はゴルフと釣り,たまにゲームです。ご依頼の件に限らず,密なコミュニケーションを取ってまいります。