法律婚とそっくりな夫婦の共同生活を営む内縁関係。外観上は法律婚の夫婦と同じような生活を送っていますが、相続における権利は法律婚と大きく違います。内縁の夫婦が知っておくべき相続のルールと、財産を守るための対策を詳しくお伝えします。
内縁が成立する条件から、相続権の有無、財産を残す方法、注意点に至るまで、内縁と相続の包括的な理解をサポートします。
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内縁とは何か?
内縁とは、法律上の婚姻を行わずに、夫婦同様に共同生活を営む男女の関係のことです。
このような生活をしている人々は、俗に「事実婚」とも呼ばれることがあります。内縁の関係は、法的な婚姻手続きを経ないため、法律婚に比べて様々な点で法的な効果に差があるのです。
内縁の条件
内縁が成立するためには、当事者双方に夫婦としての共同生活を望む婚姻意思があることです。
次に、夫婦共同生活の実体があることです。これは単に同居しているだけではなく、互いに協力し合い、経済的な支援を行ったり、社会生活においてパートナーとして機能している実態が必要です。
内縁と法律婚の違い
内縁と法律婚は、多くの点で異なります。
まず最大の違いは、法律婚が婚姻届の提出により法律上の夫婦となるのに対して、内縁はそのような法律上の夫婦とされない点です。
また、法律婚であれば夫婦は同一の名字を名乗りますが、内縁であれば別姓となります。その他、法律婚を選択すれば、戸籍上の変更がある他、
税制優遇や社会保障の面で様々なメリットがあります。これに対して内縁関係には、これらの法的な保護が及ばないことが多く、特に相続の問題などで不利益を受けるケースが少なくありません。
内縁関係と相続権
内縁の関係にある人々が直面する問題の中でも、特に重要なのが相続権の問題です。もしパートナーが亡くなった場合には、遺産を受け取ることができるのか疑問を持つ人も少なくありません。内縁と相続の問題をもっと深く理解することで、将来起こりうるトラブルを避け、適切な対策を講じることができるでしょう。
内縁の夫・妻に相続権はない
内縁関係にある夫や妻は、法律婚において配偶者に与えられる相続権を持っていません。
内縁の関係にあっても、法律婚ではない以上、法定相続人にはなれません。そのため、パートナーが亡くなった場合に、当然に遺産相続ができると考えるのは誤りです。
内縁の夫や妻がパートナーの財産を取得するためには、事前の対策が必要となります。
内縁の夫・妻が遺産を取得できるケース
内縁の配偶者が、特別縁故者に該当する場合には、パートナーの遺産を承継できます。
法律婚と違い、一般的に内縁の夫・妻には直接的な相続権は認められていません。ただ、相続人が1人もおらず、被相続人(亡くなった人)と特別の縁故があった者には、相続財産の分与が認められています。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、 などが当たります。そのため、内縁の配偶者であれば、夫婦の共同生活の実態があるため、特別縁故者に当たるといえます。
ただ、相続人がいない場合に限り認められるものです。また、相続財産管理人の選任や裁判所に対する財産分与の申立てをするなど、非常に煩雑な手続きを経る必要があります。
内縁の夫・妻との子供の相続権(認知・嫡出子と同じ相続分)
内縁の夫婦に子供がいる場合、その子供は母親との関係では当然に相続人となります。
また、父親との関係では、子の認知によって相続人となります。認知された子供も、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)と同等の法定相続分を持っています。
仮に、父の生前に認知が行われていない場合には、法律上の親子関係がないため、当然に相続人となるわけではありません。ただ、父親の死亡後に、非嫡出子が家庭裁判所に認知の訴えを提起することで、父親との親子関係が認められます。これを死後認知といいます。死後認知により、父親の相続人となることができます。
内縁の夫や妻に財産を残す方法
内縁の配偶者に財産を残すためには、事前の対策が必要となります。ただ、内縁の関係において、相続の際には、法律婚に比べて注意しなければならないポイントがいくつか存在します。
遺言書を作成する
内縁の配偶者に遺産を承継させる方法の一つが遺言書の作成です。
遺言を作成することで、遺言の内容に従った遺産分けを実現させることができます。そのため、法定相続人ではない内縁の配偶者であっても、内縁の配偶者に遺産を遺贈する遺言を作成しておけば、内縁の配偶者も財産を取得することができます。
公正証書遺言を作成しておく
遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。秘密証書遺言もありますが、あまり利用されていません。
公正証書遺言は公証役場の公証人によって作成される遺言です。自筆証書遺言は遺言者自らが作成する遺言です。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言者の意思を確認して作成する遺言です。そのため、要式違反や遺言能力の問題が生じにくいといえます。また、公証役場で保管されるため紛失や偽造のリスクもありません。
そのため、遺言書を作成する場合には、できれば公正証書遺言とすることが望ましいです。
生前贈与を行う
内縁の夫や妻に対して、生前贈与を行うことも、財産を残す手段の一つです。
生前贈与は、所有している財産を相続開始前に移転することです。生前贈与を行う場合には、贈与契約の内容を明確にするため、贈与契約書を作成しておくことが大切です。
しかし、年間の基礎控除額である110万円を超える贈与については、贈与税が課税されます。また、自宅不動産を贈与する場合にも、居住用不動産の配偶者控除も利用することはできません。
贈与税の問題に加えて、後述する遺留分の問題にも配慮しながら、計画的に生前贈与を行うようにしましょう。
生命保険を利用する
生命保険の死亡保険金の受取人を内縁の配偶者とすることで、財産を死亡後に残すことができます。
生命保険の受取人は、親族しか指定できない保険会社もあります。ただ、中には、親族ではない内縁の配偶者を受取人に指定できる生命保険もあります。
死亡保険金の受け取りは、相続手続きと比べて簡単な手続きで行うことができる点でメリットがあります。しかし、あまりにも多くの保険金を受け取ると、遺留分や相続税の問題が生じます。
生前に財産分与をする
生前に内縁関係を解消し財産分与をすることで、内縁のパートナーに財産を残すことができます。
夫婦が離婚する場合、夫婦の共有財産を清算する財産分与が認められています。この離婚時の財産分与は内縁の夫婦にも認められています。
そのため、生前に内縁を解消した上で、財産分与を請求することで、夫婦の共有財産の分与を求めることが可能となります。
死亡後の財産分与
内縁の配偶者が死亡した後に、配偶者の法定相続人に対して、財産分与を請求することはできないと考えられています。
そもそも、離婚の財産分与は、夫婦が存命中の制度であって、死亡後に行われることは予定されていません。死亡後は、あくまでも相続手続きによって財産の分与を行うことが予定されています。そのため、死亡後の財産分与は認められていません。
最高裁決定平成12年3月10日 死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地もない。 したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざるを得ない。 |
婚姻届を提出する
最もシンプルな方法として婚姻届を提出することです。
生前に婚姻届を提出することができれば、内縁の夫婦は法律上の夫婦となり、当然に法定相続人となります。しかし、法律婚の配偶者が別にいる場合には、重婚となるため婚姻届を出すことはできません。
内縁の夫や妻に財産を残す注意点
残された内縁の夫や妻に対して、どのように財産を遺すかが重要な議論ポイントとなります。内縁関係においては、法律婚と異なり相続権が認められていないため、慎重な準備と対策が必要です。
相続人から遺留分侵害請求を受けるリスク
生前贈与や遺言により内縁の夫や妻に財産を遺すことは可能です。しかし、兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺言によっても侵害できない最低限の相続権が認められています。これを遺留分といいます。
遺言や生前贈与によって、相続人の遺留分を侵害すると、法定相続人から遺留分侵害請求を受ける可能性があります。ですから、遺言による財産の配分を決める際には、法定相続人の遺留分とのバランスを考慮したうえで、適切な遺留分対策を立てなければなりません。
死亡保険金額が大きすぎると遺留分の対象となる
生命保険の受取人を内縁の夫や妻に指定することは、遺産分配の一つの手段です。しかし、保険金の金額が大きければ大きいほど、相続対象の財産とみなされる可能性が高まり、結果として、法定相続人の遺留分の侵害となることもあります。
死亡保険金は、受取人の固有財産と考えられています。そのため、遺留分の基礎となる財産にはあたりません。しかし、保険金額が遺産額に比して巨額である場合、例外的に遺留分の対象となることがあります。
内縁の夫や妻でも遺族年金を受け取れる
内縁は、共同生活をしていても、法律婚ではありません。内縁の夫や妻は、配偶者が亡くなった場合に遺族年金を受け取ることができます。
内縁の配偶者が遺族年金を受け取るためには、次の要件を満たすことが必要です。
- 内縁関係にあったこと
- 内縁の配偶者に生計を維持されていたこと
さらに、遺族年金を受給するためには、子のある配偶者であることも必要です。子とは、18歳になった年度の3月31日までにある子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級にある子供を指しています。
内縁と相続税
内縁の関係にある夫婦は法律婚に比べて、相続税の面で不利な扱いを受けることがあります。
特に財産額が大きい場合にはその影響は大きくなります。
内縁の配偶者の相続税は2割増
内縁関係の場合には、相続税が通常よりも重くなります。
被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人が財産を相続する場合、相続税が「2割増」となります。内縁の配偶者は、法律上の配偶者でもなければ一親等の血族には当たらないため、法律上の配偶者とは異なり、より厳しい税率が適用されます。
配偶者控除の適用を受けない
法律婚であれば、配偶者には相続税から控除される「配偶者控除」の特典がありますが、内縁関係ではこの制度を利用することはできません。
配偶者控除は、配偶者が相続した遺産が1億6千万円までであれば相続税がかからない制度です。仮に、1億6千万円を超えても配偶者の法定相続分を超えなければ相続税が課税されません。しかし、内縁の配偶者には、この配偶者控除が適用されないため、多くの相続税が課税されるおそれがあります。
生命保険の非課税枠を使えない
内縁の配偶者が死亡保険金を受け取った場合、生命保険の非課税枠を利用できません。
生命保険金も、みなし相続遺産として、相続税の課税対象となります。
ただ、受取人が相続人である場合には、保険金の金額が次の計算式の金額を超えなければ非課税となります。
しかし、内縁の配偶者は相続人ではないため、この保険金の非課税枠を利用することができません。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額 |
内縁の相続の問題は弁護士に相談を
内縁の配偶者が法律婚ではない以上、相続との関係では生前に何らかの対応を行う必要があります。相続の問題はずっと先の話であると、ついつい油断しがちです。しかし、予想に反して相続が発生することも数多くあります。早い段階から内縁の相続問題と向き合い適切な対策を講じるようにしましょう。
一人で抱え込みすぎず、できるだけ早い時期に弁護士に相談しましょう。
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