婚約者の浮気問題は、多くの人にとって痛ましい事実となりえます。
信頼と誠実さは、結婚生活を築くうえで非常に重要な要素であり、浮気はその基盤を揺るがしかねない行為です。婚約者の浮気が発覚した場合、婚約破棄や慰謝料請求といった法的手続きが検討されることもあるでしょう。
浮気を理由とする婚約破棄の慰謝料請求額は、婚姻中の場合と比べると、小さくなる傾向です。ただ、婚約期間、婚約の成熟度、婚約破棄の理由等から高額請求になる可能性もあります。
本記事では、婚約者の浮気による婚約破棄と慰謝料請求の基本的な情報について紹介します。
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婚約者の浮気の理由
婚約者の浮気が発覚した場合、婚約を継続するか破棄するかは個人の判断に委ねられます。婚約者の浮気を許すかどうかは、結局のところ婚約者が浮気した理由によるところが大きいからです。
ここでは、まず婚約者が浮気する主な理由や婚約中に浮気する心理について解説します。
マリッジブルー
婚約中は、将来のことで婚約者とケンカが発生することも多く一時的に関係が悪化するケースも少なくありません。そうした状況が立て続けに起こると、気持ちのすれ違いから「この人と結婚しても大丈夫なのか」と考えてしまうこともあります。
このような結婚直前に感じる漠然とした不安が「マリッジブルー」です。こうしたマリッジブルー症状が強い場合、現実逃避の手段として、他の誰かとの関係を求めてしまうことも珍しくありません。
結婚前に遊んでおきたい
結婚後は、パートナーや家族との時間を優先するため、自由な時間や機会は減少してしまいます。異性との交流も減少するため、今のうちに自由に遊んでおきたいという心理が働きやすく、いわば「最後のチャンス」として浮気に走ってしまう人もいます。
関係のマンネリ化
関係のマンネリ化も婚約中の浮気の理由として多い傾向です。特に、長期間お付き合いしているような場合、交際初期の新鮮さや興奮が薄れてしまい、刺激を求めて他の異性との関係を求めることが浮気につながる場合があります。
元々浮気する性格である
なかには、マリッジブルーやマンネリ化など関係なく、「元々相手が浮気性の性格だった」というケースもあるでしょう。
その場合、結婚後も浮気に悩まされる可能性が高いため、ただちに婚約破棄や慰謝料請求といった法的手続きに移ったほうが良いこともあります。
もちろん、これらの理由は浮気を正当化するものではありませんが、浮気の背後にはさまざまな心理的要因があることを理解することが重要です。


浮気が発覚する原因や兆候
婚約者の浮気が発覚する原因は、多岐にわたります。なかでも、特に多いのが婚約者の不審な言動によることです。
携帯電話を手放さない
婚約者が携帯電話を手放さず、風呂場にまで携帯電話を持参しているような場合、携帯電話に触れられることを警戒している可能性が高いでしょう。
LINEの通知を非表示にしている
LINEアプリを利用している場合、メッセージが届くと、携帯画面の待機画面にメッセージの受信通知が表示されます。
しかし、これを表示されないように設定されている場合があります。非表示の設定をしている場合、LINEの通知内容を見られたくないという心理がある可能性があります。
部屋に異性が訪問した形跡
婚約者の自宅内に異性が来訪した形跡がある場合です。例えば、女性用の化粧道具や化粧品、アクセサリー、避妊具などが残っている場合には、浮気をしている可能性は大きく、浮気発覚の原因になります。
LINEの返事が遅い、素っ気ない
LINEの返事から相手方の浮気を疑うこともあるでしょう。急にLINEの返事が遅くなったり、内容が素っ気なくなったり、返信頻度が減るような場合、浮気の兆候の一つとなります。
連絡がつかない時間帯がある
これまで定期的にLINEや電話をしていたのに、突然連絡が取れなくなったり、連絡が取れない曜日や時間帯がある場合も、浮気の兆候の一つです。
会う回数が減少している
かつては1ヶ月に数回会っていたのに、ある日を境に会う回数が急に減っている時、浮気をしている可能性があります。
友人や知人の目撃証言
自分で偶然発見するだけではなく、第三者から浮気の情報を聞くこともあり、友人や知人による目撃をきっかけに浮気が発覚することもよくあります。
婚約者の浮気を理由とした慰謝料請求するためには
もし、婚約中に相手の浮気が発覚した場合、浮気された側が受ける精神的苦痛は計り知れないものです。
そのため、相手から慰謝料を請求したいと考えることは必然的な心理です。
婚約中の浮気を理由として慰謝料請求するためには、まず①婚約の成立と②正当な理由のない婚約破棄という2つの条件がそろっていることが必要です。
①婚約の成立
婚約破棄が成立するには、そもそも2人が婚約中である必要があります。
では、「婚約」とはどういった状態なのでしょうか。ここでは、「婚約の成立」について見ていきます。
婚約とは
婚約とは、将来結婚を約束する契約を指します。当事者間で将来結婚することについての合意がなされれば、婚約は成立します。結納や指輪の交換は婚約が成立するための条件ではありません。
ただ、婚約が成立したとしても、婚姻を強制することは法的にできませんが、不当に婚約を破棄すれば慰謝料を求めることができます。
婚約の成立を裏付けるイベント
婚約は、結婚とは違って婚姻届のような書面での契約ではなく、あくまで口約束に過ぎません。そのため、婚約の事実を裏付けるものとして、以下に挙げるような具体的な行動やイベントを根拠に婚約の存在を裏付ける必要があります。
結婚指輪・婚約指輪
結婚指輪や婚約指輪の交換は、婚約の成立を裏付ける代表的なイベントです。
結納
結納は、日本の伝統的な婚約の儀式で両家の親族を含めた結婚前の確認作業といえます。
結納が行われたことも、婚約の成立を裏付けるイベントの一つです。ただ、昨今は結納が行われるケースはかつてよりも減少している傾向です。結納金を支払っている場合には、結納金にあたる金額を損害賠償として請求することができます。
結婚式場の予約
結婚式場を予約する行為は、結婚に向けたプロセスとなるため、婚約の成立を後押しする行動です。
両親顔合わせ
両親顔合わせは親族同士が顔を合わせるイベントで、家族を巻き込んで結婚に向けた意思を確認し合います。
フォトウェディング
結婚式のスタイルの一つであり、結婚を約束した2人が行うイベントです。
妊娠出産
妊娠中やすでに子どもがいる場合は、婚約の成立を裏付ける大きな事実です。
賃貸マンションの契約
結婚後に2人で一緒に住むことを目的として賃貸借契約している場合、婚約の成立を裏付ける行動となります。
家具の購入
家具の購入も結婚後の生活を想起させるものとして扱われます。
浮気・不倫は正当な理由のない婚約破棄
浮気や不倫は、決して褒められた行為ではありませんが、すべての浮気や不倫が慰謝料請求の対象となるような不法行為として認定されるわけではありません。
では、どのような浮気や不倫が不法行為とされ、慰謝料請求の対象となるのでしょうか。
慰謝料請求の対象となる浮気・不倫とは
婚約者の浮気が慰謝料請求の対象となるためには、いわゆる不貞行為の事実が必要です。
不貞行為とは、端的にいえば異性と性行為に至ることを指します。
したがって、性的関係を伴わない、あるいは、性的関係を証明できない浮気の場合、それをもって婚約破棄や慰謝料請求することは基本的に難しいといえます。例えば「単に浮気相手に愛情表現をしただけ」「婚約者以外の異性と食事に行っただけ」といった事実では、不貞行為とはいえず、慰謝料請求に値する不法行為にも該当しません。また、キスやハグをする行為は不適切ですが、直ちに慰謝料の対象にはなりません。
不貞行為は慰謝料の対象となる
婚約が成立しており、そのうえで性的関係を伴う浮気をした場合、その浮気は将来の結婚の実現を妨げる行為だと見なされます。
なぜなら、婚約関係にある場合、当事者には婚約を誠実に実現させる義務があります。その義務の一つとして「互いに第三者と性的関係を結ばない」という義務を負っています。性的関係を伴う浮気をした場合は、正当な理由なく婚約を破棄するような行為となるため、慰謝料請求の対象として認められます。
浮気・不倫の証拠を揃える
婚約中の浮気が慰謝料請求の対象として認定されるためには、浮気を客観的に証明する証拠を握っている必要があります。婚約破棄に伴う慰謝料請求を行うためにも、「性的関係を伴う浮気」という証拠をしっかりと集めておくことが大切です。
性行為の写真や動画
性行為それ自体の写真や動画は、異性との性行為を強く推認させます。性行為の写真等をLINEやメールで送り合っているような場合、婚約者の浮気の証拠となります。
性行為に関するLINEメッセージ
婚約者が浮気相手とLINE上で性行為の感想や予定に関するやり取りをしている場合、このメッセージの履歴は浮気の証拠となります。
ラブホテルに入退室する写真や動画
婚約者が異性とラブホテルを利用していれば、性行為に及んでいることが強く推認されます。そのため、ラブホテルに入退室する様子の写真や動画は不貞行為の重要な証拠となります。
避妊具を使用した形跡
婚約者の自宅からコンドーム等の避妊具のゴミが出てくることもあります。避妊具の形跡も浮気の証拠になる可能性があります。ただ、避妊具の形跡だけでは不貞行為の証明に十分ではありません。それ以外の証拠との掛け合わせにより不貞行為の証明を行うことになります。
異性と宿泊したことが分かるメッセージ
婚約者が異性と宿泊している場合にも、不貞行為の証拠となる可能性があります。
宿泊を伴う面会を繰り返している場合、性行為に及んでいる可能性は十分にあるでしょう。
探偵社の調査報告書
探偵事務所に依頼をした上で、婚約者が異性とラブホテルに入室したり、自宅で宿泊している様子を撮影した調査報告書も不貞行為の証拠となります。探偵社に依頼する場合、探偵社の費用の全てが損害として認められるわけではないため注意が必要です。
婚約破棄の慰謝料請求額
婚約中の浮気が原因で婚約破棄に至った場合、得られる見込みの慰謝料金額は具体的にどのくらいになるのか解説します。
慰謝料の相場
実際に受け取れる慰謝料金額はケースによって異なりますが、相場としては50万円~300万円程度です。
ただし、当事者の属性や個別のケースによって、慰謝料が相場より増額されることもあります。
婚約期間・交際期間
婚約期間や交際期間の長さは、慰謝料相場に影響を与える要素の一つです。
一般的に、婚約期間や交際期間がより長いほうが、浮気によって婚約破棄に至った場合の慰謝料は大きくなることが多い傾向です。
婚約手続きの進み具合(成熟度)
2人の婚約関係の成熟度合いも、慰謝料相場に影響を与えます。
結納や両家顔合わせ、式場の予約など進行度が高いほど慰謝料も増額される傾向です。
婚約者の年齢
結婚には適齢期があるとされ、特に女性は妊娠や出産にもタイムリミットがあります。
婚約破棄の時点の年齢によっては、新たに交際期間を経て結婚することが難しくなることも想定されます。そのため、婚約者の年齢も慰謝料相場に影響を与えることがあります。
婚約者の妊娠の有無
女性側が妊娠中に浮気で婚約破棄に至った場合、浮気をした側の責任はより重いと判断される可能性が高いでしょう。婚約者の妊娠中の浮気は、より身勝手で悪質性が高いと見なされ、その分だけ慰謝料が増額される傾向があります。
浮気相手に対する慰謝料請求
浮気をした婚約者に対して慰謝料請求をすることは可能です。
加えて、婚約者の浮気相手に対しても、慰謝料請求をすることかはできます。
しかし、常に浮気相手に対して慰謝料請求できるわけではありません。婚約している事実を婚約者が知っていることが必要です。仮に知らないとしても、婚約の事実を知ろうと思えば知れたにも関わらず、十分な調査を行わなかった場合には、過失があるとして慰謝料請求が認められる可能性があります。
慰謝料請求の流れ
婚約者の浮気が疑われる場合、実際に婚約破棄や慰謝料請求するかはわからなくても、請求の流れを把握しておくことは有用です。ここでは、一般的な慰謝料請求の流れについて解説します。
交渉(話し合い)
ますば、浮気をした婚約者または浮気相手に対して慰謝料請求を行った上で交渉を進めていきます。
証拠の確保
慰謝料請求を行うにあたって、婚約の成立や浮気の存在を裏付ける客観的な証拠を収集しておきます。
内容証明郵便で通知する
婚約者や浮気相手に対する慰謝料請求は、内容証明郵便で行います。慰謝料請求は口頭やメール・LINEで行うこともできます。
しかし、口頭では、請求内容が不明瞭となり、事後的に慰謝料請求の通知内容を明らかにすることが難しくなります。
また、メールやLINEでは、請求側の本気度が伝わりにくく、相手方からの誠実な対応を引き出すことが難しくなりがちです。
そのため、慰謝料請求は、内容証明郵便による方法で通知します。
交渉を進める
相手方から回答があれば交渉を進めていきます。不貞行為の存在を否定する場合には、浮気の客観的な証拠や浮気の具体的な内容を提示することで、相手方に対して翻意を促していきます。
合意書を作成する
もし、示談交渉で合意に至ることができれば合意書(示談書)を作成するのが一般的です。慰謝料の金額や支払方法等の具体的な内容を合意書に盛り込むようにします。
訴訟提起する
一方、合意に至らなかった場合や交渉が決裂した場合は、訴訟提起して民事裁判に移行することが必要です。
訴訟手続では、原告と被告が準備書面と証拠の提出を繰り返すことで審理を進めていきます。ある程度審理が尽くされた段階で、裁判官は当事者双方に対して、和解の勧告を行い、早期解決を促します。
和解協議の結果、裁判上の和解が成立すれば解決となります。和解協議をしても和解成立に至らなければ、当事者尋問をした上で判決が下されます。
▶慰謝料調停に関する裁判所の解説はこちら
差押えをする
裁判手続きを通じて慰謝料請求が確定しているにもかかわらず、相手方が支払いを怠る場合には、相手方の給与や預貯金などの資産を差し押さえることができます。
婚約者の浮気に対処する方法と注意点

婚約者に浮気の兆候がある場合は、感情的にならず、冷静に状況を見極めることが重要です。そのうえで、慰謝料請求を目指すなら浮気の証拠を抜け目なく収集しましょう。もちろん、関係の改善を図る方法もあり、その場合は相手とコミュニケーションを取ることが大切です。とはいえ、実際浮気が発覚した場合は激しく動揺してしまう人も少なくありません。冷静な判断をするためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。
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