せっかく遺言書を作成しても、無効になってしまっては意味がありません。
遺言者の意思を実現させるためにも、遺言が無効となる事態は回避しなければなりません。
では、遺言書はどのような場合に無効になってしまうのか、弁護士がよくあるパターンをご紹介します。
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1.遺言書が無効になるとどうなるのか?
遺言が無効になると、どのような事態が生じるのでしょうか?
① 遺産分割協議が必要になる
遺言書が無効になると、その遺言書の内容通りに遺産を取得することができません。
遺言の無効により、遺言書がないのと同じ状態になるので、遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。
つまり、相続人による遺産分割協議をしなければ、遺産を取得することができません。
また、相続人ではない人は遺産を取得することができなくなります。
② 相続人間の対立が激しくなる
さらに、遺言書に疑義がある場合には、遺言書が「有効」と主張する相続人と「無効」と主張する相続人との間で、遺言書の有効性を巡ってトラブルになってしまうケースが多数です。
その上、遺言が無効か否かは、簡単に判断することができません。
裁判になるケースも多いため、長期間にわたって係争状態となってしまいます。
このような事態を避けるため、遺言書が無効になるのはどういったパターンがあるのか、把握しておきましょう。


2.自筆証書遺言が無効となる場合
自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆で書く必要がある遺言書です。
自筆証書遺言の場合、以下のような理由で無効になるケースがよくあります。
自筆でない部分がある
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で書かねばなりません。
パソコンを使ってはいけませんし、他人に代筆させてもなりません。
ただし、財産目録の部分だけはパソコン作成や預貯金通帳のコピー添付なども認められています。
ところが自筆証書遺言でも、誰に何をどの程度相続させるのかといった、全文を自筆せず、パソコンなどで作成してしまう方がいます。
その場合、遺言書が無効になってしまうので、パソコンなどを利用しないよう注意しましょう。
署名押印が抜けている
遺言書を完成させるには遺言者の「署名押印」が必要です。
ただし自筆で遺言書を作成すると達成感があり、ついつい署名押印をしないまま保管してしまう方がいます。
署名押印のない遺言書は全体が無効になってしまうので、くれぐれも署名押印を抜かしてしまわないように注意しましょう。
日付がない
遺言書には日付が必要です。
複数の遺言書がある場合には「日付の新しい方」が優先されるというルールもあります。
ところが、遺言書に日付を入れないまま保管してしまう方もおられます。
日付がない遺言書は無効になってしまうので、遺言書を自筆する場合でも必ず日付を入れましょう。
なお、日付も自筆する必要があります。スタンプ印を使ったり日付をパソコンで入力したりしないように注意してください。
加除訂正方法が間違っている
遺言書を自筆で書くとき、間違ってしまうケースも珍しくありません。
遺言書を間違ったときの訂正方法は法律によって定められています。
遺言者が修正ペンなどで適当に修正すると、無効になってしまうので注意が必要です。
たとえば遺言書の一部をカットしたい場合には、カットする部分に二重線を引いてその二重線の近くに訂正印を押します。
そのうえで、遺言書の末尾や訂正した箇所の近くに「11行目の第3条全体を削除」などと訂正内容を書き、署名しなければなりません。
捨印による修正は、間違った修正方法となります。
間違った修正方法により、遺言全体が無効となる可能性があります。
加除訂正方法がわからない場合には、弁護士にチェックを依頼したり遺言書全文を書き直したりすると良いでしょう。
法務局に預けても遺言書が有効になるとは限らない
自筆証書遺言を作成すると、法務局で預かってもらえます。
法務局に預ける際には担当者に遺言書の内容を見てもらえるので、「遺言書は有効と確認された」と思い込んでしまう方が少なくありません。
しかし遺言書を法務局に預けたとしても、遺言書が無効になる可能性はあります。
法務局の担当者は遺言書の有効性を判断しているわけではないためです。
法務局に預けるとしても、遺言書の有効性については遺言者が責任を持たねばなりません。
要式不備に不安があるなら、公正証書遺言を作成すると良いでしょう。
3.公正証書遺言が無効になるパターン
公正証書遺言は公証人が職務として作成してくれる遺言書です。
公証人が公文書として作成するので、自筆証書遺言のように要式不備で無効になる可能性はほぼありません。
意思能力が低下してから遺言書が作成された場合
ただし公正証書遺言でも、意思能力が低減している場合には遺言は無効になる可能性があります。
遺言能力
遺言書を作成するには遺言者に遺言能力が必要です。
つまり、遺言者が、遺言の内容とこれによって生じる結果を判断できる能力を有していることが必要となります。
公証人による遺言能力のチェック
公正証書遺言を作成する場合、公証人による意思確認を行います。
公証人によっては、長谷川スケールといった認知機能テストを実施することもあります。
公証人が、遺言者の意思能力が低減していると判断する場合には、公正証書遺言の作成が中止されることがあります。
そのため、公正証書遺言が作成できているということは、遺言者に遺言能力があったことを推認させます。
無効となることも
しかし、遺言者の意思能力の有無を十分にチェックされることなく、公正証書遺言が作成されてしまうケースがあります。
過去の事案で、遺言者に成年後見人が就いているのに、これを明かさずに公正証書遺言が作成されたため、公正証書遺言であっても無効とされたケースがありました。
そのため、有効な遺言書を作成するには、遺言者の意思能力がはっきりしているうちに対処する必要があります。
関連記事|遺言書を書くべき人とは?遺言のメリットを弁護士が解説します
4.遺言書が無効にならないための対処方法
遺言書が無効にならないためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか?
以下では遺言書が無効にならないための対処方法を弁護士が法的な観点からお伝えします。
4-1.遺言書の要式を正しく知る
まずは遺言書に要求される要式を正しく知ることが大切です。
特に自分一人で自筆証書遺言を作成する場合、正しい作成方法を知らないと遺言書は無効になってしまいやすい傾向があります。
遺言書を作成する前に、自筆証書遺言の作成方法を調べて間違わないように正しい方法で作成しましょう。
4-2.公正証書遺言を利用する
自己判断で自筆証書遺言を作成すると、どうしても間違いが起こりやすくなります。
死後に発見されないリスクもありますし、発見した相続人が隠したり破棄したりする可能性もあります。
さらに、自筆証書遺言の場合には、裁判所の検認手続も必要となります。
このような自筆証書遺言のリスクを低減するには、公正証書遺言を作成するようおすすめします。
公正証書遺言であれば、公証人が職務として作成するので、要式不備で無効になる問題は考えられません。
また公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるので、紛失や破棄などのおそれもありません。
相続人は公正証書遺言の検索サービスを利用できるので、発見されないリスクも低減できるでしょう。
心配なら遺言執行者をつけておくと、より確実に遺言内容を実現できます。
遺言書を無効にしたくないなら、公正証書遺言を作成するようおすすめします。
4-3.遺言者が元気なうちに作成する
遺言者の認知症が進行してから遺言書が作成されると、相続人間で遺言者の意思能力が争われてトラブルになる可能性が高まります。
その結果、遺言書が無効になってしまうケースも少なくありません。
遺言書を無効にせずに確実に遺志を実現したいなら、遺言者が元気なうちに作成しておくべきです。
先延ばしにしているとせっかく作成した遺言書がトラブルの種になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
4-4.弁護士のチェックを受ける
遺言書を作成するときには、弁護士によるチェックを受けるようおすすめします。
弁護士が内容をチェックすると、遺言書に不備がないと確認されるので要式不備によって無効になる可能性は通常なくなるでしょう。
弁護士を遺言執行者にしておけば、死後に弁護士が責任もって遺言内容を実現するので、希望する遺産分割の方法などが現実に執行されやすくなります。
相続人に預金払戻しなどの手間もかけずにすみますし、相続人間における相続トラブルも避けやすくなるでしょう。
遺言書を無効にしたくない場合や遺言書によるトラブルを避けたい場合などには、弁護士に遺言書の作成サポートを依頼するのがおすすめです。
5.遺言書を作成するなら弁護士へ相談を

遺言書を作成するとき、自己判断で自筆証書遺言を作成しても無効になってしまうケースが多々あります。
せっかく作成した遺言書を無効にしないためにも、弁護士に遺言書作成のサポートを依頼しましょう。
難波みなみ法律事務所では遺言書作成や相続トラブルの解決に力を入れています。
遺言書を作成されたい方、遺言書の有効無効をめぐってトラブルになってしまった場合などにはお気軽に弁護士までご相談ください。
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