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預貯金がある場合の遺産分割の方法について(平成28年12月29日判決と相続法の改正を踏まえて)

遺産には、不動産のほか、現金、預貯金債権や、生命保険金、死亡退職金、株式などがありますが、これらのうちの預貯金債権については、遺産分割においてどのような処理をされるのでしょうか?以下では、預金と遺産分割について述べたいと思います。相続と遺産分割についてはこちらをご参照ください。

1 従前の取り扱い

共同相続人間における遺産分割の協議等を経ることなく、相続の開始とともに当然に分割され、各相続人にそれぞれの法定相続分に応じて帰属すると解されてきました。

したがって、金融機関にもよりますが、金融機関に対して各相続人が自分の相続分に基づいて預金払戻請求訴訟を提起して、預金の払戻しを求めることができるとされてきました。

他方、相続人間における遺産分割の協議や家庭裁判所における調停等においては、預貯金債権も含めて遺産分割の方法を検討した方がより適切に遺産を分割することができる場合があることから、相続人間の合意で、預貯金債権を遺産分割の対象とすることが行われてきました。例えば、遺産が不動産と預貯金債権である場合、預貯金債権が遺産分割の対象にならないとしますと、不動産だけが遺産分割の対象となり、遺産分割の方法としては、不動産を各相続人の共有にするとか、不動産を取得する相続人が他の相続人に代償金を支払うなどとする必要がありますが、預貯金債権も遺産分割の対象としますと、ある相続人が不動産を取得し、他の相続人が預貯金債権を取得するというようなことも可能になります。

2 最高裁平成28年12月29日判決

ところが、最高裁の平成28年12月29日判決は、従前の考え方を変え、「預貯金は,預金者においても,確実かつ簡易に換価することができるという点で現金との差をそれほど意識させない財産である・・・共同相続の場合において、・・・遺産分割手続の当事者の同意を得て預貯金債権を遺産分割の対象とするという運用が実務上広く行われてきている」などを理由として、預貯金債権は遺産分割の対象に含まれるという判断を示しました。

したがって、相続人間の合意がなくても、預貯金債権を含めて遺産分割をすることになり、遺産分割はしやすくなったということができます。

他方、遺産分割がされるまでは、共同相続人の全員の同意がなければ、預貯金の払戻しをすることができなくなり、例えば葬儀費用の支払や、相続人の生活費の支払のために預貯金債権を払い戻すためには、共同相続人全員の同意が必要となり、共同相続人うちのの1人でも反対すれば、遺産分割前に預貯金を払い戻すことはできなくなりました。

3 民法(相続法)の改正

上記の最高裁の判決を受けて、平成30年の相続法の改正により、預貯金債権の遺産分割前の払戻しの制度が創設されました。

そして、民法909条の2は、各共同相続人は原則として預貯金債権の額の3分の1に払戻しを求める相続人の法定相続分を乗じた額については、単独で払戻しをすることができることと規定しています。

例えばある銀行口座に600万円の預金があり、相続人が子二人である場合には、そのうちの一人の相続人は600万円の3分の1に法定相続分の2分の1を乗じた100万円までこの制度により払戻しを受けることができます。ただし、払戻しは150万円が限度とされていますので、上記の例で預金残高が1200万円の場合には、その3分の1の2分の1は200万円になりますが、払戻しは150万円までということになります。

なお、この制度によって払戻しを受けた場合には、その後の遺産分割において、払い戻しを受けた金額については払戻しを受けた相続人が遺産分割において取得したものとみなされることになります。したがって、払戻しを受けた金額が遺産分割において取得する金額を超えることになる場合には、その超えた分を返還することになります。

 

遺産分割前に預貯金の払戻しを受ける必要がある場合や、遺産分割についてお悩みの場合には是非、弁護士にご相談ください。

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