コラム
更新日: 2024.10.20

【弁護士監修】別居準備の手順と注意点|やることリストやケース|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

夫婦関係に問題が生じたとき、冷静な判断をするために別居を選択するケースがあります。パートナーと少し距離を置いて冷却期間を設けたい場合、あるいは、離婚手続きを真剣に進めていきたい場合、別居は現実的な選択肢です。

しかし、別居には様々なリスクも伴います。無計画に別居を開始してしまうと、後戻りできなくなり不利益が生じます。

事前に適切な準備を行い、注意点を理解しておかないと、離婚手続を有利に進めることができないだけでなく、後にパートナーから損害賠償を請求される可能性もあります。

本記事では、別居準備の進め方や別居後の生活費の問題について解説し、別居を検討している方に役立つ情報をお届けします。

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別居に至るおもな理由は?

結婚をする際、ほとんどのカップルが「別居」を想定することはありません。 

しかし、夫婦生活を続ける中で、夫婦間ですれ違いが生じることで様々な問題を引き起こし、離婚のために別居を検討することがあります。

夫婦が別居を検討する理由を紹介します。

性格や価値観の不一致を解消できない

夫婦の間で性格や価値観が合わないと、結婚生活において大きなストレスを感じることがあります。特に、金銭感覚、生活習慣、子育てに対する考え方が異なる場合、夫婦間の不和が生じやすくなります。

これらの違いを解消するためのコミュニケーションが不足している場合、毎日の生活が苦痛に感じられ、夫婦関係が悪化していき、別居が選択肢として浮上します。

パートナーからモラハラやDVを受けている

モラハラ(モラルハラスメント)やDV(ドメスティック・バイオレンス)は、心身に深い傷を負わせます。このような被害から逃れるために、DVシェルターや実家などの安全な場所に移り、身の保護を確保することが最優先となります。

そのため、自らの安全を守るために別居を検討することがあります。

子どもがパートナーから虐待を受けている

子どもに対する虐待により子供の心身の健康が脅かされている状況では、速やかに別居を決断し、子どもを安全な環境に移す必要があります。

実の親が子どもに対して暴力を振るうこともあれば、子どもと血縁関係のないパートナーが子どもに暴力を振るうことがあります。また、子どもに対する直接的な暴力だけでなく、子供の面前で妻や夫に暴力を振るう行為も、子供の虐待となります。

子どもに対する虐待は子どもの健全な成長を脅かします。暴力に関する証拠を十分に確保しつつ、さらなる被害が生じる前に速やかに別居することが重要です。

パートナーが離婚に応じてくれない

離婚を望んでいても、パートナーが同意しない場合、別居を選択することも一つの方法です。お互いに距離を置くことで、冷静に話し合いができるようになり、離婚に向けた話し合いが進むこともあります。

しかし、別居をしたとしても話し合いが進まない場合、調停や裁判に発展する可能性もあるため、弁護士による法的なアドバイスを受けることが大切です。

また、不貞行為やDVなどの明確な離婚原因がない場合でも、長期間の別居が離婚原因となることもあります。そのため、配偶者が離婚に応じない場合には、速やかに別居を開始させた上で、別居期間を重ねることもあります。

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別居をするメリット・デメリット

別居には多くのメリットとデメリットがあります。

夫婦間の問題が解決できるかどうかを見極めるためには、メリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが重要です。

別居のメリット

一つ目のメリットは、離婚しやすくなることです。先ほども述べたように離婚原因がない場合、配偶者が同意しなければ離婚できません。しかし、別居が長期間に及べば、夫婦関係が破綻し、離婚原因となります。そのため、配偶者が反対していても裁判所による離婚判決が下されます。

二つ目のメリットが、離婚に対する本気度が伝わることです。別居によって、パートナーに対して離婚や関係修復に対する真剣な意思が伝わりやすくなります。

三つ目のメリットは、冷静になることができる。夫婦が物理的な距離を取ることで、お互いに冷静になり、感情的な摩擦が減る可能性があります。

四つ目のメリットは、DVやモラハラによる被害から身を守ることができる点です。DVを働く配偶者から物理的な距離を取ることで、自分自身や子どもの安全を確保します。

最後のメリットとして、離婚後の生活を想定できることです。別居後の生活スタイルを体験しておくことで、実際に離婚した後の生活の問題点・課題を見つけることができ、離婚後の生活に備えた計画を立てやすくなります。

別居のデメリット 

別居にもデメリットはあります。先ほど紹介したメリットだけでなくデメリットも踏まえながら、別居に踏み切るか十分に検討しましょう。

まず一つ目が、別居により孤独を感じることがあります。配偶者や子どもと離れて暮らすことで、生活状況は一変し、孤独感が増し、精神的な負担を生じさせることがあります。

次に、別居により夫婦関係がより一層悪化する可能性があるため、夫婦関係の修復が困難になるリスクがあります。

生活費が二重にかかる場合があります。配偶者の婚姻費用、住宅ローンと自身の居住費など、別居前と比べて負担するべき生活費が増大する可能性があります。

財産隠しのリスクがあります。財産分与に際して、配偶者が任意に財産を開示しない場合、自分自身で配偶者の財産を探索しなければなりません。しかし、別居前に配偶者の財産を十分に調査することなく別居してしまった場合、配偶者の財産を探索するための情報がないため、十分な財産分与を受けられないおそれがあります。

子供のケアが必要となる点もデメリットの一つということができます。子供を連れて別居する場合、生活環境の変化により子供が大きなストレスを感じることがあります。そのため、子供のストレスを少なくするために、子供のケアはとても重要になります。

別居により離婚原因の証拠集めが難しくなります。同居中であれば不貞行為やDVの証拠を確保することはできます。しかし、配偶者と離れて暮らすことで、配偶者の生活状況を把握することが難しくなり、不倫などの離婚原因の証拠を確保することが難しくなります。

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別居前に知っておくべき注意点

別居にはデメリットもあるため、別居にあたっては慎重に進める必要があります。特に、法的トラブルを避けるためには、いくつかの重要なポイントを理解しておくことが不可欠です。

配偶者に別居することを伝えておく

別居にあたっては、できれば配偶者・パートナーの了解を得た上で別居することが望ましいでしょう。

DVや深刻なモラハラなどの被害を受けている場合は別ですが、そうではない場合には、配偶者と離婚協議を重ね、協議離婚できなければ別居する旨を伝えるようにします。無断で別居をした上で生活費の支払いを怠る場合には、「悪意の遺棄」として見なされる可能性があり、その結果、慰謝料を請求されるリスクがあります。

そのため、別居を行うに際しては、パートナーとの話し合いをしっかり行い、双方が納得した上で別居を進めることが推奨されます。ただ、先ほども解説したように、別居を伝えるにあたっては、離婚原因や財産分与の証拠を十分に確保していることを確認するようにしましょう。

モラハラやDVの場合はこっそりと別居準備をする

DVやモラハラの被害を受けている場合には、別居することを伝えておくことの必要は乏しいと考えます。

DVをする配偶者の特性からすると、別居を示唆したり、協議離婚の申入れをすると、さらなる被害を招くリスクがあるからです。

そのため、別居するまでに被害に関する証拠や財産分与に関する証拠を収集した上で、秘密裏に別居することも選択肢に入れましょう。

離婚話が進みやすくなる別居期間

別居期間が長引くと、夫婦関係が破綻していると認定される場合があります。特に、不貞行為やDVといった明確な離婚原因がない場合でも、長期間の別居が離婚原因に該当することで離婚請求が認められることがあります。

裁判所が離婚を認める基準として、別居期間は3年から5年程度が一般的です。ただし、同居期間が短かった場合など、別居期間が短くても離婚が認められるケースもあります。

家庭内別居は夫婦関係の破綻とみなされない

家庭内別居や単身赴任は、離婚を前提とした別居期間にはカウントされません。

同居している限り、夫婦関係が破綻していると評価することはできないからです。また、単身赴任は離婚に向けた別居ではないため、離婚原因となる別居には含まれないと考えます。

離婚の際には、物理的な別居が必要とされるため、家庭内別居が続いている場合には、離婚が難航することがあります。

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別居準備の進め方・やることリスト

別居を進めるためには、いくつかの準備が必要です。事前に適切な準備を踏むことで、スムーズに別居生活をスタートさせることができます。

パートナーの収入状況が分かるものを保存する

別居後に婚姻費用を請求する際には、夫婦双方の収入状況が判断材料となります。

パートナーの源泉徴収票や給与明細、課税証明書などを事前に確認した上で、コピーしておくことで、婚姻費用の請求がスムーズに進むでしょう。特に収入が複数ある場合には、収入を秘匿する可能性もありますので、収入資料を確保しておくようにしましょう。

共有財産を確認しておく

別居前に、夫婦間での財産状況を明確にしておくことが重要です。特に共有財産については、別居後にパートナーが隠す可能性もあるため、事前にしっかりと確認しておくことが必要です。具体的には、預貯金であれば金融機関名と支店名、株式や投資信託については証券会社を把握しておきましょう。

万が一、相手方が共有財産の資料開示を拒否したとしても、調査嘱託という裁判所の手続きを利用することで財産関係の資料を確保することができます。

浮気やDVなどが原因の場合は証拠を集める

浮気やDVが別居の原因である場合、その証拠を別居前に集めておくことが重要です。別居後はパートナーとの接触が減るため、証拠集めが困難になる可能性があります。

写真、動画、メール、ラブホテルの領収証など、信頼性の高い証拠を確保しておきましょう。

離婚届不受理申出書を提出しておく

別居中、パートナーが勝手に離婚届を提出する可能性があります。

これを防ぐために、離婚届不受理申出書を提出しておくことで、無断での離婚届提出を防止できます。この手続きは市役所で行うことが可能です。

別居中に住む場所を決める

別居後、どこに住むかも重要なポイントです。

賃貸物件、実家、ホテル、マンスリーマンションなど、さまざまな選択肢が考えられます。生活費を考慮し、経済的に無理のない住居を選ぶことが大切です。

実家やホテルなどに転居するとしても、途中で改めて転居しなければならなくなるケースもあるため、別居後の住居がどの程度住むことができるのかも検討しておきましょう。

別居先へ持っていくものを準備する

別居先に持っていくものを事前にリストアップし、準備を進めておくことも重要です。貴重品や生活必需品、そしてパートナーの収入状況がわかる書類や浮気やDVの証拠など、必要なものを少しずつ用意しておくとスムーズです。

一旦別居をしてしまうと、自由に自宅内に出入りすることは制限されてしまいます。配偶者に私物の返却を何度も要請することは手間がかかりますし、心理的な負担もあります。

そのため、自宅に残してきた私物の返却を求めないように済むように、持っていくべき私物や貴重品を事前にチェックして、持ち忘れのないように注意しましょう。

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ケース別に必要になるその他の別居準備

別居準備は、家族構成や個々の状況によって異なります。ここでは、子どもがいる場合や無職の場合など、ケース別に必要な準備について紹介します。

子どもを連れて別居する場合

子どもを連れて別居する際には、特に親権の問題が重要になります。

親権を取りたい場合は、子どもと一緒に別居することが有利になります。子供を置いて別居を開始させることは極力避けるべきです。また、別居に伴い転校や転園が必要となる場合には、別居前に手続きを十分に行い、子供の就学環境に大きな悪影響が生じないようにしましょう。

さらに、児童手当の支給口座を変更できるように、市役所の窓口に出向き、必要書類や必要な手続きを確認しておきましょう。

専業主婦・主夫が別居する場合

専業主婦・主夫であるため就労していない場合、別居後の生活費をどのように確保するかが大きな課題となります。

別居の前後から就職活動を行い収入を得られるようにしておくことが理想ではあります。しかし、別居直後から就労を開始させることはそう簡単なことではありません。仮に別居後に就労できたとしても、配偶者の収入額に達する程度の収入をすぐに得られることは容易ではありません。

そのため、別居直後にするべきことは婚姻費用の請求です。婚姻費用は離婚するまで受け取ることができます。

高齢になってから別居する場合

熟年離婚をする場合、老後の生活をいかに安定させるかが重要な関心事項です。そのため、別居にあたっては、退職金の金額や退職金の規定、共有財産の種類や内容を十分にチェックすることが大切です。

特に、配偶者が財産分与の対策のために意図的に財産を分散させている場合には、財産の特定に苦労することが多くあります。可能な限り同居中に配偶者の財産の資料を確保するようにしましょう。

別居後にやること

別居後は、法的な手続きや生活の再設計が必要です。ここでは、別居後に必要な手続きを紹介します。

住民票を異動する

引っ越し後14日以内に住民票の転入届を新居の市区町村に提出しなければなりません。

また、住民票を移動させないと、郵便物が前の家に届いてしまうなどの問題が生じるため、早めに手続きを進めることが大切です。住民票の異動ができない場合には、郵便物の転送届を出しておくようにしましょう。

さらに、DV等の被害を受けている場合には、DV等支援措置として、住民票のの閲覧制限をかけることができますので、配偶者による付きまといなどが懸念される場合には、住民票の閲覧制限を行いましょう。

パートナーとの今後を考える、または話し合う

別居後、冷静さを取り戻せば、今後の将来についてよく考えて、離婚を選択するのか、修復を目指すのかを検討しましょう。自分一人で決めかねる場合には、必要に応じて、カウンセリングや弁護士との相談を利用し、冷静に次のステップを考えましょう。

別居後の生活費・養育費について

別居後の生活費や養育費は、生活の基盤を支える重要な要素です。ここでは、費用面の準備について説明します。

婚姻費用を請求できる

別居中でも、収入が少ない方は、収入が多いパートナーに婚姻費用を請求できます。

これは、衣食住の費用だけでなく、医療費や子どもの教育費も含まれます。

また、住宅ローン付の自宅に居住し続けている場合でも、月額の住宅ローンの全てを負担する必要はありません。この場合には、収入階級に応じた住居関係費が控除されることがあります。

養育費も婚姻費用に含まれる

婚姻費用には、未成年の子どもの養育費が含まれます。つまり、離婚するまでは、子供の養育費を含めた婚姻費用を受け取ることができます。

離婚後は、配偶者に対する扶養義務が無くなりますが、未成熟の子供に対する扶養義務は残ります。そのため、親権者にならなかった親は子供の養育費を支払う義務を負います。

児童手当が継続して受け取れる

児童手当は別居後も受け取り続けることができます。ただし、児童手当は収入の高い配偶者の口座に振り込まれるため、何らの手続きもしなければ、児童手当は収入の高い夫又は妻の口座に振り込まれてしまいます。そのため、支給口座の変更が必要であれば、受給者変更の手続きが必要です。

変更手続に際しては、離婚調停の申立書控えや弁護士の受任通知を提出するよう求められることがあります。

まとめ

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 離婚問題ならお任せください。

別居を決断する際には、生活費の問題に加えて、財産関係や離婚原因に関する書類を準備するなど、慎重な準備が必要です。別居は夫婦関係を見つめ直すための冷却期間として機能する一方、適切な手続きを踏まないと、パートナーとの間でトラブルが生じる可能性もあります。難波みなみ法律事務所では、別居や離婚に関する法的サポートを提供しておりますので、ぜひご相談ください。

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