母子家庭には国が援助する様々な扶助があります。
特に、幼い子どもがいる母子家庭は働き方が制限されるため、1つでも多くの扶助を受けるに越したことはありません。しかし、中には自ら申請しないと受けられない扶助もあるのが現実です。抜け漏れがないように、受け取ることのできる手当を申請するようにしましょう。
そこで本記事では、母子家庭の扶助について弁護士が解説していきます。
児童手当
児童手当は、母子家庭だから支給されるわけではなく、子どもがいるすべての家庭に支払われる手当です。離婚が理由で母子家庭になった方の場合、受給者が父親名義の預金口座になっている可能性があるため、必ず役所届出を出して変更してください。
・支給対象者
0歳~15歳(中学校卒業の年度末まで)
・支給金額
年齢別の支給額
- 0歳~3歳未満 一律15,000円
- 3歳~12歳(小学校卒業) 第一子/二子10,000円 第三子以降15,000円
- 中学生 一律10,000円
児童扶養手当
児童扶養手当は、母子家庭及び父子家庭を対象とした手当です。ただし、児童扶養手当は申請しなければ支給されないため注意が必要です。母子家庭の大きな支えとなってくれるため、まだ申請していない方は必ず申請するようにしてください。
・支給対象者
母子家庭及び父子家庭の0歳~18歳(到達してから最初の3月31日まで)
・支給金額
世帯の所得額によって支給金額が異なるため、以下では全額支給について紹介します。
全額支給額
- 子どもが1人 月額43,160円
- 子どもが2人 月額53,350円(加算額10,190円)
- 子どもが3人目以降 1人増えるごとに月額6,110円が加算
障害年金との併給
ひとり親が障がいのために障害年金を受給している場合、障害年金額が児童扶養手当を超える場合には、児童扶養手当の受給ができませんでした。
しかし、児童扶養手当法の改正に伴い、児童扶養手当の金額と障害年の子の加算部分の金額との差額を児童扶養手当として受給することができるようになりました。
TIPS!養育費の請求を
子供の養育費を相手方から受け取っていない母子家庭は非常に多いです。母子家庭向けの扶助も大事ですが、並行して養育費の請求を検討しましょう。
参考記事|養育費を支払わないと科せられるペナルティ
児童育成手当
児童育成手当は、一般的に18歳までの子どもがいる母子家庭が対象の手当です。
ただし、児童育成手当は市区町村によって制度や名称、受給資格等が異なります。
・支給対象者(市区町村によって異なる)
18歳未満の子ども(到達してから最初の3月31日まで)
・支給金額(市区町村によって異なる)
月額13,500円程度
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、母子家庭であるかは関係なく、20歳未満の子どもで支給条件を満たしているすべての家庭に支給される手当です。ただし、特別児童扶養手当は申請しないと支給されません。条件を満たしている方は必ず申請してください。
・支給対象者
精神障害があり精神の発達が遅れている
身体に障害があり長期にわたって安静が必要である
以上の障害のため日常生活を送る上で著しい制限がある
・支給金額(等級1級の場合)
子供の人数に応じた金額
- 子どもが1人 月額52,500円
- 子どもが2人 月額105,000円
- 子どもが3人 月額157,500円
障害児福祉手当
障害児福祉手当は、母子家庭であるかは関係なく、20歳未満の子どもで支給条件を満たしているすべての家庭に支給される手当です。ただし、障害児福祉手当は申請しないと支給されません。条件を満たしている方は必ず申請してください。
・支給対象者
身体または精神に重度の障害があり、日常生活を自力で送ることができず、常時介護が必要となっている20歳未満の子ども
・支給金額
一律月額14,480円
母子家庭の住宅手当
母子家庭の住宅手当は、母子家庭で20歳未満の子どもがおり、家族で居住するための住宅を借りていて、月額10,000円を超える家賃を支払っている場合に支給される手当です。
ただし、母子家庭の住宅手当は市区町村独自の制度であるため、お住いの地域によっては実施していない場合があります。
・支給対象者(市区町村によって異なる)
母子家庭で20歳未満の子どもがいる
居住のための住宅を借りていること等
・支給金額(市区町村によって異なる)
月額5,000~10,000円程度
母子家庭の遺族年金
母子家庭の遺族年金は、夫が死亡した場合に受け取れる年金です。以下のとおり、加入している年金の種類によって受け取れる金額が異なります。
遺族基礎年金
・支給対象者
配偶者が死亡し、18歳未満の子どもまたは20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある子どもと同居している家庭
・支給金額
780,900円+第1~2子は1人当たり224,700円を加算
第3子以降は1人につき74,900円が加算
遺族厚生年金
・支給対象者
亡くなった方によって生計が維持されていた、子のいる配偶者、または子、子のない妻
・支給金額
本人が受け取るはずだった厚生年金の約4分の3の金額
寡婦年金
・支給対象者
亡くなった本人と10年以上の婚姻関係があり、生計を維持されてきた65歳未満の妻
・支給金額
亡くなった本人が65歳に受け取る予定だった老齢基礎年金の約4分の3の金額
死亡一時金
・支給対象者
遺族基礎年金を受給できる者がおらず、亡くなった本人の国民年金納付期間が一定以上ある場合、亡くなった本人と生計を同じくしていた配偶者や子ども
・支給金額
一時金として、国民年金の納付期間に応じて12~32万円
母子家庭の医療費助成制度
母子家庭の医療費助成制度は、母子家庭、父子家庭を対象とし、世帯主(保護者)や子どもが病院などで診察を受けた際、健康保険の自己負担分を助成する制度です。
助成内容は市区町村によって異なりますが、医療費負担が大幅に軽減されるため、実施している市区町村に住んでいる方は必ず申請するようにしてください。
・支給対象者
母子(父子)家庭で、0歳~18歳の子ども(到達してから最初の3月31日まで)
・支給金額
保険医療費の自己負担額の一部
なお、母子家庭の医療費助成制度には所得制限があります。以下の年収額を超えている場合は、制度を利用することができなくなっています。
所得額
- 子どもが1人 230万円
- 子どもが2人 268万円
- 子どもが3人以上 1人増えるごとに38万円が加算
子ども医療費助成
母子家庭の医療費助成制度が所得制限によって受けられない場合でも、母子家庭であれば子ども医療費助成を受けられる場合があります。親の医療費助成にはなりませんが、子どもの医療費助成にはなるため、所得制限にかかる方も必ず申請しましょう。
・支給対象者(市区町村によって異なる)
小学校就学前まで、小学校卒業まで、中学校卒業までなど、市区町村によって対象者が異なるため、居住地の市役所にて確認してください。
・支給金額
子どもが通院、入院する際に支払った保険医療費の一部
生活保護
生活保護は、生活していくだけの収入を得られない方や、収入を得てはいても生活が困窮している方に対して、国が最低限度の生活を保障してくれる制度です。
母子家庭で、特に子どもがまだ幼い方は働きに出ること自体が困難です。離婚した相手から養育費を支払ってもらっていればまだ良いですが、そもそも支払ってもらっていない、支払ってもらっても生活費が足りないという方は、生活保護の受給を検討しましょう。
・支給対象者
- 生活費を援助してくれる親族がいない
- 資産を一切持っていない
- 働けない理由がある
- 月の収入が最低生活費を下回っている
・支給金額
支給される金額は居住地域によって異なる
単身世帯であれば月額10~13万円程度
母子家庭であれば月額18~20万円程度(子どもの数でさらに加算)
国民健康保険料の減免
母子家庭であることを理由に国民健康保険料が減免される制度はありません。
ただ、世帯全体の所得の合計が基準額以下であれば、国民健康保険料の軽減(7割、5割、2割)されます。
割合 | 所得額 |
---|---|
7割の軽減 | 43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円 |
5割の軽減 | 43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+(29万円×被保険者数) |
2割の軽減 | 43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+(53万5千円×被保険者数) |
未就学児の保険料の減額
未就学児(6歳に達する日以後の3月31日までにある人)のいる世帯について、未就学児の均等保険料が5割減されます。所得制限は設けられておらず、申請をする必要もありません。
低所得による保険料の軽減がされている場合には、軽減後の額から5割減額となります。
国民年金保険料の減免
国民年金保険料についても減免制度があります。
ひとり親(寡婦)の場合、前年の合計所得額が135万円以下であれば、全額免除となります。
また、前年所得が一定額を下回る場合には、保険料の全部または一部が免除されます。
割合 | 所得額 |
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
保育料の減免
幼稚園や認定保育園等の保育料は無償化となりました。
無償化の対象は、幼稚園、認可保育園、認定こども園などで、対象児童は3~5歳児です。
しかし、住民税の非課税世帯であれば、対象となっていはい0歳から2歳の子供の保育料も無償化の対象となります。
自立支援給付金
ひとり親家庭の母親が、就職やキャリアアップのために指定された教育訓練講座を修了すると、受講料の60%が給付されます。
対象となる講座の一例は以下のとおりです。
- 介護福祉士
- 保育士
- 柔道整復師
- 看護師
- 歯科衛生士
高等職業訓練促進給付金
児童扶養手当を受給している母子家庭の母親を対象に、カリキュラムが一年以上の養成機関で就業する場合に、生活費に相当する手当が支給されます。
市民税非課税世帯であれば月額141,000円、課税世帯であれば、70,500円が支給されます。
カリキュラム修了時には、非課税世帯であれば5万円、課税世帯であれば2万5千円が支給されます。
対象となる資格は以下のとおりです。
- 看護師
- 准看護師
- 介護福祉士
- 保育士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 歯科衛生士
- 社会福祉士
- 助産師
- 保健師
- その他市長が認める資格
高等職業訓練促進給付金に関する厚生労働省の解説はこちら
母子家庭の扶助にお困りの方は弁護士に相談を
以上のとおり、母子家庭が受けられる扶助には様々なものがあります。また、地域によって受けられる扶助に違いがあるため、すべてを網羅するのは簡単ではありません。
そこで、もし母子家庭の扶助についてお困りの方がいらっしゃれば、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、母子家庭が受けられる扶助についての説明だけでなく、申請のサポートも可能となっています。